【奥越】極上の無名峰逍遥その2 岩穴谷山
Posted: 2021年3月17日(水) 20:09
【日 付】2021年3月14日(日)
【山 域】奥越 旧和泉村
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】角野前坂7:10---9:00下谷橋9:50---12:40岩穴谷山14:20---15:45 P1082m---17:00角野山---18:00駐車地
やっと雨が上がった。天気予報では夜が明ける頃から晴れるはずだが、空はまだ雲に覆われている。
九頭竜の道の駅から見える山肌は、2週間前と比べてもかなり雪が減っているようだ。
除雪は角野前坂の集落のはずれで終わっていた。石徹白ダムまでは車で入れるだろうと予想していたのだが、
当てが外れてしまった。さらに予想外だったのが、そこで3台の車が登山の準備をしていたことである。
どこへ行くのか尋ねてみると、小白山へ向かうとのこと。7、8人の中高年パーティー(人のことは言えないが)で、
ここから歩くとなるとなかなか厳しい行程だろう。
こちらが目指すのは、石徹白川の南側にある岩穴谷山。当然地形図に名前は載っていない。
ダムから先、ひたすら県道を歩いて、下谷の中間尾根から越美国境稜線の近くへ飛び出そうというプランである。
雪の車道歩きはなかなか疲れさせてくれる。スノーシューを履いていればほとんど沈むことはないが、一昨日
からの雨がなければツボ足でも舗装路を歩くような調子で歩けただろう。
時折雪が融けて舗装が出ている部分もあり、スノーシューをカチャカチャと引きずって歩く。その区間が長い時
はスノーシューを外して手にぶら下げて歩いた。こういう場面ではライトニング・エクスプローラーの脱着性の
良さが助かるのだ。
下谷の出合では、対岸のすぐそこに林道が見えているのだが、入口の橋は先にあって大きく迂回しなければな
らない。そこに車道歩き最大の難所があった。うず高くつもったデブリが行く手を阻んでいる。傾斜がそれほど
でもなく、雪が緩んでいるおかげでスノーシューを脱ぐだけで通過できたのが救いだった。
2時間近く歩いてようやく下谷の林道に着いた。予報通りの青空が広がってきたが、山に登る前に疲れ気味であ
る。
当初予定の尾根の取付きまで進んだところで思案した。稜線に達するまでの時間、そこから山頂までに要する
時間を計算すると、闇下の可能性が高い。それ以上に体力の心配もある。
決断は早く、下谷の橋まで戻って岩穴谷山へダイレクトに突き上げる尾根に転進しようと方針変更した。
この尾根が曲者と言うか、なんの面白みもない尾根で、テンションがまったく上がらない。その内に切れると
思っていた植林がいつまでも終わらない。尾根芯は杣道が露出しているので、途中からスノーシューを脱ぐ始末。
晴れ渡った空とは裏腹に、気分が暗くなって行きそうだ。
P1091を過ぎたところでようやく自然林となった。厳密にはその手前から天然杉の林になっていたので、杉林
が終わったと言うべきか。
小さなギャップへ滑り降りたところで目を疑うような風景が目の前に広がった。痩せた尾根が雪のブロックを
へばり付かせて続く右側に上がってきた谷が、二俣となって山頂方向へ伸びている。
左の谷はすぐ上でさらに二俣となり、いずれも山頂へ至る好ルートになりそうである。
雪が安定していそうなので、まるで迷路のような雪の谷間に飛び込み、右の谷を選択した。展望とは無縁だが、
雪がびっしりと詰まった狭い谷底から見上げる空は、開放的な尾根を歩くのとはまったく違う不思議な感覚を得
られる。昨日の雨はこの高度では雪だったようで、黒く汚れた部分が新雪で覆い隠されて、谷は美しいカーブを
描いている。谷の両岸は、これまでの尾根上では見られなかった待望のブナ林に変わっていた。
やがて谷は広い二俣状になったが、どちらもすぐに行き止まりのようだ。地形図では浅い谷地形が山頂直下の
鞍部に続いているように描かれているが、実際の地形はその通り行かないところも面白い。
