【南越前】新雪の藤倉山からブナのパラダイスへ
Posted: 2022年1月25日(火) 19:55
【日 付】2022年1月15日(土)
【山 域】南越前 藤倉山周辺
【天 候】曇り一時晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】今庄駅8:30---9:15燧ヶ城址---11:35藤倉山13:45---14:20 P634パラダイス14:50---16:10鍋倉山---
17:15今庄駅
雪が積もるのはうれしいが、降り過ぎるのも考えものだ。特に降雪直後はラッセルが大変だし、車を止める
場所にも気を遣う。
今日のプランは行程が短く、確実に登頂できて雪と遊べることをメインに考えた。しかもJRの駅からスタート
(別に電車で行くわけではないが)できるという便利さである。
今庄の駅に来てみると、手前からダンプが並んで物々しい雰囲気だった。脇を通り抜けて駐車場に回ると意
味がわかった。除雪した雪をダンプに積み込んでいるのだ。道脇にどけるだけでは追い付かないので、ダンプ
で運んで捨てているというわけである。
駐車場の横から見える線路には、長い貨物列車が停車して、ちょうど特急サンダーバードが通過して行くと
ころだった。マニアではないが、鉄道好きとしてはなかなかいい場面だ。
宿場町の面影を残す旧北陸道を抜けて観音堂の登山口へ。当然トレースはなく、いきなりヒザ近くまで潜る
が雪は軽い。燧ヶ城への登山道に入ると、スネ程度のラッセルとなった。
今日はそこそこ冷え込んだので霧氷を期待していたのだが、遠望で見えた白さは木に着いた雪だったようだ。
霧氷の繊細な美しさはないものの、木々に咲いた白い花はそれはそれで美しい。
燧ヶ城の遺構も全部雪の下で、なんとなく雪面がモコモコしているだけだ。眼下の今庄の街並みの先に日野
山の美しい姿を望むことができた。
以前、カタクリ見物にここまで来たことはあるが、藤倉山への道は初めて歩く。標高が低いせいもあり常緑
樹主体の林なのだが、標高300m足らずの場所からブナが現れるのは驚きだ。
高度が上がるにつれ、パウダーだった雪が湿りを帯びてきた。
尾根上には2ヶ所送電鉄塔があり、それぞれ見事な展望を得ることができる。
視線の先に横たわる越美国境稜線の山々の姿は、これまで自分が歩いてきた数々の記憶を呼び覚ます。
眼下に見える谷あいの集落は旧北陸道の新道あたりだろうか。ちょうど下りのサンダーバードが走って行くと
ころがまるでジオラマのように見えた。
先週歩いた八飯の風況観測塔も見える。この山に展望はまったく期待していなかったので、うれしい誤算だった。
2番目の鉄塔の先からはブナ林に変わった。昨年の12月に鍋倉山からホノケ山へ歩いた時、それまでこの尾根
上にブナ林が残されているのを知らず驚いたものだった。標高が低いことと、藤倉山から鍋倉山の周回では短す
ぎて物足りないということもあって、これまでは食指の動かない山域だったのだが、実際に歩いてみると予想外
にいい山である。
大きな反射板の立つ藤倉山頂は愛想のないところだが、反射板の横に特等席があった。
正面に金草岳や部子山(もちろん日野山も)を望む大展望地だ。少し早いがここでランチタイムとすることに異論
はない。どんよりしていた空にも少し晴れ間が広がってきた。
越美国境稜線と、先月歩いた唐木岳から野見ヶ岳、日野山へと続く尾根、左の奥は越前甲と加賀大日あたりか。
さらに左へ振ると浄法寺山らしき姿も見える。そして遠くに浮かぶ白い塊りは白山御前峰だ。
少し時間が経つと左側に大汝峰が姿を現し、さらに七倉山が見え、今度は右側に別山が視界に入った。
ここより優れたランチ場所はないだろう。気が付けば2時間以上ものんびりしてしまった。
今日の本来の目的は藤倉山の山頂ではない。昨年のホノケ山への縦走時に見た634m標高点あたりに広がるブナ
林の、北側から上がるゆったりとした地形である。
