【北アルプス】猫又谷から毛勝谷へ 毛勝三山縦走
Posted: 2012年5月21日(月) 22:43
【日 付】2012年5月20日(日)
【山 域】北アルプス北部 毛勝三山
【天 候】晴れ一時曇り
【コース】洞杉分岐5:10---7:00釜谷出合7:16---10:26稜線10:36---11:12猫又山11:34---12:28釜谷山12:54---
14:07毛勝山14:57---16:01大明神谷出合---16:31林道終点---17:16僧ヶ岳登山口---17:55DOCデポ地
---18:25駐車地
東又谷の林道は片貝川第4発電所の少し先で通行止めだった。先週から除雪は進んでいないようだ。
DOCをデポして南又谷へ向かう。洞杉の群生地への分岐あたりまで入ることができた。
この洞杉は検索してみると一見の価値があるようで、時間があれば探索してみたいものだ。
駐車地にはすでに車が3台。1台の主がスノボを担いでバイクで下りていった。毛勝からの周回なら稜線で会うだろう。
単独者と自転車に乗ったスキーヤーが先発。スキーヤーはいきなりのデブリの乗越しで苦労している。
(このスキーヤーは「山あっとらんだむ」のひろろとろろさんだったようだ。)
今日は猫又谷から猫又山、釜谷山、毛勝山のいわゆる毛勝三山を縦走して毛勝谷を下りるとという周回コース。
昨年のふ~たんコンビの逆回りである。車が2台あれば1台デポしておけば楽勝だが、ひとりだと自転車やさっきのボー
ダーのようにバイクのデポが必要になる。しかも豪雪の去年でも東又谷林道は僧ヶ岳の登山口まで入れたのに、今年
ははるか手前でストップだ。
歩き出してすぐに左足の甲が痛み出した。先週から普段履きの靴でも少し痛んでいたのだが、少し小さ目の登山靴
に当たってまともに歩けない。こんなんで猫又へ行けるのか。
靴ひもを緩めてだましだまし歩いていると慣れてきたのかあまり感じなくなった。やれやれである。
南又発電所を過ぎ、折り返しながら高度を上げて林道はどこまでも続く。雪はあったりなかったりという状態だ。
地図上の終点を過ぎても林道は上流へ延びていた。Ca1090mのあたりで水流が近付き、最終堰堤とひとつ手前の堰
堤が見えた。先行者のトレースも堰堤方向へ向かっている。もうここは釜谷(かまたん)出合のすぐ手前である。距離的
には猫又谷の半分以上を稼いだことになる。ここから1300mの標高差に備えてひと息入れる。
太陽は稜線の向こうからまだ顔を出さず、雪渓を吹き降ろす風は冷蔵庫を開けた時のようにひんやりしている。
しかし雪の上で上から下からじりじり焼かれて体力を消耗するよりはいい。
最終堰堤を越すと雪は完全に繋がり、目指す猫又山南のコルまで白い道が一直線に伸びている。これほど見通しの
いい雪渓も珍しいだろう。谷幅も広く、まったく圧迫感のないスケールの大きな谷だ。これだけ広いとデブリも谷を埋め尽
くすというところはなく、ところどころに残骸があるという感じである。
[attachment=4]P1070766_1.JPG[/attachment]
振り返ると数名の後続の姿が見えた。駐車地にいたのは4名だけだが、後から来たようで7~8名が蟻のように雪渓を
登っている。
先行の2名は速く、はるか上部に去っていた。雪渓のど真ん中で腰を降ろして休んでいると、太陽がやっと顔を出して谷
が一気に明るくなった。
前方から5人パーティーが下りてきた。ずいぶん早い下山だが、大きな荷物を担いでいるところを見るとテン泊のようだ。
猫又山頂で泊まって毛勝往復というところだろうか。彼らのかかと落しの足跡のおかげで、傾斜を増した雪渓も緊張感
なく登ることができる。
気温が高く雪も緩んでいるのでWストックのままでも問題ない。バーチャリさんが登った先週なら冷え込みでクラストして
慎重さを要求されただろう。
ふたりのスキーヤーに抜かれた。ひとりはなんと最大傾斜ラインを真っ直ぐにガシガシと登ってきた。恐るべきパワー
である。
登っても登っても目の前の白い斜面はなくならない。今日はまあまあ足が動いているようで、ほとんど休むことなくコル
に到達した。後ろから追い上げられていることも大きいかもしれない。
