【奥越】新雪に飾られた雪稜を行く 縫ヶ原山
Posted: 2021年2月09日(火) 20:54
【日 付】2021年2月6日(土)
【山 域】奥越 縫ヶ原山
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】真名川ダム7:25---10:00 P839---13:15縫ヶ原山13:25---13:30ランチ場14:30---15:50持篭谷山16:00
---17:20真名川ダム
この山の名前を知ったのは20年ほど前だろうか。荒島岳あたりの地形図を眺めていて、南側に岩壁を張り巡ら
せながら、北側にはモッカ平という名前の斜面が広がっている場所を見つけた。
その頃、「福井の山150」という増永廸男氏の本で、その山が「縫ヶ原山」と呼ばれていることを知ったのだ。
そして、次の春に矢も楯もたまらず、洞吹氏を誘って訪れたのである。まだネットがそれほど一般的ではなく、
情報もまったくない(「福井の山150はガイドブックではなく、ガイド的な記述はない)ので、見当をつけて手探り
でコースを設定した。その山は期待に違わず、と言うより期待を遥かに凌駕する満足感を与えてくれた。
その時から私にとって、縫ヶ原山は福井の山の中でも最上級のお気に入りの山となったのだ。
後から見覚えのある車が追い上げて来たと思ったら、やはりkeikokuさんの車だった。
真名川ダムは去年の今頃とは様変わり、国道157号はうず高く積まれた雪の山で向こう側が見えない。
車から降りてきたマリベさんが「こんなことってあるんですね!!」と驚いていた。
あるんですよ、やぶこぎでは。
ここへ来ると言うことは、行き先はほぼ一択である。初の縫ヶ原山で、時計回りに周回するというkeikoku、
マリベ、M氏パーティーの話を聞いて、それではと逆回りを選択した。
今週降った新雪は、30~40センチは積もっているだろうか。湿った雪は重い。欄干のレベルまで雪が積もった
橋を渡って、持籠谷の左岸尾根に取り付いた。痩せた急な尾根をモンキー気味に登って行く。
このあたりはお世辞にも快適とは言えないが、その後に待っている天国が楽しみである。空はまだ雲が多いが、
10時頃からは青空が広がるはずだ。
雑木林がブナ林に変わる。頭上にはみるみる青空が広がり始めた。一面のブナ林に朝の光が差し込んで、雪面
に描き出す陰影が美しい。
雪質は歩き始めよりは軽くなり、沈み込みもマシにはなったが、やはり重いことには変わりはない。
839mの三角点山葵谷まで登ると、背後に銀杏峰の真っ白な山頂台地が眩しく見えた。すぐ隣には道斉山が大き
く迫る。
ブナの巨木が立つ尾根を進むと、やがて二重山稜のような地形に出会う。巨大な舟窪地形だ。初めて来た時もこ
の地形に出会って驚いたことを思い出す。
尾根の左側は樹林が広がるが、右側は切れ落ち、大きな雪庇が発達しているという状態が、ずっと山頂まで続
く。縫ヶ原山の最大の売り物である雪稜の始まりである。
北側には神々しいばかりの白さで輝く荒島岳に終始見守られながらの雪稜歩きだ。
肝心の縫ヶ原の山頂は直前になるまで見えない。あの雪のピークまで行けばと思えば、また次に似たようなピー
クが控えている。その繰り返しである。
膨大な量の雪で固められた尾根は、巨大な雪庇を南側に張り出している。雪面にはクラックが入っているとこ
ろもあり、近付き過ぎると命取りになってしまうのだ。安全だと思って歩いているラインも、実際に地面がある
のは立ち木が生えているところまで、ここは雪の上の仮想地面なのだろう。
南側の展望も格別で、能郷白山から屏風山、平家岳、滝波山、堂ヶ辻山、岩谷山、御伊勢山と、かつて歩いて
来た山々がずらりと並ぶの見ると、感慨もひとしおである。
北側の眼下にはモッカ平と呼ばれるブナとミズナラの森(林道が走っているのでかなり伐採されただろうが)が広が
り、その向こうにはやはり荒島岳の巨体が鎮座している。
気温が高いのでさすがに霧氷の歓迎を受けるとは行かなかったが、木々に咲く雪の花と小ぶりなエビの尻尾が
美しい。
ほとんど勾配のなくなった雪稜の奥に人影が見えた。逆回りのkeikokuパーティーだ。
こちらの方が先着するだろうと思っていたが、足の重さと攣りでずいぶん時間がかかってしまった。ラッセルは
ほとんどsatoさんに任せっきりだったのに、情けない話である。
