【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・大台ケ原~マブシ嶺~一本木

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アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・大台ケ原~マブシ嶺~一本木

投稿記事 by アオバ*ト »

【山域】台高南部・尾鷲道
【山行日】2022年5月3日
【天候】晴れ
【メンバー】アオバ*ト、タイラ、Iさん、Kちゃん
【コースタイム】大台ケ原駐車場11:25、尾鷲辻11:55、白サコ12:50、
△1411「雷峠1」14:45、一本木15:15(幕営地)

 大台ヶ原へ向かう路線バスは、近鉄大和八木駅前から1日1本限り。
久しぶりに電車と路線バスを使って旅をする。
そんなに遠くへ行くわけでも、初めての場所へ行くわけでもないのに、
ワクワク感、半端ない。
 バスを待っている間、自分たちと同じように大きなザックを背負った人たちと
行き先を尋ねあって盛り上がる。
 川上の道の駅で休憩して、大台ヶ原の駐車場に着いたのはお昼前。
売店でゐざさの笹寿司を買って嬉々として尾鷲辻に向かう。
 尾鷲辻の東屋から細道に入ると、足元にひっそりと尾鷲道の道標がある。
大台ヶ原の遊歩道にある道標とは全くの別物だ。
この先も気がつくと足元に彼らがいた。ただの道標じゃない。
語り部のように、時々静かに語りかけてくるのだった。

 道は、堂倉山に向かう広い尾根の西側を東ノ川の源流部を見下ろしながら
緩やかに巻いていく。この始まり方が、すばらしすぎる。
今まさに芽吹こうとはち切れんばかり森の空気をいっぱいに吸い込むと、
現実世界の煩わしいものは全て風に乗って飛んでいった。

 堂倉山を巻いて白サコ。東ノ川の源流と銚子川の源流が出合う。
16543101996030(白サコ) - コピー.jpg
雑然とした中に柔らかさと凛々しさが同居しているような、すてきな場所だ。
何年か前、シュークリームさんが大台町と紀北町との境界稜線から
二ノ俣谷が最後に二俣に分かれるこの源流域を歩いておられて、
地形図を眺めては、この場所に憧れた。

 木洩れ陽の差す心地よい巻き道をしばらく水平移動すると開けた場所に出る。
少し右寄りに緩斜面を登って行くと、比較的新しい雷峠の道標が立てられている。
3年前は、ショートカットするように歩いたので、この標識を見落としている。
雷峠 標識 - コピー.jpg
道標の下にはこんなことが記されている。 

『※1) 1928 年に開削整備した尾鷲道(トラバース道)を基に
1960年代まで大台ヶ原登山のメインルートとして利用された登山道時代の雷峠です。
※2)本来の雷峠はマブシ嶺南西約500m地点(現在の一本木)です。
※3)台高主稜線マブシ嶺の三等三角点は「雷峠1」です。
※4)昭文社「山と高原地図」記載の地点は誤りです。NTRC』


雷峠の場所については今まで諸説あるようだった。
それにしても、どうして場所が移動したのだろうなと思う。
地形図をみると、現在この標識のある鞍部で出合う谷はどちらも東ノ川の支流。
主稜線をを越えて三重県側に行ってるわけじゃないから、なんか峠って言われても
違和感がある。
でも尾鷲道はここで大きくカーブを描いて、この鞍部に寄り道してる。
広くて気持ち良さげな場所があるから、ひと休みして行こうってことに
なったのかもしれない。
皆がここでひと休みするようになって、ここがいつのまにか雷峠になったとして、
それより、ここが雷峠になる前は、ここはなんて呼ばれていたんだろう?
すごく気になる。
いずれにしても、今はここが雷峠っていうのは、雰囲気に合ってるなと思う。

 この雷峠広場から、ほぼ遮るもののない広くて緩い斜面を東の主稜線に戻るように登る。
雷峠の標識のあるところから1450へ
雷峠の標識のあるところから1450へ
登り詰めたピークには、本来ない地名の地倉山と書かれたプレートがある。
ここには本来名前はないって言うけど、この先圧巻の眺めが広がっている。
ピークの東側に程よい樹林が繁っていて、ピンクの石楠花が彩りを添える。
舞台袖から廊下を通ってステージに出ていくみたいだ。
廊下の向こうは360度パノラマの大ステージ。
1450の南
1450の南
大ステージに嬉々として飛び出していくみんなの後ろ姿は瞬く間に小さくなって、
光の空間の中で踊る小人みたいに見えた。

