【台高】ぷしゅ~っ / 三条山(664m)石ヶ山(675m)
Posted: 2023年6月02日(金) 21:28
【日 付】2023年4月28日
【山 域】台高
【メンバー】単独
【ルート】野々口林道~尾放峠~三条山~尾放峠~石ヶ山~尾放峠~野々口林道
<はじめに>
三条山は、池木屋山から迷岳を経て、東に伸びる尾根上にある。ここは櫛田川と宮川の分水嶺だ。小田や田引ではなく、野々口谷に沿う林道を選び、林道づめから山仕事の道を使って、尾放峠を目指そう。
<野々口川登山口~三条山>
野々口川に沿う林道。車を奥に進めると、ヤブがかぶりだした。落石も目立つ。無駄な抵抗と知りながら、石をよけて前進。この時点で、すでに危険な香りがした。
いきなり、急坂の路面に生えたコケにタイヤがスリップ。やばっ!狭い林道を、慎重にバック。
ほっとして、車を置いて尾放峠へ。お地蔵さまに迎えられる。田引越えの脇道として使われてきた道か。自然林になった。大きなモミの木。近くに「宮ノ谷ノ頭」というプレートがかかっている。
局ヶ岳は樹間にあった。修験業山や三峰山は、ちら見程度で、なかなか姿をみせてくれない。
急登の末、山頂に立った。南側に開けた山頂。春の陽光が降り注ぎ、解放感に満ちている。総門山、南又山、浅間山、七洞岳、獅子ヶ岳の山並みが。
<三条山~尾放峠~石ヶ山~尾放峠~破線路>
尾放峠に戻って、石ヶ山へ。やや荒れ気味。あせびのブッシュや防獣柵を嫌って歩く。忠実に尾根をたどり、石ヶ山へ。樹林の中の、落ち着いた山だった。
再び尾放峠に戻る。ここからがハイライト。旧道の点線路を下降する。登路にとった仕事道から離れた瞬間、もう、きな臭い。この道は、すでに終わってる。獣道や仕事道のかけらを拾うが、樹に巻かれたテープは追わない方が良い。
急崖、滝脇、渡渉。慎重を期さないと、崖っぷちに追い込まれる。コース取りには細心の注意を。
左又を合わせるが、ゴールはまだまだ。砂防ダムが見えてからも、さらにひと頑張り。往路に合流して、林道詰めの橋を渡る。普通はこれでエンディングのはず。だが、ヤマから下りてからが、本日最大のヤマ場だった。
<またまたJAFに救助要請>
車に戻って、我が目を疑う。右の後ろタイヤがぺしゃんこだ!タイヤの腹に、どて穴が開いてる。このあたりの石は、板状にはく離して、包丁のように鋭利だ。落石でサイドウォールを、こすったのか。いや、溝のグレーチングの金属板を跳ね上げた?そういえば沢音に紛れて「ぷしゅ~っ」と音がしたような覚えがある。
あるある案件だが、スマホは圏外だった。車を放り出し、電波を求めて歩き出す。急ぎで30分歩いて国道に出た。JAFにコール。名古屋のオペレーターが出た。パンクのこと、現在地、現場の緯度経度を伝える。
30分ほどして、再び連絡が入る。林道の状況を細かに聞かれる。状況からして応急処置はムリらしい。車載のスペアタイヤもない。え?修理できる場所まで車を運ぶの?・・・トホホ。
ところが、この林道じゃ、パンク車を積める2トン車は入れない。それなら、牽引しよう、ってなった。松阪から業者が駆けつけてくれるらしい。
待ち時間に、北畠具教の首塚に手を合わせる。それから、ふたたび国道沿いに立ってJAFを待った。
あれれ? あらためて見渡すと、目の前の自動車修理工場が『ダイハツ』のロゴを掲げてる!追い込まれていた私には、景色の一部でしかなかったのだ。「見えている」のに「見てなかった」ということだ。
<頼もしい修理工場の男たち>
ひょっとして・・・と事務所を覗いた。昼休憩中だった。事情を話すと「オレが見てきてやるよ」。ひとりの男が、軽トラのエンジンをふかして出ていった。JAFが到着する頃、ようやく軽トラが戻ってきた。
その男はJAFの担当者にこう告げた。「俺ら地元のもんでも、あんな奥まで入って行かんよ。JAFの車は、あそこには入れないよ。えんえん、バックで入っていかない限り。」
男は「あとはオレたちでやるから」とJAFを丁重に帰した。
工場の2人は、血のつながった兄弟だった。店の奥には社長というべきお父さんが座っていた。最初に軽トラで出て行ったのは兄貴の方。彼は、工場の車が履いていたタイヤをはずし、軽トラに積み込む。そして今度は兄弟で2人で軽トラで出ていった。静かになった事務所で、私は、お父さんや飯南ダイハツの営業さんと、雑談しながら待った。
ずいぶんたって、2人の兄弟が私の車を下ろしてきた。そこからさらに相談が始まった。私を安全に帰宅させるためのタイヤを、探してくれていた。近くのガソリンスタンドや、仕事仲間に携帯をかけまくっている。
けれども、ぴったりサイズの中古タイヤがない。しばしの話し合いのあと、手持ちのタイヤを都合してきた。サイズ違いだったが、安全に走れて、高速走行も可能なタイヤだった。
<終わりに>
自分たちの利益にならないことに親身になってくれる人たち。その人情にほろりとくる。
丁寧にお礼を告げて、車のエンジンをかけた。バックミラーに写る修理工場がどんどん小さくなっていく。