ひと回りも年が違うとは言え、12年前の自分よりもはるかに強いのではと思わせる。
山頂でひとしきり再会を祝したあと、直下の風のないところまで下ってランチタイムとする。
下山に要する時間を計算して、下山時刻から逆算してランチタイムの時間を決めた。
1時間はゆっくりできそうだ。ここで鍋とビールをあきらめたのでは、なんのために山に登っているのかわからな
いのだ。荒島岳を真正面に見ながら午後のひと時を楽しんだ。
雪は重いがトレースがあるので気が楽である。とは言っても、下りではノートレースの斜面の方が歩きやすい。
大半はトレースを外して、自分たちだけの足跡を刻む。
思ったよりも早く1209mピークに立った。ここから荒島岳へ続く美しい尾根は、10年前に辿ったことがある。
常に荒島岳を正面に見て、山頂にダイレクトに飛び出すこの尾根は、荒島岳へと至る最高のルートではないかと
思う。
持篭谷山への尾根の途中に雪庇が崩れた痕があった。これがkeikokuさんが落ちた雪庇か。山頂での話の時に、
雪庇が崩落して落ちたと聞いていたのだ。ついつい端に寄りたくなってしまうものだが、自分が安全だと思うラ
インの更に内側を歩かないといけないと思う。
本日最後のピークである持篭谷山からは、胸のすくような大野盆地の眺めを得ることができる。
これほど真下に広がる盆地を見られる場所は少ないのではないだろうか。
荒島岳の左に目を遣ると、薄ぼんやりとではあるが、見紛うことなき白山の姿が目に飛び込んで来た。
荒島岳へ至る尾根の斜面は、夕刻の残照を受けて山襞がくっきりとコントラストを描いていた。この時間に歩い
ていなければ見られない光景である。
真名川ダムへの尾根は広く緩やかで、素晴らしいブナの森が続くのだが、ここまでの道程の充実感と逆光のせ
いもあって、それほど感激しなかった。ここを歩くのはもう6度目だということも大きいのだろうが。
尾根の南側にブナの巨木がかたまっている場所があり、そこだけは外すことができない。
その内の一本は、幹周4.5m以上はあるだろうと思われる堂々たる巨樹だ。
下部ではブナの姿は少なくなり、ミズナラ主体の森となる。
日は山の端の向こうに消え、真名川ダム湖の水面も灰色に沈んでいる。どうやら暗くなる前に下りられそうだ。
山日和
【山 域】奥越 縫ヶ原山
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】真名川ダム7:25---10:00 P839---13:15縫ヶ原山13:25---13:30ランチ場14:30---15:50持篭谷山16:00
---17:20真名川ダム
この山の名前を知ったのは20年ほど前だろうか。荒島岳あたりの地形図を眺めていて、南側に岩壁を張り巡ら
せながら、北側にはモッカ平という名前の斜面が広がっている場所を見つけた。
その頃、「福井の山150」という増永廸男氏の本で、その山が「縫ヶ原山」と呼ばれていることを知ったのだ。
そして、次の春に矢も楯もたまらず、洞吹氏を誘って訪れたのである。まだネットがそれほど一般的ではなく、
情報もまったくない(「福井の山150はガイドブックではなく、ガイド的な記述はない)ので、見当をつけて手探り
でコースを設定した。その山は期待に違わず、と言うより期待を遥かに凌駕する満足感を与えてくれた。
その時から私にとって、縫ヶ原山は福井の山の中でも最上級のお気に入りの山となったのだ。
後から見覚えのある車が追い上げて来たと思ったら、やはりkeikokuさんの車だった。
真名川ダムは去年の今頃とは様変わり、国道157号はうず高く積まれた雪の山で向こう側が見えない。
車から降りてきたマリベさんが「こんなことってあるんですね!!」と驚いていた。
あるんですよ、やぶこぎでは。
ここへ来ると言うことは、行き先はほぼ一択である。初の縫ヶ原山で、時計回りに周回するというkeikoku、
マリベ、M氏パーティーの話を聞いて、それではと逆回りを選択した。
今週降った新雪は、30~40センチは積もっているだろうか。湿った雪は重い。欄干のレベルまで雪が積もった
橋を渡って、持籠谷の左岸尾根に取り付いた。痩せた急な尾根をモンキー気味に登って行く。
このあたりはお世辞にも快適とは言えないが、その後に待っている天国が楽しみである。空はまだ雲が多いが、
10時頃からは青空が広がるはずだ。