あの時、もっさりとしたヤブに並ぶブナ達を、ヤブを埋め尽くすたっぷりの積雪の中で見てみたいと思っていた
のだ。
藤倉山からずっと豊かなブナの森が続く。鍋倉山の分岐から先は1ヶ月ほど前に歩いたばかりなのだが、雪の量
の違いで林床のヤブが消え、まったく違う風景になっている。
634m標高点を左から巻いて目的地に着いた。そこには予想通り、雪面からブナだけがスックと立ち並ぶパラダ
イスが待っていた。地形図には表せない小さな起伏が連続する地形は、のっぺりした雪原と違って雪面に微妙な
陰影を作り出している。
ザックを降ろしてしばし散策。思い描いた通りの風景の広がりにこころが満たされていくのを感じた。
そうこうしているうちに3時を回ってしまった。
鍋倉山の分岐まで戻って、トラバースする登山道を無視してダイレクトに下って行く。
急斜面を浮遊するように駆け下ると尾根の形が出てきて、ここにも素敵なブナ林が続いた。
但し、いいところはここまで。ここから先はあまり面白くない林相に変わり、鍋倉山の山頂も特徴のない場所で
ある。
後は登山道を辿るだけだから楽勝なのだが、ここでスケベ心が出てしまい、山頂の東からまっすぐ伸びる尾根
を選択。送電線が2本走っているので巡視路があるだろうという読みだった。
結果的には道はなく、潅木のヤブや岩盤に雪の乗った斜面と格闘する羽目になってしまった。急がば回れである。
まあ、しなくてもいい苦労を買ってでもするのが自分らしいが。
ただ、途中の鉄塔から見えた越美国境稜線の姿が素晴らしかった。午前中の風景とは違い、夕刻の残照にオレ
ンジ色に燃える雪の稜線に心を奪われる。この時間に歩いていなければ出会えなかった風景だ。
林道に着地すると雨が降り始めた。お誂え向きに目の前にあった建物で雨宿りしようと近付いてみると、なん
と今庄の火葬場だった。すぐに雨も上がったのでお世話にならずに済んだのが幸いだった。
夕闇迫る今庄宿の街並みを抜けて今庄駅へ戻ると、山積みだった雪はきれいになくなっていた。
山日和
【山 域】南越前 藤倉山周辺
【天 候】曇り一時晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】今庄駅8:30---9:15燧ヶ城址---11:35藤倉山13:45---14:20 P634パラダイス14:50---16:10鍋倉山---
17:15今庄駅
雪が積もるのはうれしいが、降り過ぎるのも考えものだ。特に降雪直後はラッセルが大変だし、車を止める
場所にも気を遣う。
今日のプランは行程が短く、確実に登頂できて雪と遊べることをメインに考えた。しかもJRの駅からスタート
(別に電車で行くわけではないが)できるという便利さである。
今庄の駅に来てみると、手前からダンプが並んで物々しい雰囲気だった。脇を通り抜けて駐車場に回ると意
味がわかった。除雪した雪をダンプに積み込んでいるのだ。道脇にどけるだけでは追い付かないので、ダンプ
で運んで捨てているというわけである。
駐車場の横から見える線路には、長い貨物列車が停車して、ちょうど特急サンダーバードが通過して行くと
ころだった。マニアではないが、鉄道好きとしてはなかなかいい場面だ。
宿場町の面影を残す旧北陸道を抜けて観音堂の登山口へ。当然トレースはなく、いきなりヒザ近くまで潜る
が雪は軽い。燧ヶ城への登山道に入ると、スネ程度のラッセルとなった。
今日はそこそこ冷え込んだので霧氷を期待していたのだが、遠望で見えた白さは木に着いた雪だったようだ。
霧氷の繊細な美しさはないものの、木々に咲いた白い花はそれはそれで美しい。
燧ヶ城の遺構も全部雪の下で、なんとなく雪面がモコモコしているだけだ。眼下の今庄の街並みの先に日野
山の美しい姿を望むことができた。
以前、カタクリ見物にここまで来たことはあるが、藤倉山への道は初めて歩く。標高が低いせいもあり常緑
