【鈴鹿】空中回廊周遊 水沢岳東尾根から中ノ谷左岸尾根へ
Posted: 2021年4月21日(水) 20:46
【日 付】2021年4月18日(日)
【山 域】鈴鹿 鎌ヶ岳周辺
【天 候】晴れのち曇りのち雨
【メンバー】sato、山日和
【コース】カズラ谷出合8:35---9:02中ノ谷出合---11:22水沢岳12:32---13:37鎌尾根P2---13:42下降点---
15:51駐車地
わりばしさんのレポを見て気になっていた水沢岳東尾根。北の方の天気が悪いこの週末は、ちょうど実行の
チャンスだ。
カズラ谷の出合で出発の準備をしていると、登山者が次々にやってきては行ったり来たり、ウロウロしている。
どうやら鎌ヶ岳への登山道の渡渉点が増水で渡れずに困っているようだ。
こちらは林道を進んで、水沢岳の東尾根に向かう。尾根の取付きで、先行していた単独の女性が引き返して後ろ
を付いて来ようとした。聞けば、水沢峠から鎌尾根に行こうとしているようだ。このまま林道を進むよう説明し
てあげた。深く考えずに人の後を付いて行けば間違いないと考える登山者が多いのか。
植林の中、明瞭な道が続く尾根を少し上がると、立派な石垣が現れた。これはかつて存在した水沢鉱山の跡ら
しい。昔はこのあたりで良質の水銀が採掘できたようだ。
Ca860mまで上がるとゆったりした尾根となり、本当にこの先に核心部が待っているのかという気分になるが、
前方に見える水沢岳は、まるで鎌ヶ岳かと見紛うばかりの鋭い姿で威圧しているようである。時折現れるアカヤ
シオのピンクの花が目を慰めてくれる。
突然、花崗岩の岩場が行く手に立ちはだかった。いよいよ始まったか。壁の真ん中には残置ロープがぶら下が
っている。左手から回り込んでロープの場所まで上がるが、足場が少なく、やや苦労させられた。ロープはさら
に上に伸びているが、少々年季の入ったロープで、これに命を預けるには心許ない。
右手を見ると、こちらにもロープがあり、岩の割れ目を足場にして微妙なバランスでトラバース。岩壁を回り込
んだところで嫌なトラバースの下りがあり、下り切ったところから、頼りない細引きがぶら下がるザレたルンゼ
状を尾根芯に復帰した。
次の岩壁は、基部から見上げると中間部の一部にロープが見えた。あそこまで到達しても次の保証がなさそう
だ。左の斜面を見ると、尾根の上からロープが下がっているように見えた。そこで一旦下ってから左へ大きく回
り込んで上がれそうな場所を探ったが、どうにも弱点が見つからない。
仕方なく元に戻って、先ほどのロープのところまで上がってみると、下から見たほどではなく、さほど苦労せず
に岩壁のトップまで抜けることができた。振り返ると、岩稜の向こうに伊勢平野と伊勢湾の眺めが広がる。
ここまで来れば空気は一変して、まったく平和なブナ混じりの尾根となった。
核心部の区間は短いが、水沢岳東尾根は正真正銘、鈴鹿でもトップクラスのバリ尾根だろう。
下りに取るのは自殺行為かもしれない。
強風の吹き抜ける県境稜線を避けて、水沢岳の山頂直下の樹林帯でランチタイムとする。
時間は早いが、稜線ではゆっくり腰を落ち着ける場所もないだろう。
この斜面は、真正面に鎌ヶ岳を望む最高のロケーションで、周りの樹林の雰囲気もいい。
食後のコーヒーの後、誤ってコッフェルを転がしてしまった。あれよあれよという間にコッフェルは斜面を転
がり落ちて行く。30mほど転がったところで、奇跡的に止まってくれた。その下を見るとスラブ状の谷が続いて
いる。もうひと転がりしていたら完全にアウトだった。
昨日までの晴れの予報は、昼から雨に変わっていた。空から冷たいものがと思ったら、降ってきたのは固形物
