【 山 域 】若狭/常神半島
【メンバー】山猫、家内、Nさん、Uさん、Hさん、Sさん
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】梅丈ランド駐車場10:33〜11:31梅丈岳駐車場11:37〜13:40点標 象首谷(ランチ休憩)14:21〜16:41常神岬17:07〜17:37常神駐車場
この常神半島を縦走する計画はかなり以前より温めていたのだが、この山行計画を持ちかけたflatwellさん(最初に山日和さんとお会いした山行に同行した方)との都合が合わないままに長い時間が経過してしまっていたのだった。
常神半島の中ほどには山桜が有名な神子があるので、縦走するならば神子の桜が咲く季節にと考える。有難いことに神子の桜の開花状況を教えてくれるサイトがあるので、3月の半ばから連日のようにチェックしていた。どうもこの週末が桜が見頃を迎えるようなので、いよいよこの縦走計画を実行することにする。この日は夕方まで晴天が続きそうであり、半島からの夕陽を見ることを目論み、遅めの出発となる。
梅丈岳には林道が通じているが、かなり遠回りを強いられることになる。登りやすそうな尾根に目星をつけて植林に取り付く。林道との境目には獣避けのネットが張ってあるのだが、ネットに大きな穴をが空いていたので無事にネットをくぐり抜けることが出来る。
尾根を進むとすぐにも明瞭な掘割の古道が現れる。この半島にある集落と往来するためには陸路は尾根伝いに歩く他なかったらしいが、尾根に乗るための古道だと思われる。尾根はすぐにも自然林となり、下生の少ない歩きやすい樹林が続く。再び林道に出ると、その先では重機が林道上に散らかった石を取り除いている。冬の間に荒れた林道を整理しているようだ。忽然と登山者のパーティーが現れたので重機を操る運転手は吃驚したようだった。
その先で水の切れた谷を登り林道をショートカットすると、再び林道に出たところで林道を倒木が完全に塞いでいる。重機でここを通れるようにするのは無理ではないだろうか。左手の斜面をよじ登って林道を上がるとあとはほぼ水平に歩いて梅丈岳の駐車場に出る。
天気が良いせいかレインボーラインにはドライブを楽しむ人たちがかなり訪れているようだった。駐車場からは大きく展望が広がり、南側には三方五湖の彼方には雪が残る大御影山、三重獄とその手前に三十三間山が見える。周辺の山の斜面では多くの山桜が薄紅色の彩りを添えている。
駐車場からは少しレインボーラインを歩き、北西に伸びる尾根を下降する。レインボーラインと交差する手前では尾根の左側はコンクリートが固められたレインボーラインの法面となり、これから辿る常神半島の展望が広がる。薄い踏み跡が尾根の右側に続いており、程なく車道に着地する。
次の小ピークp255を過ぎると再びと南側から明らかな古道が現れる。まさに常神半島の先にある集落と往来するための古道だろう。尾根上はすぐにも伐採地が現れ、展望が広がる。左手の眼下には遊子の小さな漁港が広がり、その先に広がる若狭湾には小浜の久須夜ヶ岳が海に向かって尾根を下ろしている。
その後もほぼ300mほどの間隔で伐採地が現れるので、送電線鉄塔でも建てるつもりなのだろうか? 伐採地には新たな樹が生えており、しばらく放置されているようだ。
次の三角点ピーク△309.0mは小さな山名標があり、大平梅と呼ばれるところらしい。ここは伐採されておらず樹林の中の地味なピークであった。尾根を先に進むとなだらかな尾根が続くが展望が得られない。ところどころで左手に海沿いの集落に向かうと思われる古道が現れる。
樹間から右手には斜面に多くの桜が咲いているのがわかるが、展望がないので折角の神子の桜が眺められないのは残念だ。道沿いにはいくつもの古い石仏が現れる。半島を往来する旅人が道中の安全を祈念したものなのだろう。
次の小ピークca210mから西側に三角点ピーク△172.8mを目指して尾根を下ると、すぐにも忿怒の相の不動明王の石仏が現れる。こうした道中の石仏としてはかなり珍しいだろう。
三角点ピークの手前で尾根を越える電線があり、その下の樹木が切り払われているので、ようやく神子の桜の展望が得られる。北側にも展望が広がり、眼下には常神の小さな港湾が見えるが電線が展望を横切るのが残念だ。
三角点ピークは展望のない地味なところであった。点名は象首谷というらしい。先ほどの展望地に戻り、ここでランチ休憩にする。この日はトマトを加えて料理したフェイジョアーダをライスと共に温める。
ここまでは尾根はなだらかであったが、ここから先は小ピークが連なり、アップダウンが連続する。尾根上の古道の跡が不明瞭になる。道は常神に向かうためのものなので、集落を目指して下降していったのだろう。
Ca240mのピークで方向が大きく西向きに変わると夕陽に向かって半島を先端に向かうことになる。まもなく北側に大きく崩落した断崖の上に出る。断崖の下では海が美しいエメラルド・グリーンを見せている。
尾根は岩の多い痩せ尾根となり、随所に北側の日本海の広い海原の展望が広がる。夕陽で山が逆光になるせいもあるだろう、灯台のある最後のピークが遠く感じられる。半島を先に進みca120mの鋭鋒を過ぎると尾根の北側に小さな掘立小屋があリ、一人の男性が周囲を清掃しておられる。ここで生活をしておられるのだろうか。あとからNさんが得た情報によると常神のお寺の住職さんらしく、ここで護摩を焚くための木材を得るらしい。
ca210mのピークに差し掛かると照葉樹の高木の樹林が広がるようになる。どうやらスダジイの樹林らしい。スダジイの純林は非常に珍しいらしい。
いよいよ灯台のある最後のピークが近づくと、細い尾根上には花盛りの山桜の回廊が夕陽を浴びて黄金色に輝いている。鞍部に至ると急に明瞭な道が現れる。ピークの北斜面は急斜面ではあるが道は九十九折を繰り返しながら無理なく登ってゆく。山頂のあたりは灯台のために樹林が切り払われたのだろう。灌木が多くなる。
灯台の立つ山頂に出ると一気に常神半島の展望が広がった。夕陽に照らされた神子の桜も見事であり、一様に歓声を上げることになる。この日の最高の景色に縦走の充足感を感じる瞬間だった。霞んではいるが彼方には上谷山、三国岳、横山岳のシルエットを確認することが出来る。
鞍部に戻り、九十九折の道を下って常神の集落に降り立つと、古い民宿が立ち並ぶ狭い路地に入る。周辺の家からはなんとも美味しそうな魚の料理の匂いが漂ってくる。大ソテツを鑑賞し、駐車場に出るとNさんとSさんとで朝のうちにdepoしておいて下さったSさんの車が待っていてくれた。車で神子崎を回り込むと小さな神子の港を挟んで対岸に夕陽を浴びた満開の山桜の景色が広がる。
神子の集落を過ぎると雲ひとつない西の空に夕陽が落ちていくところだった。車を停めた梅丈ランドに戻り、皆さんにお別れすると瞬く間にあたりは暗くなってゆく。