【南越前】八飯から栃ノ木へ 豊潤のブナ林の光と陰
Posted: 2022年1月13日(木) 20:15
【日 付】2022年1月10日(月)
【山 域】南越前 三角点八飯周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】荒井水道施設8:35---10:40三角点大岩谷---12:15三角点八飯13:45---14:35三角点栃ノ木---15:05尾根分岐---
16:20樫尾谷--17:30駐車地
この時期、登山道のない山に登る時にポイントになるのが駐車地だ。登山者用の駐車場がないところでは、除雪して
いないため駐車地に困ることがしばしばである。
荒井集落の水道施設の横がうまい具合に除雪されていたので、車を止めさせてもらう。
道端の田畑も積雪で真っ白。これならすぐにスノーシューを履いてスタートできる理想的なコンディションだ。
畑を横切って尾根に取り付いた。しばらくは植林のつまらない尾根だがこれは織り込み済み。里山の尾根の下部では
あたり前の状況だ。少し前の予報では思わしくなかった天気は劇的に好転して、雲ひとつないような青空が広がってい
る。気温も上昇してきたようで、手袋を途中で脱いでしまうぐらいの暖かさである。
問題はこの植林帯がいつまで続くのかだ。八飯(やい)の集落から三角点八飯に向かうのは3度目だが、前2回は樫尾谷
の林道の途中から尾根に取り付いた。今日は樫尾谷の左岸尾根を末端から辿る新規開拓コースだ。検索してもまったく
ヒットしない、情報のないコースでもある。
643.6mの三角点大岩谷の手前の尾根が広がりを見せるあたりから、ようやく気持ちのいい自然林の尾根に変わった。
一度伐採を受けた二次林で、ブナは少なくコナラやリョウブが主体の雑木林ではあるが、杉の植林よりは100倍いい。
積雪はさほどでもないように思えるが、鬱陶しい潅木のヤブが埋もれてスッキリ見えるのも加点要素だ。
この尾根は距離が長い割に標高がほとんど上がらない。多少のアップダウンがあるとは言え、3キロほどの間に稼ぐ
高度は100mばかりしかないのである。
広くゆったりとした尾根を気分良く歩く。これはいわゆる「当たり」の尾根のようだ。単調なようでも微妙な起伏と
屈曲を見せる地形は飽きることがない。広い尾根とヤセ尾根が交互に現れるのも面白い。
なかなか近付かなかった三角点八飯がようやく指呼の間になると、林相が変化を見せた。
これまで少なかったブナの割合が増え始め、やがてブナの純林へと変わる。
右側には目の前に今庄365スキー場のゲレンデが広がるが、去年から営業休止しているので静かなものである。
八飯への最後の登りにかかると、頭上に予想外のものが見えた。風況観測塔だ。山頂の豊かなブナ林を切り裂いて、
観測塔と太陽光発電設備が設置されている。栃ノ木峠から音波の稜線に風車の計画が進行中なのは知っていたが、こ
こも標的になっていたとは。
愕然としながらも気を取り直してランチタイムとする。本当は音波まで行ってからのつもりだったが少々出遅れてし
まった。後をどうするかはメシを食ってから考えよう。
ポカポカと温かい日差しが降り注ぎ、初登りとは打って変わって絶好のビール日和だ。
早めにランチタイムを切り上げて江越国境稜線へ向かう。
ここから無線中継塔の建つ三角点栃ノ木までの区間は、ほぼブナの純林と呼べる樹林が続く。
右手の余呉高原スキー場の奥に敦賀湾が広がっている。ブナの森から唐突に見える海の姿は意表を衝かれたようで、
一瞬海なのか湖なのかわからなくなってしまう。
左からせり上がる樫尾谷左俣の源頭部と尾根の屈曲が作り出す絶妙な曲線が美しく、スックと立ち並ぶブナ達が落
とす影が、真っ白な雪面にまだら模様を描く。その豊潤な風景に心が奪われそうになってしまう。
しかし、そのブナ達に奇妙なテープが巻かれていた。ピンクとブルーのテープには番号が打ってあった。
これはもしや伐採するためのナンバリングか。栃ノ木と八飯を繋ぐ尾根のブナの森もすべて切り倒されて風車が林立
してしまうのか。素晴らしい森に包まれて昂揚する胸の内に、遠からずこの森が失われてしまうという絶望感が同居
している。
栃ノ木まで来ると峠の方からスノーシューのトレースが残されていた。音波まで往復したようだ。
ほとんど沈まない雪質で、トレースの助けを借りるまでもないが、時間が押していることだし有難く使わせてもらおう。
送電鉄塔の建つ伐採地からは純白の白山の姿を望むことができた。
この稜線上には林道が付けられ、音波手前の終点にはかなり前から八飯と同じ風況観測塔がある。
時刻はもう3時を回った。音波経由で予定の尾根を辿れば闇下必至だろう。
ここは素直に手前の尾根を樫尾谷林道へ下るとしよう。この尾根を下るのはもう4度目である。大阪に住みながらこの
尾根を4回も歩いている登山者は他にいるだろうか。
この尾根の左側もまた樫尾谷左俣の源頭部だが、こちらは八飯側もゆったりとした魅力的なブナ林が広がっている。
ところどころにブナの台地を配した穏やかな源頭は、この谷を遡行してくればこの素敵な場所に上がってこれるのだ
という想像をかき立ててくれる。
3年前のスノー衆の時は雪が少なく、下部ではヤブにかなり苦労させられたが、今日は苦も無く下ることができてひ
と安心。尾根末端の渡渉もスノーシューを履いたまま楽々こなすことができた。
12年前にはヒザぐらいの水位の速い流れで、ストックを1本持って行かれたことを思い出す。