やれやれ。懲りないやつに、神さまは2度までも微笑んでくれたのか。
ふ~さん
【山 域】台高
【メンバー】単独
【ルート】野々口林道~尾放峠~三条山~尾放峠~石ヶ山~尾放峠~野々口林道
<はじめに>
三条山は、池木屋山から迷岳を経て、東に伸びる尾根上にある。ここは櫛田川と宮川の分水嶺だ。小田や田引ではなく、野々口谷に沿う林道を選び、林道づめから山仕事の道を使って、尾放峠を目指そう。
<野々口川登山口~三条山>
野々口川に沿う林道。車を奥に進めると、ヤブがかぶりだした。落石も目立つ。無駄な抵抗と知りながら、石をよけて前進。この時点で、すでに危険な香りがした。
いきなり、急坂の路面に生えたコケにタイヤがスリップ。やばっ!狭い林道を、慎重にバック。
ほっとして、車を置いて尾放峠へ。お地蔵さまに迎えられる。田引越えの脇道として使われてきた道か。自然林になった。大きなモミの木。近くに「宮ノ谷ノ頭」というプレートがかかっている。
局ヶ岳は樹間にあった。修験業山や三峰山は、ちら見程度で、なかなか姿をみせてくれない。
急登の末、山頂に立った。南側に開けた山頂。春の陽光が降り注ぎ、解放感に満ちている。総門山、南又山、浅間山、七洞岳、獅子ヶ岳の山並みが。
<三条山~尾放峠~石ヶ山~尾放峠~破線路>
尾放峠に戻って、石ヶ山へ。やや荒れ気味。あせびのブッシュや防獣柵を嫌って歩く。忠実に尾根をたどり、石ヶ山へ。樹林の中の、落ち着いた山だった。
再び尾放峠に戻る。ここからがハイライト。旧道の点線路を下降する。登路にとった仕事道から離れた瞬間、もう、きな臭い。この道は、すでに終わってる。獣道や仕事道のかけらを拾うが、樹に巻かれたテープは追わない方が良い。
急崖、滝脇、渡渉。慎重を期さないと、崖っぷちに追い込まれる。コース取りには細心の注意を。
左又を合わせるが、ゴールはまだまだ。砂防ダムが見えてからも、さらにひと頑張り。往路に合流して、林道詰めの橋を渡る。普通はこれでエンディングのはず。だが、ヤマから下りてからが、本日最大のヤマ場だった。
<またまたJAFに救助要請>
車に戻って、我が目を疑う。右の後ろタイヤがぺしゃんこだ!タイヤの腹に、どて穴が開いてる。このあたりの石は、板状にはく離して、包丁のように鋭利だ。落石でサイドウォールを、こすったのか。いや、溝のグレーチングの金属板を跳ね上げた?そういえば沢音に紛れて「ぷしゅ~っ」と音がしたような覚えがある。
あるある案件だが、スマホは圏外だった。車を放り出し、電波を求めて歩き出す。急ぎで30分歩いて国道に出た。JAFにコール。名古屋のオペレーターが出た。パンクのこと、現在地、現場の緯度経度を伝える。
30分ほどして、再び連絡が入る。林道の状況を細かに聞かれる。状況からして応急処置はムリらしい。車載のスペアタイヤもない。え?修理できる場所まで車を運ぶの?・・・トホホ。
ところが、この林道じゃ、パンク車を積める2トン車は入れない。それなら、牽引しよう、ってなった。松阪から業者が駆けつけてくれるらしい。
待ち時間に、北畠具教の首塚に手を合わせる。それから、ふたたび国道沿いに立ってJAFを待った。
あれれ? あらためて見渡すと、目の前の自動車修理工場が『ダイハツ』のロゴを掲げてる!追い込まれていた私には、景色の一部でしかなかったのだ。「見えている」のに「見てなかった」ということだ。
<頼もしい修理工場の男たち>
ひょっとして・・・と事務所を覗いた。昼休憩中だった。事情を話すと「オレが見てきてやるよ」。ひとりの男が、軽トラのエンジンをふかして出ていった。JAFが到着する頃、ようやく軽トラが戻ってきた。
その男はJAFの担当者にこう告げた。「俺ら地元のもんでも、あんな奥まで入って行かんよ。JAFの車は、あそこには入れないよ。えんえん、バックで入っていかない限り。」
男は「あとはオレたちでやるから」とJAFを丁重に帰した。
工場の2人は、血のつながった兄弟だった。店の奥には社長というべきお父さんが座っていた。最初に軽トラで出て行ったのは兄貴の方。彼は、工場の車が履いていたタイヤをはずし、軽トラに積み込む。そして今度は兄弟で2人で軽トラで出ていった。静かになった事務所で、私は、お父さんや飯南ダイハツの営業さんと、雑談しながら待った。
ずいぶんたって、2人の兄弟が私の車を下ろしてきた。そこからさらに相談が始まった。私を安全に帰宅させるためのタイヤを、探してくれていた。近くのガソリンスタンドや、仕事仲間に携帯をかけまくっている。
けれども、ぴったりサイズの中古タイヤがない。しばしの話し合いのあと、手持ちのタイヤを都合してきた。サイズ違いだったが、安全に走れて、高速走行も可能なタイヤだった。
<終わりに>
自分たちの利益にならないことに親身になってくれる人たち。その人情にほろりとくる。
丁寧にお礼を告げて、車のエンジンをかけた。バックミラーに写る修理工場がどんどん小さくなっていく。
やれやれ。懲りないやつに、神さまは2度までも微笑んでくれたのか。
ふ~さん