【中央ア】 大棚から大棚入山(2375m)
Posted: 2012年4月16日(月) 21:22
【日 時】 4月8日(日)
【地 図】 http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 8052070782
【同行者】 単独
【天 候】 晴れ
【ルート】 水産試験場(7:05)~水沢岳との分岐(12:02)~2320P(13:18)~大棚入山(14:09/25)~2320P(15:02)~水沢岳との分岐(15:33)~水産試験場(18:32)
大棚入山(おおだないりやま)の南西には何枚かの棚がある。山名の由来はこれだろう。では、「入山」とは何なのか。
教授に「入山」の意味を聞いてみると、こう返ってきた・・・『山ことば辞典』(岩科小一郎著・藤本一美編/百水社)を引くと「奥まったところ」の意味、とか。
なるほど。「大棚の奥に控えし山」というわけだ。ならば大棚から大棚入山を狙ってみよう。しかし、ネット記録を見ても、水沢山の尾根か塩尻側の奈良井川からの記録に限られた。いずれもヤブと倒木のジャングルで、いかにも難峰の印象だ。一体、どうなることやら。
さて、その大棚だが、一体どのようにして出来上がったのか。ネット資料に頼ると興味深い記事がヒットした。
「講演要旨」のPDFファイルによれば、13世紀頃に発生した地震によって、大棚入山の南西面で大崩落が生じた可能性があるとのこと。崩壊で生じた圧倒的な土石流が濃ヶ池川を堰き止めた。その結果、そこには広大な天然湖が生じたと言う。
この天然のダム湖が幻の「濃ヶ池」であったのだが、現在は堰が決壊して消失。その後、上流からもたらされる土砂が堆積して、何枚かの棚が形成されたらしい。
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/rzisin/ ... shkura.pdf
水産試験場の近くに車を停めさせて頂く。この付近は何の縁か、結構土地勘がある。幸ノ川から麦草岳にも登っているし、家族でキャンプにも来ている。さらに昨年は出張で近くの民宿に二泊している。
水量豊かな濃ヶ池川に沿って歩く。木曽福島水道局の沈砂池がある。ここから地図上の破線路を歩くが、かなり荒れていて歩きにくい。早くも先行き不安になってくる。
やがて林道が横切る。濃ヶ池橋だ。「保安林」の看板のある古い山仕事道に入る。これも近年は使われていないようで、ヤブがかぶりつつあった。朽ちゆくゲートを開けて奥へと足を踏み入れる。
「休猟区」の看板。対岸の涸れ沢を笹道に入る。傍らの大きな針葉樹には「林班界」の表示。福島営林署の「山火事注意」を見ながら濃ヶ池川本流と別れる。さあ、大棚入山南西に発達した棚を歩こう。
コンパスを確認して一段目の棚の入口を探してみる。ヒノキやカラマツが密に植林されていて棚の広さは実感できないが、樹間に春の日が射して明るい。大きな切り株。かつての豊かな林相を想像させる。
二段目の棚の入口を探す。どれかと探りながらルンゼに足を踏み入れる。巨岩がゴロゴロする崩落地帯に入った。だが、気を使いながら高度をあげるうち、岩壁にぶち当たってしまった。
おかしい。地図にない地形だ。コンパスを出して驚いた。真東を向いている。となれば現在位置は地図上のここだ。こいつは間抜けじゃん。不注意だよ、あんた。
地図を仔細に検討する。1700m付近に二段目の棚への連絡通路とも言える傾斜の緩みがある。そいつを利用しよう。
まずは右岸尾根に逃げてみる。凍てついた急尾根をピッケルとアイゼンで慎重に下る。けれども、その連絡通路の気配のないまま、尾根の下降がつらくなってくる。一体、現在地はどこなのだ。だが、焦るな。変な焦りは事故につながる。
ようやくこの右岸尾根を北に回り込むポイントをつかんだ。ようやく二段目の棚に通じる凹地に飛び出したようだ。ここでようやく休憩らしい休憩を取る。
座っていた岩から立ち上がったところ、岩陰から何やら黒いものがちょろりと動いた。そいつは小さな岩穴から顔を出したり引っ込めたりしながら、こちらの様子を窺っている。