右から回り込んで正面の雪壁の上に乗ると、美しいブナ林の台地となった。山頂はもう目の前だ。
ひと登りで1231.4mの岩穴谷山の山頂に到着。3週連続で奥越の名もない山に立つ。
予想に反して展望もなかなかのもので、枇杷倉山から小白山、石徹白の山々、その奥に白山の純白の姿が光る。
反対側には2週前に歩いた三ノ宿から岩ヶ谷山の尾根の奥に、越美国境の滝波山から屏風山への稜線が横たわる。
似たようなところからの眺めでありながら、少し角度が変わると違う景色のような印象を受けるのが面白い。
白山方面を眺めながらランチタイムとシャレ込みたかったが、いささか風が強い。南側の雪庇の下で、もっさり
した山並みを眺めてのんびりするのもオツなものだ。
下山は西に延びる尾根に針路を取るが、この尾根は複雑に分岐しているので気を抜くとあらぬ方向へ進んでし
まう。
尾根上はこの地域特有のヒノキの巨木・怪木のオンパレードだ。そこに時折ミズナラの奇木も交わって、スッキ
リした雪稜歩きではないが、独特の面白さがある。右手には常に小白山から枇杷倉山への稜線が高みから見下ろ
しているようだ。
P1100を過ぎると怪木帯も終わり、ブナ主体の林が続いた。変化に富んで、飽きることのない雪尾根歩きを楽
しめる。
854.8mの三角点角野山から駐車地に向かう尾根に進む。ここからは正面に木無山を望むことができる。あちら
には今日は山猫夫妻が入っているはずだ。
最初のうちは気持ちのいい雪尾根だったが、どんどん雪が腐り始めた上にヤセ尾根となり、尾根芯がヤブで覆
われ始めた。スノーシューを脱いで、雪を繋ぎながら左の谷から迂回する。今日は何度スノーシューを履いたり
脱いだりしたことだろう。
読みよりも30分遅れて駐車地に到着すると、小白山パーティーもちょうど戻ってきたところだった。あらぬ方
向から現れたので、「どこを登ってきたの?」と質問を受ける。今日のコースを説明すると妙に感心された。
大阪くんだりから来て、わざわざ名も無い山に登る物好きが珍しかったのだろう。
山日和
【山 域】奥越 旧和泉村
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】角野前坂7:10---9:00下谷橋9:50---12:40岩穴谷山14:20---15:45 P1082m---17:00角野山---18:00駐車地
やっと雨が上がった。天気予報では夜が明ける頃から晴れるはずだが、空はまだ雲に覆われている。
九頭竜の道の駅から見える山肌は、2週間前と比べてもかなり雪が減っているようだ。
除雪は角野前坂の集落のはずれで終わっていた。石徹白ダムまでは車で入れるだろうと予想していたのだが、
当てが外れてしまった。さらに予想外だったのが、そこで3台の車が登山の準備をしていたことである。
どこへ行くのか尋ねてみると、小白山へ向かうとのこと。7、8人の中高年パーティー(人のことは言えないが)で、
ここから歩くとなるとなかなか厳しい行程だろう。
こちらが目指すのは、石徹白川の南側にある岩穴谷山。当然地形図に名前は載っていない。
ダムから先、ひたすら県道を歩いて、下谷の中間尾根から越美国境稜線の近くへ飛び出そうというプランである。
雪の車道歩きはなかなか疲れさせてくれる。スノーシューを履いていればほとんど沈むことはないが、一昨日
からの雨がなければツボ足でも舗装路を歩くような調子で歩けただろう。
時折雪が融けて舗装が出ている部分もあり、スノーシューをカチャカチャと引きずって歩く。その区間が長い時
はスノーシューを外して手にぶら下げて歩いた。こういう場面ではライトニング・エクスプローラーの脱着性の
良さが助かるのだ。
下谷の出合では、対岸のすぐそこに林道が見えているのだが、入口の橋は先にあって大きく迂回しなければな
らない。そこに車道歩き最大の難所があった。うず高くつもったデブリが行く手を阻んでいる。傾斜がそれほど