樹主体の林なのだが、標高300m足らずの場所からブナが現れるのは驚きだ。
高度が上がるにつれ、パウダーだった雪が湿りを帯びてきた。
尾根上には2ヶ所送電鉄塔があり、それぞれ見事な展望を得ることができる。
視線の先に横たわる越美国境稜線の山々の姿は、これまで自分が歩いてきた数々の記憶を呼び覚ます。
眼下に見える谷あいの集落は旧北陸道の新道あたりだろうか。ちょうど下りのサンダーバードが走って行くと
ころがまるでジオラマのように見えた。
先週歩いた八飯の風況観測塔も見える。この山に展望はまったく期待していなかったので、うれしい誤算だった。
2番目の鉄塔の先からはブナ林に変わった。昨年の12月に鍋倉山からホノケ山へ歩いた時、それまでこの尾根
上にブナ林が残されているのを知らず驚いたものだった。標高が低いことと、藤倉山から鍋倉山の周回では短す
ぎて物足りないということもあって、これまでは食指の動かない山域だったのだが、実際に歩いてみると予想外
にいい山である。
大きな反射板の立つ藤倉山頂は愛想のないところだが、反射板の横に特等席があった。
正面に金草岳や部子山(もちろん日野山も)を望む大展望地だ。少し早いがここでランチタイムとすることに異論
はない。どんよりしていた空にも少し晴れ間が広がってきた。
越美国境稜線と、先月歩いた唐木岳から野見ヶ岳、日野山へと続く尾根、左の奥は越前甲と加賀大日あたりか。
さらに左へ振ると浄法寺山らしき姿も見える。そして遠くに浮かぶ白い塊りは白山御前峰だ。
少し時間が経つと左側に大汝峰が姿を現し、さらに七倉山が見え、今度は右側に別山が視界に入った。
ここより優れたランチ場所はないだろう。気が付けば2時間以上ものんびりしてしまった。
今日の本来の目的は藤倉山の山頂ではない。昨年のホノケ山への縦走時に見た634m標高点あたりに広がるブナ
林の、北側から上がるゆったりとした地形である。
あの時、もっさりとしたヤブに並ぶブナ達を、ヤブを埋め尽くすたっぷりの積雪の中で見てみたいと思っていた
のだ。
藤倉山からずっと豊かなブナの森が続く。鍋倉山の分岐から先は1ヶ月ほど前に歩いたばかりなのだが、雪の量
の違いで林床のヤブが消え、まったく違う風景になっている。
634m標高点を左から巻いて目的地に着いた。そこには予想通り、雪面からブナだけがスックと立ち並ぶパラダ
イスが待っていた。地形図には表せない小さな起伏が連続する地形は、のっぺりした雪原と違って雪面に微妙な
陰影を作り出している。
ザックを降ろしてしばし散策。思い描いた通りの風景の広がりにこころが満たされていくのを感じた。
そうこうしているうちに3時を回ってしまった。
鍋倉山の分岐まで戻って、トラバースする登山道を無視してダイレクトに下って行く。
急斜面を浮遊するように駆け下ると尾根の形が出てきて、ここにも素敵なブナ林が続いた。
但し、いいところはここまで。ここから先はあまり面白くない林相に変わり、鍋倉山の山頂も特徴のない場所で
ある。
後は登山道を辿るだけだから楽勝なのだが、ここでスケベ心が出てしまい、山頂の東からまっすぐ伸びる尾根
を選択。送電線が2本走っているので巡視路があるだろうという読みだった。
結果的には道はなく、潅木のヤブや岩盤に雪の乗った斜面と格闘する羽目になってしまった。急がば回れである。
まあ、しなくてもいい苦労を買ってでもするのが自分らしいが。
ただ、途中の鉄塔から見えた越美国境稜線の姿が素晴らしかった。午前中の風景とは違い、夕刻の残照にオレ
ンジ色に燃える雪の稜線に心を奪われる。この時間に歩いていなければ出会えなかった風景だ。
林道に着地すると雨が降り始めた。お誂え向きに目の前にあった建物で雨宿りしようと近付いてみると、なん
と今庄の火葬場だった。すぐに雨も上がったのでお世話にならずに済んだのが幸いだった。
夕闇迫る今庄宿の街並みを抜けて今庄駅へ戻ると、山積みだった雪はきれいになくなっていた。
山日和