 間違っているらしい「山と高原地図」の雷峠に下って、
足元に架線の残骸を見ながらアセビがモサモサ繁る坂をワシワシと登って
三角点のあるマブシ嶺に辿り着く。点名は「雷峠1」。
△1411「雷峠1」
△1411「雷峠1」
 そういえば、今まで海のことを書いていなかった。
白サコを過ぎて巻き道を行き登りに入った辺りで海が見える。
白サコの南 海の見える場所
白サコの南 海の見える場所
どこら辺の海って言われたらよくわからないが、たぶん尾鷲よりもう少し伊勢寄りの海。
海の眺めは、三角点のマブシ嶺からがいちばんすばらしいかもしれない。
ここから見えるのは尾鷲の町と海。もっと伊勢の方までも見える。
これは2019年の写真 △1411から
これは2019年の写真 △1411から
眺めの中から火力発電所の煙突が消えてしまったのが何とも寂しいけれど、
美しいに変わりはない。

 気が済むまで辺りを眺めたら、昔の雷峠だったという一本木の森へ下る。
3年前にここに来たとき、たぶんここに一本木の標識はなかった。
もっと南で見たような気がする。
それが、去年来たときは、ここに今と同じ標識があって、
あれ?一本木ってここだっけ?と思った。
ここは昔の雷峠で、今は一本木、か。
雰囲気的に、ここは雷峠なんて荒々しい名前は似合わない気がする。
「一本木の森」で、ちょうどいいんじゃないかなと思う。
一本木付近
一本木付近
モデルとなった巨木はもう朽ちてしまったらしいが、
抱きつきたくなるような木はいっぱいある。

 テントを、水場のある木組峠で張るか、ここで張るか迷った。
みんなに尋ねると、水はいっぱい持ってるからここがいい!と返ってきた。
水場が近くにないことを割り引いたとしても、ここは極上の場所だった。

 夜、みんなが寝静まってから、雷峠だらけになった頭の中を整理してみた。
NTRCさんの標識に書かれていたことを基本としつつ、
ネットで色々書かれていることを参考にしつつ、
自分なりにこんな風にまとめてみた。

*1450は、マブシ嶺最高点
*1411はマブシ嶺三角点
*マブシ嶺=マブシ峠=雷峠
(峠=鞍部とは限らない、芦生にも三国峠とか天狗峠とか、峠と呼ばれるピークがあるし。)
*現在雷峠の標識のあるところと一本木の標識のあるところは、
昔は、峠じゃなくて○○越と呼ばれていたのではなかろうか。
今までどこにあるんだろうと思っていた「ヲチウチ越」っていうのは、
きっとこのどちらかのことだ。

 と、ここまで想像を巡らせて、無性に嬉しくなってきた。


 アオバ*ト
最後に編集したユーザー アオバ*ト [ 2022年7月03日(日) 15:50 ], 累計 3 回
シュークリーム
記事: 2060
登録日時: 2012年2月26日(日) 17:35
お住まい: 三重県津市

Re: 【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・雷峠編

投稿記事 by シュークリーム »

アオバトさん,こんにちは。
尾鷲道ですかあ。懐かしいですね。もうここ何年も足を踏み入れていません。
私のお気に入りのテン場にもたまには行こうと思っているのですが,足が向きません。まだテン泊装備を担ぐ体力があるうちに行ってこようかと,アオバトさんのレポを読みながら思いました。

はじめてあのテン場でテン泊して,翌日に尾鷲辻まで行って,あまりの人の多さに恐れをなしてそこから引き返したことがあります。それまで人一人も出会っていなかったのに,まるで別の世界に来たように思いました。

大台ケ原周辺はテレビでは原生林のように描かれますが,実際には大規模な伐採がなされていて,あの辺りを歩くと森林鉄道の跡などがあちこちに残っています。森林の更新が未だになされていないところもあって,倒木が積み重なった風景を見ると慄然とする思いがあります。尾鷲道なども昔の木材搬出路だったのでしょうね。ゆるゆるとした歩きやすい道で,私も好きなところです。また行ってみようかという気になりました。

レポの続編を楽しみにしています。
                         @シュークリーム@
アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

Re: 【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・雷峠編

投稿記事 by アオバ*ト »

 
 シュークリームさん、こんばんは。
 レスありがとうございます!