大猫山からの稜線上、Ca2170mのコルに飛び出すと、目の前に剱の姿がドーンと現れ度肝を抜かれる。この感覚は
稜線歩きでは味わえない。唐松から鹿島槍の後立山の稜線も黒部川の奥に並んでいる。
[attachment=3]パノラマ 2_1_1.JPG[/attachment]
ひと仕事終えたような感覚だが、猫又の山頂まで200mの登りが残っている。出発点からすでに1500m以上登っている
ので足もだるくなってきた。
ハイマツの間を縫うように登ると山頂直下の小台地。ここは昨秋ランチを楽しんだ池塘のあるいいところだが、今は雪原
が広がるのみだ。
山頂にはすれ違ったパーティーが設営したのだろう、建て売りの分譲住宅かと見紛うきれいな半地下式の雪洞が残さ
れ、先発のスキーヤーがお食事の最中だった。中にどうぞと誘われたが、大して風もないのでわざわざ景色が見えない
雪洞に入ることもない。北に目をやると、これから向かう釜谷山、毛勝山へと続く雪稜がおいでおいでと呼んでいるようだ。
スキーヤーの話では2000m以上は雪が少ないということだった。こちらは初めてなのでこの雪が多いのか少ないのかわ
からない。しかし5月も半ばを過ぎてこれだけの雪が残っているというのはさすが豪雪地帯である。
剱の方から「ドーン」という音が鳴り響いた。池ノ谷あたりの雪崩だろう。雪は安定しているように見えてもどこで崩れる
かわからないのが恐い。
今日もいつも通りコンロでランチの用意をしてきている。しかしどこでランチにするかは大きな問題だ。
ビールを飲んで寛いでしまえば登る気がなくなってしまいそうだ。
出発から6時間経っているが、とりあえずは釜谷まで進んで様子を見てみよう。
[attachment=2]パノラマ 7_1.JPG[/attachment]
5人パーティーのものと思われる昨日のトレースを辿る。稜線上には危険なところはないが、雪割れが進んでいて思わ
ぬ穴にはまらないよう注意が必要だ。
右手の黒部川側の谷も残雪でびっしり覆われ、スキーで滑れば楽しいだろう。登り返しが大変だが。
釜谷へは最低鞍部まで150m下って200mの登りである。青息吐息で釜谷山の登りに掛かると前方からスノボを担い
だ単独者がやってきた。朝の彼だ。お互い周回ルートの同好の士ということで親近感が湧く。
立ち止まって話すとどうもほとんど滑れるところがなかったようで、ボードもザックの重しと化したようだ。ボードは履いて
歩けないからさぞつらいことだろう。
お互いの健闘を祈って別れるとほどなく釜谷山頂に着いた。ここは猫の額ほどの狭い山頂だが、なぜか山頂部分だけ
雪が消えて地肌が出ていた。
毛勝へのアップダウンはここまでより小さいが、毛勝谷の下りと林道歩き、DOCでの車の回収を考えればビールを飲ん
でまったりという気にはならない。少し休憩して毛勝へ向かう。
西側からだんだん雲が湧いてきて、稜線の西半分は雲に覆われてしまった。毛勝の山頂はまだ青空が覗いている。
もう少し持ってくれよ。振り返れば剱の雲の中。猫又の山頂には人が鈴なりだ。
ヘルメットをザックに付けた重装備の3人パーティーとすれ違う。
ここから毛勝南峰との鞍部にかけて、稜線の東側は崩壊した雪庇の残骸が凄まじい光景を作り出していた。
雪のトンネルのような場所を抜けて、かろうじて繋がった雪の橋を渡ったりしながら雪稜の端に出ると、雪庇が落ちた後
に残された雪のオブジェがそこここに見られた。もしノートレースでガスられたらちょっと恐いかもしれない。
[attachment=1]P1070885_1.JPG[/attachment]
オブジェ群を過ぎると毛勝南峰との鞍部。最後の登りに力を振り絞る。
一旦毛勝谷下降点のコルへ下ると単独のスキーヤーが下山準備をしているところだった。「ほとんど滑れないですわ」と
苦笑いしていた。彼が下りれば自分が最後の登山者のようである。
毛勝本峰に着く頃には願いもむなしくガスに包まれてしまった。ここまで持ってくれたのだから良しとしよう。
やっとビールが飲める。が、あまり食欲が湧かないのと時間のせいもあってラーメン・コーヒーはお預けだ。
靴下を履き替えてさっぱりした気分になっていると、毛勝谷の方からまた「ドーン」という音が響いた。雪崩か。
