【奥越】静寂と展望の縦走路 大嵐山から松鞍山へ
Posted: 2022年3月24日(木) 21:58
【日 付】2022年3月21日(月)
【山 域】奥越 打波川流域周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下打波6:40---8:00 P712m---9:00 P976m---10:00大嵐山---12:15松鞍山14:00---15:55大嵐山---16:30 P976m
---17:35林道---18:00駐車地
下打波の集落は深い雪の中にひっそりと佇んでいた。人の気配のしない集落を抜けて、奥越林道の入口に車
を停める。目の前にはバス停があり、何に使っていたのだろうか水場が設えられていた。
林道を20mほど進んだところで雪の壁に阻まれた。当然ながら除雪されているはずもない。
1m以上も積もった雪の上によっこらしょと上がって、目的の尾根の末端へ向かう。
尾根芯にはすでにヤブが出ているので、斜面をトラバースして尾根に乗る。
一段上がったところで先ほどの林道の続きに出会った。ここからは植林ながらもスノーシューで快適に歩く
ことができた。雪はよく締まっている。
しかし肝心の天気は少し悪い方へ振れたようで、空の色はどんよりと沈んでいる。予報では曇りのち晴れだ。
予報を信じて進もう。
やがて植林が切れると感じのいいブナ混じりの雑木林に変わった。地形図でこの尾根を見ると、712m標高点
のあたりで右手の谷と合流するかのように尾根の形がなくなる。実際にはどんな地形なのか興味津々である。
広い雑木の疎林となっている712mまで来た。なかなかいいところだ。見上げると谷を挟んだ隣の尾根が覆い
かぶさるように高いところを走っている。並走してきた谷は歩いて来た尾根が90度右折したところで、まるで
尾根の一部になったように吸収されていた。
谷の源頭は広く緩やかで、一面の雪原となっている。これで地形図の疑問が氷解した。
さて、ここから隣の尾根の976m標高点まで260mの急登が待っている。ヒールリフターを利かせて、ジグザグ
を切ることもなく一直線に登って行く。湿り気を帯びた重い雪だが、締まっていればスノーシューのフレームが
ガッチリと食い込んでピタッと止まる。まさにスノーシュー向けの急斜面だ。ワカンだと相当苦労するに違いな
い。あたりは若いながらも見渡す限りブナの純林である。
やがて傾斜が緩むと、尾根は緩やかにカーブを描いて976mで隣の尾根と合流する。
ブナも少し太さを増してきた。実にいい雰囲気だ。
ここから大嵐山まで軽いアップダウンのブナのプロムナードが続く。尾根はあくまで穏やかで広々しているが、
決して平坦ではなく、微妙な起伏や舟窪地形、二重山稜、段丘状の場所など、ブナ林のベースとなる地形の妙も
楽しませてくれるので、ブナフェチや地形フェチにはたまらないところである。
そこそこの大木も多く、これまで見たブナ林の中でも、足の指も動員して確実に20本の指には入るだろう。
967m標高点の手前で林道に出会う。鏡の部分だけ頭を出したカーブミラーがなければ林道だとは気付かないか
もしれない。
大嵐山の山頂は展望はないが、ブナに囲まれた落ち着いたピークだ。
ここまで来るだけでも十分満足できる山頂であるが、時間はまだ10時。先に進まないという選択肢はない。
ブナ林を抜けて少し進むと大展望地に飛び出した。右手には荒島岳と木無山が間近に迫る。特に純白の荒島岳
は無垢の美しい姿で誘いかけてくるようだ。木無山もいつもとは違う方向からの姿が新鮮だった。
左手には経ヶ岳から赤兎山が並び、その奥には山頂部が雲に隠れているが白山と別山が荒島以上の白さを誇って
いる。裏側から見る愛する石徹白の山々の姿も新鮮だ。
そしてこれから進む正面には松鞍山と枇杷倉山が存在感たっぷりの姿でこちらを見下ろしていた。
どんぐりのような枇杷倉山の鋭鋒は人を拒絶しているような佇まいで、松鞍山へ続く稜線は取り付く島もないよ
うな急角度で一気に高度を下げている。
松鞍山はずんぐりとした形だが、思ったよりも近くに見えた。こういう時は調子が悪くない証拠である。
ここからは大嵐山までと打って変わって展望の雪尾根歩きが続く。この展望は伐採と引き換えのものなので、
喜ぶべきなのか微妙なところではあるのだが。
頭上にはいつしか青空が広がり、暑いぐらいの日差しを浴びて歩く。
