【奥越】真名川ダムから荒島岳へ
Posted: 2011年4月05日(火) 19:53
【日 付】2011年4月3日(日)
【山 域】奥越 荒島岳周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】真名川ダム6:43---8:58持篭谷山9:18---9:40 P1209m---12:03荒島岳13:42
---14:49小荒島岳15:01---16:00林道終点---16:24 DOCデポ地
真名川ダム湖の水面は曇り空を映して鈍く光っていた。下流方向の高みには真っ白な三角がわずかに頭を出し
ている。目指す荒島岳の山頂だ。
ダムを渡って対岸の林道に出る。まだ1m近い雪が路面を覆っていた。いつもの如く、コンクリート壁が切れた植林
帯に付けられた杣道を上がる。ここを通るのはもう4回目だ。
ひと汗かいて尾根に乗れば後は広い雪尾根を辿るだけである。雪は完璧に締まって、ビブラムの跡がわずかに
残る程度。今日はスノーシューも背中の重しで終わりそうな予感である。
持篭谷(もっかだに)山1120.1mの西に伸びる尾根は実に広々とした気持ちのいい尾根である。
下部はミズナラやコナラを主体とした疎林が広がり、Ca700mあたりからはブナが混じり始める。尾根の南寄りには
かなり太いブナも見つけることができる。
どんよりとした天気で自然林の中に日が射さないのが残念だ。それでも雰囲気十分の森を味わいながら雪を踏ん
で歩くのは格別である。北側が開けて荒島岳の巨体が姿を見せた。眼下には大野盆地が広がる。
雪面には昨日のものだろうか、足跡が2つ3つ残っていた。
クラストした急斜面を登山靴のエッジを利かせて上がれば持篭谷山頂だ。風が強く寒いのでアウターを着込んだ。
ここまで2時間強。まずまずのペースだ。荒島岳~縫ヶ原山ジャンクションの1209mピークまで3時間で行ければな
んとか行けると踏んでいたが、この分なら十分周回できそうだ。
荒島岳は遥か彼方に鎮座しているように見えるが、今日はそれほど遠いとは感じなかった。よほど気合いが入って
いるのだろう。
[attachment=4]P1010075_1_1.JPG[/attachment]
1209mJPに向けて白い雪稜がうねっている。右の持篭谷側はブナ林が続く。左側の見晴らしがやたらいいのは
尾根の直下まで林道が伸びて伐採されているからだ。
真名川ダムから伸びる林道はモッカ平を横断してこの尾根を越え、足谷側へとさらに伸びてしまった。
1209mピークに立つ。ダムからジャスト3時間。OKだ。
昨日までの暖かさから一転して今朝は冷え込んだ。冷え込みと風のおかげで霧氷の出迎えを受ける。
青空がないのが残念だが、予報ではもう少し経てば晴れるはずだ。
[attachment=3]P1010099_1.JPG[/attachment]
今日は縫ヶ原山に背を向けて、荒島岳へ初めての雪尾根を辿る。目の前には延々と伸びる雪稜。東側は落ちた
雪庇の跡が雪壁となって切れている。
膨大な積雪が形作る雪堤も、そろそろ本来の尾根芯と仮想尾根の境界あたりに割れ目が入り始めて、迂闊に足を
運ぶとボソッと雪穴にはまり込んでしまうので注意が必要である。
雪堤の高さは低いところでも5m、高いところは10mぐらいあるだろう。この地の夥しい雪の量を実感する。
雪は相変わらずよく締まってストレス知らず。あまりに快調過ぎて、早く通過するのがもったいない。それに青空が
なかなか戻って来ず、この尾根を陽の光を浴びて歩けないのはあまりに残念過ぎるので、1265mピークの手前で
時間調整の休憩を取る。1209mJPからまだ1時間あまりしか経っていない。
ここで急登に備えてアイゼンを装着した。遠くから見た荒島岳山頂直下の登りは壁のように映ったからだ。
時間を潰していると少しずつ空に青みが射してきた。いいぞ。
頭上の荒島山頂の上が明るくなったのを確認して再スタートを切る。霧氷もグレーから白へと色を変えた。
右手の鳴サコ源頭には崩壊した雪庇の跡か、巨大なデブリが谷を埋めていた。斜度はきつくなってきたが、思っ
ていたほどではない。ストックをピッケルに持ち替えるほどのこともなかった。
