【越美国境】上小池から笠場湿原
Posted: 2022年6月15日(水) 21:08
【日 付】2022年6月12日(日)
【山 域】越美国境 願教寺山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】上小池6:45---8:00林道終点---11:45越美国境稜線---12:35笠場湿原13:35---14:15下降点---16:45林道---
17:45上小池
人生は理想と現実の乖離の連続。これはまた山も同じである。
自分が思い描いていた風景とはかけ離れた現実が目の前にあり、それが初っ端から始まってどこまで続くのかわからない。
心が折れるのが先か、エネルギーが尽きるのが先か。
そんな山行でもいいところはある。自分で選んだ山とはいえ、少しは喜びも無いとやってられないのである。
福井県側からの笠場湿原は以前から思い描いていたプランだ。残雪期には何度か辿ったことがあるが、当然のことなが
ら雪原は雪の下。その時に歩いたカサバノ谷右俣(これが正しい名称かは定かでない)源頭の美しいブナ林が印象的で、こ
こから笠場湿原に達したいという思いを抱いていた。
上小池の駐車場では数人の登山者が出発の準備をしていたが、ここから歩き出す登山者はほぼ100%三ノ峰方面へ向かう。
六本桧への登山口を見送って林道を奥へと進んだ。
13年前に黒坊稜から三ノ峰へ上がった時にはまだ形のあった林道は崩壊し、人がようやく通れるぐらいの細々とした道に
変わっていた。
カサバノ谷右俣へ入ると小さいながらも谷一杯に幾筋も糸を引いて落ちる美しい滝と出会う。両岸の樹林の雰囲気も良く、
これは当たりかもしれないとほくそ笑んだ。苔むした岩の鮮烈なグリーンが目に染みる。
しかし、そう思ったのもしばらくの間だけだった。一度伐採を受けたであろう谷は林相も貧しく、ヤブっぽさが目立つよう
になってきた。おまけに倒木が谷を埋めるシーンが度々現れて、遡行の興趣を著しく損ねている。
それでも咲き残りのサンカヨウや一輪だけ見つけたキヌガサソウに慰められながら歩を進めた。
流れのそこここに自生する天然のワサビは収穫だった。現役とは思えないワサビ田もあり、一面にワサビが繁っていたが、
さすがにこれを取るのは憚られた。
その後も状況は一向に変わらず、沢登りをしに来たのかヤブ漕ぎをしに来たのかわからない行程が続く。
源頭部のブナ林に期待を託したが、あの美しい姿は積雪期限定であったことを思い知る。
谷間と林床が雪で埋まってこその風景だったのである。
鹿道を見つけて楽ができたのも一瞬の出来事。それほどササのヤブがきつくなかったのがせめてもの救いだった。
ようやく越美国境稜線に到達。出発から既に5時間が経過していた。稜線上は茫漠としたササの海が広がるばかり。
石徹白側の笠羽谷源頭へ逃げて、昨年と同じコースで湿原を目指す。去年と違うのは、前回は湿原から美濃禅定道へ少し
我慢すれば、後は快適な登山道を下山するだけだったのに対して、今日は辿ってきたあの鬱陶しい谷を戻らなければなら
ないということだ。時間が気になって、何度も心が折れそうになった。
なんとか笠場湿原に到着した。無雪期にここを訪れるのはもう5回目である。
半ば泥田になりかけている湿原だが、願教寺山と三ノ峰、銚子ヶ峰に囲まれたここは、私にとってはかけがえのないパラ
ダイスだ。ミズバショウは湿原のまわりのヤブの中にちらほら咲いている程度だが、そんなことはどうでもいいのだ。
1時間きっかりでランチタイムを終えようと心に決めてザックを降ろした。
帰路は稜線到達点を目指して一直線に進んだ。ヤブの薄いところを探しながら、パズルを解くようにルートを選べば、
意外に早く下降点に達することができた。
登りの谷の1本東側の谷へ飛び込む。この谷がなかなか具合が良く、ほとんどヤブ無しで登りの谷との合流点へ到達。
こちらを登路に選べば少しは楽できたかもしれないが結果論である。
後は粛々と登って来た谷を戻るのみだ。しかしいいこともあるもので、谷芯を避けて巻いたところに思わぬサンカヨウ
の群落を発見したり、一輪だけだがサルメンエビネに出会えたりと、単なる往復ではない味わいを感じることができた。
まあまあのペースで崩壊した林道に下り立つ。廃林道を歩いていると、前方の崖から人の声が流れてきた。こんなとこ
ろに訝っていると、かなり高齢の単独の登山者が急斜面をずり落ちるように下りて来た。聞けば、刈込池のあたりで山菜
を取っている内に道に迷ってしまったらしい。典型的な遭難パターンである。
そもそもこの近辺での山菜の採取は禁止されているのだが、この人は今は大野に住んでいるがここの山主のようで、勝原
の花桃を植樹したということだった。
ここで我々に出会って助かったと、収穫したヤマウドとタニフタギ(水フキ)のおすそ分けを頂いた。
思惑が大きく外れて、いわゆるハズレ谷を往復する結果となり、ランチタイムを除く10時間の行動時間の半分ぐらいは
ヤブを漕いでいたような気がするが、結果的には福井県側から笠場湿原に立つことができた。
