【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

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sato
記事: 422
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

投稿記事 by sato »

【日 付】  2023年6月16日
【山 域】  湖西 朽木の山
【天 候】  曇り時折雨のち晴れ
【メンバー】 Mちゃん T君 sato


待ち合わせの10時45分にギリギリ間に合うか。仕事を早引きし、大急ぎで朽木へと向かう。
これから、巨木と水源の郷をまもる会のメンバーMちゃんとT君と3人で、とある谷の保全巨木
(滋賀県と所有者の間で保全に向けた協定書が交わされた胸高周囲3m以上の巨木)の巡視を行うことになっている。

Mちゃんは、会の初代会長、旧朽木いきものふれあいの里館長青木先生の元で働いていて、
現在は、苗木生産のお仕事をされながら、森で拾った木々の種を育て森に還す、タネカラプロジェクトという、
森の未来、わたしたちの未来に向けた活動を立ち上げている。T君は、朽木育ちの京都の大学で森林科学を学ぶ学生。
すべてが中途半端で、いい加減人間のわたしは、純粋な志を持つ若いおふたりに感服させられっぱなしだ。
おふたりと同じ年頃だったら、駄目なわたし、と落ち込んだり、焦ったりもしただろうが、
年齢を重ね、気がつけば妥協と諦めの感情に慣れ親しんでいて、あんまりまっすぐ一生懸命になり過ぎないでね、
と勝手な心配までしてしまう。

おふたりが待っている集合場所に着き、空を見上げると、晴れの予報なのに一面鉛色。
でも、三人共、源流の森を歩けるよろこびに満ち溢れている。
「なんだか、雨が降りそう」と笑い合いながらリュックを背負っていた。
川を渡って入った植林地帯は、今日の巡視保全木の所有者さんの土地。一本一本のスギに、荷造りテープやビニールの包装紙、
古着やお布団まで巻かれている。巻かれたスギは窮屈そうで、景観もよくないが、クマはぎから木々を守る所有者さんの思いが、
ひしひしと伝わってくる。

巡視する谷は、雨後でも水量は少なく穏やかで、岸辺も穏やか。長靴を履いてきているが、登山靴でも登れる谷だ。
岩盤が発達していて、その上をさらさらと流れていく水はやさしく「いいなぁ」と三人で呟いている。
植林から自然林に移ると、鮮やかな緑色の世界へ。「わぁ、きれい」と歓声をあげ、こころ躍らせながら緑滴る森の中を登って行く。

一本目の巡視木は、サワグルミ。幹にはシダ類が着生し、ツルアジサイが絡みついていた。
そして、木のたもとには、ちいさな白い腐生植物がニョキニョキと群生していた。初めて見る植物だ。
顔を近づけて観察すると、先端に花を咲かせている。何とも不思議で面白い形の植物。
森の生き物に詳しいT君も、何だろう、と首を傾げている。

二本目の巡視木はトチ。地図に記したマークを確認しながら、草付きの斜面を登って行くと、
緑の海の中におおきな白い幹が浮き上がっていた。巡視木のトチだった。横に伸びた枝には葉を茂らせているが、上部が枯れている。
このトチが保全木に認定されたのが2016年。7年の歳月の間に外的要因で枯れてしまったのか。この木の寿命が迫ってきているのか。
何百年も前、どこかに佇むトチの木が成らした実が、地面に落ち、ここで芽吹いて育ち、何百年の歳月を経て巨木となり、
次の世代へと、いのちを引き継ごうとしている。ガサガサした白い幹を仰ぎ見ながら、このトチの見てきた風景を想う。

谷の源頭に、どっしりと立つ三本目の巡視木のトチは、山側に、舟のような形に根を張り出していた。
舟の中には、いろいろな形の葉っぱの植物が気持ちよさげに並び、森羅万像を描いている。
ここにも、サワグルミのたもとで見た白い植物が生えていた。あたりには生理落下したちいさな黄緑色の実がポロポロと散らばっている。
少し前、あちこちのお山で、紅が入った白い金平糖のような花をうっとりと愛でていたのに。季節は、あっという間に移ろいでいる。

尾根に乗ると、白い煌めきが出迎えてくれた。盛夏前のひと時、緑のお山は淡い雪で飾られる。
白く儚い花の雪に。黄色いおしべが気品さを際立たせるまっ白なお花は、ひとまわりおおきいのがハクウンボク、
ちいさい方がエゴと、T君が教えてくれる。星の砂のような儚い花はソヨゴ。米粒のような形の花はネジキ。
木からはらりと離れ落ちた花は、咲いている時よりも、より光を放ち、こころに訴えてくる。