ふと足元を見ると「荒島岳山頂0.3km」の標識。これは今ではあまり使われなくなった下山コースの道標だ。
あと少し。
登山者の姿が見えた。傾斜が緩んで、雪面からわずかに頭を出した祠が見えると18年ぶりの荒島岳山頂だ。
なんとも贅沢な景観に360度取り巻かれた。
白山、槍・穂高、乗鞍、御岳から経ヶ岳、大日岳と石徹白の山々、木無山、能郷白山・屏風山を始めとする越美国
境の山々、姥ヶ岳、銀杏峰、部子山、越前甲。浄法寺山や高平山といった1000mばかりの山々でもまだ真っ白な
のは驚きだ。
[attachment=2]P1010245_1.JPG[/attachment]
先着していた2人連れと写真を撮り合ってしばらく歓談する。すでに下山した人がかなりいるようで、青空の下でこ
の景色を見ずじまいだという。実にもったいない話だ。そのふたりはゆっくり登ってきたおかげでこの僥倖に出会え
たと喜んでいた。
小さな雪壁の下でピッケルで雪を削ってランチ場所を設営する。晴れてはきたが相変わらず風が強く寒いのだ。
白山を眺めながらビールを煽る。実に美味い。これを至福と言わずしてなんと言えばいいのだろう。普通に生活して
山に登れる幸せを噛み締めるひと時だ。
これまで荒島岳はやや敬遠していたきらいがあった。何故ならば日本100名山だからである。しかし登ってみれば
文句なしにいい山だ。特に今日辿ってきた南からの尾根は、どんどん近付いてくる荒島岳を真正面に見ながら歩け
るベストコースではないだろうか。もちろん道がないので積雪期限定なのだが。
何人かの登山者が上がってきては先に下りて行った。みんな山頂でのんびりする習慣がないのだろうか。
東に伸びる雪尾根が魅力的だったのですこし歩いてみた。こちらには「大ナベ」「小ナベ」と呼ばれるピークがある。
北東面の谷筋は山スキーのメッカらしい。仏御前の滝あたりからの尾根も楽しそうだ。
今日の登山者はほとんどが勝原スキー場跡からの往復のようだ。こちらは小荒島岳(コアラ島岳と呼ぶ人もいる)
を経由して北西へ向かう中出コースである。この登山口の手前にDOCをデポしているのだ。
従って、下山してもまだ今日の行程は終わらないのだ。国道へ出てから真名川ダムまでは登り一辺倒なのである。
山頂を辞して下山にかかる。意外に雪が緩んでいて、今日初めてくるぶしあたりまで潜った。右側は雪庇が残り、
九頭竜川へ鋭く切れ落ちている。小荒島岳はその山頂だけが白い帽子を被っているようだ。
[attachment=0]P1010257_1.JPG[/attachment]
快調に下り、「モチガ壁」と呼ばれる雪壁もうまく左側を巻くトレースが付けられていた。
18年前はどこをどう歩いたのかあまり覚えていない。ただあの頃は山頂にまだ測候所の建物があり、中で風を避
けて食事をした記憶が残っている。大きな反射板もあった。
[attachment=1]P1010253_1.JPG[/attachment]
1204mのシャクナゲ平からは、ほとんどのトレースはスキー場跡へと向かっていた。わずかにツボ足とスキーのト
レースがひとつずつ、小荒島岳方面に伸びていた。これは山頂で会ったカップルのものだろう。
そのトレースも小荒島の山頂から北東の尾根に向かっていた。小荒島岳で最後の展望を楽しむ。
シャクナゲ平の手前からここまでなかなかのブナ林が続いていた。鞍部のあたりは実にいい雰囲気である。やや
沈み始めたので本日初めてスノーシューを装着した。
小荒島からの下りは尻セードを誘ういい斜面が広がる。今日は遊び尽くそう。
このルートは登山道ではあるが、テープ類がまったく見られずどこが道なのかわからない。まあ、道であろうがな
かろうが一向に構わないのだが。
佐開の集落へ落ちる谷へ危うく誘いこまれそうになりかけて、尾根をトラバースして目的の谷へ入れば後は一本道
だ。こちらのコースは早いタイミングで植林が現われる。
何度か林道らしきものと交差して堰堤を過ぎるとやたら開けた谷間に出た。ここからは雪の林道歩き。
中出コース登山口の標識のあるところが林道の除雪終了点となっていた。そこからわずかでDOCデポ地。
真名川ダムまで30分というところか。
麓へ下りて、大野盆地の南端にあたる佐開の集落あたりを転がしていると、すっかり春の日差しが戻ってきていた。