こいつはモグラか?いや、違う、これが噂に聞くヒミズか。高山に棲息する日本固有種の小動物だ。これは珍しい。
立ち去りがたい気持ちを抑えて先を急ぐ。1時間弱のタイムロスが惜しい。山頂に到達するのは難しいかもしれない。だが、後悔を残さないよう、やるだけやってみよう。
凹地が山肌に飲み込まれると二段目の棚に到達した。樹相は変わらず植林だが、ここにも大きな切り株がある。微妙な起伏に悩むうち、現在地を失いそうになる。これ以上、棚をさまよい歩いても、興味深いものもなさそうだ。地理勘を失う前に大棚入山への登路に選んだ尾根に取り付くことにした。
先日来の降雪が古い雪を覆っている。アイゼンをきかせてさえ、表層の堅雪を突き崩してズルっと滑る。こうなると無駄に体力を消耗して苦しい。何とか尾根に登り詰めた。モミやシラビソ、ツガと言った樹相の中、先を急ぐ。針葉樹の幼木が不安要素だったが、やがて下生えが気にならなくなった。
雪の尾根はヤブを被ることもなく、それなりに歩けた。露岩のやせ尾根があって先行きが危ぶまれたが、それはワンポイントのみ。二重に三重に稜線が交雑する場面はあるが、おおむね順調に高度を稼いでいく。しかし、急登を交えたり、雪をなだめたりすかしたりで、捗らないし、すっきり感もない。樹間の青空と中央アルプスに励まされて無心に登る。
やがてゴジラの背の巨岩が林立する尾根になった。それを避けて尾根下を辿ると樹林の中、再び傾斜が強まる。雪が深くて一歩一歩が重い重い。気合いを入れ直す。そしてどうにか水沢山との分岐点に立った。
安堵する間もない。ここから2320峰までは地図上の距離以上に遠いだろう。足元が深すぎて遅々として進まない。時間との戦いになる。急斜面に腰まで胸まで埋まって、無様にもがく。灌木をつかんでかきあがる。
試しにスノーシューに履き替えてみるが急登に歯がたたない。再びアイゼンとピッケルに持ち替えたりするので、時間もかかるはずだよ。
地獄の責め苦に耐えながら、高所を求めて2320峰に立つ。待望の、抜けるような青空。そして大展望を掌中にした。白山、御岳、乗鞍、北アルプス、北信の山々。中央アルプスの主峰群も手に取るよう。先週登った仏谷や坊主岳があんなに小さい。経ヶ岳も眼下に見えるよ。
だが、まだ安心は出来ない。ここからが本当の勝負所だ。一旦、鞍部に降りてピークを狙う。雪庇が侮れない。北面がすぽんと切れ落ちているから、滑落したら後がない。
危険を避けてヤブに逃げれば、ザックをヤブに絡め取られる。おまけに逃げた分、稜線から大きく離されるので痛し痒しだ。やむなく稜線通しに登るが、宙に浮くような露出感があって爽快というか恐いというか。ミスが許されない場面だ。新雪の下の堅い雪を意識しながらスリップしないよう慎重に登っていく。
そして、もうこれ以上高い場所がなくなった。ここが大棚入山の山頂なのだ!雪深い頂が蒼穹のもとにあった。すべての山々が祝福してくれている。中央アルプスの一つ一つの峰々を数えてみる。右端が麦草岳、玉ノ窪沢の源頭カールの奥が木曽前岳、主峰の木曽駒ヶ岳。細尾沢が純白の雪渓を伴って這い上がっているのがよく見える。茶臼山・将棋頭山の稜線の奥は伊那前岳だろうか。
腕時計と相談する。立ち去りがたい気分を押さえて下山せねば。登りは何とかなった斜面がジャンプ台になって迫り、緊張を強いられる。どうにか2320峰から水沢岳分岐へ。雪が深くて重くて体力を奪い取られる。ラッセル必至なので、自転車をデポしておいた水沢山へのルートは早々に捨てた。往路を戻ろう。
ひたすら忠実に尾根を下山していく。最後は往路と離れて最短で尾根を通す。ただ、この選択もそれほど楽ではない。まずは笹ヤブが出てきた。いきなり岩頭に立ったりもする。おまけにルート判断が微妙になってくる。
凍てついた斜面をアイゼンをきかせて下るが、笹ヤブに足を取られまくって酔っぱらい歩き。だが、ガチンコに凍りついた急傾斜でアイゼンを手放すのは、あまりに無謀だった。
そしてようやく往路に合流。二つのゲートをくぐり抜ける。濃ヶ池橋からは林道をぽこぽこ歩く。そして、足取り怪しく愛車へと帰還した。ただいま~っ!