だった。アラレである。今日は結構涼しいと思っていたが、アラレに見舞われるとは予想もしなかった。
強風に抗いながら鎌尾根を行く。常に鎌ヶ岳の雄姿を前方に見ながらの稜線歩きは痛快だ。
これで雨が降っていれば最悪だが、幸いにも高曇りの天気で視界も利いている。
下山は中ノ谷の左岸尾根。昔洞吹氏が「空中回廊」と名付けたバリ尾根である。当初は鎌の山頂を往復してと
思っていたが、この風で山頂に立つ意味もないだろう。行ってしまえば尾根の分岐点まで戻ってくるのも面倒で、
カズラ谷の一般道へ日和ってしまいそうである。
鎌の南壁を間近に望む岩峰で山頂を遥拝して、空中回廊へと向かった。
この尾根の下り出しは、一見すると谷へ下ってしまいそうな急傾斜の細尾根で始まる。
登りで2度、中ノ谷遡行のツメで2度使っていて記憶があるので確信を持って進めるが、知らなければとても正解
には見えない。
思い出は美化されるのか、記憶の中にはないヤブっぽい急傾斜の尾根が続いた。この尾根を歩いている限り、
どの辺が「空中回廊」なのかわからない。考えてみると、木々がすっかり葉を落とした時期に、鎌尾根からグルッ
と湾曲したこの尾根を見下ろした様がそのように見えたと書いていた気もする。
実際、水沢岳東尾根の方が空中回廊と呼ぶに相応しい尾根である。
ただ、こちらの尾根には水沢岳東尾根よりはるかに多い満開のアカヤシオが気分を癒してくれた。
岩場と呼べるほどのものはないが、直進困難なところが結構あって、右に左にルーファイに気を遣わされる。
下部は植林が勝っているものの、明瞭な道となって、手を使わずに気楽に歩くことができた。
途中で降り出した雨は、林道に下り着く手前から本降りになった。こういう時の林道歩きはやたら長く感じるも
のだ。
車に戻って帰り支度をしていると、下界には青空が広がっていた。
山日和
【山 域】鈴鹿 鎌ヶ岳周辺
【天 候】晴れのち曇りのち雨
【メンバー】sato、山日和
【コース】カズラ谷出合8:35---9:02中ノ谷出合---11:22水沢岳12:32---13:37鎌尾根P2---13:42下降点---
15:51駐車地
わりばしさんのレポを見て気になっていた水沢岳東尾根。北の方の天気が悪いこの週末は、ちょうど実行の
チャンスだ。
カズラ谷の出合で出発の準備をしていると、登山者が次々にやってきては行ったり来たり、ウロウロしている。
どうやら鎌ヶ岳への登山道の渡渉点が増水で渡れずに困っているようだ。
こちらは林道を進んで、水沢岳の東尾根に向かう。尾根の取付きで、先行していた単独の女性が引き返して後ろ
を付いて来ようとした。聞けば、水沢峠から鎌尾根に行こうとしているようだ。このまま林道を進むよう説明し
てあげた。深く考えずに人の後を付いて行けば間違いないと考える登山者が多いのか。
植林の中、明瞭な道が続く尾根を少し上がると、立派な石垣が現れた。これはかつて存在した水沢鉱山の跡ら
しい。昔はこのあたりで良質の水銀が採掘できたようだ。
Ca860mまで上がるとゆったりした尾根となり、本当にこの先に核心部が待っているのかという気分になるが、
前方に見える水沢岳は、まるで鎌ヶ岳かと見紛うばかりの鋭い姿で威圧しているようである。時折現れるアカヤ
シオのピンクの花が目を慰めてくれる。
突然、花崗岩の岩場が行く手に立ちはだかった。いよいよ始まったか。壁の真ん中には残置ロープがぶら下が
っている。左手から回り込んでロープの場所まで上がるが、足場が少なく、やや苦労させられた。ロープはさら
に上に伸びているが、少々年季の入ったロープで、これに命を預けるには心許ない。
