【台高】小木森滝と奥八町滝と六線索道
Posted: 2021年12月13日(月) 05:48
【日 付】2021年12月11日(土)
【山 域】台高
【コース】花折峠口P7:30---8:05小木森滝---10:45奥八町滝---11:20六線索道跡---12:40苔辻---14:10花折峠口P
【メンバー】単独
先週に引き続き大台林道を花抜登山口に向けて車を走らせる。今日は小木森滝と奥八町滝をめぐり戦前の六線索道の痕跡を探りに来た。
花抜峠口から林道を下り最初の堰堤に下りる。ここから小木森谷の木馬道は続いているが、最初は心細い道が続いている。すぐに石積みに守られた木馬道に変わり、滝音が近づいてくると小木森滝の滝口になる。小木森滝は『俺は沢ヤだ』で成瀬陽一が「紀伊半島の大滝の中でも、美しさ、困難度、登攀内容において最上位にランクされる」と紹介した滝だ。滝口から滝の中段に向けて道が続いており、ここには滝屋のテープがついている。尾根を進むと滝の音が聞こえなくなり、再び聞こえ始めると滝の中段はすぐだ。上段の滝は100m以上をほぼまっすぐに落ち中段の釜に落ちている。水量も多く下部はミスト状態で虹がかかっている。下段は傾斜を緩めるものの100m近く落ちている。この迫力はなかなか味わえるものではない。ヤブでこの道を紹介して7年が経ち、それ以来だ。その時は、よくこんな道をつけたなと思っていただけだったが、今回歩いてみて道をつけた意味がわかった。中段の横に炭焼窯跡があり、途中に残された下降点の目印のツガの木と合わせて炭焼きの仕事道としてつけられたようだ。とんでもない場所で窯跡を見るたびに、昔人の知恵と執念を感じずにはいられない。
登り返し、滝口に降りて対岸の尾根に乗る。この道は気持ちのいい道で、展望がいい。東側は切れ落ちているので、引本浦が木々の間から望める明るい尾根だ。そのわりに、危うさを感じることなくしっかりとした道がつながっている。尾根が広がりだすと獣道が縦横無尽に走り出す。P871に着くと、小木森谷の木馬道の終点からつながる道に合流する。対岸の花抜山の標高を越えるとすぐに八町尾根に乗る。ここには山マークの標柱がある。山マークは小木森谷側に向いており反対側に番号が記されている。民地側に山マーク、国有林側に番号が記されているので、八町尾根の小木森谷側は尾鷲の土井家の所有ということだ。上っていくと木馬道跡の溝道が出てくる。
Co1200から八町尾根を離れ南に延びる尾根を下る。テープもなく、あまり歩かれていない感じだ。ツガの大木を目指して歩くと、その先にヒノキの古木が二本出てくる。これが奥八町滝への下降点の目印の木になる。やせ尾根に枝がおおい、ここに来る人は少ないようだ。テープは目印の木のあたりから出てくるので間違いない。滝に向かって草地の尾根を下り始めると、正面に奥坊主の特徴のある山容が正面に大きく見える。滝に向かい下っていくと、立派な角を持った牡鹿がこちらを見ている。尾根を下るという意思表示を私がすると静かに谷に下りて行った。滝の砂地に足跡があったので、ここで優雅に水を飲んでいたのだろう。滝の主かもしれない。
奥八町滝は二段にわかれた55m滝で、優雅に流れ落ちている。多くの滝を持つ真砂谷の最後の滝でこの上には桃源郷が広がっている。釜には虹がかっかっている。ゆったりと見つめていられる癒しの滝だ。ヒノキの古木までもどり真砂谷源流の右俣に向けてトラバース気味に進むと、溝道が出てくる。これに沿って下っていくと六線索道跡に着く。強固な石垣に守られた平地にレンガやわずかな生活痕が残っている。右俣にはいくつも溝道があり、木馬道跡のようで木材搬出でにぎわった残り香が感じられる。
左俣に飯場があるようなので、二俣の合流点を目指す。合流点はゴルジュっぽくなった小滝で、昔人はこんな所をわざわざ通らない。索道跡まで戻り、正面の尾根に取りつくと巻くように道がつけられている。これをたどると小滝の上に出て飯場に着いた。ここには、茶碗やビンなどの生活痕が残されていた。みやこ染という家庭用染料のビンを見つけた。物不足の時代に古い衣服の染替えに使うもので、飯場で染替えをし谷にそそぐ陽光にさらしていたのか。割れたインク瓶も出てきた。くっつけて復元すると裏面に江戸時代の両替マークのエンボスがある。インク瓶は大正時代の飯場からよく出てくる。六線索道の飯場は大正時代から戦前にかけて稼働していたように思う。
水量の多い左俣は明るくなだらかな地形で桃源郷のようだ。八町滝や奥八町滝上にあるとは思えない。右俣が仕事の谷で、左俣は生活の谷という感じがする。暖かい日に照らされて緩やかな斜面を上って行くと苔辻に着いた。堂倉谷からここまでインクラインで木材を上げてきていた所で、ここから六線索道の右俣に向けて木馬道が続いていたのだろう。この景色は桃源郷の集大成というぐらい素晴らしい。引本浦を苔の原と自然林が包み込み、晴れた日には最高の景色だ。
帰路は苔辻から花抜峠に続く木馬道と土倉古道で帰った。『俺は沢ヤだ』に紹介されている難易度の高い小木森滝と奥八町滝を一度に愛でることができ、おまけに六線索道の探索まで楽しめた。いい山旅ができた。