時折、雨が降ってくるが、木々の葉が雨粒を受け止めてくれて、雨具を着ずに歩ける。
雨もまたよろし。水を含んだ緑の木々は、鮮やかさを増し、なんてきれいなの、と見入ってしまう。

尾根上には、こんもりと緑の葉が生い茂っているところがぽつぽつと見られ、またまた、T君から、タヌキの溜糞場だと教わる。
福本繁さんの『芦生原生林を歩きつくす』に、シカは、タヌキの溜糞場の植物を食べないので、溜糞場には草木が固まって育っている、
というようなことが書かれていたのを思い出す。

県境稜線に出て、楽しみにしていたヤマグルマの保全巨木へと向かう。
おふたりは、一昨年、所有者さんと訪れているが、わたしは初めて。歩きながら、Mちゃんが「とにかくすごい木」と楽し気に繰り返す。

その、とにかくすごいヤマグルマは、稜線から真下に見下ろす急斜面に、ほんとうにすごい形相でそびえ立っていた。
ずっしりと大地を押さえ込む暗褐色の苔むしたうねりのある幹に、愁いを帯びたような黒ずんだ葉を茂らせた太い枝。
その枝は、何か得体のしれないものに引き寄せられていくように、あるいは、こころの内に隠された様々な感情を吐き出しているかのように、
横に横に、長く長く、メラメラとした線を描きながら伸びている。木を見ながら、人間の情念を見ているような気分になる。
ヤマグルマは、被子植物なのに導管を持たず、急斜面や岩場を好む、ちょっと変わり者という印象で、不思議な魅力を感じる木だ。
他の木への着生も得意のようだ。増永廸男さんの本でも、ヒノキの巨木に着生したヤマグルマの木がいくつか登場している。

すごい木を見た、というよろこびに浸りながら、県境稜線上から訪れる、もう一本の巡視木に向かう。
巡視木はトチで、鞍部から急斜面を数十メートル下り、ちいさな谷地形の始まりに立っていた。
斜面を這う太い根に圧倒される。芽吹いた地で一生を送る木々。水分のある土壌を好み、谷間に多く自生するトチは、
えっ?と思うような急傾斜でも、この力強い根を這わせる力があるから、生き続けてきたのだ。

前回おふたりは、所有者さんの後に続いて、ここから下って行ったという。
地形図を見ると、ひたすらズルズルの斜面のような感じがしたので、稜線に登り返し、
少し進んだ小ピークから延びる尾根を下ることにしていただく。

下りの尾根は明るい雑木林で、ヤブもほとんど気にならず歩きやすかった。
どこかで見た木だと思ってT君に聞くと、カナクギノキだった。そうだった。湯の花谷左岸尾根でT君に教えてもらった幹が印象的な木。
こんもり葉を茂らすクネクネとした木を目が捉えた。何の木かと思ったらアセビ。鈴鹿の入道ケ岳のアセビもおおきいけれど、
この木はもっともっとおおきい。「すごーい。どうしちゃったの?」とMちゃんと声を上げる。
木を見ていると、ほんとうに面白く、不思議で、すごいなぁ、と感じ入る。
同じところで芽吹いてしまい、お互い譲らず、くねくね、かくかく曲がりながら伸びてる木々には、感動を覚える。

「すごいねぇ」と繰り返しながら、てくてくと下って行くと、先頭を行くT君がピタリと止まった。
なんと目の前のスギの、目の高さにモモンガがしがみついていた。モモンガもピタリと止まって動かない。
おおきな目は、瞬きひとつしない。幹の割れ目に巣があるようだ。中には、子供がいるのだろうか。
暫く、みんな動けなくなっていたが、ふっと、思い立ったように、モモンガは、割れ目の中に駆けて行った。

尾根は、ユズリハが目立ち始め、ユズリハの森になった。背丈を超えるどころか立派な木。
ユズリハのヤブには、よく出会うけれど、このような森は、気が付かなかったのかもしれないが、初めてかもしれない。
アセビといいユズリハといい、何故、こんなにおおきくなったのだろう。