まあ、バラエティに富んだいい山行きだったと言えるのかもしれない。
山日和
【山 域】越美国境 願教寺山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】上小池6:45---8:00林道終点---11:45越美国境稜線---12:35笠場湿原13:35---14:15下降点---16:45林道---
17:45上小池
人生は理想と現実の乖離の連続。これはまた山も同じである。
自分が思い描いていた風景とはかけ離れた現実が目の前にあり、それが初っ端から始まってどこまで続くのかわからない。
心が折れるのが先か、エネルギーが尽きるのが先か。
そんな山行でもいいところはある。自分で選んだ山とはいえ、少しは喜びも無いとやってられないのである。
福井県側からの笠場湿原は以前から思い描いていたプランだ。残雪期には何度か辿ったことがあるが、当然のことなが
ら雪原は雪の下。その時に歩いたカサバノ谷右俣(これが正しい名称かは定かでない)源頭の美しいブナ林が印象的で、こ
こから笠場湿原に達したいという思いを抱いていた。
上小池の駐車場では数人の登山者が出発の準備をしていたが、ここから歩き出す登山者はほぼ100%三ノ峰方面へ向かう。
六本桧への登山口を見送って林道を奥へと進んだ。
13年前に黒坊稜から三ノ峰へ上がった時にはまだ形のあった林道は崩壊し、人がようやく通れるぐらいの細々とした道に
変わっていた。
カサバノ谷右俣へ入ると小さいながらも谷一杯に幾筋も糸を引いて落ちる美しい滝と出会う。両岸の樹林の雰囲気も良く、
これは当たりかもしれないとほくそ笑んだ。苔むした岩の鮮烈なグリーンが目に染みる。
しかし、そう思ったのもしばらくの間だけだった。一度伐採を受けたであろう谷は林相も貧しく、ヤブっぽさが目立つよう
になってきた。おまけに倒木が谷を埋めるシーンが度々現れて、遡行の興趣を著しく損ねている。
それでも咲き残りのサンカヨウや一輪だけ見つけたキヌガサソウに慰められながら歩を進めた。
流れのそこここに自生する天然のワサビは収穫だった。現役とは思えないワサビ田もあり、一面にワサビが繁っていたが、
さすがにこれを取るのは憚られた。
その後も状況は一向に変わらず、沢登りをしに来たのかヤブ漕ぎをしに来たのかわからない行程が続く。
源頭部のブナ林に期待を託したが、あの美しい姿は積雪期限定であったことを思い知る。
谷間と林床が雪で埋まってこその風景だったのである。
鹿道を見つけて楽ができたのも一瞬の出来事。それほどササのヤブがきつくなかったのがせめてもの救いだった。
ようやく越美国境稜線に到達。出発から既に5時間が経過していた。稜線上は茫漠としたササの海が広がるばかり。
石徹白側の笠羽谷源頭へ逃げて、昨年と同じコースで湿原を目指す。去年と違うのは、前回は湿原から美濃禅定道へ少し
我慢すれば、後は快適な登山道を下山するだけだったのに対して、今日は辿ってきたあの鬱陶しい谷を戻らなければなら
ないということだ。時間が気になって、何度も心が折れそうになった。
なんとか笠場湿原に到着した。無雪期にここを訪れるのはもう5回目である。
半ば泥田になりかけている湿原だが、願教寺山と三ノ峰、銚子ヶ峰に囲まれたここは、私にとってはかけがえのないパラ
ダイスだ。ミズバショウは湿原のまわりのヤブの中にちらほら咲いている程度だが、そんなことはどうでもいいのだ。
1時間きっかりでランチタイムを終えようと心に決めてザックを降ろした。
帰路は稜線到達点を目指して一直線に進んだ。ヤブの薄いところを探しながら、パズルを解くようにルートを選べば、
意外に早く下降点に達することができた。
登りの谷の1本東側の谷へ飛び込む。この谷がなかなか具合が良く、ほとんどヤブ無しで登りの谷との合流点へ到達。
こちらを登路に選べば少しは楽できたかもしれないが結果論である。
後は粛々と登って来た谷を戻るのみだ。しかしいいこともあるもので、谷芯を避けて巻いたところに思わぬサンカヨウ
の群落を発見したり、一輪だけだがサルメンエビネに出会えたりと、単なる往復ではない味わいを感じることができた。
まあまあのペースで崩壊した林道に下り立つ。廃林道を歩いていると、前方の崖から人の声が流れてきた。こんなとこ
ろに訝っていると、かなり高齢の単独の登山者が急斜面をずり落ちるように下りて来た。聞けば、刈込池のあたりで山菜
を取っている内に道に迷ってしまったらしい。典型的な遭難パターンである。
そもそもこの近辺での山菜の採取は禁止されているのだが、この人は今は大野に住んでいるがここの山主のようで、勝原
の花桃を植樹したということだった。
ここで我々に出会って助かったと、収穫したヤマウドとタニフタギ(水フキ)のおすそ分けを頂いた。
思惑が大きく外れて、いわゆるハズレ谷を往復する結果となり、ランチタイムを除く10時間の行動時間の半分ぐらいは
ヤブを漕いでいたような気がするが、結果的には福井県側から笠場湿原に立つことができた。
まあ、バラエティに富んだいい山行きだったと言えるのかもしれない。
山日和