ふ~さん
【地 図】 http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 8052070782
【同行者】 単独
【天 候】 晴れ
【ルート】 水産試験場(7:05)~水沢岳との分岐(12:02)~2320P(13:18)~大棚入山(14:09/25)~2320P(15:02)~水沢岳との分岐(15:33)~水産試験場(18:32)
大棚入山(おおだないりやま)の南西には何枚かの棚がある。山名の由来はこれだろう。では、「入山」とは何なのか。
教授に「入山」の意味を聞いてみると、こう返ってきた・・・『山ことば辞典』(岩科小一郎著・藤本一美編/百水社)を引くと「奥まったところ」の意味、とか。
なるほど。「大棚の奥に控えし山」というわけだ。ならば大棚から大棚入山を狙ってみよう。しかし、ネット記録を見ても、水沢山の尾根か塩尻側の奈良井川からの記録に限られた。いずれもヤブと倒木のジャングルで、いかにも難峰の印象だ。一体、どうなることやら。
さて、その大棚だが、一体どのようにして出来上がったのか。ネット資料に頼ると興味深い記事がヒットした。
「講演要旨」のPDFファイルによれば、13世紀頃に発生した地震によって、大棚入山の南西面で大崩落が生じた可能性があるとのこと。崩壊で生じた圧倒的な土石流が濃ヶ池川を堰き止めた。その結果、そこには広大な天然湖が生じたと言う。
この天然のダム湖が幻の「濃ヶ池」であったのだが、現在は堰が決壊して消失。その後、上流からもたらされる土砂が堆積して、何枚かの棚が形成されたらしい。
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/rzisin/ ... shkura.pdf
水産試験場の近くに車を停めさせて頂く。この付近は何の縁か、結構土地勘がある。幸ノ川から麦草岳にも登っているし、家族でキャンプにも来ている。さらに昨年は出張で近くの民宿に二泊している。
水量豊かな濃ヶ池川に沿って歩く。木曽福島水道局の沈砂池がある。ここから地図上の破線路を歩くが、かなり荒れていて歩きにくい。早くも先行き不安になってくる。
やがて林道が横切る。濃ヶ池橋だ。「保安林」の看板のある古い山仕事道に入る。これも近年は使われていないようで、ヤブがかぶりつつあった。朽ちゆくゲートを開けて奥へと足を踏み入れる。
「休猟区」の看板。対岸の涸れ沢を笹道に入る。傍らの大きな針葉樹には「林班界」の表示。福島営林署の「山火事注意」を見ながら濃ヶ池川本流と別れる。さあ、大棚入山南西に発達した棚を歩こう。
コンパスを確認して一段目の棚の入口を探してみる。ヒノキやカラマツが密に植林されていて棚の広さは実感できないが、樹間に春の日が射して明るい。大きな切り株。かつての豊かな林相を想像させる。
二段目の棚の入口を探す。どれかと探りながらルンゼに足を踏み入れる。巨岩がゴロゴロする崩落地帯に入った。だが、気を使いながら高度をあげるうち、岩壁にぶち当たってしまった。
おかしい。地図にない地形だ。コンパスを出して驚いた。真東を向いている。となれば現在位置は地図上のここだ。こいつは間抜けじゃん。不注意だよ、あんた。
地図を仔細に検討する。1700m付近に二段目の棚への連絡通路とも言える傾斜の緩みがある。そいつを利用しよう。
まずは右岸尾根に逃げてみる。凍てついた急尾根をピッケルとアイゼンで慎重に下る。けれども、その連絡通路の気配のないまま、尾根の下降がつらくなってくる。一体、現在地はどこなのだ。だが、焦るな。変な焦りは事故につながる。
ようやくこの右岸尾根を北に回り込むポイントをつかんだ。ようやく二段目の棚に通じる凹地に飛び出したようだ。ここでようやく休憩らしい休憩を取る。
座っていた岩から立ち上がったところ、岩陰から何やら黒いものがちょろりと動いた。そいつは小さな岩穴から顔を出したり引っ込めたりしながら、こちらの様子を窺っている。
こいつはモグラか?いや、違う、これが噂に聞くヒミズか。高山に棲息する日本固有種の小動物だ。これは珍しい。