ダムまであとひと頑張りだ。
山日和
【山 域】奥越 荒島岳周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】真名川ダム6:43---8:58持篭谷山9:18---9:40 P1209m---12:03荒島岳13:42
---14:49小荒島岳15:01---16:00林道終点---16:24 DOCデポ地
真名川ダム湖の水面は曇り空を映して鈍く光っていた。下流方向の高みには真っ白な三角がわずかに頭を出し
ている。目指す荒島岳の山頂だ。
ダムを渡って対岸の林道に出る。まだ1m近い雪が路面を覆っていた。いつもの如く、コンクリート壁が切れた植林
帯に付けられた杣道を上がる。ここを通るのはもう4回目だ。
ひと汗かいて尾根に乗れば後は広い雪尾根を辿るだけである。雪は完璧に締まって、ビブラムの跡がわずかに
残る程度。今日はスノーシューも背中の重しで終わりそうな予感である。
持篭谷(もっかだに)山1120.1mの西に伸びる尾根は実に広々とした気持ちのいい尾根である。
下部はミズナラやコナラを主体とした疎林が広がり、Ca700mあたりからはブナが混じり始める。尾根の南寄りには
かなり太いブナも見つけることができる。
どんよりとした天気で自然林の中に日が射さないのが残念だ。それでも雰囲気十分の森を味わいながら雪を踏ん
で歩くのは格別である。北側が開けて荒島岳の巨体が姿を見せた。眼下には大野盆地が広がる。
雪面には昨日のものだろうか、足跡が2つ3つ残っていた。
クラストした急斜面を登山靴のエッジを利かせて上がれば持篭谷山頂だ。風が強く寒いのでアウターを着込んだ。
ここまで2時間強。まずまずのペースだ。荒島岳~縫ヶ原山ジャンクションの1209mピークまで3時間で行ければな
んとか行けると踏んでいたが、この分なら十分周回できそうだ。
荒島岳は遥か彼方に鎮座しているように見えるが、今日はそれほど遠いとは感じなかった。よほど気合いが入って
いるのだろう。
[attachment=4]P1010075_1_1.JPG[/attachment]
1209mJPに向けて白い雪稜がうねっている。右の持篭谷側はブナ林が続く。左側の見晴らしがやたらいいのは
尾根の直下まで林道が伸びて伐採されているからだ。
真名川ダムから伸びる林道はモッカ平を横断してこの尾根を越え、足谷側へとさらに伸びてしまった。
1209mピークに立つ。ダムからジャスト3時間。OKだ。
昨日までの暖かさから一転して今朝は冷え込んだ。冷え込みと風のおかげで霧氷の出迎えを受ける。
青空がないのが残念だが、予報ではもう少し経てば晴れるはずだ。
[attachment=3]P1010099_1.JPG[/attachment]
今日は縫ヶ原山に背を向けて、荒島岳へ初めての雪尾根を辿る。目の前には延々と伸びる雪稜。東側は落ちた
雪庇の跡が雪壁となって切れている。
膨大な積雪が形作る雪堤も、そろそろ本来の尾根芯と仮想尾根の境界あたりに割れ目が入り始めて、迂闊に足を
運ぶとボソッと雪穴にはまり込んでしまうので注意が必要である。
雪堤の高さは低いところでも5m、高いところは10mぐらいあるだろう。この地の夥しい雪の量を実感する。
雪は相変わらずよく締まってストレス知らず。あまりに快調過ぎて、早く通過するのがもったいない。それに青空が
なかなか戻って来ず、この尾根を陽の光を浴びて歩けないのはあまりに残念過ぎるので、1265mピークの手前で
時間調整の休憩を取る。1209mJPからまだ1時間あまりしか経っていない。
ここで急登に備えてアイゼンを装着した。遠くから見た荒島岳山頂直下の登りは壁のように映ったからだ。
時間を潰していると少しずつ空に青みが射してきた。いいぞ。
頭上の荒島山頂の上が明るくなったのを確認して再スタートを切る。霧氷もグレーから白へと色を変えた。
右手の鳴サコ源頭には崩壊した雪庇の跡か、巨大なデブリが谷を埋めていた。斜度はきつくなってきたが、思っ
ていたほどではない。ストックをピッケルに持ち替えるほどのこともなかった。
ふと足元を見ると「荒島岳山頂0.3km」の標識。これは今ではあまり使われなくなった下山コースの道標だ。