予定していたタイムリミットである3時に下山開始。登山口まで2時間もあれば下りられるだろう。
最初は手前のルンゼを下りかけたが、5mほど下りたところでヒザ上まで潜ったのでこれはいかんと登り返して正規のコ
ルへ戻った。毛勝谷はまったく見えない。足元には無数のトレースが刻まれ雪面はグチャグチャである。
雪はほどよく緩んでアイゼンはピタッと止めてくれるのでピッケルを出すまでもない。結局今日一日ピッケルは使わず仕
舞だった。
少し傾斜が緩むとガスが晴れ、谷の下部の様子が見えてきた。これは尻セードにお誂え向きの斜面だ。
考えてみれば今シーズンはほとんど尻セードを楽しんでいない。
シートを取り出して滑降開始。アイゼンでブレーキングしてスピード調節しながら滑れば見る見るうちに高度が下がる。
実に快適だ。
標高差300mほど滑ったところでこの時期に似合わない白い雪の堆積があった。これがさっきの音の主か。
幅30m、全長は500mぐらいあるかもしれない、真新しいデブリが誕生していた。
もう少し早く下山していたらまともに食らっていたかもしれないと思うとぞっとする。
[attachment=0]P1070915_1_1.JPG[/attachment]
広々した雪渓を行くと前方に異様なものが見えた。雪渓なら白いはずだが、大明神谷が出合うそこは一面の茶色であ
る。こんな光景は見たことがない。どうやら大明神谷で発生した土石流が本流を埋め尽くしたようだ。
賽の河原かと思うような土砂と石の積み重なった阿部木谷を歩く。両岸には壊れた堰堤のように汚れた雪の壁が残され
ていた。大勢の人が歩いたのでそれなりに道らしきものができているが、なければどこを歩いていいかわからないだろう。
堰堤が連続して現われだすと林道終点である。ここまで高度を下げれば雪も部分的に残っている程度。
山菜や花を物色しながら歩いているとまた足が痛み出してきた。それでも今年初めて見るカタクリの清楚な姿には慰め
られた。
こういうときにはやたら長く感じられる林道歩きもいよいよフィナーレ。
山際に立てかけていたDOCはひっくり返って主の帰りを待っていた。
山日和
【山 域】北アルプス北部 毛勝三山
【天 候】晴れ一時曇り
【コース】洞杉分岐5:10---7:00釜谷出合7:16---10:26稜線10:36---11:12猫又山11:34---12:28釜谷山12:54---
14:07毛勝山14:57---16:01大明神谷出合---16:31林道終点---17:16僧ヶ岳登山口---17:55DOCデポ地
---18:25駐車地
東又谷の林道は片貝川第4発電所の少し先で通行止めだった。先週から除雪は進んでいないようだ。
DOCをデポして南又谷へ向かう。洞杉の群生地への分岐あたりまで入ることができた。
この洞杉は検索してみると一見の価値があるようで、時間があれば探索してみたいものだ。
駐車地にはすでに車が3台。1台の主がスノボを担いでバイクで下りていった。毛勝からの周回なら稜線で会うだろう。
単独者と自転車に乗ったスキーヤーが先発。スキーヤーはいきなりのデブリの乗越しで苦労している。
(このスキーヤーは「山あっとらんだむ」のひろろとろろさんだったようだ。)
今日は猫又谷から猫又山、釜谷山、毛勝山のいわゆる毛勝三山を縦走して毛勝谷を下りるとという周回コース。
昨年のふ~たんコンビの逆回りである。車が2台あれば1台デポしておけば楽勝だが、ひとりだと自転車やさっきのボー
ダーのようにバイクのデポが必要になる。しかも豪雪の去年でも東又谷林道は僧ヶ岳の登山口まで入れたのに、今年
ははるか手前でストップだ。
歩き出してすぐに左足の甲が痛み出した。先週から普段履きの靴でも少し痛んでいたのだが、少し小さ目の登山靴
に当たってまともに歩けない。こんなんで猫又へ行けるのか。
靴ひもを緩めてだましだまし歩いていると慣れてきたのかあまり感じなくなった。やれやれである。
南又発電所を過ぎ、折り返しながら高度を上げて林道はどこまでも続く。雪はあったりなかったりという状態だ。
地図上の終点を過ぎても林道は上流へ延びていた。Ca1090mのあたりで水流が近付き、最終堰堤とひとつ手前の堰
堤が見えた。先行者のトレースも堰堤方向へ向かっている。もうここは釜谷(かまたん)出合のすぐ手前である。距離的