でもなく、雪が緩んでいるおかげでスノーシューを脱ぐだけで通過できたのが救いだった。
2時間近く歩いてようやく下谷の林道に着いた。予報通りの青空が広がってきたが、山に登る前に疲れ気味であ
る。
当初予定の尾根の取付きまで進んだところで思案した。稜線に達するまでの時間、そこから山頂までに要する
時間を計算すると、闇下の可能性が高い。それ以上に体力の心配もある。
決断は早く、下谷の橋まで戻って岩穴谷山へダイレクトに突き上げる尾根に転進しようと方針変更した。
この尾根が曲者と言うか、なんの面白みもない尾根で、テンションがまったく上がらない。その内に切れると
思っていた植林がいつまでも終わらない。尾根芯は杣道が露出しているので、途中からスノーシューを脱ぐ始末。
晴れ渡った空とは裏腹に、気分が暗くなって行きそうだ。
P1091を過ぎたところでようやく自然林となった。厳密にはその手前から天然杉の林になっていたので、杉林
が終わったと言うべきか。
小さなギャップへ滑り降りたところで目を疑うような風景が目の前に広がった。痩せた尾根が雪のブロックを
へばり付かせて続く右側に上がってきた谷が、二俣となって山頂方向へ伸びている。
左の谷はすぐ上でさらに二俣となり、いずれも山頂へ至る好ルートになりそうである。
雪が安定していそうなので、まるで迷路のような雪の谷間に飛び込み、右の谷を選択した。展望とは無縁だが、
雪がびっしりと詰まった狭い谷底から見上げる空は、開放的な尾根を歩くのとはまったく違う不思議な感覚を得
られる。昨日の雨はこの高度では雪だったようで、黒く汚れた部分が新雪で覆い隠されて、谷は美しいカーブを
描いている。谷の両岸は、これまでの尾根上では見られなかった待望のブナ林に変わっていた。
やがて谷は広い二俣状になったが、どちらもすぐに行き止まりのようだ。地形図では浅い谷地形が山頂直下の
鞍部に続いているように描かれているが、実際の地形はその通り行かないところも面白い。
右から回り込んで正面の雪壁の上に乗ると、美しいブナ林の台地となった。山頂はもう目の前だ。
ひと登りで1231.4mの岩穴谷山の山頂に到着。3週連続で奥越の名もない山に立つ。
予想に反して展望もなかなかのもので、枇杷倉山から小白山、石徹白の山々、その奥に白山の純白の姿が光る。
反対側には2週前に歩いた三ノ宿から岩ヶ谷山の尾根の奥に、越美国境の滝波山から屏風山への稜線が横たわる。
似たようなところからの眺めでありながら、少し角度が変わると違う景色のような印象を受けるのが面白い。
白山方面を眺めながらランチタイムとシャレ込みたかったが、いささか風が強い。南側の雪庇の下で、もっさり
した山並みを眺めてのんびりするのもオツなものだ。
下山は西に延びる尾根に針路を取るが、この尾根は複雑に分岐しているので気を抜くとあらぬ方向へ進んでし
まう。
尾根上はこの地域特有のヒノキの巨木・怪木のオンパレードだ。そこに時折ミズナラの奇木も交わって、スッキ
リした雪稜歩きではないが、独特の面白さがある。右手には常に小白山から枇杷倉山への稜線が高みから見下ろ
しているようだ。
P1100を過ぎると怪木帯も終わり、ブナ主体の林が続いた。変化に富んで、飽きることのない雪尾根歩きを楽
しめる。
854.8mの三角点角野山から駐車地に向かう尾根に進む。ここからは正面に木無山を望むことができる。あちら
には今日は山猫夫妻が入っているはずだ。
最初のうちは気持ちのいい雪尾根だったが、どんどん雪が腐り始めた上にヤセ尾根となり、尾根芯がヤブで覆
われ始めた。スノーシューを脱いで、雪を繋ぎながら左の谷から迂回する。今日は何度スノーシューを履いたり
脱いだりしたことだろう。
読みよりも30分遅れて駐車地に到着すると、小白山パーティーもちょうど戻ってきたところだった。あらぬ方
向から現れたので、「どこを登ってきたの?」と質問を受ける。今日のコースを説明すると妙に感心された。
大阪くんだりから来て、わざわざ名も無い山に登る物好きが珍しかったのだろう。
山日和