【山域】台高南部・尾鷲道
【山行日】2022年5月3日
【天候】晴れ
【メンバー】アオバ*ト、タイラ、Iさん、Kちゃん
【コースタイム】大台ケ原駐車場11:25、尾鷲辻11:55、白サコ12:50、
△1411「雷峠1」14:45、一本木15:15(幕営地)
大台ヶ原へ向かう路線バスは、近鉄大和八木駅前から1日1本限り。
久しぶりに電車と路線バスを使って旅をする。
そんなに遠くへ行くわけでも、初めての場所へ行くわけでもないのに、
ワクワク感、半端ない。
バスを待っている間、自分たちと同じように大きなザックを背負った人たちと
行き先を尋ねあって盛り上がる。
川上の道の駅で休憩して、大台ヶ原の駐車場に着いたのはお昼前。
売店でゐざさの笹寿司を買って嬉々として尾鷲辻に向かう。
尾鷲辻の東屋から細道に入ると、足元にひっそりと尾鷲道の道標がある。
大台ヶ原の遊歩道にある道標とは全くの別物だ。
この先も気がつくと足元に彼らがいた。ただの道標じゃない。
語り部のように、時々静かに語りかけてくるのだった。
道は、堂倉山に向かう広い尾根の西側を東ノ川の源流部を見下ろしながら
緩やかに巻いていく。この始まり方が、すばらしすぎる。
今まさに芽吹こうとはち切れんばかり森の空気をいっぱいに吸い込むと、
現実世界の煩わしいものは全て風に乗って飛んでいった。
堂倉山を巻いて白サコ。東ノ川の源流と銚子川の源流が出合う。
雑然とした中に柔らかさと凛々しさが同居しているような、すてきな場所だ。
何年か前、シュークリームさんが大台町と紀北町との境界稜線から
二ノ俣谷が最後に二俣に分かれるこの源流域を歩いておられて、
地形図を眺めては、この場所に憧れた。
木洩れ陽の差す心地よい巻き道をしばらく水平移動すると開けた場所に出る。
少し右寄りに緩斜面を登って行くと、比較的新しい雷峠の道標が立てられている。
3年前は、ショートカットするように歩いたので、この標識を見落としている。
道標の下にはこんなことが記されている。
『※1) 1928 年に開削整備した尾鷲道(トラバース道)を基に
1960年代まで大台ヶ原登山のメインルートとして利用された登山道時代の雷峠です。
※2)本来の雷峠はマブシ嶺南西約500m地点(現在の一本木)です。
※3)台高主稜線マブシ嶺の三等三角点は「雷峠1」です。
※4)昭文社「山と高原地図」記載の地点は誤りです。NTRC』
雷峠の場所については今まで諸説あるようだった。
それにしても、どうして場所が移動したのだろうなと思う。
地形図をみると、現在この標識のある鞍部で出合う谷はどちらも東ノ川の支流。
主稜線をを越えて三重県側に行ってるわけじゃないから、なんか峠って言われても
違和感がある。
でも尾鷲道はここで大きくカーブを描いて、この鞍部に寄り道してる。
広くて気持ち良さげな場所があるから、ひと休みして行こうってことに
なったのかもしれない。
皆がここでひと休みするようになって、ここがいつのまにか雷峠になったとして、
それより、ここが雷峠になる前は、ここはなんて呼ばれていたんだろう?
すごく気になる。
いずれにしても、今はここが雷峠っていうのは、雰囲気に合ってるなと思う。
この雷峠広場から、ほぼ遮るもののない広くて緩い斜面を東の主稜線に戻るように登る。
- 雷峠の標識のあるところから1450へ
登り詰めたピークには、本来ない地名の地倉山と書かれたプレートがある。
ここには本来名前はないって言うけど、この先圧巻の眺めが広がっている。
ピークの東側に程よい樹林が繁っていて、ピンクの石楠花が彩りを添える。
舞台袖から廊下を通ってステージに出ていくみたいだ。
廊下の向こうは360度パノラマの大ステージ。
- 1450の南
大ステージに嬉々として飛び出していくみんなの後ろ姿は瞬く間に小さくなって、
光の空間の中で踊る小人みたいに見えた。
間違っているらしい「山と高原地図」の雷峠に下って、
足元に架線の残骸を見ながらアセビがモサモサ繁る坂をワシワシと登って
三角点のあるマブシ嶺に辿り着く。点名は「雷峠1」。
- △1411「雷峠1」
そういえば、今まで海のことを書いていなかった。
白サコを過ぎて巻き道を行き登りに入った辺りで海が見える。
- 白サコの南 海の見える場所
どこら辺の海って言われたらよくわからないが、たぶん尾鷲よりもう少し伊勢寄りの海。
海の眺めは、三角点のマブシ嶺からがいちばんすばらしいかもしれない。
ここから見えるのは尾鷲の町と海。もっと伊勢の方までも見える。
- これは2019年の写真 △1411から
眺めの中から火力発電所の煙突が消えてしまったのが何とも寂しいけれど、
美しいに変わりはない。
気が済むまで辺りを眺めたら、昔の雷峠だったという一本木の森へ下る。
3年前にここに来たとき、たぶんここに一本木の標識はなかった。
もっと南で見たような気がする。
それが、去年来たときは、ここに今と同じ標識があって、
あれ?一本木ってここだっけ?と思った。
ここは昔の雷峠で、今は一本木、か。
雰囲気的に、ここは雷峠なんて荒々しい名前は似合わない気がする。
「一本木の森」で、ちょうどいいんじゃないかなと思う。
- 一本木付近
モデルとなった巨木はもう朽ちてしまったらしいが、
抱きつきたくなるような木はいっぱいある。
テントを、水場のある木組峠で張るか、ここで張るか迷った。
みんなに尋ねると、水はいっぱい持ってるからここがいい!と返ってきた。
水場が近くにないことを割り引いたとしても、ここは極上の場所だった。
夜、みんなが寝静まってから、雷峠だらけになった頭の中を整理してみた。
NTRCさんの標識に書かれていたことを基本としつつ、
ネットで色々書かれていることを参考にしつつ、
自分なりにこんな風にまとめてみた。
*1450は、マブシ嶺最高点
*1411はマブシ嶺三角点
*マブシ嶺=マブシ峠=雷峠
(峠=鞍部とは限らない、芦生にも三国峠とか天狗峠とか、峠と呼ばれるピークがあるし。)
*現在雷峠の標識のあるところと一本木の標識のあるところは、
昔は、峠じゃなくて○○越と呼ばれていたのではなかろうか。
今までどこにあるんだろうと思っていた「ヲチウチ越」っていうのは、
きっとこのどちらかのことだ。
と、ここまで想像を巡らせて、無性に嬉しくなってきた。
アオバ*ト