には猫又谷の半分以上を稼いだことになる。ここから1300mの標高差に備えてひと息入れる。
太陽は稜線の向こうからまだ顔を出さず、雪渓を吹き降ろす風は冷蔵庫を開けた時のようにひんやりしている。
しかし雪の上で上から下からじりじり焼かれて体力を消耗するよりはいい。
最終堰堤を越すと雪は完全に繋がり、目指す猫又山南のコルまで白い道が一直線に伸びている。これほど見通しの
いい雪渓も珍しいだろう。谷幅も広く、まったく圧迫感のないスケールの大きな谷だ。これだけ広いとデブリも谷を埋め尽
くすというところはなく、ところどころに残骸があるという感じである。
[attachment=4]P1070766_1.JPG[/attachment]
振り返ると数名の後続の姿が見えた。駐車地にいたのは4名だけだが、後から来たようで7~8名が蟻のように雪渓を
登っている。
先行の2名は速く、はるか上部に去っていた。雪渓のど真ん中で腰を降ろして休んでいると、太陽がやっと顔を出して谷
が一気に明るくなった。
前方から5人パーティーが下りてきた。ずいぶん早い下山だが、大きな荷物を担いでいるところを見るとテン泊のようだ。
猫又山頂で泊まって毛勝往復というところだろうか。彼らのかかと落しの足跡のおかげで、傾斜を増した雪渓も緊張感
なく登ることができる。
気温が高く雪も緩んでいるのでWストックのままでも問題ない。バーチャリさんが登った先週なら冷え込みでクラストして
慎重さを要求されただろう。
ふたりのスキーヤーに抜かれた。ひとりはなんと最大傾斜ラインを真っ直ぐにガシガシと登ってきた。恐るべきパワー
である。
登っても登っても目の前の白い斜面はなくならない。今日はまあまあ足が動いているようで、ほとんど休むことなくコル
に到達した。後ろから追い上げられていることも大きいかもしれない。
大猫山からの稜線上、Ca2170mのコルに飛び出すと、目の前に剱の姿がドーンと現れ度肝を抜かれる。この感覚は
稜線歩きでは味わえない。唐松から鹿島槍の後立山の稜線も黒部川の奥に並んでいる。
[attachment=3]パノラマ 2_1_1.JPG[/attachment]
ひと仕事終えたような感覚だが、猫又の山頂まで200mの登りが残っている。出発点からすでに1500m以上登っている
ので足もだるくなってきた。
ハイマツの間を縫うように登ると山頂直下の小台地。ここは昨秋ランチを楽しんだ池塘のあるいいところだが、今は雪原
が広がるのみだ。
山頂にはすれ違ったパーティーが設営したのだろう、建て売りの分譲住宅かと見紛うきれいな半地下式の雪洞が残さ
れ、先発のスキーヤーがお食事の最中だった。中にどうぞと誘われたが、大して風もないのでわざわざ景色が見えない
雪洞に入ることもない。北に目をやると、これから向かう釜谷山、毛勝山へと続く雪稜がおいでおいでと呼んでいるようだ。
スキーヤーの話では2000m以上は雪が少ないということだった。こちらは初めてなのでこの雪が多いのか少ないのかわ
からない。しかし5月も半ばを過ぎてこれだけの雪が残っているというのはさすが豪雪地帯である。
剱の方から「ドーン」という音が鳴り響いた。池ノ谷あたりの雪崩だろう。雪は安定しているように見えてもどこで崩れる
かわからないのが恐い。
今日もいつも通りコンロでランチの用意をしてきている。しかしどこでランチにするかは大きな問題だ。
ビールを飲んで寛いでしまえば登る気がなくなってしまいそうだ。
出発から6時間経っているが、とりあえずは釜谷まで進んで様子を見てみよう。
[attachment=2]パノラマ 7_1.JPG[/attachment]
5人パーティーのものと思われる昨日のトレースを辿る。稜線上には危険なところはないが、雪割れが進んでいて思わ
ぬ穴にはまらないよう注意が必要だ。
右手の黒部川側の谷も残雪でびっしり覆われ、スキーで滑れば楽しいだろう。登り返しが大変だが。
釜谷へは最低鞍部まで150m下って200mの登りである。青息吐息で釜谷山の登りに掛かると前方からスノボを担い
だ単独者がやってきた。朝の彼だ。お互い周回ルートの同好の士ということで親近感が湧く。
