【奥越】九頭竜湖北岸の山旅 くせ谷山から大谷山、野々小屋山周回
Posted: 2022年3月30日(水) 22:32
【日 付】2022年3月27日(日)
【山 域】奥越 九頭竜湖北岸周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】長野ふるさとの碑7:30---9:30くせ谷山---11:25主稜線---12:15大谷山13:30---14:40P1110---
16:10野々小屋山16:25---17:30駐車地
3週連続の奥越通いである。前2週はたっぷりの雪に恵まれて、残雪の奥越の山を満喫することができた。
このところの暖かさと雨はどう影響を及ぼしているだろうか。
国道158号の九頭竜ダム手前にある、長野ふるさとの碑の前に車を止めた。駐車スペースの心配をしていた
のだが、ちょうどいい位置に駐車場があってひと安心だ。ここは九頭竜ダムの建設に伴って移転を余儀なくさ
れた長野集落を偲ぶ記念碑がある。目の前には九頭竜ダムの本体がドーンと立ちはだかっている。
国道を少し歩いて、左から入る支流の左岸林道に入る。谷は雪解け水が轟々と音を立てて流れている。この
季節の渡渉はなかなか困難だろう。
林道に入ってすぐの右支流の出合から尾根に取り付いた。チェーンスパイクを装着して、崩れかけた雪のブロ
ックの上からズルズルの地肌が出た急斜面へ四輪駆動の登りである。昔はこんなところでも何とも思わず登っ
たものだが、今は手や足が滑ったらと、良からぬ思いが頭をよぎってしまう。慎重なのは悪いことではないが、
慎重になり過ぎると足が前に出ないのだ。
尾根に乗ってしまえば雪が繋がる快適な斜面。ほとんど潜ることもないので、チェーンスパイクのまま歩く。
植林と雑木林のミックスで、林相としては見るべきものはないが、心配していたヤブも出ておらず、手を使わ
ずに足だけで歩けるだけで十分だろう。途中でスノーシューに履き替える。
やがてなだらかな雪尾根がまっすぐに延び、その先に小広いくせ谷山982.8mの山頂があった。変わった名前
だが、三角点名は「狗背谷」と名付けられている。「狗」というのは犬の意味があるので、犬の背中というこ
とだろうか。どっちにしてもよくわからない名前である。
晴れていればダム湖の展望台(但し、木の葉の落ちた時期限定)なのだろうが、重苦しい空の下に鉛色の湖面が
垣間見えるだけだ。昼からは晴れの予報。先週同様に予報を信じて進むしかない。
ここまで上がれば大谷山との標高差は200mしかない。アップダウンはあるものの、ひとつのメドが付いたと
その時は思っていた。
くせ谷山からは一旦90mほどの下りとなる。山頂から足を踏み出すと、なんとまったく雪の無い急傾斜のヤセ
尾根が現れた。これは想定外である。スノーシューを脱いで、ブッシュを掴みながら慎重に下る。
このヤセ尾根は地形図からはとても読み取れない。スノーシューを履いて駆け下るつもりが大きな誤算となった。
結果的に雪が消えていてよかったというべきか。この尾根に雪が着いていればかなり難度が上がっていただろう。
ようやく鞍部に到達したが、出発から2時間半近く経っているのに予定コースの20%も消化していない。大丈夫
だろうか。
しかしここからは目論見通りの雪尾根歩きが始まった。ブナも現れ始め、ペースも上がる。
ただ雪尾根と言っても、尾根芯は地肌が出て、風下側に堆積した膨大な雪堤の上を歩く感じである。こうなると
豪雪の奥越も賞味期限が近付いてきたようだ。
大谷山への主稜線が近付いてきた。右手に見える大谷山は鈍重な山容で、登行欲を掻き立ててくれるというイ
メージではない。遠くから見た主稜線は針葉樹で黒っぽく、植林が続いているのかと思っていた。実際に立って
みると、そこは巨大ヒノキの展示場のような尾根だった。
主稜線に突き当たって右折すると、尾根を塞ぐヒノキに度肝を抜かれた。両足を踏ん張ったように立つ根上が
りの2本の太い幹の間が広い通路になっており、少しかがむだけで通り抜けることができる。
今までいろんなヒノキの巨木、怪木を見てきたが、こんなヒノキの股くぐりは初めてだ。
この頃から予報通り青空が広がり始め、嫌でも気分は高揚してくる。右手に見える優美な山容の山は荒島岳か。
それにしては先週と比べて黒い。ずいぶん雪解けが進んだのだろうか。
