【若狭】新緑の能登郷と大御影山を歩く
Posted: 2022年5月01日(日) 11:45
【日 付】2022年4月23日(土)
【山 域】若狭 大御影山周辺
【天 候】曇り
【コース】妙芽谷出合8:30---9:40左俣の二俣---10:50稜線---11:10大日---11:45能登郷13:10---14:10稜線---15:25大御影山
---16:30滝谷出合---16:50駐車地
久し振りの若狭の山である。能登又谷支流の妙芽谷へ入り、大滝の前で左俣へ進む。
右俣の大滝は雪解けの豊かな水量を轟々と落としていた。
左俣にも滝が懸かっているが、滝そのものよりも右岸の高みに立つカツラの大木の佇まいが素晴らしい。
カツラの根元から滝を巻き上がると再び穏やかな谷となった。見応えのあるカツラ巨木が点在している。
次の二俣は右へ進むつもりだったが、出合の小滝に阻まれた。今日は沢装備を用意していない。
渓流シューズを履いていれば何のことはない滝だったが、巻くことも叶わず左俣の右岸尾根に這い上がった。
ちょっとナメていたせいでチェーンスパイクも持って来ておらず、ズルズル斜面の際どいトラバースを強いられる。
木の枝を掴んで左俣にずり降り、右俣と左俣の中間尾根に乗った。ここですいぶん時間を食ってしまった。ヤレヤレで
ある。
さっきの尾根をそのまま上がる選択肢もあったのだが、上がった先のイヤ谷左岸尾根は既知だ。
ここは未見の尾根を近江坂に上がりたいという思いが勝ったのである。
こちらの尾根も雰囲気は良く、主稜線の手前からは見事なブナ林に包まれた。ブナだけではなく、トチの大木も多く
見られるのがうれしい。
大御影山と大日を繋ぐ尾根はブナ林が続くのだが、大日に向かって進むと突然見たくない現実に襲われた。2年前に
訪れた時も何本かのブナの大木が切られていた心が痛んだものだが、目の前の光景は絶望感に襲われるものだった。
新しい送電鉄塔建設のために、豊かなブナ林が一面伐採されており、工事の真っ最中だった。
朝からひっきりなしに響いていたヘリの爆音はここに資材を上げるためのものだったのか。モノレールまで敷設されて
おり、多数の作業員が動き回っている。庄部谷山近辺の風力発電だけでなく、ここもか。自分が愛する山が蹂躙されて
行くのを見るのは悲しいものだ。モノレールに沿った尾根の木々にはテープが巻かれており、いずれは伐採されてしま
う運命のようだ。
大日の先から南への支尾根に入るとホッとした。緩やかな自然林の尾根を下ると「能登郷」と呼ばれる、かつて集落
のあった場所の北端に下り立った。
滋賀県側の天増川(あますがわ)の源流に位置する能登郷は、大きく開けた谷間のあちこちから小川が流れ込み、渓畔林
のそこここに湿地帯を形成している。まったく桃源郷と呼びたくなるような場所だが、人が住むには適しているとは思
えない。実際、何度も小川を飛び越えながら下流に向かって歩いて行くにも、不用意に足を置くとズブッと沈んでしま
うので注意が必要なほど湿って不安定な土地なのである。近江坂の古道は大日の手前から一旦ここへ下り、対岸の稜線
へ登り返して福井県側の能登野へ至る。能登野の一帯もかつては能登郷と呼ばれていたようだ。
天増川源流の能登郷には、かつて能登の国から移住してきた木地師が住んでいたという。
今日のスタート地点の能登又谷、三重嶽南東のノトマタ谷と、このあたりには能登という名前が付いた地名が多い。
前者は能登郷へ至る谷の入口という意味で理解できるが、後者はあまり関係なさそうだ。地名にいろいろ思いを巡らす
のも面白い。
湿原状の場所にはサワオグルマだろうか、黄色い花が開き始めている。もう少し経って花期になれば、見事な群落が
見られるだろう。
すぐ横を走る林道に工事関係と思われる車が止まっている。その先を見ると、ここでも大規模な工事が行われている
ようだ。先ほどの新しい鉄塔がこちらの方へ伸びているのである。