>私のお気に入りのテン場にもたまには行こうと思っているのですが,足が向きません。
まだテン泊装備を担ぐ体力があるうちに行ってこようかと,アオバトさんのレポを読みながら思いました。

 シュークリームさんお気に入りのテント場、
昨年使わせてもらいましたが、
テント張って、すぐ横に水が流れているっていうのが、感動的ですね!
樹林の雰囲気もすごくすてきでした。

>はじめてあのテン場でテン泊して,翌日に尾鷲辻まで行って,
あまりの人の多さに恐れをなしてそこから引き返したことがあります。
それまで人一人も出会っていなかったのに,まるで別の世界に来たように思いました。

 尾鷲辻の東屋は、ふつうのハイキングの人たちもよく休まれていますが、
尾鷲道に入ってしまうと静寂に包まれますよね。
この日、日帰りでマブシ嶺まで往復して帰って来る人たち何人かに出会いましたが、
一本木のテント場は貸し切りで、次の日出会った人は3人だけでした。

 シュークリームさんのテント場あたりを歩いている人は、
もっと少ないというか、マニアの世界ですね。

>大台ケ原周辺はテレビでは原生林のように描かれますが,実際には大規模な伐採がなされていて,
あの辺りを歩くと森林鉄道の跡などがあちこちに残っています。
森林の更新が未だになされていないところもあって,倒木が積み重なった風景を見ると慄然とする思いがあります。

 私も、大台ケ原のことほとんど知らないに等しいのですが、
すごく美しい部分と、とてつもなく荒れている部分が混在しているんですね。
最近その両方の部分を少しだけ覗き見したような気がしています。

>尾鷲道なども昔の木材搬出路だったのでしょうね。ゆるゆるとした歩きやすい道で,
私も好きなところです。また行ってみようかという気になりました。

どうぞ、またお出かけ下さいね。
尾鷲道、奇跡のようなすばらしい道と思います。

  アオバ*ト
skywalk
記事: 509
登録日時: 2011年3月07日(月) 21:33

Re: 【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・雷峠編

投稿記事 by skywalk »

アオバトさん、こんにちは。
尾鷲道を歩いていたのは随分昔のことで忘れましたが、昔は木組峠とマブシ峰以外標識類はなかったように思います。
木組峠の方から歩いていくとマブシ峰で引き返すのが時間的に適当で堂倉山まで行ったのは1,2回しかないと思います。
雷峠がいくつもあるのは実際問題として登山者を混乱させるので雷峠北とか南とか区別してほしいですね。アオバト説のマブシ峰=雷峠で割り切ったとしても鞍部の雷峠も残るでしょうから。
本来の雷峠とされる一本木もはっきり覚えてませんが、坂本ダムから尾鷲道に出るのに木組峠の破線ルートを使わずマブシ峰の南西尾根を使って登っていくとポンッと尾鷲道に飛び出してほっとしましたからそのあたりですかね。
独断と偏見でオチウチ峠を決めてオチウチ峠(雷峠)の標識を作り設置してしまえば、それが広まるかもしれません。とにかく誰か決めてくれって感じです。
妄想バーチャル登山もお疲れさまでした。
アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

Re: 【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・雷峠編

投稿記事 by アオバ*ト »

skywalkさん、こんばんは。

コメント、ありがとうございます!

>尾鷲道を歩いていたのは随分昔のことで忘れましたが、昔は木組峠とマブシ峰以外標識類はなかったように思います。
そうなんですね。では、「新木組峠」っていうヘンな標識もご存じないのですね。

>木組峠の方から歩いていくとマブシ峰で引き返すのが時間的に適当で堂倉山まで行ったのは1,2回しかないと思います。
起点って、地蔵峠だったのですか?それとも古和谷からですか?
どちらにしても、日帰りで堂倉山まで行くってすごいですね。

>雷峠がいくつもあるのは実際問題として登山者を混乱させるので雷峠北とか南とか区別してほしいですね。
そうですね。遠方から歩きに来られる人たちとか初めて歩く人たちは、混乱してしまうかもですね。
私は今のままでも、色々想像力かき立てられて楽しいですけど。
実際はどうであれ、頭の中で勝手に考える分には自由ですもんね~。