本日最後の巡視木は、降り立った谷沿いのサワグルミ。この木のたもとにも、あの白い腐生植物が並んでいた。
今日、初めて見た植物にこんなにも出会うとは。

巡視という目的で入ったお山は、不思議の森だった。いや、お山は、不思議の森なのだ。
ちいさないろいろな種があんなにおおきくなって、森を作って、そこには、たくさんのいのちが存在する。
わたしたちのいのちの源の水も生まれる。
Mちゃん、T君と歩いて、出会うことが出来た風景、感じることが出来た風景。
源流の森への思いを共にする素敵な仲間と、掬い上げた輝きを胸に帰路に就く。

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*腐生植物と思った白い植物は、キヨスミウツボという寄生植物なのでは、とT君が調べてくれました。
アジサイ科植物などの根に寄生する植物で、滋賀県では希少種に指定されているとのことです。

*巨木と水源の郷をまもる会とは・・・
むかしむかしから、安曇川流域のお山には、人びとの暮らしを支える豊かな森が広がっていましたが、
昭和30年代から始まったパルプ材の伐採と、その後の植林政策で、山林の風景は様変わりに。
でも、その中で、トチノキとトチノキ林は、地理的、地形的厳しさと、長い歴史の中で、
人びとの命を支えてきた木として大切に保全されてきました。
ところが、2007年ごろから、高級材としてトチの巨樹の人気が出て、2010年には、朽木村だけで、
なんと約60本のトチが伐採されていたのです。伐採の背景は複雑です。それは、日本中の山村が抱える問題でもあります。
巨木の伐採による自然環境への影響、森と関わってきた暮らしの崩壊という危機感を前に、地元住民が中心となって2010年、
源流の森の保全活動と源流の郷に暮らす人々の暮らしや文化の保全を目指し「巨木と水源の郷をまもる会」は設立されました。
会の活動や、トチノキのお話は、青木先生が『トチノキは残った』(サンライズ出版)にお書きになっていらっしゃいます。

*Mちゃん、清水美里さんが立ち上げた「タネカラプロジェクト」です。https://tanekarap.jimdosite.com/
是非、ご覧ください。

sato
tsubo
記事: 193
登録日時: 2023年3月07日(火) 13:27
お住まい: 和歌山県

Re: 【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

投稿記事 by tsubo »

satoさま

これを読んですぐに思い浮かんだのが、和歌山県田辺市で活動している「いちいがしの会」です。https://ichiigasi.exblog.jp/13073650/
今年の早春にメンバーの方たちがいらしてこちらでも苗の植樹を行いました。

熊野の森は今は人工林に覆われて魅力の少ない森になってしまいました。
最近の大規模な土砂崩れはその結果だと思います。
それでも、そんな人工林の中の熊野古道を歩く人は豊かな自然だと感動しています。
元々が照葉樹林の森だったから1年中青々とした森であることには変わらないのかも知れませんが。
たまに照葉樹林が残る山を歩くと、人工林の山を歩くのとは違った心の安らぎを感じます。

朽木の森にはまだまだ巨木がたくさん残っているんですね。
数時間歩いただけでこんなに豊富な巨木に出会えるなんて。
豊かな森が広がっているんですね。
それも若い人が中心になって活動しているようですね。
いちいがしの会は年配の方が多いです。
今後の活動がどうなっていくのだろうかと思います。

山を歩いていると巨木、変わった形の木に目が留まります。
巨木にはどんな人生を歩んできたのか、どんな景色を、どんな人たちを見てきたのだろうかと思います。
きっといちいち覚えていないでしょうが。
2本、3本の木が絡み合った木もよくありますね。本人たちはもっと広々とした場所で伸び伸びと育ちたかったのでしょうね。
与えられた環境の中で精いっぱい生きている木には感動します。

若い人との森歩き、新鮮な刺激をもらえたのではないでしょうか。それも木に詳しいお二人、若い方から学ぶのは楽しいですね。
それでいてちゃんとsatoさんは歩きやすい尾根を見つけて下っていく。
さすがです!(笑)
アバター
山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、こんばんは。

Mちゃんは、会の初代会長、旧朽木いきものふれあいの里館長青木先生の元で働いていて、
現在は、苗木生産のお仕事をされながら、森で拾った木々の種を育て森に還す、タネカラプロジェクトという、森の未来、わたしたちの未来に向けた活動を立ち上げている。T君は、朽木育ちの京都の大学で森林科学を学ぶ学生。
すべてが中途半端で、いい加減人間のわたしは、純粋な志を持つ若いおふたりに感服させられっぱなしだ。