近江坂への復帰には三重嶽への分岐の少し北に上がる未踏の尾根を使った。下部は放置植林の鬱陶しい尾根だが、ガ
スの先が無木立になったと思うと真新しい鉄塔が現れた。対岸も伐採の痕が痛々しい。
そこを過ぎると豊かなブナ林が始まってひと安心。近江坂のブナ林の道に吸収されて行く。
何度も通った近江坂の古道だが、大御影山へ向かって歩くのは初めてかもしれない。深く掘り込まれた道には部分的に
雪が詰まっている。カタクリの花もちらほら見えるが、天気のせいか大きく開いたものはほとんどない。
先週あれだけの群落を見た後でも、やはり花との出会いはうれしいものだ。イワウチワはちょうど見頃だった。
三重嶽方面の斜面を見て驚いた。谷筋のかなり高いところまで雪渓がせり上がり、谷間にもかなりの雪が残っている
ようだ。まるで白山方面の豪雪の山に来たような錯覚を覚える。
白い雪渓を背景にして、ブナの間にヤマザクラの大木が一本、満開の花で着飾って佇んでいた。
大御影山の山頂手前では、桧谷源頭がべったりと雪で覆われていて驚かされる。今年はやはり雪が多かったのだ。
晴れていれば右に琵琶湖、左に日本海を望む草原状の尾根をのろ尾の高に向かう。ガスに包まれて目の前のピークも見え
ない。
マザーツリーに挨拶して白谷コースへ下山にかかる。右手の水舟(谷)の源頭も雪渓が続いている。遡行して来れば最後
に雪渓歩きを楽しめるだろう。
このまま登山道(と言ってもあまりハッキリしない道だが)を下っても満足できるブナ林のコースなのだが、少し前に使
った滝谷出合への尾根を選択した。この尾根を漢字ひと文字で表すとすれば「急」である。しかしその分仕事は早い。
それだけなら面白くもなんともないが、なかなか見事なブナ林が続いているのが美点だ。
この近辺ではあまり歩かれていない尾根のひとつだろう。
着地点が滝谷出合のカツラの巨樹の真ん前というのがいい。ここまで下りれば10分ほどの林道歩きを残すだけなので、
浸水も気にせず能登又谷本流を渡渉する。
妙芽谷出合でスタート時に目を付けていたコゴミを頂いて、新緑の若狭の山を締めくくった。
山日和
【山 域】若狭 大御影山周辺
【天 候】曇り
【コース】妙芽谷出合8:30---9:40左俣の二俣---10:50稜線---11:10大日---11:45能登郷13:10---14:10稜線---15:25大御影山
---16:30滝谷出合---16:50駐車地
久し振りの若狭の山である。能登又谷支流の妙芽谷へ入り、大滝の前で左俣へ進む。
右俣の大滝は雪解けの豊かな水量を轟々と落としていた。
左俣にも滝が懸かっているが、滝そのものよりも右岸の高みに立つカツラの大木の佇まいが素晴らしい。
カツラの根元から滝を巻き上がると再び穏やかな谷となった。見応えのあるカツラ巨木が点在している。
次の二俣は右へ進むつもりだったが、出合の小滝に阻まれた。今日は沢装備を用意していない。
渓流シューズを履いていれば何のことはない滝だったが、巻くことも叶わず左俣の右岸尾根に這い上がった。
ちょっとナメていたせいでチェーンスパイクも持って来ておらず、ズルズル斜面の際どいトラバースを強いられる。
木の枝を掴んで左俣にずり降り、右俣と左俣の中間尾根に乗った。ここですいぶん時間を食ってしまった。ヤレヤレで
ある。
さっきの尾根をそのまま上がる選択肢もあったのだが、上がった先のイヤ谷左岸尾根は既知だ。
ここは未見の尾根を近江坂に上がりたいという思いが勝ったのである。
こちらの尾根も雰囲気は良く、主稜線の手前からは見事なブナ林に包まれた。ブナだけではなく、トチの大木も多く
見られるのがうれしい。
大御影山と大日を繋ぐ尾根はブナ林が続くのだが、大日に向かって進むと突然見たくない現実に襲われた。2年前に
訪れた時も何本かのブナの大木が切られていた心が痛んだものだが、目の前の光景は絶望感に襲われるものだった。
新しい送電鉄塔建設のために、豊かなブナ林が一面伐採されており、工事の真っ最中だった。