ヒノキ帯を抜けて1067mへの登り返しに入ると、いよいよブナ林のお出ましである。
大谷山頂から北に延びる山上台地まで来ると、予期していなかった見事な展望が広がった。
先週は霞がちだった白山の姿がくっきりと見える。傾斜を失った広い尾根は一面のブナ林で、左手の智奈洞谷
(なんと優雅な名前だろう)側には原生と思える巨木が点在している。
雪面にブナが影を落としてまだら模様を描く。奥越の山の中では後回しになっていた山だが、こんなにいいとこ
ろだとは思わなかった。
1160.8mの大谷山頂はなぜか普通のヒノキが1本だけ立つ広大な雪原となっていた。それがなければ360度のパ
ノラマだが、裏手に回れば全部見えるので良しとしよう。
雪面から三方を囲むようにブロック塀のようなものが頭を出していた。小屋掛けでもあったのだろうか。
ザックを降ろして雨蓋を開けた拍子に雨具が転げ落ちて、ブロックと雪の間に転がって行った。慌てて拾おうと
穴を覗くと、なんと2m近く下で止まっていた。ストックを目一杯伸ばして腕を差し込み、スノーバスケットに
引っ掛けてなんとか回収に成功。やれやれである。これで山頂の積雪は軽く2mオーバーであることがわかった。
空は文句なしの快晴となった。正面に白山と石徹白の山々。そして先週登った松鞍山と枇杷倉山へ続く稜線を
眺めながら、至福のランチタイムを楽しむ。残念なのは、スーパーの鍋コーナーが終了していたのでラーメンに
なってしまったことである。
しかしこのシチュエーションなら、ビールさえ忘れなければ何を食っても美味いのだ。
反対側の眺めは九頭竜川を挟んで横に長く延びる越美国境稜線である。
ここでさっきの黒い荒島岳が、実は屏風山であったことがわかった。荒島岳はずっと手前の山に邪魔されて見え
なかったのだ。
ランチタイムを堪能して分岐まで引き返す。本日の最終ミッションである、野々小屋山1065.6mに向かおう。
アップダウンも大したことはなく、楽勝ムードで踏み出した西への尾根だったが、これが一筋縄では行かなかった。
巨大ヒノキ帯はこちら側にも続き、と言うよりこちらの方がメインだったようで、尾根芯をまともに歩ける場所
が少なくなってきた。しかもシャクナゲまで現れて、尾根の両側の歩きやすいところを探りながら歩くも、遅々
として進まない。これは想定外である。
これが野々小屋山まで続いたらとてもじゃないが日のあるうちに下山できないだろう。
さっきまでは汗ばむような日差しで暑いぐらいだったのが、木陰でひんやりしてきたはずなのに、今度は冷や汗
が出てきた。
しかし悪いことは長くは続かないもので、1075mの手前鞍部まで来るとヒノキ地獄も終わり、再び快適な雪尾
根に変わった。このまま行けば闇下は避けられるだろう。そもそもスタートが遅いのはこの際不問である。
意外なほど展望のいいブナ林の尾根が続き、足取りも軽い。南側斜面には雪の台地が広がり、緩やかに上がって
来る谷の源頭と小尾根が作り出すうねった地形の連続に頬が緩む。
時間があれば飛び込んで行ってさまよい歩きたいような疎林の台地と斜面だ。
Ca1050mで尾根が分岐する。右を取れば野々小屋山までは一投足。先ほどまでと同じような作りの浅い谷の源
頭を眺めながら、10分足らずで本日3つ目の山頂、野々小屋山に立った。
三角点名は「桧株」。なんといわくあり気な名前だろう。その名に反してさっきの稜線のようなヒノキが目立つ
わけではない。展望は意外に良く、九頭竜湖の奥に越美国境稜線を望むことができた。
これで本日の目標はすべて達成だ。ゆっくりしたいところだが暗くなる前に下山しよう。
先ほどのジャンクションまで戻って南尾根に入る。時刻はもう4時半だが、1時間もあれば下りられるだろう。
この尾根もまずまずのルートだった。欲を言えば野々小屋山の先の1009mまで進んでから、谷の源頭で遊んでこ
の尾根に乗りたかった
途中からは地図にない林道が次々と現れた。駐車地の真上に下りる尾根に入るつもりが通り過ぎてしまい、
次の尾根を下る。国道の法面にぶち当たる心配はあったが、植林なので杣道で着地できるだろうと踏んだ。
するとまたもや林道が出現して、これ幸いと駐車地の50mほど手前に出ることができた。
下山開始からきっかり1時間。読み通りだ。