そんなに自分を卑下しなくてもいいんじゃないですか。
しかし目的を持って情熱的に行動する若者はたくましいですね。
自分の若い頃を振り返ると、怠惰な日常に埋没してたなあと反省・・・しませんけど。 :mrgreen:

おふたりが待っている集合場所に着き、空を見上げると、晴れの予報なのに一面鉛色。
でも、三人共、源流の森を歩けるよろこびに満ち溢れている。
「なんだか、雨が降りそう」と笑い合いながらリュックを背負っていた。


一人だと気持ちまでどんよりしてしまいそうだけど、こういう仲間と一緒なら気分が上がりますね。

巡視する谷は、雨後でも水量は少なく穏やかで、岸辺も穏やか。長靴を履いてきているが、登山靴でも登れる谷だ。
岩盤が発達していて、その上をさらさらと流れていく水はやさしく「いいなぁ」と三人で呟いている。
植林から自然林に移ると、鮮やかな緑色の世界へ。「わぁ、きれい」と歓声をあげ、こころ躍らせながら緑滴る森の中を登って行く。


なんか私好みの雰囲気みたい。

このトチが保全木に認定されたのが2016年。7年の歳月の間に外的要因で枯れてしまったのか。この木の寿命が迫ってきているのか。
何百年も前、どこかに佇むトチの木が成らした実が、地面に落ち、ここで芽吹いて育ち、何百年の歳月を経て巨木となり、
次の世代へと、いのちを引き継ごうとしている。ガサガサした白い幹を仰ぎ見ながら、このトチの見てきた風景を想う。

切らずに守ったとしてもいつかは朽ちて行く命。森が健在ならまた新しい命へとバトンタッチして行きます。

尾根に乗ると、白い煌めきが出迎えてくれた。盛夏前のひと時、緑のお山は淡い雪で飾られる。
白く儚い花の雪に。黄色いおしべが気品さを際立たせるまっ白なお花は、ひとまわりおおきいのがハクウンボク、ちいさい方がエゴと、T君が教えてくれる。星の砂のような儚い花はソヨゴ。米粒のような形の花はネジキ。
木からはらりと離れ落ちた花は、咲いている時よりも、より光を放ち、こころに訴えてくる。


エゴノキとハクウンボクの花はよく似てますね。
咲いている花を見上げるよりも、落ちて地面に散り敷かれた花の方がはかない美しさを感じますね。

時折、雨が降ってくるが、木々の葉が雨粒を受け止めてくれて、雨具を着ずに歩ける。
雨もまたよろし。水を含んだ緑の木々は、鮮やかさを増し、なんてきれいなの、と見入ってしまう。


こういう森歩きは快晴よりも霧雨や小雨の方か似合います。土砂降りはご勘弁だけど。 :lol:

尾根上には、こんもりと緑の葉が生い茂っているところがぽつぽつと見られ、またまた、T君から、タヌキの溜糞場だと教わる。
福本繁さんの『芦生原生林を歩きつくす』に、シカは、タヌキの溜糞場の植物を食べないので、溜糞場には草木が固まって育っている、
というようなことが書かれていたのを思い出す。


なるほど、勉強になります。

その、とにかくすごいヤマグルマは、稜線から真下に見下ろす急斜面に、ほんとうにすごい形相でそびえ立っていた。
ずっしりと大地を押さえ込む暗褐色の苔むしたうねりのある幹に、愁いを帯びたような黒ずんだ葉を茂らせた太い枝。

画像の木ですね。だいたい見てもヤマグルマだとはわからないだろうけど、姿が心に突き刺さるような木ですね。

他の木への着生も得意のようだ。増永廸男さんの本でも、ヒノキの巨木に着生したヤマグルマの木がいくつか登場している。

そうなの?増永フリークとしてはお恥ずかしい限り。

斜面を這う太い根に圧倒される。芽吹いた地で一生を送る木々。水分のある土壌を好み、谷間に多く自生するトチは、えっ?と思うような急傾斜でも、この力強い根を這わせる力があるから、生き続けてきたのだ。

satoさんとも随分たくさんのトチを見てきました。急斜面に立つトチはどこまで伸ばすんだと思うぐらい、長い長い根を張り巡らせてましたね。

下りの尾根は明るい雑木林で、ヤブもほとんど気にならず歩きやすかった。
どこかで見た木だと思ってT君に聞くと、カナクギノキだった。そうだった。湯の花谷左岸尾根でT君に教えてもらった幹が印象的な木。


