【若狭/常神半島】ヤマザクラの残り香と陽光浴びて岬めぐり
Posted: 2022年4月18日(月) 23:07
若狭湾ー福井県から京都府にかけて日本海に面したこのリアス式海岸には、面白い形の半島や島、湾や入江が連なる。有名な「三方五湖」あたりはその代表格で、海に突き出した常神半島を眺めていると、御神島に噛みつこうとする怪鳥を想い描いてしまう。
半島先端部に近い神子崎のヤマザクラは県内でも1、2を競うお花見の名所ということで、「桜を見る会」のお誘いが来た。もちろん先年、世間を賑わした「本家」観桜園遊会とは無関係。二つ返事でGOサインを送る。本音は「花より…」なんとかで、久し振りのランチ宴会付き山遊びは治療中の首にも弱足にもやさしい、私のためのプランのようで大歓迎なのだ。
「記録係」の命を受けてしまったのに、いつのまにかもう1週間も過ぎ去っている。山レポとはほど遠い「岬めぐり日記」にすぎないのだが目にとめていただいた方々に一読いただければ幸いであります。
【日付】2022年4月12日(火)
【山域】若狭/常神半島
【ルート】小川漁港-△216.9ミアン-co300p-△172.8象首谷-常神社=常神集落=小川漁港
【天候】晴れ
【メンバー】sato、バーチャリ、びわ爺
【コースタイム】小川漁港9:30-△ミアン10:50-co300p11:30~13:00-△象首谷14:30-常神社15:30(車回収)-常神集落15:50~16:15-16:40小川漁港
R303の道の駅・熊川宿に8時に待ち合わせ、車2台で常神半島へ向かう。
日本海に突き出した半島東岸には、中世の大津波で1戸を残して村が消えたという「クルビ(久留見)村」伝説が残っている。村跡にも惹かれるが、今は東岸に集落も道路もなく、その位置も定かでないので訪ねるすべがない。で、心残りながら今回はスルー。
小川の漁港でルート検討。朝の散歩中の地元男性を見つけ話を聞く。トンネル完成後は、「怪鳥」の左翼を回り込む旧県道は放置状態で「落石や倒木で車は通られんで」という。港から見上げると、なんとか支尾根に取り付けそうだ。ならば、「怪鳥」の左翼尾根から半島の背骨(?)稜線へ出て、あんぐり大口を開けた喉の奥(常神社)へ下ろうか?――との案に、「登れそうやね」と即決。ま、心配なのは私だけだろうから…。
岬周りの県道を神子の常神社まで進み、車1台をデポ。予定通りにうまくいけば、ここへ下ってくるのだ。小川漁港に引き返し、許可を得ておいたトイレ横に駐車。もう9時半、やっとスタートだ。
めざす尾根上の三角点名は「ミアン」。どんな由来なんだろう? 御庵、美鞍??? 尼庵が訛って…? 想像もつかない。
旧道から枝尾根へ。思ったより急傾斜でいきなりバテ気味。同行のお二人に助けてもらい、なんとか稜線へ出て、左のミアン三角点へ寄ってみる。
「背骨」とのjctのco300pへは、開けた尾根を緩やかに登っていく。ヤマザクラはもう大半が終わったばかりで、地面に舞い散った花弁が満開時の名残をとどめている。代わりに真っ赤なツバキの花があちこちに。「葉にギザギザがあるのはユキツバキ」とsatoさんが教えてくれた。 jctピークへは11時半。小川漁港から2時間ほど。
「どうしますか?」
「ランチにしましょう!」
以心伝心の即決だ。ピーク広場は陽射しが暑いくらいで、日蔭か日向か、座り込む場所が決められない。
今日は山歩きか、ランチ宴会か、それともリアス式海岸見学会か? ハッキリしないままだったので、各自の準備物も様々だ。バーチャリさんは、ガス器具と一緒に重い新鮮魚介を担ぎ上げてくれた。しかも前回の教訓から調理バサミまで持参。フライパンで焼き上がったイカをパチンパチンと食べやすい大きさに切り刻む。