一旦1008mの鞍部まで下ると山頂まではあと400mの登りだ。じっくり確実に歩を進めて行こう。
右下に広がる広大な台地は池ヶ原と呼ばれる開拓地の跡である。ここではオウレンの栽培が盛んだったようだ。
松鞍山への最後の登りにかかると尾根芯は地肌が出て、風下側に堆積した雪も大きな段差と割れ目が現れ始め
た。尾根芯にはそこはかとなく踏み跡があるようだ。その踏み跡を利用したり、雪の上へ出たり、左手の谷の雪
渓を歩いたりと、あの手この手を駆使して山頂へ近付いて行く。
左に回り込んだところにある山頂手前の樹林には霧氷が残っているようだ。そう言えば、ここまでの雪面にも
至るところに霧氷の残骸が落ちていた。昨日なら満開の霧氷の中を歩けたのだろう。
急登が終わって東西に長細い山頂台地の一角に立った。ここからはまたブナの森が始まる。
かなりの巨木もあり、風格のあるその姿を背景にした経ヶ岳や赤兎山は実に絵になる。
辿り着いた松鞍山頂はここまでの変化に富んだ道程からするとやや平凡だが、これはこれで十分だ。控えめな
霧氷も落ちずに待っていてくれた。
少し風があるので東側の雪堤下に陣取ってランチタイムとする。真正面の枇杷倉山と雪稜で繋がる小白山が凄い
迫力である。風がないここはポカポカ陽気で、先週に続いて防寒着要らずだ。
休んでいる間にも日差しで霧氷がバラバラと落ちる音がひっきりなしに響いていた。
先週と違って、元来た道を戻らなければならない下山の行程は長い。いつまでも去り難い山頂だが踏ん切りを
つけよう。
往路と反対向きの展望を楽しみながら下って行く。雪は少し腐ってきたようだが、そうでもないところもあり、
どういう加減で差が出るのか不思議である。
976m標高点からは変化を付けるために南西への尾根を選んだ。この尾根も悪くはないが、植林が出るのが早く、
急斜面を七転八倒しながら転げ落ちるように下る。
林道に下りたって少し進むと採石場があり、その先まで除雪されていた。谷山川は雪融け水を轟々と響かせな
がら流れている。
空から冷たいものが落ち始めた。天気は下り坂なのだろう。
駐車地に戻る頃にはあたりは薄暗くなってきた。ちょっとのんびりし過ぎたか。
しかし登ることはないかもしれないと思っていた奥越の秘峰、松鞍山に立てた喜びと引き換えならば何でもない。
今シーズン一番の充実した山旅だった。
山日和
【山 域】奥越 打波川流域周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下打波6:40---8:00 P712m---9:00 P976m---10:00大嵐山---12:15松鞍山14:00---15:55大嵐山---16:30 P976m
---17:35林道---18:00駐車地
下打波の集落は深い雪の中にひっそりと佇んでいた。人の気配のしない集落を抜けて、奥越林道の入口に車
を停める。目の前にはバス停があり、何に使っていたのだろうか水場が設えられていた。
林道を20mほど進んだところで雪の壁に阻まれた。当然ながら除雪されているはずもない。
1m以上も積もった雪の上によっこらしょと上がって、目的の尾根の末端へ向かう。
尾根芯にはすでにヤブが出ているので、斜面をトラバースして尾根に乗る。
一段上がったところで先ほどの林道の続きに出会った。ここからは植林ながらもスノーシューで快適に歩く
ことができた。雪はよく締まっている。
しかし肝心の天気は少し悪い方へ振れたようで、空の色はどんよりと沈んでいる。予報では曇りのち晴れだ。
予報を信じて進もう。
やがて植林が切れると感じのいいブナ混じりの雑木林に変わった。地形図でこの尾根を見ると、712m標高点
のあたりで右手の谷と合流するかのように尾根の形がなくなる。実際にはどんな地形なのか興味津々である。
広い雑木の疎林となっている712mまで来た。なかなかいいところだ。見上げると谷を挟んだ隣の尾根が覆い
かぶさるように高いところを走っている。並走してきた谷は歩いて来た尾根が90度右折したところで、まるで
尾根の一部になったように吸収されていた。
谷の源頭は広く緩やかで、一面の雪原となっている。これで地形図の疑問が氷解した。
さて、ここから隣の尾根の976m標高点まで260mの急登が待っている。ヒールリフターを利かせて、ジグザグ
を切ることもなく一直線に登って行く。湿り気を帯びた重い雪だが、締まっていればスノーシューのフレームが
ガッチリと食い込んでピタッと止まる。まさにスノーシュー向けの急斜面だ。ワカンだと相当苦労するに違いな
