【奥美濃】錦秋の根尾を歩く 高屋山から大白木山へ
Posted: 2021年11月09日(火) 18:24
【日 付】2021年11月6日(土)
【山 域】奥美濃 大白木山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】越波7:50---10:10高屋山10:25---11:15 P1138m---12:20大白木山14:00---15:10折越峠---16:20越波
根尾の高屋山から大白木山(おじらぎやま)の縦走は永年の懸案だった。昨春、根尾長島まで行ったところで
国道157号の通行止めが解除されておらず、北の方の天気がイマイチなのを理由にして舟伏山へ転進したの
だった。これはこれで満開のイワザクラを堪能できたので良かったのだが。
酷道と称される国道157号の険路を抜けて黒津まで来ると、なんと越波(おっぱ)への道が通行止めだった。
大河原から猫峠経由の大迂回を強いられて予定が狂ってしまう。
越波の集落は大昔に集団離村したものの、現在も春から秋の間だけ人が入っている山間の集落である。
廃屋とともに比較的新しそうな建物もあり、人の気配を感じられる場所だ。小学校をリニューアルした集会所
もきれいで、準備をしていると隣の家からおばちゃんが出て来て何やら家事をしているようだった。
ここに住民登録をしている人が2人だけいるらしい。
「廃村」にしたくないという思いが感じられて、うれしい気分になった。
集落の外れにある八幡神社の裏手から、地形図の破線路を辿って尾根の取付きを探る。
傾斜の緩そうなところを見計らって斜面を上がると、意外にも踏み跡があった。ヤブもほとんど無いに等しい
状態で行程が捗る。シロモジの黄葉が最高潮を迎えていた。
この尾根には2本の奇怪なブナの大木がある。あらぬ方向を枝を伸ばしたゴツゴツとした木肌のブナはアガ
リコだろうか。
前方でサルの集団が騒がしい鳴き声を立てていた。昔サルにいじめられたという不思議な思い出のあるsatoさん
はビビッていたが、そのうち解散したようで姿が見えなくなった。ヒルやマムシも友達のsatoさんの唯一の天敵
がサルらしい。
思いのほか快適な尾根に快哉を叫びながら歩く。ところどころに真っ赤やオレンジ、まだ緑のままの三段染め
になったカエデが朝日を受けて輝いている。この尾根は極楽尾根に認定するとしよう。
一般的な高屋山への登山道は歩いたことがないが、記録を読むとこちらの方が優れているように思われる。
木立の間から見える屏風山のきれいな三角錐が登高欲をかき立てる。
初級程度のヤブが一部あるものの、大半は明瞭な踏み跡に導かれる尾根は、胸を衝くような急登もなく、予想
外の短時間で山頂が近付いてきた。
Ca1000mあたりで登山道と合流。登山道方向にはテープがベタ貼りされている。
山頂直下はこれまでと雰囲気が変わり、石灰岩の山らしいカレンフェルトが散乱していた。
カレンフェルトの間を縫って高屋山山頂に到着。展望はないが、樹林の中の少し開けた山頂の佇まいは自分好
みだ。
ここから大白木山までの尾根には道はなく、ヤブの状況がカギを握っている。向こうに見える大白木山はさほど
遠く感じなかった。こういう時は調子のいい証拠である。
これまでよりは薄いものの、そこはかとない獣道か踏み跡が続いて快調に進む。
ところが次のピークまで来てみると、予想外の風景に目を奪われた。そのピークから北へ伸びる尾根に点々と
テープが付けられており、登山ルートにでもなっているのかと思ったが、次の瞬間に前方の尾根の左側斜面を見
て唖然とさせられた。尾根芯から北は文字通りの皆伐状態で、数人の人が今も作業中だった。
尾根芯の南側は素晴らしいブナ林だが、その境界線に延々と鹿除けネットが張られている。ネットの際は歩きや
すい道のようになっているが、まさかこの稜線でネット沿いに歩くとは思わなかった。
南側のブナ林を見れば、この尾根が実に見事なブナ林で覆われていたことがわかる。真新しいブナの大木の切り
株が痛々しい。ネットの内側にはスギの苗が植えてあった。これだけ放置され荒れ果てた植林が多い中、ブナを
切って新たに植林する意味があるのだろうか。
ネットは次の1138mピークまで、実に800mに渡って続いていた。皆伐のおかげで北側の展望は素晴らしく、