立ち止まって話すとどうもほとんど滑れるところがなかったようで、ボードもザックの重しと化したようだ。ボードは履いて
歩けないからさぞつらいことだろう。
お互いの健闘を祈って別れるとほどなく釜谷山頂に着いた。ここは猫の額ほどの狭い山頂だが、なぜか山頂部分だけ
雪が消えて地肌が出ていた。
毛勝へのアップダウンはここまでより小さいが、毛勝谷の下りと林道歩き、DOCでの車の回収を考えればビールを飲ん
でまったりという気にはならない。少し休憩して毛勝へ向かう。
西側からだんだん雲が湧いてきて、稜線の西半分は雲に覆われてしまった。毛勝の山頂はまだ青空が覗いている。
もう少し持ってくれよ。振り返れば剱の雲の中。猫又の山頂には人が鈴なりだ。
ヘルメットをザックに付けた重装備の3人パーティーとすれ違う。
ここから毛勝南峰との鞍部にかけて、稜線の東側は崩壊した雪庇の残骸が凄まじい光景を作り出していた。
雪のトンネルのような場所を抜けて、かろうじて繋がった雪の橋を渡ったりしながら雪稜の端に出ると、雪庇が落ちた後
に残された雪のオブジェがそこここに見られた。もしノートレースでガスられたらちょっと恐いかもしれない。
[attachment=1]P1070885_1.JPG[/attachment]
オブジェ群を過ぎると毛勝南峰との鞍部。最後の登りに力を振り絞る。
一旦毛勝谷下降点のコルへ下ると単独のスキーヤーが下山準備をしているところだった。「ほとんど滑れないですわ」と
苦笑いしていた。彼が下りれば自分が最後の登山者のようである。
毛勝本峰に着く頃には願いもむなしくガスに包まれてしまった。ここまで持ってくれたのだから良しとしよう。
やっとビールが飲める。が、あまり食欲が湧かないのと時間のせいもあってラーメン・コーヒーはお預けだ。
靴下を履き替えてさっぱりした気分になっていると、毛勝谷の方からまた「ドーン」という音が響いた。雪崩か。
予定していたタイムリミットである3時に下山開始。登山口まで2時間もあれば下りられるだろう。
最初は手前のルンゼを下りかけたが、5mほど下りたところでヒザ上まで潜ったのでこれはいかんと登り返して正規のコ
ルへ戻った。毛勝谷はまったく見えない。足元には無数のトレースが刻まれ雪面はグチャグチャである。
雪はほどよく緩んでアイゼンはピタッと止めてくれるのでピッケルを出すまでもない。結局今日一日ピッケルは使わず仕
舞だった。
少し傾斜が緩むとガスが晴れ、谷の下部の様子が見えてきた。これは尻セードにお誂え向きの斜面だ。
考えてみれば今シーズンはほとんど尻セードを楽しんでいない。
シートを取り出して滑降開始。アイゼンでブレーキングしてスピード調節しながら滑れば見る見るうちに高度が下がる。
実に快適だ。
標高差300mほど滑ったところでこの時期に似合わない白い雪の堆積があった。これがさっきの音の主か。
幅30m、全長は500mぐらいあるかもしれない、真新しいデブリが誕生していた。
もう少し早く下山していたらまともに食らっていたかもしれないと思うとぞっとする。
[attachment=0]P1070915_1_1.JPG[/attachment]
広々した雪渓を行くと前方に異様なものが見えた。雪渓なら白いはずだが、大明神谷が出合うそこは一面の茶色であ
る。こんな光景は見たことがない。どうやら大明神谷で発生した土石流が本流を埋め尽くしたようだ。
賽の河原かと思うような土砂と石の積み重なった阿部木谷を歩く。両岸には壊れた堰堤のように汚れた雪の壁が残され
ていた。大勢の人が歩いたのでそれなりに道らしきものができているが、なければどこを歩いていいかわからないだろう。
堰堤が連続して現われだすと林道終点である。ここまで高度を下げれば雪も部分的に残っている程度。
山菜や花を物色しながら歩いているとまた足が痛み出してきた。それでも今年初めて見るカタクリの清楚な姿には慰め
られた。
こういうときにはやたら長く感じられる林道歩きもいよいよフィナーレ。
山際に立てかけていたDOCはひっくり返って主の帰りを待っていた。
山日和
【コース】洞杉分岐5:10---7:00釜谷出合7:16---10:26稜線10:36---11:12猫又山11:34---12:28釜谷山12:54---