右手を見ると、こちらにもロープがあり、岩の割れ目を足場にして微妙なバランスでトラバース。岩壁を回り込
んだところで嫌なトラバースの下りがあり、下り切ったところから、頼りない細引きがぶら下がるザレたルンゼ
状を尾根芯に復帰した。
次の岩壁は、基部から見上げると中間部の一部にロープが見えた。あそこまで到達しても次の保証がなさそう
だ。左の斜面を見ると、尾根の上からロープが下がっているように見えた。そこで一旦下ってから左へ大きく回
り込んで上がれそうな場所を探ったが、どうにも弱点が見つからない。
仕方なく元に戻って、先ほどのロープのところまで上がってみると、下から見たほどではなく、さほど苦労せず
に岩壁のトップまで抜けることができた。振り返ると、岩稜の向こうに伊勢平野と伊勢湾の眺めが広がる。
ここまで来れば空気は一変して、まったく平和なブナ混じりの尾根となった。
核心部の区間は短いが、水沢岳東尾根は正真正銘、鈴鹿でもトップクラスのバリ尾根だろう。
下りに取るのは自殺行為かもしれない。
強風の吹き抜ける県境稜線を避けて、水沢岳の山頂直下の樹林帯でランチタイムとする。
時間は早いが、稜線ではゆっくり腰を落ち着ける場所もないだろう。
この斜面は、真正面に鎌ヶ岳を望む最高のロケーションで、周りの樹林の雰囲気もいい。
食後のコーヒーの後、誤ってコッフェルを転がしてしまった。あれよあれよという間にコッフェルは斜面を転
がり落ちて行く。30mほど転がったところで、奇跡的に止まってくれた。その下を見るとスラブ状の谷が続いて
いる。もうひと転がりしていたら完全にアウトだった。
昨日までの晴れの予報は、昼から雨に変わっていた。空から冷たいものがと思ったら、降ってきたのは固形物
だった。アラレである。今日は結構涼しいと思っていたが、アラレに見舞われるとは予想もしなかった。
強風に抗いながら鎌尾根を行く。常に鎌ヶ岳の雄姿を前方に見ながらの稜線歩きは痛快だ。
これで雨が降っていれば最悪だが、幸いにも高曇りの天気で視界も利いている。
下山は中ノ谷の左岸尾根。昔洞吹氏が「空中回廊」と名付けたバリ尾根である。当初は鎌の山頂を往復してと
思っていたが、この風で山頂に立つ意味もないだろう。行ってしまえば尾根の分岐点まで戻ってくるのも面倒で、
カズラ谷の一般道へ日和ってしまいそうである。
鎌の南壁を間近に望む岩峰で山頂を遥拝して、空中回廊へと向かった。
この尾根の下り出しは、一見すると谷へ下ってしまいそうな急傾斜の細尾根で始まる。
登りで2度、中ノ谷遡行のツメで2度使っていて記憶があるので確信を持って進めるが、知らなければとても正解
には見えない。
思い出は美化されるのか、記憶の中にはないヤブっぽい急傾斜の尾根が続いた。この尾根を歩いている限り、
どの辺が「空中回廊」なのかわからない。考えてみると、木々がすっかり葉を落とした時期に、鎌尾根からグルッ
と湾曲したこの尾根を見下ろした様がそのように見えたと書いていた気もする。
実際、水沢岳東尾根の方が空中回廊と呼ぶに相応しい尾根である。
ただ、こちらの尾根には水沢岳東尾根よりはるかに多い満開のアカヤシオが気分を癒してくれた。
岩場と呼べるほどのものはないが、直進困難なところが結構あって、右に左にルーファイに気を遣わされる。
下部は植林が勝っているものの、明瞭な道となって、手を使わずに気楽に歩くことができた。
途中で降り出した雨は、林道に下り着く手前から本降りになった。こういう時の林道歩きはやたら長く感じるも
のだ。
車に戻って帰り支度をしていると、下界には青空が広がっていた。
山日和