屏風山から平家岳、少し雪を被った白山の眺望が得られるが、心から楽しむには抵抗がある。
行程は捗ったが、少し暗澹とした気持ちで1138mを過ぎると、またヤブ山が戻ってきた。
ここから1170mピークを経て大白木山までは高低差がほとんど無いようなゆるゆるとした尾根が続いている。
このあたりからササがはびこり出して、背丈を超えるところもあった。
踏み跡はあるか無しかという感じで、快適な稜線漫歩というわけにはいかない。適当なところでひと息入れよう
と思っていたが、ザックを降ろせる場所もなかった。
ササに加えて潅木が邪魔をするところもあるが、総じて初級プラスアルファ程度のヤブ漕ぎである。
目の前に2枚の白い大きな板が迫ってきた。大白木山頂の反射板だ。違和感たっぷりの人工物だが、そのおかげ
で展望はすこぶる良い。2基の反射板の間の芝生に腰を降ろしてランチタイムとする。
ここまで想定通りのタイムで来られたので余裕たっぷりだ。
防寒着をいっぱい持って来たのだが、無風状態で降り注ぐ日差しは暑いぐらいである。
白山を眺めながらのビールは格別だ。
下山は反射板の巡視路を利用した登山道を辿る。ここまでと違って道は明瞭、格段に歩きやすい。
この尾根も色付いたシロモジが多く、体が黄色に染まってしまいそうだ。
林道歩きをカットするため、途中から道をそれて542m標高点へダイレクトに下るプランだったが、「急がば
回れ」に方針変更。おとなしく折越峠の登山口へと下る。
大白木山の登山道は、一部を除けば自然林のいい道だった。
峠からは長い車道歩きが待っている。最初のうちは紅葉のワインディングロードや名所の大トチなど見どころ
もあるが、谷底へ下ってからはやや退屈だ。
そこへ前方からやってきた車の中からドライバーが手を振っている。誰かと思えば兔夢ちゃんだった。
OSKの山行でスギクラへ行ってきたらしい。こんなところでと言うより、こんなところだからこそ会うのかもし
れないと思い直して、しばし話し込む。
越波からの帰路、折越峠のお地蔵さんにご挨拶して行く。目を細めて柔和な顔で微笑む表情が優しく、かつて
この峠を歩いて越えた越波の人々に思いを馳せた。
山日和
【山 域】奥美濃 大白木山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】越波7:50---10:10高屋山10:25---11:15 P1138m---12:20大白木山14:00---15:10折越峠---16:20越波
根尾の高屋山から大白木山(おじらぎやま)の縦走は永年の懸案だった。昨春、根尾長島まで行ったところで
国道157号の通行止めが解除されておらず、北の方の天気がイマイチなのを理由にして舟伏山へ転進したの
だった。これはこれで満開のイワザクラを堪能できたので良かったのだが。
酷道と称される国道157号の険路を抜けて黒津まで来ると、なんと越波(おっぱ)への道が通行止めだった。
大河原から猫峠経由の大迂回を強いられて予定が狂ってしまう。
越波の集落は大昔に集団離村したものの、現在も春から秋の間だけ人が入っている山間の集落である。
廃屋とともに比較的新しそうな建物もあり、人の気配を感じられる場所だ。小学校をリニューアルした集会所
もきれいで、準備をしていると隣の家からおばちゃんが出て来て何やら家事をしているようだった。
ここに住民登録をしている人が2人だけいるらしい。
「廃村」にしたくないという思いが感じられて、うれしい気分になった。
集落の外れにある八幡神社の裏手から、地形図の破線路を辿って尾根の取付きを探る。
傾斜の緩そうなところを見計らって斜面を上がると、意外にも踏み跡があった。ヤブもほとんど無いに等しい
状態で行程が捗る。シロモジの黄葉が最高潮を迎えていた。
この尾根には2本の奇怪なブナの大木がある。あらぬ方向を枝を伸ばしたゴツゴツとした木肌のブナはアガ
リコだろうか。
前方でサルの集団が騒がしい鳴き声を立てていた。昔サルにいじめられたという不思議な思い出のあるsatoさん
はビビッていたが、そのうち解散したようで姿が見えなくなった。ヒルやマムシも友達のsatoさんの唯一の天敵
がサルらしい。