T君はホントによく知ってますね。

なんと目の前のスギの、目の高さにモモンガがしがみついていた。モモンガもピタリと止まって動かない。
おおきな目は、瞬きひとつしない。幹の割れ目に巣があるようだ。中には、子供がいるのだろうか。
暫く、みんな動けなくなっていたが、ふっと、思い立ったように、モモンガは、割れ目の中に駆けて行った。

仕上げはモモンガとの出会いでしたか。一度会ってみたいなあ。ヤマネには好かれたけど。 :D

巡視という目的で入ったお山は、不思議の森だった。いや、お山は、不思議の森なのだ。
ちいさないろいろな種があんなにおおきくなって、森を作って、そこには、たくさんのいのちが存在する。
わたしたちのいのちの源の水も生まれる。
Mちゃん、T君と歩いて、出会うことが出来た風景、感じることが出来た風景。
源流の森への思いを共にする素敵な仲間と、掬い上げた輝きを胸に帰路に就く。


いい一日でしたね。自然林の森はまさにワンダーランド。五感を研ぎ澄ませて歩けば、予想もしなかったものとの出会いもあるんでしょう。
私みたいに五感が鈍ってくると、見えるものも見えなくなりますが。 :mrgreen:

ところが、2007年ごろから、高級材としてトチの巨樹の人気が出て、2010年には、朽木村だけで、
なんと約60本のトチが伐採されていたのです。伐採の背景は複雑です。それは、日本中の山村が抱える問題でもあります。


事情は全然違うけど、美浜耳川の源流では風力発電のためにブナの巨木が切り倒されています。
それも地元の意思として。とても複雑で難しい問題です。

                山日和
sato
記事: 422
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

投稿記事 by sato »

tsuboさま

こんばんは。
ジメジメと暑い一日でしたね。
「いちいがしの会」のホームぺージを読ませていただきました。
熊野の森といえば、深い照葉樹の森を思い描きますが、その森も、昭和30年以降、朽木の森と同じように、
スギ、ヒノキの植林へと変わっていったのですね。

tsuboさんのおっしゃるように、スギやヒノキの根は浅く、植林の山の斜面は、大雨の後、土砂崩れが起こる可能性が高くなりますね。
植林の谷の倒木の多さに目を見張ることも度々。以前のうつくしい谷を想像し、かなしくなります。
孫の代には豊かになる、と信じて植えた方々が、今の状況をご覧になったら、とせつなくなります。

朽木のトチの巨木は、植林の中にもぽつぽつと見られます。
デンプンを多く含み、乾燥させた状態で10年以上保存できるトチの実は、長い長い歴史の中で、貴重な救荒食だったため、
伐採されず、大切に守られてきたのですね。

植林から自然林に入ると、わぁ、きれい、と書きましたが、健全な森というと、そうとは言えないです。
シカの食害により後継樹がなかなか育たない状況になっています。
Mちゃんは、この状況に強い危機感を抱き、おひとりで行動を始めました。ほんとうに頭が下がります。

いちがしの会は、年配の方が多いのですね。設立は1997年。26年前なのですね。会員の皆様もそれだけ年を取られたということですね。
そして、こういう活動は、働き盛りの方は忙しくてなかなか参加できない。
巨木の会も同じです。設立が2010年。私が入ったのが2012年。
巨木の巡視は、三人以上で実施という決まりなのですが、登山道のない谷ゆえ、歩けるメンバーが減ってきています。
今回は、Mちゃんは仕事を休んで、T君は京都から来てくれて、実施することが出来ました。

人それぞれ違うように、山の木も、一本一本それぞれの表情を持った木。同じトチやブナでも、ひとつとして同じものはないのですね。
2、3本の木の絡み合った姿は、こころを打つものがありますよね。同じところで芽吹き、でも、与えられた環境で精一杯生きているのですね。
しっかりした考えを持ち、向学心豊かなMちゃん、T君とご一緒していると、なんだか一番幼いような気持ちになっていたり、
冒頭に書いたような気持ちになったり。
おふたりからは学ぶ一方です。有難く、素敵な存在です。

tsuboさんの、最後のお言葉に、そうかぁ、よかった、と思いました(笑)。私も、この日、お役に立てたかな(笑)。
コメントありがとうございました。

sato
sato
記事: 422
登録日時: 2019年2月13日(水) 12:55

Re: 【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

投稿記事 by sato »

