【 日 付 】2023年1月29日(日)
【 山 域 】比良
【メンバー】山猫、家内
【 天 候 】晴れのち曇り
【 ルート 】釣瓶岳登山口11:07〜12:12コメカイ道出合12:19〜13:32イクワタ峠13:37〜14:37釣瓶岳14:58〜16:21釣瓶岳登山口
朝起きて家の外に出てみると比叡山や横高山も山頂部はかなり白くなっている。前日は雪の舞う小倉への出張から帰ってきたところだが、京都でも降雪があったのだろう。脳裏に刻み込まれた降雪後の雪景色の追憶を辿る。そういえば今年はまだスノーシューを履く機会がない。
翌週の職場の百周年記念行事のために準備の必要があるのだが、こうなると新雪の上を歩くスノーシューの魅力に抗うのは難しい。家内が家事をするので出発が出遅れるが、とりあえずスノーシューを車に積みこんでR367を北上する。
大原の周囲の山々にも珍しくかなりの着雪が見られる。車の車外温度は-3℃を表示している。冬は毎度のことであるが、花折峠を越えると谷の周囲の山肌は一層白くなる。路面にも雪が現れるが、この程度であれば問題なく坂道を下ることが出来る。
坊村が近づくと市民センターの前の駐車場に停めることが出来なかった車が周辺の道路余地に停められている。武奈ヶ岳には相当な登山者が登っているようだ。細川尾根から武奈ヶ岳の北稜を辿ることも考えてはいたが、細川休憩所にも車が停められているのを見て、躊躇なくイクワタ峠に向かうことにする。栃生の水地蔵の前は広く除雪されているが、既に一台の車が停められていた。その後ろに車を停める。
ハタケ谷の林道に入ると一本の山スキーのトレースと坪足の足跡が続いている。林道を辿ると大きく迂回することになるので、尾根の末端にとりついてショートカットする。雪の中からはわずかに茨が顔を覗かせているが、積雪が十分にあるので茨を踏んで通過することが出来る。
再びハタケ谷林道に合流すると大きな重機がある。驚いtことに林道の先には延々と重機ののキャタピラの真新しい跡がついている。どうやら午前中のうちに山中で作業をしたようだ。左手の植林の中には先ほどのスキーのトレースが続いている。植林に入るとすぐにも九十九折りの夏道がある。夏道は大きくジグザグに蛇行することになるが、それほどの急斜面ではないので可能な限り直登でショートカットする。
植林を過ぎると整然とした赤松の樹林となる。比良の西側の尾根は大概はその上部まで植林が続くところが多いのだが、この尾根のいいところは植林が終わる区間が短いことだ。すぐに2018年の台風による倒木の集中地帯が現れるが、倒木地帯を左から巻いて問題なく通過する。尾根の南側に展望が開けた地点があり、白銀の霧氷を纏った釣瓶岳と武奈ヶ岳が姿を見せる。
この尾根は距離は長いもののほとんど急登がないの点も有難いところだ。それでも場所によっては膝下近くまで沈み込む。スキーのトレースは10cmも沈み込んでいないようだ。スキーのトレースを辿ってもかなり沈み込むのだが、沈み込みのわずかな10cmほどの違いは雪上の歩行への影響は意外と大きい。このあたりからはなるべくスキーのトレースを辿ることにする。Ca840mからは尾根の北側が大きく開け、蛇谷ヶ峰に至る奥比良の稜線を見ながらイクワタ峠にかけて緩やかに稜線を登ってゆく。
標高が上がるにつれて蛇谷ヶ峰の彼方には野坂山地の山々が視界に入るようになる。赤坂山や三国岳の雪稜の彼方で一際明るく輝いている山は野坂岳だろう。
イクワタ峠が近づくと霧氷を纏う樹々が陽光に照らされて明るく輝いているのが見える。
イクワタ峠北峰に到着すると大きく雪庇が張り出した釣瓶岳の北稜が視界に飛び込む。尾根の西側の樹々には一様に霧氷が発達しており、否応なくテンションが上がる。
背後の蛇谷ヶ峰を降り開けるとほとんど霧氷は見られない、というより既に落下してしまったのだろう。どうやら霧氷が残っているのはイクワタ峠北峰よりも高いところのようだ。雪庇の尾根を辿ると、やがて一面の雪原に出る。西側の霧氷の樹林の彼方には京都北山の山々、三国岳から百里ヶ岳へと至る県境の山々を俯瞰することができる。この数日の間に相当な風雪が吹き付けたのだろう、東側の雪庇の下では杉の樹々が雪を纏ってモンスターのようだ。
尾根の東側には釈迦岳から鳥越峰へと続く北比良の稜線と鉛色の雲の下で金属的な灰色の水を湛える琵琶湖が目に入る。
標高が1000mを越えると霧氷の樹林の中を進む。霧氷を纏ったブナがいつにも増して美しい佇まいを見せてくれる。
釣瓶岳の山頂に到着すると樹間からわずかに垣間見える武奈ヶ岳の山頂は雲がかかっている。この日は武奈ヶ岳の山頂部はどうやらあまり天気が良くないようだ。
コーヒーを淹れて、クッキーとお菓子で一息つく。山頂からはナガオをわずかに降ったところに武奈ヶ岳を望む好展望地があるが、辛うじて武奈ヶ岳の山頂が雲の中から姿を見せてくれる。家内が道路を歩いて出発地まで戻りたくないというので、武奈ヶ岳を周回することは諦めてアラ谷右岸尾根を下山することにする。
釣瓶岳山頂を後に再び北尾根を引き返す。雪庇の張り出した尾根を歩くとドドッと大きな音を立てて雪庇が崩落する。尾根側に倒れ込んで雪庇と共に落下することを免れたが、危機一髪であった。
アラ谷右岸尾根に入ると先ほどのスキーのシュプールもこの尾根を降っているようだ。シュプールは尾根芯を外して大きく蛇行しながら降っている。下山においては沈み込みはさほど気にならないのでトレースのない尾根芯を降る。
尾根の上部は正面に白倉三山を眺めながら疎林の中をダイナミックに下降してゆくが、高度が下がるにつれ樹々の霧氷は急速に薄くなってゆく。ca900mで植林が始まるが、その少し下で尾根には突然数名のワカンの真新しいトレースが現れる。どうやらこのあたりで引き返されたのだろう。
植林の中は雪質が悪いことが多いが、新雪が十分に積もっており尾根の下部まで快適に下降することが出来る。尾根の下部の緩斜面に差し掛かると先を行く三人のワカンのパーティーに追いつく。やはり先ほどの地点でタイムアップと判断されて引き返すことを決断されたようだ。駐車地に戻るとまもなく三人組のパーティーも帰還される。私たちの車の前に停めておられる車の主であった。
この日は夕方になっても周囲の山肌からはほとんど雪が落ちていないようだ。京都市内に戻ると夕陽を浴びた比叡山が赤く輝いていた。