朝からひっきりなしに響いていたヘリの爆音はここに資材を上げるためのものだったのか。モノレールまで敷設されて
おり、多数の作業員が動き回っている。庄部谷山近辺の風力発電だけでなく、ここもか。自分が愛する山が蹂躙されて
行くのを見るのは悲しいものだ。モノレールに沿った尾根の木々にはテープが巻かれており、いずれは伐採されてしま
う運命のようだ。
大日の先から南への支尾根に入るとホッとした。緩やかな自然林の尾根を下ると「能登郷」と呼ばれる、かつて集落
のあった場所の北端に下り立った。
滋賀県側の天増川(あますがわ)の源流に位置する能登郷は、大きく開けた谷間のあちこちから小川が流れ込み、渓畔林
のそこここに湿地帯を形成している。まったく桃源郷と呼びたくなるような場所だが、人が住むには適しているとは思
えない。実際、何度も小川を飛び越えながら下流に向かって歩いて行くにも、不用意に足を置くとズブッと沈んでしま
うので注意が必要なほど湿って不安定な土地なのである。近江坂の古道は大日の手前から一旦ここへ下り、対岸の稜線
へ登り返して福井県側の能登野へ至る。能登野の一帯もかつては能登郷と呼ばれていたようだ。
天増川源流の能登郷には、かつて能登の国から移住してきた木地師が住んでいたという。
今日のスタート地点の能登又谷、三重嶽南東のノトマタ谷と、このあたりには能登という名前が付いた地名が多い。
前者は能登郷へ至る谷の入口という意味で理解できるが、後者はあまり関係なさそうだ。地名にいろいろ思いを巡らす
のも面白い。
湿原状の場所にはサワオグルマだろうか、黄色い花が開き始めている。もう少し経って花期になれば、見事な群落が
見られるだろう。
すぐ横を走る林道に工事関係と思われる車が止まっている。その先を見ると、ここでも大規模な工事が行われている
ようだ。先ほどの新しい鉄塔がこちらの方へ伸びているのである。
近江坂への復帰には三重嶽への分岐の少し北に上がる未踏の尾根を使った。下部は放置植林の鬱陶しい尾根だが、ガ
スの先が無木立になったと思うと真新しい鉄塔が現れた。対岸も伐採の痕が痛々しい。
そこを過ぎると豊かなブナ林が始まってひと安心。近江坂のブナ林の道に吸収されて行く。
何度も通った近江坂の古道だが、大御影山へ向かって歩くのは初めてかもしれない。深く掘り込まれた道には部分的に
雪が詰まっている。カタクリの花もちらほら見えるが、天気のせいか大きく開いたものはほとんどない。
先週あれだけの群落を見た後でも、やはり花との出会いはうれしいものだ。イワウチワはちょうど見頃だった。
三重嶽方面の斜面を見て驚いた。谷筋のかなり高いところまで雪渓がせり上がり、谷間にもかなりの雪が残っている
ようだ。まるで白山方面の豪雪の山に来たような錯覚を覚える。
白い雪渓を背景にして、ブナの間にヤマザクラの大木が一本、満開の花で着飾って佇んでいた。
大御影山の山頂手前では、桧谷源頭がべったりと雪で覆われていて驚かされる。今年はやはり雪が多かったのだ。
晴れていれば右に琵琶湖、左に日本海を望む草原状の尾根をのろ尾の高に向かう。ガスに包まれて目の前のピークも見え
ない。
マザーツリーに挨拶して白谷コースへ下山にかかる。右手の水舟(谷)の源頭も雪渓が続いている。遡行して来れば最後
に雪渓歩きを楽しめるだろう。
このまま登山道(と言ってもあまりハッキリしない道だが)を下っても満足できるブナ林のコースなのだが、少し前に使
った滝谷出合への尾根を選択した。この尾根を漢字ひと文字で表すとすれば「急」である。しかしその分仕事は早い。
それだけなら面白くもなんともないが、なかなか見事なブナ林が続いているのが美点だ。
この近辺ではあまり歩かれていない尾根のひとつだろう。
着地点が滝谷出合のカツラの巨樹の真ん前というのがいい。ここまで下りれば10分ほどの林道歩きを残すだけなので、
浸水も気にせず能登又谷本流を渡渉する。
妙芽谷出合でスタート時に目を付けていたコゴミを頂いて、新緑の若狭の山を締めくくった。
山日和