【台高】櫛田川水系木屋谷川 わさび谷(奥わさび谷遡行,口わさび谷下降)
Posted: 2021年8月28日(土) 10:48
【 日 付 】2021年8月26日(木)
【 山 域 】台高・櫛田川支流 木屋谷川
【メンバー】単独
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】万歳橋 9:15 --- 9:38 わさび谷出会い --- 10:20 口わさび谷分岐 --- 10:58 標高1100m山腹道 11:19 --- 12:23 桧塚奥峰下 13:15 --- 13:19 口わさび谷 --- 14:13 奥わさび谷出会い --- 14:41 木屋谷川出会い --- 15:00 万歳橋
万歳橋から木屋谷右岸道をゆるゆる登って行くとだんだん汗ばんでくる。右手下に見える木屋谷はいかにも涼しそうで,やっぱり万歳橋から入渓したほうがよかったかと思ったりする。1週間以上降り続いた長雨のせいで水量が多いだろうと推測し,泳ぐ必要のないわさび谷を詰めることにしたのだった。
万歳橋で出会った40代と思われる単独男性は木屋谷から奥山谷を遡行し,桧塚からまなこ谷を下山するという。沢靴ではないが沢でも歩けるというモンベル製の靴を履き,ヘルメットをかぶった気楽な装備である。「今日は水が多いですか」と聞かれ,「そうでもないです」と返したのだったが,あらためて右下の沢を見るとやはり通常よりは水量が多いようだ。沢中を歩く彼の姿を見ようと気をつけて歩いていたのだが,知らないうちに追い越してしまったようだ。
30分ほどでわさび谷出会い。清冽な水の流れに足をつけるとあっという間に体の火照りが消えてゆく。ここで一休み。今日はわさび谷を周回するだけののんびり沢行なのだ。右岸道はここで谷を渡り,奥山谷出会いに向かってさらに高度を上げている。 岩は褶曲した縞模様が明瞭な堆積岩で,太古の海が隆起してできた地形であることを雄弁に物語っている。その岩の表面を多雨に育まれた苔が覆っている。苔の緑と広葉樹の緑が溶け合って,沢全体が緑になっている。その緑の中を流れ落ちる水とが相まって台高の沢の素敵な風景を作り上げているのだ。花崗岩の多い鈴鹿の沢の風景とはまた違う独特の風景である。 これから遡行する予定の上流部を眺めると,それなりの傾斜の斜面を岩間滝が連続している。「こんなに急峻な谷だっけ?」。それもそのはず,標高900mから1400mまでを一挙に登り詰めているのだ。この谷を遡行するのはこれで3回目のはずだが,記憶の中の谷はもっと緩やかなのだった。 歩き始めると下から眺めたよりもずっと簡単に進むことができた。苔に覆われた緑の岩の間を流れ落ちる白い水流はどこを切り取っても絵になりそうで,頻繁に立ち止まってはカメラのシャッターを切る。水流を綺麗に撮ろうとシャッタースピードを少し遅くしているせいで,家に帰ってから見た写真の多くがピンボケだった。それでも,ピンボケでない写真は美しく,自分の感激をそのまま写し撮ってくれたようだ。 「やっぱり台高の谷はいい」と思う。ロープやハーネスがなくてもフリーで登ることができる幾多の小滝。緑の岩の間を流れ落ちる白い水流。上を見ると緑の広葉樹の森。登ることが全く苦にならない。 口わさび谷との分岐を過ぎ,しばらく行くと開けた場所に広いなめ滝が現れる。日当たりがよく,桃源郷と言ってもいい趣だ。標高1100m付近の山腹ハイウエーが横切る場所だった。近くにはカツラの大木が2,3本。あとは,トチやサワグルミ,オオイタヤメイゲツ,チドリノキなど。しばらく一休み。テント泊をしたいようないい場所だけど,平地が少ないのが難か。 このあと,谷は少し大人しくなり,源流の雰囲気。標高1250mあたりで,絶滅危惧Ⅱ類に指定されている植物の群落を見つける。この辺りの標高1000m以上の谷間に稀に見られる植物だ。氷河期の生き残りで,特殊な環境でしか生きられないらしい。
源流近くで,本流をはずれ左俣支流に入る。口わさび谷に抜けるためにはこちらの方が近いと思ったのだ。上り詰めるとそこは奥わさび谷と口わさび谷を分ける分水尾根だった。尾根をひと登りすると桧塚奥峰直下の平坦地にでる。近くのブナの木陰に陣取って昼食休憩。目の前にひきうす平とその向こうに池小屋山,さらにそのずっと向こうに大台ケ原が見える。大台ケ原の左の方に見えるのは加茂助谷の頭の双耳峰だろう。3泊4日の台高縦走を2回ほどやったことがあるが,今はもうそんな体力も気力も残っていないだろうな。下界は厳しい残暑のようだが,ここは涼風が吹き,別天地だ。そのうち一晩を過ごしにテントを担いで来たいものだ。 昼食後は口わさび谷に降りる。奥わさび谷に比べるとやや明るい谷だ。昔は杣道があったようで,谷沿いになんとなく踏み跡が続いている。この谷も険悪な大滝などはなく,その気になれば普通の登山靴でも十分に下降することができそうだ。山腹ハイウエイを過ぎ,奥わさび谷出会いから難なく木屋谷川出会いに到着。右岸道をしばらく歩くと万歳橋だった。 癒しの谷をのんびり歩いた至福の1日だった。