九頭竜湖北岸の3つの三角点を踏破するいい山旅だった。これで奥越通いもひと区切りというところだろうか。
山日和
【山 域】奥越 九頭竜湖北岸周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】長野ふるさとの碑7:30---9:30くせ谷山---11:25主稜線---12:15大谷山13:30---14:40P1110---
16:10野々小屋山16:25---17:30駐車地
3週連続の奥越通いである。前2週はたっぷりの雪に恵まれて、残雪の奥越の山を満喫することができた。
このところの暖かさと雨はどう影響を及ぼしているだろうか。
国道158号の九頭竜ダム手前にある、長野ふるさとの碑の前に車を止めた。駐車スペースの心配をしていた
のだが、ちょうどいい位置に駐車場があってひと安心だ。ここは九頭竜ダムの建設に伴って移転を余儀なくさ
れた長野集落を偲ぶ記念碑がある。目の前には九頭竜ダムの本体がドーンと立ちはだかっている。
国道を少し歩いて、左から入る支流の左岸林道に入る。谷は雪解け水が轟々と音を立てて流れている。この
季節の渡渉はなかなか困難だろう。
林道に入ってすぐの右支流の出合から尾根に取り付いた。チェーンスパイクを装着して、崩れかけた雪のブロ
ックの上からズルズルの地肌が出た急斜面へ四輪駆動の登りである。昔はこんなところでも何とも思わず登っ
たものだが、今は手や足が滑ったらと、良からぬ思いが頭をよぎってしまう。慎重なのは悪いことではないが、
慎重になり過ぎると足が前に出ないのだ。
尾根に乗ってしまえば雪が繋がる快適な斜面。ほとんど潜ることもないので、チェーンスパイクのまま歩く。
植林と雑木林のミックスで、林相としては見るべきものはないが、心配していたヤブも出ておらず、手を使わ
ずに足だけで歩けるだけで十分だろう。途中でスノーシューに履き替える。
やがてなだらかな雪尾根がまっすぐに延び、その先に小広いくせ谷山982.8mの山頂があった。変わった名前
だが、三角点名は「狗背谷」と名付けられている。「狗」というのは犬の意味があるので、犬の背中というこ
とだろうか。どっちにしてもよくわからない名前である。
晴れていればダム湖の展望台(但し、木の葉の落ちた時期限定)なのだろうが、重苦しい空の下に鉛色の湖面が
垣間見えるだけだ。昼からは晴れの予報。先週同様に予報を信じて進むしかない。
ここまで上がれば大谷山との標高差は200mしかない。アップダウンはあるものの、ひとつのメドが付いたと
その時は思っていた。
くせ谷山からは一旦90mほどの下りとなる。山頂から足を踏み出すと、なんとまったく雪の無い急傾斜のヤセ
尾根が現れた。これは想定外である。スノーシューを脱いで、ブッシュを掴みながら慎重に下る。
このヤセ尾根は地形図からはとても読み取れない。スノーシューを履いて駆け下るつもりが大きな誤算となった。
結果的に雪が消えていてよかったというべきか。この尾根に雪が着いていればかなり難度が上がっていただろう。
ようやく鞍部に到達したが、出発から2時間半近く経っているのに予定コースの20%も消化していない。大丈夫
だろうか。
しかしここからは目論見通りの雪尾根歩きが始まった。ブナも現れ始め、ペースも上がる。
ただ雪尾根と言っても、尾根芯は地肌が出て、風下側に堆積した膨大な雪堤の上を歩く感じである。こうなると
豪雪の奥越も賞味期限が近付いてきたようだ。
大谷山への主稜線が近付いてきた。右手に見える大谷山は鈍重な山容で、登行欲を掻き立ててくれるというイ
メージではない。遠くから見た主稜線は針葉樹で黒っぽく、植林が続いているのかと思っていた。実際に立って
みると、そこは巨大ヒノキの展示場のような尾根だった。
主稜線に突き当たって右折すると、尾根を塞ぐヒノキに度肝を抜かれた。両足を踏ん張ったように立つ根上が
りの2本の太い幹の間が広い通路になっており、少しかがむだけで通り抜けることができる。
今までいろんなヒノキの巨木、怪木を見てきたが、こんなヒノキの股くぐりは初めてだ。
この頃から予報通り青空が広がり始め、嫌でも気分は高揚してくる。右手に見える優美な山容の山は荒島岳か。
それにしては先週と比べて黒い。ずいぶん雪解けが進んだのだろうか。
ヒノキ帯を抜けて1067mへの登り返しに入ると、いよいよブナ林のお出ましである。
