【山域】台高南部・往古川真砂鬼丸谷源流周辺
【山行日】2022年12月3日(土)
【天候】晴れのちくもり
【メンバー】タイラ、アオバ*ト
【コース】花抜峠口7:45~小木森滝落口〜・871〜・1153〜六線索道石積
〜真砂谷上流左俣〜苔の広場〜苔辻〜花抜峠~花抜峠口16:00
今年3回目、大台林道をトロトロ走る。
水たまり地獄が大きくなって、道が池のようになっていた。
小木森滝の水量が、前回よりはるかに多い。車を停めてしばし見とれる。
でも今日はここで眺めるだけ、テラスには降りないで・871ヘ直行する。
わりばしさんお気に入りの・871から・1153への急な尾根。前回とてもキツかったので、
もうこの尾根は登らないと思っていたのに、なんでまた登りたくなったんだろう。
しんどいのは嫌だけど、渡渉して取り付くところとか、
尾根から離れて道を探しながらトラバースしていくところとか、
そういうのは好きだった。
それと、前回はだんだん曇ってきてぼんやりした海しか見えなかったので、
今日こそはと思って登って来た。
ひと登りすると、海が太陽の光を受けてキラキラ輝いていて、
いきなり大きなご褒美がふってわいたようだった。
雑然としたピークだなと思っていた・871も悪くなかった。
木々の枝越しにではあるが、海が見えた。
何気に、照葉樹に混じってブナの木も生えていたりして、
その目立たないで控えめなところも悪くなかった。
・1153への急登の途中で振り返ると、ますます海は広がって迫って来た。
前回同様、標高1200ヘ乗る前に巻き道に入る。
かすかではあるけれど、西へ向うトラバースの道型がある。
足元がシダやらの下草に覆われた中、道型を探しながら進む。
そして目を上げると、またもや思いがけない絶景が目に飛び込んで来た。
あまりにもすばらしくて、叫ばずにはいられなかった。
道型を追って、尾根地形を下って行く。
前回この下に索道の石積遺構があることがわかったので、道型を素直に辿ったら簡単に着いた。
前回は、石積みがここにあるとは思わなかったので、
途中で道型から外れて谷地形を真砂谷の二股に近いところ目指して強引に降りて転がり落ちそうになった。
何も考えずに、二股の小滝の手前まで降りてきて、タイラさんに次はどうするのと聞かれた。
見にいけるものなら奥八町滝って、この下辺りにあると思うんだけど。あ、順番間違えた。
わりばしさんは索道遺構より先に奥八町滝に行ってた。
ここからだと左岸の尾根を登ってトラバースして降りて…なんか恐いなぁ。今日は止めよう。
あっさり諦めて、桃源郷に行くのを優先する。
というか、左岸の高台からは、またもや海が見えて、
左俣に掛かる優美な三筋の滝も見えて、それで満足してしまった。
でも、次はきっと奥八町滝、見に行こう。
少し戻ってグーさんに教えてもらったタイムマシン乗り場から取り付く。
尾根芯に乗って少し回り込むとあまりにもハッキリした道型が現れて驚く。
さらに左俣側に回り込むと、グーさんの写真通りほんとに遊歩道のような道があった。
沢の流れを耳に、遊歩道を進む。道型が消えたところで河原に降りたら、そこがまさしく桃源郷だった。
グーさん、この辺でテント張ったのかな。お茶碗のかけらを集めてここに置いたのもグーさんかな。
写真を撮りたいのに、空が少し翳って来て、美しい写真は撮れなかった。それでも、
空が翳って来たことを割り引いても、木々の葉っぱがすでに落ちてしまっていることをさらに割り引いても、
うわさに違わず、ここはすてきな場所だった。
2つ目の二股でお昼ごはんして次の二股で右に行かず左に行く。右に行ったら、稜線が古道と交わる峠に着く。
でも私が上がりたいのは南の峠なのだった。何かが、こっちだよこっちだよと呼ぶのだった。
恍惚感に包まれて目的の場所に着く。振り返って、海を眺める。往古川の河口が正面には見えなかった。
だから、というわけではないけれど、なんとなく、
そうか、ここは本当の苔辻ではなかったなと悟った。
大台ケ原から初めてこのエリアにやって来た時、いちばん印象的だったこの場所を自分は苔辻だと思い込んだ。
本当の苔辻から少し離れたこの美しい場所は、何のための場所だったのだろう。
堂倉インクラインの終点で木材を積み下ろししていた場所というのが、すごく広大でこの辺りまで広がっていたのだろうか。
本当の苔辻に向かって、広い稜線を真砂谷寄りに歩いた。
ほんの少し歩く場所をずらせるだけで海が近くなった。
途中の緩い鞍部も小さな小さな苔辻のようで美しかった。
そしてブナやヒメシャラの樹林が美しかった。
苔辻に着くと、往古川の河口から海が目の前いっぱいに広がった。
本当の苔辻はここだった。晴れた日の苔辻は海を眺める華やかな劇場のようだった。
誰がいるはずもないのに、どこからかともなくたくさんのひとたちが行き来してざわざわと喧騒が沸き起こり、
またどこかへ風に乗って去って行った。
アオバ*ト