い。あたりは若いながらも見渡す限りブナの純林である。
やがて傾斜が緩むと、尾根は緩やかにカーブを描いて976mで隣の尾根と合流する。
ブナも少し太さを増してきた。実にいい雰囲気だ。
ここから大嵐山まで軽いアップダウンのブナのプロムナードが続く。尾根はあくまで穏やかで広々しているが、
決して平坦ではなく、微妙な起伏や舟窪地形、二重山稜、段丘状の場所など、ブナ林のベースとなる地形の妙も
楽しませてくれるので、ブナフェチや地形フェチにはたまらないところである。
そこそこの大木も多く、これまで見たブナ林の中でも、足の指も動員して確実に20本の指には入るだろう。
967m標高点の手前で林道に出会う。鏡の部分だけ頭を出したカーブミラーがなければ林道だとは気付かないか
もしれない。
大嵐山の山頂は展望はないが、ブナに囲まれた落ち着いたピークだ。
ここまで来るだけでも十分満足できる山頂であるが、時間はまだ10時。先に進まないという選択肢はない。
ブナ林を抜けて少し進むと大展望地に飛び出した。右手には荒島岳と木無山が間近に迫る。特に純白の荒島岳
は無垢の美しい姿で誘いかけてくるようだ。木無山もいつもとは違う方向からの姿が新鮮だった。
左手には経ヶ岳から赤兎山が並び、その奥には山頂部が雲に隠れているが白山と別山が荒島以上の白さを誇って
いる。裏側から見る愛する石徹白の山々の姿も新鮮だ。
そしてこれから進む正面には松鞍山と枇杷倉山が存在感たっぷりの姿でこちらを見下ろしていた。
どんぐりのような枇杷倉山の鋭鋒は人を拒絶しているような佇まいで、松鞍山へ続く稜線は取り付く島もないよ
うな急角度で一気に高度を下げている。
松鞍山はずんぐりとした形だが、思ったよりも近くに見えた。こういう時は調子が悪くない証拠である。
ここからは大嵐山までと打って変わって展望の雪尾根歩きが続く。この展望は伐採と引き換えのものなので、
喜ぶべきなのか微妙なところではあるのだが。
頭上にはいつしか青空が広がり、暑いぐらいの日差しを浴びて歩く。
一旦1008mの鞍部まで下ると山頂まではあと400mの登りだ。じっくり確実に歩を進めて行こう。
右下に広がる広大な台地は池ヶ原と呼ばれる開拓地の跡である。ここではオウレンの栽培が盛んだったようだ。
松鞍山への最後の登りにかかると尾根芯は地肌が出て、風下側に堆積した雪も大きな段差と割れ目が現れ始め
た。尾根芯にはそこはかとなく踏み跡があるようだ。その踏み跡を利用したり、雪の上へ出たり、左手の谷の雪
渓を歩いたりと、あの手この手を駆使して山頂へ近付いて行く。
左に回り込んだところにある山頂手前の樹林には霧氷が残っているようだ。そう言えば、ここまでの雪面にも
至るところに霧氷の残骸が落ちていた。昨日なら満開の霧氷の中を歩けたのだろう。
急登が終わって東西に長細い山頂台地の一角に立った。ここからはまたブナの森が始まる。
かなりの巨木もあり、風格のあるその姿を背景にした経ヶ岳や赤兎山は実に絵になる。
辿り着いた松鞍山頂はここまでの変化に富んだ道程からするとやや平凡だが、これはこれで十分だ。控えめな
霧氷も落ちずに待っていてくれた。
少し風があるので東側の雪堤下に陣取ってランチタイムとする。真正面の枇杷倉山と雪稜で繋がる小白山が凄い
迫力である。風がないここはポカポカ陽気で、先週に続いて防寒着要らずだ。
休んでいる間にも日差しで霧氷がバラバラと落ちる音がひっきりなしに響いていた。
先週と違って、元来た道を戻らなければならない下山の行程は長い。いつまでも去り難い山頂だが踏ん切りを
つけよう。
往路と反対向きの展望を楽しみながら下って行く。雪は少し腐ってきたようだが、そうでもないところもあり、
どういう加減で差が出るのか不思議である。
976m標高点からは変化を付けるために南西への尾根を選んだ。この尾根も悪くはないが、植林が出るのが早く、
急斜面を七転八倒しながら転げ落ちるように下る。
林道に下りたって少し進むと採石場があり、その先まで除雪されていた。谷山川は雪融け水を轟々と響かせな
がら流れている。
空から冷たいものが落ち始めた。天気は下り坂なのだろう。
駐車地に戻る頃にはあたりは薄暗くなってきた。ちょっとのんびりし過ぎたか。
しかし登ることはないかもしれないと思っていた奥越の秘峰、松鞍山に立てた喜びと引き換えならば何でもない。
今シーズン一番の充実した山旅だった。
山日和