大谷山頂から北に延びる山上台地まで来ると、予期していなかった見事な展望が広がった。
先週は霞がちだった白山の姿がくっきりと見える。傾斜を失った広い尾根は一面のブナ林で、左手の智奈洞谷
(なんと優雅な名前だろう)側には原生と思える巨木が点在している。
雪面にブナが影を落としてまだら模様を描く。奥越の山の中では後回しになっていた山だが、こんなにいいとこ
ろだとは思わなかった。
1160.8mの大谷山頂はなぜか普通のヒノキが1本だけ立つ広大な雪原となっていた。それがなければ360度のパ
ノラマだが、裏手に回れば全部見えるので良しとしよう。
雪面から三方を囲むようにブロック塀のようなものが頭を出していた。小屋掛けでもあったのだろうか。
ザックを降ろして雨蓋を開けた拍子に雨具が転げ落ちて、ブロックと雪の間に転がって行った。慌てて拾おうと
穴を覗くと、なんと2m近く下で止まっていた。ストックを目一杯伸ばして腕を差し込み、スノーバスケットに
引っ掛けてなんとか回収に成功。やれやれである。これで山頂の積雪は軽く2mオーバーであることがわかった。
空は文句なしの快晴となった。正面に白山と石徹白の山々。そして先週登った松鞍山と枇杷倉山へ続く稜線を
眺めながら、至福のランチタイムを楽しむ。残念なのは、スーパーの鍋コーナーが終了していたのでラーメンに
なってしまったことである。
しかしこのシチュエーションなら、ビールさえ忘れなければ何を食っても美味いのだ。
反対側の眺めは九頭竜川を挟んで横に長く延びる越美国境稜線である。
ここでさっきの黒い荒島岳が、実は屏風山であったことがわかった。荒島岳はずっと手前の山に邪魔されて見え
なかったのだ。
ランチタイムを堪能して分岐まで引き返す。本日の最終ミッションである、野々小屋山1065.6mに向かおう。
アップダウンも大したことはなく、楽勝ムードで踏み出した西への尾根だったが、これが一筋縄では行かなかった。
巨大ヒノキ帯はこちら側にも続き、と言うよりこちらの方がメインだったようで、尾根芯をまともに歩ける場所
が少なくなってきた。しかもシャクナゲまで現れて、尾根の両側の歩きやすいところを探りながら歩くも、遅々
として進まない。これは想定外である。
これが野々小屋山まで続いたらとてもじゃないが日のあるうちに下山できないだろう。
さっきまでは汗ばむような日差しで暑いぐらいだったのが、木陰でひんやりしてきたはずなのに、今度は冷や汗
が出てきた。
しかし悪いことは長くは続かないもので、1075mの手前鞍部まで来るとヒノキ地獄も終わり、再び快適な雪尾
根に変わった。このまま行けば闇下は避けられるだろう。そもそもスタートが遅いのはこの際不問である。
意外なほど展望のいいブナ林の尾根が続き、足取りも軽い。南側斜面には雪の台地が広がり、緩やかに上がって
来る谷の源頭と小尾根が作り出すうねった地形の連続に頬が緩む。
時間があれば飛び込んで行ってさまよい歩きたいような疎林の台地と斜面だ。
Ca1050mで尾根が分岐する。右を取れば野々小屋山までは一投足。先ほどまでと同じような作りの浅い谷の源
頭を眺めながら、10分足らずで本日3つ目の山頂、野々小屋山に立った。
三角点名は「桧株」。なんといわくあり気な名前だろう。その名に反してさっきの稜線のようなヒノキが目立つ
わけではない。展望は意外に良く、九頭竜湖の奥に越美国境稜線を望むことができた。
これで本日の目標はすべて達成だ。ゆっくりしたいところだが暗くなる前に下山しよう。
先ほどのジャンクションまで戻って南尾根に入る。時刻はもう4時半だが、1時間もあれば下りられるだろう。
この尾根もまずまずのルートだった。欲を言えば野々小屋山の先の1009mまで進んでから、谷の源頭で遊んでこ
の尾根に乗りたかった
途中からは地図にない林道が次々と現れた。駐車地の真上に下りる尾根に入るつもりが通り過ぎてしまい、
次の尾根を下る。国道の法面にぶち当たる心配はあったが、植林なので杣道で着地できるだろうと踏んだ。
するとまたもや林道が出現して、これ幸いと駐車地の50mほど手前に出ることができた。
下山開始からきっかり1時間。読み通りだ。
九頭竜湖北岸の3つの三角点を踏破するいい山旅だった。これで奥越通いもひと区切りというところだろうか。
山日和