satoさんは特製昆布巻きを提供。昆布とニシンの両方の味がしっかり浸みた逸品はアワワの味も引き立ててくれる。ああ、これならロング缶にすればよかった!と、またまた後悔。 たっぷり1時間半の休憩後、半島の中心稜線を北西へ向かう。「怪鳥」の背中から首根っこの172.9三角点(点名=象首谷)へ這い上がるのだ。とはいっても、実際はゆっくりと標高100m以上も下ることになり、私には願っても無いマッタリ歩きが嬉しい。
半島は両サイドが海だから半島である。海を見降ろす山旅の魅力がここにある。しかし、無粋にも常緑樹に落葉樹の新緑が加勢して視野を邪魔してくれる。樹間から時折覗く海に浮かぶのは小浜半島だろうか。久須夜ヶ岳にも一度は行ってみたいなあ…と、また宿題をつくってしまった。
三角点「象首谷」に向けco210のjctピークから西へ折れて下る途中、道祖神の所に人影。きょう山中で初めてヒトに出会った。あいさつをかわし、しばしの会話。背中の稜線は昔からの生活路であり、分岐に道祖神が置かれているのはその安全祈願のためであること、縦走路や下山ルートなどの情報を得る。あとで分かったのだが、その男性は地元常神のお寺の住職さんだった! 三角点に立ち寄ってから、先ほどの道祖神まで引き返し、住職に教わったなだらかな谷筋をジグザグに下っていく。谷といっても水は無く、落葉で埋まった斜面はフワフワで足にやさしい。最後の急斜面も雑木を頼りに下りきり、県道のヘアピンカーブの先端に降り立つ。デポした車が待つ常神社はすぐそこだ。
ここまできたら、半島先端の△238.9(点名=常神浦)に建つ常神灯台にも行ってみようか? などと、またまたイロケを出すのがいけない。もう15時をとっくに回ってますよ。ということで自制心が働き、灯台はキッパリ諦め、せめて集落にある「常神のソテツ」を見に行く。
常神は半島最先端の集落。せいぜい20戸前後と思われるが、生計は漁業と民宿経営がすべてのようだ。庭で天日干しした小さなイカの処理をしていた女性に話を聞く。近年は不漁とコロナ禍もあり、経営していた民宿も止めたそうだ。もう少し季節が進み「大敷網漁が始まればねえ…」と、あてにはできそうにない期待を口にされる。この時期訪れるのは釣り客くらいで、集落には土産物店も無いそうだ。 民家がひしめく迷路のような路地を案内板に導かれて進むと、「ソテツの家」と書かれた建物の中庭のようなところにあった! 巨大ソテツだ。なんでも樹齢1350年だとか。てことは7世紀後半。奈良か飛鳥時代か? 歴史に弱い私には、なぜここに南国植物の代表が生き続けているのか、今も理解不能のまま。
清掃協力金20円の賽銭箱が設けられている。あいにく3人ともサイフは車の中に置いて来た。申しわけないけどお許しください。次回来た時は必ず…。 港のはずれの広場に大型バスが停まった。降りてきたのは学校帰りの子どもたち。1,2,3…、全部で5人。「おかえり~!」と声をかけると、「ただいま~!」と元気な声が返ってきた。中学生1人以外は小学生4人。5年前、隣りの神子集落にあった岬小学校が閉校になり、今は神子崎を回り込んで三方湖畔の梅の里小学校まで通っている。バスでも片道30分はかかるそうだ。工事が進んでいる常神社と神子漁港を繋ぐトンネルが完成すれば、少しは短縮するのだろう。
この村の未来はこの子らに掛かっている! などと勝手な決め付けはいけないが、いつまでも子どもたちの元気な声が聞こえる常神半島であってほしいと願わずにはおれない。
出発点の小川漁港まで戻り、今日の山旅は終了。satoさんとは初めての同行だったが、お二人とも聞きしに勝る羨ましいくらいの健脚。足も動けば口も絶好調♪ 合わせるのに四苦八苦の爺ではありました。