山日和さま

こんにちは。
コメントありがとうございます。
Mちゃん、T君、ほんとうにたくましいというか、私たちの未来に夢と希望を与えてくれます。
行動するのは大切といいますが、自ら活動を起こすのは、信念がないとできません。
おふたりは、ほんとうにすごいなぁ、と思います。
私は、若いころは、中途半端に尖がっていました(笑)何とかしなくては、ではなく、許せないことがたくさんありました。

歩き始める前から、本降りの雨だと、うーん、という感じですが、
6月の里山は、曇天や霧雨の方が、より緑のうつくしさを感じますね。木々の白いお花や、コアジサイも。

朽木の巡視の谷は、どこもちいさく水量も少なく、登山靴で歩けます。
あっという間に水が切れてしまう谷が多いのですが、どの谷も味わい深いです。
まわりが植林でも、なんて清冽な流れなのだろう、と感じます。
倒木で荒れてきているのが、かなしいです。

そうですね。いのちあるものは、いつか死にゆく。でも、いのちは引き継がれていく。
寿命を全うして倒れた木は、微生物や菌によってゆっくりと土に還っていき、新たないのちの栄養分となる。
新しい命へとバトンタッチして行くのですね。自然の摂理。
人間は、どうなのだろう。ひとのこころ中には、大切な人だったり、感動した作品だったり、生き続けるいのちが存在する。
森を歩くと、そんなことに気づかされます。

エゴとハクウンボクのお花は似ていますよね。葉っぱは似ていないのですが。
きれいなお花でもいいのですが、そのお花を見て名前をつぶやくと、そのお花は、わたしが出会った、わたしが見つめたお花、
そのお花に出会った山旅として、感覚感情と共に、より、深くこころに入っていきます。

「かいせいよりきりこさめ」ですね。何だかすごい変換になっていますね。一瞬、大菩薩峠??と思いました(笑)
そう、こういう森は、快晴より霧雨が似合うなぁ、と感じ入りながら歩いていました。

『芦生原生林を歩きつくす』を読み、芦生原生林のうつりかわりと現状、様々な問題を切実に感じました。
著者の福本繁さんは、20年間にわたり芦生に通い、調査や保全を続けられてきた市民科学者。
長年、森を継続して歩かれ、タヌキの溜糞場にある植物をシカが食べないことにお気づきになられたそうです。

ヤマグルマは、目を見張るような様相の木が多いです。先週も、絶壁にへばりつくヤマグルマを仰ぎ見ましたね。
ヒノキに着生するヤマグルマは一緒に見たはずですが・・・。伊勢峠から、ヒノキの巨樹に出会いに出かけた時、
最大の巨樹の前で、「増永さんがおっしゃっていたヤマグルマですね」とお話しましたよね?

山日和さんと、沢山旅をご一緒する中で、谷の中で人知れず静かに光を放つ何本ものトチに出会うことが出来ました。
芽吹いたところが一生の地。栗のような実が、大地に根を張り、風雪に耐え、あんなにも大きな姿に。
一本一本の木、何百年も生きてきた歴史を物語っていましたね。

モモンガ、かわいかったです。こんなに至近距離で出会えるなんて。
山日和さんの、金草岳でのヤマネとの出会いは、すごくうらやましいです。
夜行性なのに、まっ昼間に出てきて、山日和さんのパーカーにまで入って来て、どうしちゃったの?
動画まで撮らせてくれたのですよね。見せていただいた動画、また見たくなりました。

自然林の森は、まさにワンダーランド。まさにそうですね。何度も分け入っているお山も発見の連続です。
思いを共にする仲間とご一緒すると、ひとりでは見ることの出来ない風景にも出会えますね。
「見えるものも見えなくなった」山日和さん?光砥山沢山旅の日のことを思い出しました(笑)。

耳川源流の山で起きている、風力発電建設のためのブナの巨木の伐採。
ほんとうに複雑で難しい問題です。かなしいとしか言えない自分がかなしいです。

sato
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山日和
記事: 3585
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【湖西】 MちゃんTくんと、里山の不思議の森に遊ぶ

投稿記事 by 山日和 »

satoさん、こんにちは。

「かいせいよりきりこさめ」ですね。何だかすごい変換になっていますね。一瞬、大菩薩峠??と思いました(笑)
そう、こういう森は、快晴より霧雨が似合うなぁ、と感じ入りながら歩いていました。


なんと、強烈な誤変換でした。まったく気付かず💦
早速訂正しました。 :mrgreen:

                 山日和
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