あと少し。
登山者の姿が見えた。傾斜が緩んで、雪面からわずかに頭を出した祠が見えると18年ぶりの荒島岳山頂だ。
なんとも贅沢な景観に360度取り巻かれた。
白山、槍・穂高、乗鞍、御岳から経ヶ岳、大日岳と石徹白の山々、木無山、能郷白山・屏風山を始めとする越美国
境の山々、姥ヶ岳、銀杏峰、部子山、越前甲。浄法寺山や高平山といった1000mばかりの山々でもまだ真っ白な
のは驚きだ。
[attachment=2]P1010245_1.JPG[/attachment]
先着していた2人連れと写真を撮り合ってしばらく歓談する。すでに下山した人がかなりいるようで、青空の下でこ
の景色を見ずじまいだという。実にもったいない話だ。そのふたりはゆっくり登ってきたおかげでこの僥倖に出会え
たと喜んでいた。
小さな雪壁の下でピッケルで雪を削ってランチ場所を設営する。晴れてはきたが相変わらず風が強く寒いのだ。
白山を眺めながらビールを煽る。実に美味い。これを至福と言わずしてなんと言えばいいのだろう。普通に生活して
山に登れる幸せを噛み締めるひと時だ。
これまで荒島岳はやや敬遠していたきらいがあった。何故ならば日本100名山だからである。しかし登ってみれば
文句なしにいい山だ。特に今日辿ってきた南からの尾根は、どんどん近付いてくる荒島岳を真正面に見ながら歩け
るベストコースではないだろうか。もちろん道がないので積雪期限定なのだが。
何人かの登山者が上がってきては先に下りて行った。みんな山頂でのんびりする習慣がないのだろうか。
東に伸びる雪尾根が魅力的だったのですこし歩いてみた。こちらには「大ナベ」「小ナベ」と呼ばれるピークがある。
北東面の谷筋は山スキーのメッカらしい。仏御前の滝あたりからの尾根も楽しそうだ。
今日の登山者はほとんどが勝原スキー場跡からの往復のようだ。こちらは小荒島岳(コアラ島岳と呼ぶ人もいる)
を経由して北西へ向かう中出コースである。この登山口の手前にDOCをデポしているのだ。
従って、下山してもまだ今日の行程は終わらないのだ。国道へ出てから真名川ダムまでは登り一辺倒なのである。
山頂を辞して下山にかかる。意外に雪が緩んでいて、今日初めてくるぶしあたりまで潜った。右側は雪庇が残り、
九頭竜川へ鋭く切れ落ちている。小荒島岳はその山頂だけが白い帽子を被っているようだ。
[attachment=0]P1010257_1.JPG[/attachment]
快調に下り、「モチガ壁」と呼ばれる雪壁もうまく左側を巻くトレースが付けられていた。
18年前はどこをどう歩いたのかあまり覚えていない。ただあの頃は山頂にまだ測候所の建物があり、中で風を避
けて食事をした記憶が残っている。大きな反射板もあった。
[attachment=1]P1010253_1.JPG[/attachment]
1204mのシャクナゲ平からは、ほとんどのトレースはスキー場跡へと向かっていた。わずかにツボ足とスキーのト
レースがひとつずつ、小荒島岳方面に伸びていた。これは山頂で会ったカップルのものだろう。
そのトレースも小荒島の山頂から北東の尾根に向かっていた。小荒島岳で最後の展望を楽しむ。
シャクナゲ平の手前からここまでなかなかのブナ林が続いていた。鞍部のあたりは実にいい雰囲気である。やや
沈み始めたので本日初めてスノーシューを装着した。
小荒島からの下りは尻セードを誘ういい斜面が広がる。今日は遊び尽くそう。
このルートは登山道ではあるが、テープ類がまったく見られずどこが道なのかわからない。まあ、道であろうがな
かろうが一向に構わないのだが。
佐開の集落へ落ちる谷へ危うく誘いこまれそうになりかけて、尾根をトラバースして目的の谷へ入れば後は一本道
だ。こちらのコースは早いタイミングで植林が現われる。
何度か林道らしきものと交差して堰堤を過ぎるとやたら開けた谷間に出た。ここからは雪の林道歩き。
中出コース登山口の標識のあるところが林道の除雪終了点となっていた。そこからわずかでDOCデポ地。
真名川ダムまで30分というところか。
麓へ下りて、大野盆地の南端にあたる佐開の集落あたりを転がしていると、すっかり春の日差しが戻ってきていた。
ダムまであとひと頑張りだ。
山日和