急斜面でのフォロー、美味しいランチメニューなど、いろいろと心遣い、お世話に改めて感謝!の一日でした。
~びわ爺
半島先端部に近い神子崎のヤマザクラは県内でも1、2を競うお花見の名所ということで、「桜を見る会」のお誘いが来た。もちろん先年、世間を賑わした「本家」観桜園遊会とは無関係。二つ返事でGOサインを送る。本音は「花より…」なんとかで、久し振りのランチ宴会付き山遊びは治療中の首にも弱足にもやさしい、私のためのプランのようで大歓迎なのだ。
「記録係」の命を受けてしまったのに、いつのまにかもう1週間も過ぎ去っている。山レポとはほど遠い「岬めぐり日記」にすぎないのだが目にとめていただいた方々に一読いただければ幸いであります。
【日付】2022年4月12日(火)
【山域】若狭/常神半島
【ルート】小川漁港-△216.9ミアン-co300p-△172.8象首谷-常神社=常神集落=小川漁港
【天候】晴れ
【メンバー】sato、バーチャリ、びわ爺
【コースタイム】小川漁港9:30-△ミアン10:50-co300p11:30~13:00-△象首谷14:30-常神社15:30(車回収)-常神集落15:50~16:15-16:40小川漁港
R303の道の駅・熊川宿に8時に待ち合わせ、車2台で常神半島へ向かう。
日本海に突き出した半島東岸には、中世の大津波で1戸を残して村が消えたという「クルビ(久留見)村」伝説が残っている。村跡にも惹かれるが、今は東岸に集落も道路もなく、その位置も定かでないので訪ねるすべがない。で、心残りながら今回はスルー。
小川の漁港でルート検討。朝の散歩中の地元男性を見つけ話を聞く。トンネル完成後は、「怪鳥」の左翼を回り込む旧県道は放置状態で「落石や倒木で車は通られんで」という。港から見上げると、なんとか支尾根に取り付けそうだ。ならば、「怪鳥」の左翼尾根から半島の背骨(?)稜線へ出て、あんぐり大口を開けた喉の奥(常神社)へ下ろうか?――との案に、「登れそうやね」と即決。ま、心配なのは私だけだろうから…。
岬周りの県道を神子の常神社まで進み、車1台をデポ。予定通りにうまくいけば、ここへ下ってくるのだ。小川漁港に引き返し、許可を得ておいたトイレ横に駐車。もう9時半、やっとスタートだ。
めざす尾根上の三角点名は「ミアン」。どんな由来なんだろう? 御庵、美鞍??? 尼庵が訛って…? 想像もつかない。
旧道から枝尾根へ。思ったより急傾斜でいきなりバテ気味。同行のお二人に助けてもらい、なんとか稜線へ出て、左のミアン三角点へ寄ってみる。
「背骨」とのjctのco300pへは、開けた尾根を緩やかに登っていく。ヤマザクラはもう大半が終わったばかりで、地面に舞い散った花弁が満開時の名残をとどめている。代わりに真っ赤なツバキの花があちこちに。「葉にギザギザがあるのはユキツバキ」とsatoさんが教えてくれた。 jctピークへは11時半。小川漁港から2時間ほど。
「どうしますか?」
「ランチにしましょう!」
以心伝心の即決だ。ピーク広場は陽射しが暑いくらいで、日蔭か日向か、座り込む場所が決められない。
今日は山歩きか、ランチ宴会か、それともリアス式海岸見学会か? ハッキリしないままだったので、各自の準備物も様々だ。バーチャリさんは、ガス器具と一緒に重い新鮮魚介を担ぎ上げてくれた。しかも前回の教訓から調理バサミまで持参。フライパンで焼き上がったイカをパチンパチンと食べやすい大きさに切り刻む。