>本来の雷峠とされる一本木もはっきり覚えてませんが、
坂本ダムから尾鷲道に出るのに木組峠の破線ルートを使わずマブシ峰の南西尾根を使って登っていくと
ポンッと尾鷲道に飛び出してほっとしましたからそのあたりですかね。

ちょうど一本木のすぐ上に出ますね。展望台みたいになってたように思います。
それにしても、この尾根登るって、すごすぎる。坂本ダムから標高差1000近くありますよねぇ。
そして、この尾根、藪はないのでしょうか?帰りは?今はもう崩壊してる木組谷の破線ルートだったのですか?
気になる、気になる。すごく気になる。

峠道ってほとんどが谷筋と思っていましたが、
もしかしたら、この尾根もオチウチ越のひとつだったのかもしれないですね。
標高差1000あっても、途中で水がなくても、昔の人にとっては、朝飯前のことだったのかもしれないですね。
skywalkさんも、昔の人とたがわず、きっとこんなの朝飯前だったのでしょう。

 アオバ*ト
skywalk
記事: 509
登録日時: 2011年3月07日(月) 21:33

Re: 【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・雷峠編

投稿記事 by skywalk »

アオバトさん、気になって眠れなくなると困るのでお答えしておくと。
最初のうちは木組峠の破線道から上り下りしていましたが、木組谷林道に入ったところに大きな木梯子が崖に立てかけてあったのでそこを登ってマブシ峰南西尾根に出て登っていくと尾鷲道に出られたので尾根道を使うことが多くなりました。帰りは木組峠まで戻って下山していましたが、そのうち下山も尾根道を使う様になりました。ナビのない時代ですから下山を誤ると下の林道に下りられなくなるので登る時からルートを頭に刻んで下山の時梯子の場所まで戻れるよう慎重に下りました。
考えてみると40年ほど前にも他の人の案内でこの梯子を下りた記憶があり、昔から使われていたようです。もちろん梯子はその間に更新され新しくなっていましたが、もしかすると現在も残っているかもしれません。マブシ峰に登る最短ルートですから使えれば便利です。ヤブは濃いところはありませんでした。
アオバ*ト
記事: 283
登録日時: 2019年9月23日(月) 08:40

Re: 【台高南部】「雷峠ってどこだ?」尾鷲道を行く・雷峠編

投稿記事 by アオバ*ト »

 skywalkさん、こんばんは。

早々とお返事下さり、ありがとうございます!

>アオバトさん、気になって眠れなくなると困るのでお答えしておくと。
とっても衝撃的で、コーフンして眠れませんでした~。

>最初のうちは木組峠の破線道から上り下りしていましたが、
木組谷林道に入ったところに大きな木梯子が崖に立てかけてあったのでそこを登って
マブシ峰南西尾根に出て登っていくと尾鷲道に出られたので尾根道を使うことが多くなりました。
帰りは木組峠まで戻って下山していましたが、そのうち下山も尾根道を使う様になりました。
ナビのない時代ですから下山を誤ると下の林道に下りられなくなるので
登る時からルートを頭に刻んで下山の時梯子の場所まで戻れるよう慎重に下りました。
考えてみると40年ほど前にも他の人の案内でこの梯子を下りた記憶があり、昔から使われていたようです。


昔の人ってどんなに急でも谷筋にトラバース道造って歩いていたように思い込んでいて、
この尾根が目に入っていませんでした。
必ずしも谷筋ばっかり使っていた訳でもないってことなのですね。

>マブシ峰に登る最短ルートですから使えれば便利です。ヤブは濃いところはありませんでした。
skywalkさんが歩かれた時は、尾根からはどんな眺めだったのだろうとか、どんな樹木が生えていたのだろうとか、
踏みあとははっきりしていたのだろうかとか、また、崩れる前の木組谷の様子とか、木組の集落はまだ存在していたのだろうかとか、
知りたいこといっぱいです。

>もちろん梯子はその間に更新され新しくなっていましたが、もしかすると現在も残っているかもしれません。
この尾根いったん登ると、私には1日で帰って来れなさそうで、skywalkさんの真似をするのは難しそうです。
木組谷は探索されている人たちもいらっしゃるようで、私も行ってみようかなとか思っていますが、どうなることやら。
でも、この大きな梯子、今もあるのか、朽ち果てたのか、見てみたいです。

   アオバ*ト
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