【 山 域 】台高・櫛田川支流 木屋谷川
【メンバー】単独
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】万歳橋 9:15 --- 9:38 わさび谷出会い --- 10:20 口わさび谷分岐 --- 10:58 標高1100m山腹道 11:19 --- 12:23 桧塚奥峰下 13:15 --- 13:19 口わさび谷 --- 14:13 奥わさび谷出会い --- 14:41 木屋谷川出会い --- 15:00 万歳橋
万歳橋から木屋谷右岸道をゆるゆる登って行くとだんだん汗ばんでくる。右手下に見える木屋谷はいかにも涼しそうで,やっぱり万歳橋から入渓したほうがよかったかと思ったりする。1週間以上降り続いた長雨のせいで水量が多いだろうと推測し,泳ぐ必要のないわさび谷を詰めることにしたのだった。
万歳橋で出会った40代と思われる単独男性は木屋谷から奥山谷を遡行し,桧塚からまなこ谷を下山するという。沢靴ではないが沢でも歩けるというモンベル製の靴を履き,ヘルメットをかぶった気楽な装備である。「今日は水が多いですか」と聞かれ,「そうでもないです」と返したのだったが,あらためて右下の沢を見るとやはり通常よりは水量が多いようだ。沢中を歩く彼の姿を見ようと気をつけて歩いていたのだが,知らないうちに追い越してしまったようだ。
30分ほどでわさび谷出会い。清冽な水の流れに足をつけるとあっという間に体の火照りが消えてゆく。ここで一休み。今日はわさび谷を周回するだけののんびり沢行なのだ。右岸道はここで谷を渡り,奥山谷出会いに向かってさらに高度を上げている。 岩は褶曲した縞模様が明瞭な堆積岩で,太古の海が隆起してできた地形であることを雄弁に物語っている。その岩の表面を多雨に育まれた苔が覆っている。苔の緑と広葉樹の緑が溶け合って,沢全体が緑になっている。その緑の中を流れ落ちる水とが相まって台高の沢の素敵な風景を作り上げているのだ。花崗岩の多い鈴鹿の沢の風景とはまた違う独特の風景である。 これから遡行する予定の上流部を眺めると,それなりの傾斜の斜面を岩間滝が連続している。「こんなに急峻な谷だっけ?」。それもそのはず,標高900mから1400mまでを一挙に登り詰めているのだ。この谷を遡行するのはこれで3回目のはずだが,記憶の中の谷はもっと緩やかなのだった。 歩き始めると下から眺めたよりもずっと簡単に進むことができた。苔に覆われた緑の岩の間を流れ落ちる白い水流はどこを切り取っても絵になりそうで,頻繁に立ち止まってはカメラのシャッターを切る。水流を綺麗に撮ろうとシャッタースピードを少し遅くしているせいで,家に帰ってから見た写真の多くがピンボケだった。それでも,ピンボケでない写真は美しく,自分の感激をそのまま写し撮ってくれたようだ。 「やっぱり台高の谷はいい」と思う。ロープやハーネスがなくてもフリーで登ることができる幾多の小滝。緑の岩の間を流れ落ちる白い水流。上を見ると緑の広葉樹の森。登ることが全く苦にならない。 口わさび谷との分岐を過ぎ,しばらく行くと開けた場所に広いなめ滝が現れる。日当たりがよく,桃源郷と言ってもいい趣だ。標高1100m付近の山腹ハイウエーが横切る場所だった。近くにはカツラの大木が2,3本。あとは,トチやサワグルミ,オオイタヤメイゲツ,チドリノキなど。しばらく一休み。テント泊をしたいようないい場所だけど,平地が少ないのが難か。 このあと,谷は少し大人しくなり,源流の雰囲気。標高1250mあたりで,絶滅危惧Ⅱ類に指定されている植物の群落を見つける。この辺りの標高1000m以上の谷間に稀に見られる植物だ。氷河期の生き残りで,特殊な環境でしか生きられないらしい。
源流近くで,本流をはずれ左俣支流に入る。口わさび谷に抜けるためにはこちらの方が近いと思ったのだ。上り詰めるとそこは奥わさび谷と口わさび谷を分ける分水尾根だった。尾根をひと登りすると桧塚奥峰直下の平坦地にでる。近くのブナの木陰に陣取って昼食休憩。目の前にひきうす平とその向こうに池小屋山,さらにそのずっと向こうに大台ケ原が見える。大台ケ原の左の方に見えるのは加茂助谷の頭の双耳峰だろう。3泊4日の台高縦走を2回ほどやったことがあるが,今はもうそんな体力も気力も残っていないだろうな。下界は厳しい残暑のようだが,ここは涼風が吹き,別天地だ。そのうち一晩を過ごしにテントを担いで来たいものだ。 昼食後は口わさび谷に降りる。奥わさび谷に比べるとやや明るい谷だ。昔は杣道があったようで,谷沿いになんとなく踏み跡が続いている。この谷も険悪な大滝などはなく,その気になれば普通の登山靴でも十分に下降することができそうだ。山腹ハイウエイを過ぎ,奥わさび谷出会いから難なく木屋谷川出会いに到着。右岸道をしばらく歩くと万歳橋だった。 癒しの谷をのんびり歩いた至福の1日だった。