satoさんは特製昆布巻きを提供。昆布とニシンの両方の味がしっかり浸みた逸品はアワワの味も引き立ててくれる。ああ、これならロング缶にすればよかった!と、またまた後悔。 たっぷり1時間半の休憩後、半島の中心稜線を北西へ向かう。「怪鳥」の背中から首根っこの172.9三角点(点名=象首谷)へ這い上がるのだ。とはいっても、実際はゆっくりと標高100m以上も下ることになり、私には願っても無いマッタリ歩きが嬉しい。
半島は両サイドが海だから半島である。海を見降ろす山旅の魅力がここにある。しかし、無粋にも常緑樹に落葉樹の新緑が加勢して視野を邪魔してくれる。樹間から時折覗く海に浮かぶのは小浜半島だろうか。久須夜ヶ岳にも一度は行ってみたいなあ…と、また宿題をつくってしまった。
三角点「象首谷」に向けco210のjctピークから西へ折れて下る途中、道祖神の所に人影。きょう山中で初めてヒトに出会った。あいさつをかわし、しばしの会話。背中の稜線は昔からの生活路であり、分岐に道祖神が置かれているのはその安全祈願のためであること、縦走路や下山ルートなどの情報を得る。あとで分かったのだが、その男性は地元常神のお寺の住職さんだった! 三角点に立ち寄ってから、先ほどの道祖神まで引き返し、住職に教わったなだらかな谷筋をジグザグに下っていく。谷といっても水は無く、落葉で埋まった斜面はフワフワで足にやさしい。最後の急斜面も雑木を頼りに下りきり、県道のヘアピンカーブの先端に降り立つ。デポした車が待つ常神社はすぐそこだ。
ここまできたら、半島先端の△238.9(点名=常神浦)に建つ常神灯台にも行ってみようか? などと、またまたイロケを出すのがいけない。もう15時をとっくに回ってますよ。ということで自制心が働き、灯台はキッパリ諦め、せめて集落にある「常神のソテツ」を見に行く。
常神は半島最先端の集落。せいぜい20戸前後と思われるが、生計は漁業と民宿経営がすべてのようだ。庭で天日干しした小さなイカの処理をしていた女性に話を聞く。近年は不漁とコロナ禍もあり、経営していた民宿も止めたそうだ。もう少し季節が進み「大敷網漁が始まればねえ…」と、あてにはできそうにない期待を口にされる。この時期訪れるのは釣り客くらいで、集落には土産物店も無いそうだ。 民家がひしめく迷路のような路地を案内板に導かれて進むと、「ソテツの家」と書かれた建物の中庭のようなところにあった! 巨大ソテツだ。なんでも樹齢1350年だとか。てことは7世紀後半。奈良か飛鳥時代か? 歴史に弱い私には、なぜここに南国植物の代表が生き続けているのか、今も理解不能のまま。
清掃協力金20円の賽銭箱が設けられている。あいにく3人ともサイフは車の中に置いて来た。申しわけないけどお許しください。次回来た時は必ず…。 港のはずれの広場に大型バスが停まった。降りてきたのは学校帰りの子どもたち。1,2,3…、全部で5人。「おかえり~!」と声をかけると、「ただいま~!」と元気な声が返ってきた。中学生1人以外は小学生4人。5年前、隣りの神子集落にあった岬小学校が閉校になり、今は神子崎を回り込んで三方湖畔の梅の里小学校まで通っている。バスでも片道30分はかかるそうだ。工事が進んでいる常神社と神子漁港を繋ぐトンネルが完成すれば、少しは短縮するのだろう。
この村の未来はこの子らに掛かっている! などと勝手な決め付けはいけないが、いつまでも子どもたちの元気な声が聞こえる常神半島であってほしいと願わずにはおれない。
出発点の小川漁港まで戻り、今日の山旅は終了。satoさんとは初めての同行だったが、お二人とも聞きしに勝る羨ましいくらいの健脚。足も動けば口も絶好調♪ 合わせるのに四苦八苦の爺ではありました。
急斜面でのフォロー、美味しいランチメニューなど、いろいろと心遣い、お世話に改めて感謝!の一日でした。
~びわ爺