長い雪の林道を歩き、除雪終了点に着いた頃には黄昏が迫っていた。
山日和
【山 域】南越前 三角点八飯周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】荒井水道施設8:35---10:40三角点大岩谷---12:15三角点八飯13:45---14:35三角点栃ノ木---15:05尾根分岐---
16:20樫尾谷--17:30駐車地
この時期、登山道のない山に登る時にポイントになるのが駐車地だ。登山者用の駐車場がないところでは、除雪して
いないため駐車地に困ることがしばしばである。
荒井集落の水道施設の横がうまい具合に除雪されていたので、車を止めさせてもらう。
道端の田畑も積雪で真っ白。これならすぐにスノーシューを履いてスタートできる理想的なコンディションだ。
畑を横切って尾根に取り付いた。しばらくは植林のつまらない尾根だがこれは織り込み済み。里山の尾根の下部では
あたり前の状況だ。少し前の予報では思わしくなかった天気は劇的に好転して、雲ひとつないような青空が広がってい
る。気温も上昇してきたようで、手袋を途中で脱いでしまうぐらいの暖かさである。
問題はこの植林帯がいつまで続くのかだ。八飯(やい)の集落から三角点八飯に向かうのは3度目だが、前2回は樫尾谷
の林道の途中から尾根に取り付いた。今日は樫尾谷の左岸尾根を末端から辿る新規開拓コースだ。検索してもまったく
ヒットしない、情報のないコースでもある。
643.6mの三角点大岩谷の手前の尾根が広がりを見せるあたりから、ようやく気持ちのいい自然林の尾根に変わった。
一度伐採を受けた二次林で、ブナは少なくコナラやリョウブが主体の雑木林ではあるが、杉の植林よりは100倍いい。
積雪はさほどでもないように思えるが、鬱陶しい潅木のヤブが埋もれてスッキリ見えるのも加点要素だ。
この尾根は距離が長い割に標高がほとんど上がらない。多少のアップダウンがあるとは言え、3キロほどの間に稼ぐ
高度は100mばかりしかないのである。
広くゆったりとした尾根を気分良く歩く。これはいわゆる「当たり」の尾根のようだ。単調なようでも微妙な起伏と
屈曲を見せる地形は飽きることがない。広い尾根とヤセ尾根が交互に現れるのも面白い。
なかなか近付かなかった三角点八飯がようやく指呼の間になると、林相が変化を見せた。
これまで少なかったブナの割合が増え始め、やがてブナの純林へと変わる。
右側には目の前に今庄365スキー場のゲレンデが広がるが、去年から営業休止しているので静かなものである。
八飯への最後の登りにかかると、頭上に予想外のものが見えた。風況観測塔だ。山頂の豊かなブナ林を切り裂いて、
観測塔と太陽光発電設備が設置されている。栃ノ木峠から音波の稜線に風車の計画が進行中なのは知っていたが、こ
こも標的になっていたとは。
愕然としながらも気を取り直してランチタイムとする。本当は音波まで行ってからのつもりだったが少々出遅れてし
まった。後をどうするかはメシを食ってから考えよう。
ポカポカと温かい日差しが降り注ぎ、初登りとは打って変わって絶好のビール日和だ。
早めにランチタイムを切り上げて江越国境稜線へ向かう。
ここから無線中継塔の建つ三角点栃ノ木までの区間は、ほぼブナの純林と呼べる樹林が続く。
右手の余呉高原スキー場の奥に敦賀湾が広がっている。ブナの森から唐突に見える海の姿は意表を衝かれたようで、
一瞬海なのか湖なのかわからなくなってしまう。
左からせり上がる樫尾谷左俣の源頭部と尾根の屈曲が作り出す絶妙な曲線が美しく、スックと立ち並ぶブナ達が落
とす影が、真っ白な雪面にまだら模様を描く。その豊潤な風景に心が奪われそうになってしまう。
しかし、そのブナ達に奇妙なテープが巻かれていた。ピンクとブルーのテープには番号が打ってあった。
これはもしや伐採するためのナンバリングか。栃ノ木と八飯を繋ぐ尾根のブナの森もすべて切り倒されて風車が林立
してしまうのか。素晴らしい森に包まれて昂揚する胸の内に、遠からずこの森が失われてしまうという絶望感が同居
している。
栃ノ木まで来ると峠の方からスノーシューのトレースが残されていた。音波まで往復したようだ。
ほとんど沈まない雪質で、トレースの助けを借りるまでもないが、時間が押していることだし有難く使わせてもらおう。
送電鉄塔の建つ伐採地からは純白の白山の姿を望むことができた。
この稜線上には林道が付けられ、音波手前の終点にはかなり前から八飯と同じ風況観測塔がある。
時刻はもう3時を回った。音波経由で予定の尾根を辿れば闇下必至だろう。
ここは素直に手前の尾根を樫尾谷林道へ下るとしよう。この尾根を下るのはもう4度目である。大阪に住みながらこの
尾根を4回も歩いている登山者は他にいるだろうか。
この尾根の左側もまた樫尾谷左俣の源頭部だが、こちらは八飯側もゆったりとした魅力的なブナ林が広がっている。
ところどころにブナの台地を配した穏やかな源頭は、この谷を遡行してくればこの素敵な場所に上がってこれるのだ
という想像をかき立ててくれる。
3年前のスノー衆の時は雪が少なく、下部ではヤブにかなり苦労させられたが、今日は苦も無く下ることができてひ
と安心。尾根末端の渡渉もスノーシューを履いたまま楽々こなすことができた。
12年前にはヒザぐらいの水位の速い流れで、ストックを1本持って行かれたことを思い出す。
長い雪の林道を歩き、除雪終了点に着いた頃には黄昏が迫っていた。
山日和