【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

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わりばし
記事: 1774
登録日時: 2011年2月20日(日) 16:55
お住まい: 三重県津市

【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by わりばし »

【日 付】2024年4月28日(日)
【山 域】高見山地
【コース】舟戸8:05---9:10高見峠---10:20杉谷---12:10舟戸

https://maps.gsi.go.jp/#16/34.423532/13 ... z0r0s0m0f1
【メンバー】単独

 南北朝時代に南伊勢と吉野を結ぶ道として使われ、江戸時代には紀州領であった紀州と勢州3領(松阪、白子、田丸)を結ぶ紀州藩の藩道として整備された。和歌山街道は紀州徳川家の参勤交代の道として暴れん坊将軍吉宗も通っている。本居宣長は和歌山城に講義の為招聘され3度松阪から出向いている。また、伊勢神宮のみならず熊野詣、吉野・大峰山参りの信仰の道でもあった。

腰折れ地蔵
腰折れ地蔵

 街道が櫛田川を離れ高見峠に向かう落方の分岐には地蔵がありその下が道標になっている。土に埋もれかけた石の上部に「右こうや左いせ」の文字の一部が見える。舟戸への道を進むと伐採地に看板があり、松浦武四郎(北海道の名付け親)が泊まった長野屋跡と書かれている。「人気の素朴なるを感じぬ」と日記に記された言葉がそえられてあった。伊勢側の玄関口舟戸には以前は4件の旅籠があったようだが、今は静かな谷あいの集落だ。公民館の前には注連縄がつけられた祠がありその前には竹でシキミを進ぜる花立が組まれている。猿田彦さんと呼ばれている石像で、舟戸の人にとってここは特別な存在のようだ。隣の墓地には舟形の板状の板五輪と言われる五輪塔が並んでいる。小さな五輪塔を左右に置いた祠には双体地蔵が納められおり、「志州鳥羽領坂手邑 佐次良」と刻まれた行き倒れ供養の墓石もある。ここには、高見越をした人々の痕跡がしっかりと残っている。最後の民家の手前に素朴な味わいの地蔵と板五輪、前傾した腰折れ地蔵がある。どれもが市井の人々の息づかいを感じさせてくれる。

舟戸の猿田彦さん
舟戸の猿田彦さん

 最後の民家の手前でUターンしていると、住んでいる方が出てきたので、駐車の許可を得る。快く貸してくださりありがたかった。舟戸は見るべきもの満載の集落だが、駐車場に困る。集落内では、公民館とここぐらいだ。

双体地蔵の祠
双体地蔵の祠

 橋を渡ると、蘇我入鹿の首塚と言われている大きな五輪塔があり、鎌倉時代の物のようだ。この先には入鹿の妻と娘が首塚を祀るために住んでいたとされる能化庵という寺院跡がある。真意はさて置き、高見越にまつわる何らかの物語があったのだろう。この奥には両部曼荼羅と言われる高さ2.2m幅2.3mの自然石に中央に南無阿弥陀仏、上部に日輪・月輪が刻まれた石碑がある。ここからの峠道は九十九折の溝道や石積みなど昔の形をよく残している。途中に大二木茶屋跡があり「伊勢の高見山は高いようで低い 低い大二木の餅は高い」と歌いはやされたそうで、値段が高かったのか。石で囲まれた石柱があるので見ると水準点と書かれており、地図にある641.3の場所になる。林道を越えると道は植林のキャタピラ道に変わり難なく上って行く。大ブナを過ぎ通行止めになっている旧道を上がると駐車場が満車の高見峠(大峠)に着いた。

蘇我入鹿の首塚
蘇我入鹿の首塚

 静寂の世界から現実に引き戻された感じで戸惑ってしまう。車道から少し上がった所に大乗蓮経の石書を収蔵する最勝塔と八百万の神を祀る山の神がある。小峠に続く破線道はここから続き、南無阿弥陀仏の石碑などが道沿いに立っている。破線道を歩く人はおらず再び静寂が戻った。高低差を感じさせない水平道は谷をゆるやかに巻きながら美しくつながっている。石積みで補強された谷を過ぎると盗人岩で山賊が隠れていた大岩が点在する。すぐに小峠で地蔵と南無阿弥陀仏の石碑がある。

石畳道
石畳道

 小峠より杉谷に向かって下っていくと江戸時代の石畳道が出てくる。九十九折になったあたりは雲母曲(きららひじ)と名付けられていた。溝道が尾根を走り、尾根が広がった場所は古市という場所で、紀州、伊勢、大和の人々が集まり米、塩、魚の市が立ったようだ。撞木松(しゅうもくまつ)とういう朽ちかけた松を過ぎると沢の水音が近づいてきて。杉谷集落はすぐそこだ。杉谷を見下ろす峠には山の神が祀られており、七つ道具(農機具の模型:鋤・鍬・鎌・鋸・鉈・馬鍬・唐鋤)と魚が吊り下げてあった。山の神神事で使われたようだ。山の神とは別に祠があり地蔵と庚申が祀られていた。祠には辻善右衛門の寄進とあり、奈良県側の山林の地主だ。奈良県側の高見山の山の神神事は、ここでおこなっているようだ。杉谷の登山口には「右こうや 左いせ」と刻まれた道標が立っていた。