雑木林がブナ林に変わる。頭上にはみるみる青空が広がり始めた。一面のブナ林に朝の光が差し込んで、雪面
に描き出す陰影が美しい。
雪質は歩き始めよりは軽くなり、沈み込みもマシにはなったが、やはり重いことには変わりはない。
839mの三角点山葵谷まで登ると、背後に銀杏峰の真っ白な山頂台地が眩しく見えた。すぐ隣には道斉山が大き
く迫る。
ブナの巨木が立つ尾根を進むと、やがて二重山稜のような地形に出会う。巨大な舟窪地形だ。初めて来た時もこ
の地形に出会って驚いたことを思い出す。
尾根の左側は樹林が広がるが、右側は切れ落ち、大きな雪庇が発達しているという状態が、ずっと山頂まで続
く。縫ヶ原山の最大の売り物である雪稜の始まりである。
北側には神々しいばかりの白さで輝く荒島岳に終始見守られながらの雪稜歩きだ。
肝心の縫ヶ原の山頂は直前になるまで見えない。あの雪のピークまで行けばと思えば、また次に似たようなピー
クが控えている。その繰り返しである。
膨大な量の雪で固められた尾根は、巨大な雪庇を南側に張り出している。雪面にはクラックが入っているとこ
ろもあり、近付き過ぎると命取りになってしまうのだ。安全だと思って歩いているラインも、実際に地面がある
のは立ち木が生えているところまで、ここは雪の上の仮想地面なのだろう。
南側の展望も格別で、能郷白山から屏風山、平家岳、滝波山、堂ヶ辻山、岩谷山、御伊勢山と、かつて歩いて
来た山々がずらりと並ぶの見ると、感慨もひとしおである。
北側の眼下にはモッカ平と呼ばれるブナとミズナラの森(林道が走っているのでかなり伐採されただろうが)が広が
り、その向こうにはやはり荒島岳の巨体が鎮座している。
気温が高いのでさすがに霧氷の歓迎を受けるとは行かなかったが、木々に咲く雪の花と小ぶりなエビの尻尾が
美しい。
ほとんど勾配のなくなった雪稜の奥に人影が見えた。逆回りのkeikokuパーティーだ。
こちらの方が先着するだろうと思っていたが、足の重さと攣りでずいぶん時間がかかってしまった。ラッセルは
ほとんどsatoさんに任せっきりだったのに、情けない話である。
ひと回りも年が違うとは言え、12年前の自分よりもはるかに強いのではと思わせる。
山頂でひとしきり再会を祝したあと、直下の風のないところまで下ってランチタイムとする。
下山に要する時間を計算して、下山時刻から逆算してランチタイムの時間を決めた。
1時間はゆっくりできそうだ。ここで鍋とビールをあきらめたのでは、なんのために山に登っているのかわからな
いのだ。荒島岳を真正面に見ながら午後のひと時を楽しんだ。
雪は重いがトレースがあるので気が楽である。とは言っても、下りではノートレースの斜面の方が歩きやすい。
大半はトレースを外して、自分たちだけの足跡を刻む。
思ったよりも早く1209mピークに立った。ここから荒島岳へ続く美しい尾根は、10年前に辿ったことがある。
常に荒島岳を正面に見て、山頂にダイレクトに飛び出すこの尾根は、荒島岳へと至る最高のルートではないかと
思う。
持篭谷山への尾根の途中に雪庇が崩れた痕があった。これがkeikokuさんが落ちた雪庇か。山頂での話の時に、
雪庇が崩落して落ちたと聞いていたのだ。ついつい端に寄りたくなってしまうものだが、自分が安全だと思うラ
インの更に内側を歩かないといけないと思う。
本日最後のピークである持篭谷山からは、胸のすくような大野盆地の眺めを得ることができる。
これほど真下に広がる盆地を見られる場所は少ないのではないだろうか。
荒島岳の左に目を遣ると、薄ぼんやりとではあるが、見紛うことなき白山の姿が目に飛び込んで来た。
荒島岳へ至る尾根の斜面は、夕刻の残照を受けて山襞がくっきりとコントラストを描いていた。この時間に歩い
ていなければ見られない光景である。
真名川ダムへの尾根は広く緩やかで、素晴らしいブナの森が続くのだが、ここまでの道程の充実感と逆光のせ
いもあって、それほど感激しなかった。ここを歩くのはもう6度目だということも大きいのだろうが。
尾根の南側にブナの巨木がかたまっている場所があり、そこだけは外すことができない。
その内の一本は、幹周4.5m以上はあるだろうと思われる堂々たる巨樹だ。
下部ではブナの姿は少なくなり、ミズナラ主体の森となる。
日は山の端の向こうに消え、真名川ダム湖の水面も灰色に沈んでいる。どうやら暗くなる前に下りられそうだ。
山日和