立ち去りがたい気持ちを抑えて先を急ぐ。1時間弱のタイムロスが惜しい。山頂に到達するのは難しいかもしれない。だが、後悔を残さないよう、やるだけやってみよう。
凹地が山肌に飲み込まれると二段目の棚に到達した。樹相は変わらず植林だが、ここにも大きな切り株がある。微妙な起伏に悩むうち、現在地を失いそうになる。これ以上、棚をさまよい歩いても、興味深いものもなさそうだ。地理勘を失う前に大棚入山への登路に選んだ尾根に取り付くことにした。
先日来の降雪が古い雪を覆っている。アイゼンをきかせてさえ、表層の堅雪を突き崩してズルっと滑る。こうなると無駄に体力を消耗して苦しい。何とか尾根に登り詰めた。モミやシラビソ、ツガと言った樹相の中、先を急ぐ。針葉樹の幼木が不安要素だったが、やがて下生えが気にならなくなった。
雪の尾根はヤブを被ることもなく、それなりに歩けた。露岩のやせ尾根があって先行きが危ぶまれたが、それはワンポイントのみ。二重に三重に稜線が交雑する場面はあるが、おおむね順調に高度を稼いでいく。しかし、急登を交えたり、雪をなだめたりすかしたりで、捗らないし、すっきり感もない。樹間の青空と中央アルプスに励まされて無心に登る。
やがてゴジラの背の巨岩が林立する尾根になった。それを避けて尾根下を辿ると樹林の中、再び傾斜が強まる。雪が深くて一歩一歩が重い重い。気合いを入れ直す。そしてどうにか水沢山との分岐点に立った。
安堵する間もない。ここから2320峰までは地図上の距離以上に遠いだろう。足元が深すぎて遅々として進まない。時間との戦いになる。急斜面に腰まで胸まで埋まって、無様にもがく。灌木をつかんでかきあがる。
試しにスノーシューに履き替えてみるが急登に歯がたたない。再びアイゼンとピッケルに持ち替えたりするので、時間もかかるはずだよ。
地獄の責め苦に耐えながら、高所を求めて2320峰に立つ。待望の、抜けるような青空。そして大展望を掌中にした。白山、御岳、乗鞍、北アルプス、北信の山々。中央アルプスの主峰群も手に取るよう。先週登った仏谷や坊主岳があんなに小さい。経ヶ岳も眼下に見えるよ。
だが、まだ安心は出来ない。ここからが本当の勝負所だ。一旦、鞍部に降りてピークを狙う。雪庇が侮れない。北面がすぽんと切れ落ちているから、滑落したら後がない。
危険を避けてヤブに逃げれば、ザックをヤブに絡め取られる。おまけに逃げた分、稜線から大きく離されるので痛し痒しだ。やむなく稜線通しに登るが、宙に浮くような露出感があって爽快というか恐いというか。ミスが許されない場面だ。新雪の下の堅い雪を意識しながらスリップしないよう慎重に登っていく。
そして、もうこれ以上高い場所がなくなった。ここが大棚入山の山頂なのだ!雪深い頂が蒼穹のもとにあった。すべての山々が祝福してくれている。中央アルプスの一つ一つの峰々を数えてみる。右端が麦草岳、玉ノ窪沢の源頭カールの奥が木曽前岳、主峰の木曽駒ヶ岳。細尾沢が純白の雪渓を伴って這い上がっているのがよく見える。茶臼山・将棋頭山の稜線の奥は伊那前岳だろうか。
腕時計と相談する。立ち去りがたい気分を押さえて下山せねば。登りは何とかなった斜面がジャンプ台になって迫り、緊張を強いられる。どうにか2320峰から水沢岳分岐へ。雪が深くて重くて体力を奪い取られる。ラッセル必至なので、自転車をデポしておいた水沢山へのルートは早々に捨てた。往路を戻ろう。
ひたすら忠実に尾根を下山していく。最後は往路と離れて最短で尾根を通す。ただ、この選択もそれほど楽ではない。まずは笹ヤブが出てきた。いきなり岩頭に立ったりもする。おまけにルート判断が微妙になってくる。
凍てついた斜面をアイゼンをきかせて下るが、笹ヤブに足を取られまくって酔っぱらい歩き。だが、ガチンコに凍りついた急傾斜でアイゼンを手放すのは、あまりに無謀だった。
そしてようやく往路に合流。二つのゲートをくぐり抜ける。濃ヶ池橋からは林道をぽこぽこ歩く。そして、足取り怪しく愛車へと帰還した。ただいま~っ!
ふ~さん