思いのほか快適な尾根に快哉を叫びながら歩く。ところどころに真っ赤やオレンジ、まだ緑のままの三段染め
になったカエデが朝日を受けて輝いている。この尾根は極楽尾根に認定するとしよう。
一般的な高屋山への登山道は歩いたことがないが、記録を読むとこちらの方が優れているように思われる。
木立の間から見える屏風山のきれいな三角錐が登高欲をかき立てる。
初級程度のヤブが一部あるものの、大半は明瞭な踏み跡に導かれる尾根は、胸を衝くような急登もなく、予想
外の短時間で山頂が近付いてきた。
Ca1000mあたりで登山道と合流。登山道方向にはテープがベタ貼りされている。
山頂直下はこれまでと雰囲気が変わり、石灰岩の山らしいカレンフェルトが散乱していた。
カレンフェルトの間を縫って高屋山山頂に到着。展望はないが、樹林の中の少し開けた山頂の佇まいは自分好
みだ。
ここから大白木山までの尾根には道はなく、ヤブの状況がカギを握っている。向こうに見える大白木山はさほど
遠く感じなかった。こういう時は調子のいい証拠である。
これまでよりは薄いものの、そこはかとない獣道か踏み跡が続いて快調に進む。
ところが次のピークまで来てみると、予想外の風景に目を奪われた。そのピークから北へ伸びる尾根に点々と
テープが付けられており、登山ルートにでもなっているのかと思ったが、次の瞬間に前方の尾根の左側斜面を見
て唖然とさせられた。尾根芯から北は文字通りの皆伐状態で、数人の人が今も作業中だった。
尾根芯の南側は素晴らしいブナ林だが、その境界線に延々と鹿除けネットが張られている。ネットの際は歩きや
すい道のようになっているが、まさかこの稜線でネット沿いに歩くとは思わなかった。
南側のブナ林を見れば、この尾根が実に見事なブナ林で覆われていたことがわかる。真新しいブナの大木の切り
株が痛々しい。ネットの内側にはスギの苗が植えてあった。これだけ放置され荒れ果てた植林が多い中、ブナを
切って新たに植林する意味があるのだろうか。
ネットは次の1138mピークまで、実に800mに渡って続いていた。皆伐のおかげで北側の展望は素晴らしく、
屏風山から平家岳、少し雪を被った白山の眺望が得られるが、心から楽しむには抵抗がある。
行程は捗ったが、少し暗澹とした気持ちで1138mを過ぎると、またヤブ山が戻ってきた。
ここから1170mピークを経て大白木山までは高低差がほとんど無いようなゆるゆるとした尾根が続いている。
このあたりからササがはびこり出して、背丈を超えるところもあった。
踏み跡はあるか無しかという感じで、快適な稜線漫歩というわけにはいかない。適当なところでひと息入れよう
と思っていたが、ザックを降ろせる場所もなかった。
ササに加えて潅木が邪魔をするところもあるが、総じて初級プラスアルファ程度のヤブ漕ぎである。
目の前に2枚の白い大きな板が迫ってきた。大白木山頂の反射板だ。違和感たっぷりの人工物だが、そのおかげ
で展望はすこぶる良い。2基の反射板の間の芝生に腰を降ろしてランチタイムとする。
ここまで想定通りのタイムで来られたので余裕たっぷりだ。
防寒着をいっぱい持って来たのだが、無風状態で降り注ぐ日差しは暑いぐらいである。
白山を眺めながらのビールは格別だ。
下山は反射板の巡視路を利用した登山道を辿る。ここまでと違って道は明瞭、格段に歩きやすい。
この尾根も色付いたシロモジが多く、体が黄色に染まってしまいそうだ。
林道歩きをカットするため、途中から道をそれて542m標高点へダイレクトに下るプランだったが、「急がば
回れ」に方針変更。おとなしく折越峠の登山口へと下る。
大白木山の登山道は、一部を除けば自然林のいい道だった。
峠からは長い車道歩きが待っている。最初のうちは紅葉のワインディングロードや名所の大トチなど見どころ
もあるが、谷底へ下ってからはやや退屈だ。
そこへ前方からやってきた車の中からドライバーが手を振っている。誰かと思えば兔夢ちゃんだった。
OSKの山行でスギクラへ行ってきたらしい。こんなところでと言うより、こんなところだからこそ会うのかもし
れないと思い直して、しばし話し込む。
越波からの帰路、折越峠のお地蔵さんにご挨拶して行く。目を細めて柔和な顔で微笑む表情が優しく、かつて
この峠を歩いて越えた越波の人々に思いを馳せた。
山日和