【山 域】台高
【コース】花折峠口P7:30---8:05小木森滝---10:45奥八町滝---11:20六線索道跡---12:40苔辻---14:10花折峠口P
【メンバー】単独
先週に引き続き大台林道を花抜登山口に向けて車を走らせる。今日は小木森滝と奥八町滝をめぐり戦前の六線索道の痕跡を探りに来た。
花抜峠口から林道を下り最初の堰堤に下りる。ここから小木森谷の木馬道は続いているが、最初は心細い道が続いている。すぐに石積みに守られた木馬道に変わり、滝音が近づいてくると小木森滝の滝口になる。小木森滝は『俺は沢ヤだ』で成瀬陽一が「紀伊半島の大滝の中でも、美しさ、困難度、登攀内容において最上位にランクされる」と紹介した滝だ。滝口から滝の中段に向けて道が続いており、ここには滝屋のテープがついている。尾根を進むと滝の音が聞こえなくなり、再び聞こえ始めると滝の中段はすぐだ。上段の滝は100m以上をほぼまっすぐに落ち中段の釜に落ちている。水量も多く下部はミスト状態で虹がかかっている。下段は傾斜を緩めるものの100m近く落ちている。この迫力はなかなか味わえるものではない。ヤブでこの道を紹介して7年が経ち、それ以来だ。その時は、よくこんな道をつけたなと思っていただけだったが、今回歩いてみて道をつけた意味がわかった。中段の横に炭焼窯跡があり、途中に残された下降点の目印のツガの木と合わせて炭焼きの仕事道としてつけられたようだ。とんでもない場所で窯跡を見るたびに、昔人の知恵と執念を感じずにはいられない。
登り返し、滝口に降りて対岸の尾根に乗る。この道は気持ちのいい道で、展望がいい。東側は切れ落ちているので、引本浦が木々の間から望める明るい尾根だ。そのわりに、危うさを感じることなくしっかりとした道がつながっている。尾根が広がりだすと獣道が縦横無尽に走り出す。P871に着くと、小木森谷の木馬道の終点からつながる道に合流する。対岸の花抜山の標高を越えるとすぐに八町尾根に乗る。ここには山マークの標柱がある。山マークは小木森谷側に向いており反対側に番号が記されている。民地側に山マーク、国有林側に番号が記されているので、八町尾根の小木森谷側は尾鷲の土井家の所有ということだ。上っていくと木馬道跡の溝道が出てくる。
Co1200から八町尾根を離れ南に延びる尾根を下る。テープもなく、あまり歩かれていない感じだ。ツガの大木を目指して歩くと、その先にヒノキの古木が二本出てくる。これが奥八町滝への下降点の目印の木になる。やせ尾根に枝がおおい、ここに来る人は少ないようだ。テープは目印の木のあたりから出てくるので間違いない。滝に向かって草地の尾根を下り始めると、正面に奥坊主の特徴のある山容が正面に大きく見える。滝に向かい下っていくと、立派な角を持った牡鹿がこちらを見ている。尾根を下るという意思表示を私がすると静かに谷に下りて行った。滝の砂地に足跡があったので、ここで優雅に水を飲んでいたのだろう。滝の主かもしれない。
奥八町滝は二段にわかれた55m滝で、優雅に流れ落ちている。多くの滝を持つ真砂谷の最後の滝でこの上には桃源郷が広がっている。釜には虹がかっかっている。ゆったりと見つめていられる癒しの滝だ。ヒノキの古木までもどり真砂谷源流の右俣に向けてトラバース気味に進むと、溝道が出てくる。これに沿って下っていくと六線索道跡に着く。強固な石垣に守られた平地にレンガやわずかな生活痕が残っている。右俣にはいくつも溝道があり、木馬道跡のようで木材搬出でにぎわった残り香が感じられる。
左俣に飯場があるようなので、二俣の合流点を目指す。合流点はゴルジュっぽくなった小滝で、昔人はこんな所をわざわざ通らない。索道跡まで戻り、正面の尾根に取りつくと巻くように道がつけられている。これをたどると小滝の上に出て飯場に着いた。ここには、茶碗やビンなどの生活痕が残されていた。みやこ染という家庭用染料のビンを見つけた。物不足の時代に古い衣服の染替えに使うもので、飯場で染替えをし谷にそそぐ陽光にさらしていたのか。割れたインク瓶も出てきた。くっつけて復元すると裏面に江戸時代の両替マークのエンボスがある。インク瓶は大正時代の飯場からよく出てくる。六線索道の飯場は大正時代から戦前にかけて稼働していたように思う。
水量の多い左俣は明るくなだらかな地形で桃源郷のようだ。八町滝や奥八町滝上にあるとは思えない。右俣が仕事の谷で、左俣は生活の谷という感じがする。暖かい日に照らされて緩やかな斜面を上って行くと苔辻に着いた。堂倉谷からここまでインクラインで木材を上げてきていた所で、ここから六線索道の右俣に向けて木馬道が続いていたのだろう。この景色は桃源郷の集大成というぐらい素晴らしい。引本浦を苔の原と自然林が包み込み、晴れた日には最高の景色だ。
帰路は苔辻から花抜峠に続く木馬道と土倉古道で帰った。『俺は沢ヤだ』に紹介されている難易度の高い小木森滝と奥八町滝を一度に愛でることができ、おまけに六線索道の探索まで楽しめた。いい山旅ができた。