杉谷の山の神
杉谷の山の神

 ここから舟戸まで自転車で戻ろうかと最初考えたが、車道だとかなりの遠回りになるのとヘアピンの急登を自転車で上る気になれず。来た峠路をここから戻ることにした。高見越の峠路は昔の道がたくさん残っており貴重な場所だ。中でも舟戸にあるいくあまたの歴史遺産は高見越を歩いてきた人々の残像を映し出している。
グー(伊勢山上住人)
記事: 2235
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:10
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Re: 【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by グー(伊勢山上住人) »

わりばしさん、おはよう。
相変わらず峠道の探索を続けていますね。
今回はまあ気のある人なら歩く道ですけど。

しかし、道端にこんなに記述する物・事があるとは!
グーの目に留まるのはせいぜい2つか3つなのに。

来た峠路をここから戻ることにした。

なんとまあ!登って下って、登って下って。
参勤交代を日帰りでしてるようなもんですね。

         グー(伊勢山上住人)
シュークリーム
記事: 2073
登録日時: 2012年2月26日(日) 17:35
お住まい: 三重県津市

Re: 【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by シュークリーム »

わりばしさん,おはようございます。
和歌山街道の続編ですね。私も和歌山街道を歩く予定なので,興味深く拝見しました。

グーさんも書いてたけど,一旦登って下った道をまた登り返すのはわりばしさんらしいですね。私だったらなんとか登り返しを回避することを考えてしまうでしょうね。

ということで,私も近いうちにこの辺りを徘徊する予定でいます。私の場合は,公共交通機関を利用して峠を向こう側に抜けることを考えています。
わりばしさんの次のターゲットはどこなか?
                         @シュークリーム@
むらまさ
記事: 11
登録日時: 2023年4月25日(火) 16:32
お住まい: 三重県津市

Re: 【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by むらまさ »

わりばしさん、こんにちは。

とても歩いてみたいです!
参考にさせて頂きます!

最近、蘇我入鹿の首塚の事を何かで見たような?
メモしないと駄目ですね!
むらまさ
歴史や物語の有る山が好きです!
アバター
わりばし
記事: 1774
登録日時: 2011年2月20日(日) 16:55
お住まい: 三重県津市

Re: 【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by わりばし »

おはようございます、グーさん。

相変わらず峠道の探索を続けていますね。
今回はまあ気のある人なら歩く道ですけど。


そうでもないようです。
人に会うのは杉谷から小峠の間だけですね。
高見山に直接向かうルート以外では人に会いませんでした。


しかし、道端にこんなに記述する物・事があるとは!
グーの目に留まるのはせいぜい2つか3つなのに。


いい所ですよ。
特に舟戸は宝の山です。


板五輪
板五輪

来た峠路をここから戻ることにした。

なんとまあ!登って下って、登って下って。
参勤交代を日帰りでしてるようなもんですね。


絶対、山越えの方が楽ですって。
山を下りてから目もくらむヘアピンと長い高見トンネルを
自転車で越えることを思えば・・
:mrgreen:

      
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わりばし
記事: 1774
登録日時: 2011年2月20日(日) 16:55
お住まい: 三重県津市

Re: 【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by わりばし »

おはようございます、シュークリームさん。

和歌山街道の続編ですね。私も和歌山街道を歩く予定なので,興味深く拝見しました。

北畠氏にとってはポイントとなる高見越ですので、上っておかないとと思って出かけました。

双体地蔵
双体地蔵

グーさんも書いてたけど,一旦登って下った道をまた登り返すのはわりばしさんらしいですね。私だったらなんとか登り返しを回避することを考えてしまうでしょうね。

とはいうものの県境をまたいでいるので、公共交通機関というのも難しそうです。
バスで杉谷に来ても、舟戸からが遠いです。


ということで,私も近いうちにこの辺りを徘徊する予定でいます。私の場合は,公共交通機関を利用して峠を向こう側に抜けることを考えています。
わりばしさんの次のターゲットはどこなか?


おっ、公共交通機関でのチャレンジですね。
楽しみにしています。
ターゲットは決まっていますが、今日は元越谷です。 :mrgreen:

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わりばし
記事: 1774
登録日時: 2011年2月20日(日) 16:55
お住まい: 三重県津市

Re: 【高見山地】いくあまたの人が歩いた高見越

投稿記事 by わりばし »

おはようございます、むらまささん。

とても歩いてみたいです!
参考にさせて頂きます!

熊野古道は人でいっぱいですが・・
和歌山街道は静かなもんです。
歴史遺産を地元の人たちが祀って維持してくれています。


落方の地蔵(左いせの文字が土に埋もれています)
落方の地蔵(左いせの文字が土に埋もれています)

最近、蘇我入鹿の首塚の事を何かで見たような?

大化の改新ってかと最初は思っていましたが・・
鎌倉時代と歴史が古いので何かいわれがあるのでしょう。
山を越えた美杉には鎌倉時代の梵字が刻まれた種子碑などの大きな石碑もたくさんあるので
舟戸にあっても違和感はありません。
オフ会でお会いしましょう。
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