- 舗装道路のようなナメ
ここ2年ほど紅葉の時期に名張の香落渓から赤目四十八滝を周遊している。香落渓の柱状節理と赤目の滝群を眺めながらこのような地形を生んだ要因に思いを巡らす。1500万年前に起こったカルデラ噴火によってできたものらしい。南紀の地形も1400万年前のカルデラ噴火によってできたものだという。大滝とナメを擁する幾多の茗溪が連なる南紀の渓を思うと,室生山地にも同様な渓があっても不思議ではないだろう。そんな思いから室生山地の谷に興味を持った。このレポはそんな探訪記の第一弾である。なお,滝名とその落差はブログ「小幸の滝めぐり」を参照させていただいた。お礼申し上げる。
【 日 付 】2022年5月20日(金)
【メンバー】単独
【 天 候 】薄曇り
【 ルート】駐車地 7:57 --- 8:45 南松の滝下 --- 9:14 熊ヶ滝落ち口 --- 9:47 布引滝下 --- 10:16 布引滝落ち口 --- 10:31 東海自然歩道出会い --- 10:52 遡行終了 --- 12:05南松の滝下 --- 13:00 駐車地
県道28号線の宇野川出会いの少し南側の道路分岐近くの路肩に車を止め,宇野川沿いの道を歩き始める。この道は東海自然歩道になっており,峠越えで曽爾村に抜けている。ヤマアジサイの見頃のようで,白い花が目を楽しませてくれる。
林道のヘアピンカーブのところから沢に入るとすぐに南松の滝である。この滝には前回5月6日にも来ているので,お久しぶりという感じ。下段が南松の滝5m,上段が熊ヶ滝10mだそうだが,もっと大きいように思える。南松の滝には大きな釜がある。真夏であれば泳いで遊ぶところだが,涼しい今日は水に濡れる気にならない。
- 熊ヶ滝の落ち口から下を見る
しばらく滝を愛でた後,登り始める。左側から簡単に巻き登れそうだが,ここは沢屋の血が騒いで巻き登りを拒否する。左側から取り付いて,水流を横切ると右側の水流脇を登れそうだ。下段を登りきるとやはりそれなりの大きさの釜がある。赤目の滝も同じだが,この辺りの滝の多くには大きめの釜が付いているようだ。これは南紀の滝でも同様である。滝の古い歴史を物語るのだろう。
- 熊ヶ滝
上段の釜ヶ滝を登り始めるが,ホールドが少なく滑りそうだ。滑っても下の釜に落ちるだけなのだが,今日は泳ぎはごめんだ。右側に逃げて小さく巻き登る。熊ヶ滝は4段に分かれている。
- 南松の滝
熊ヶ滝の上は期待したようなきれいなナメではなかったが,ナメや数mクラスのナメ滝が現れてそのなりに楽しく遡行できる。ナメ斜滝の上に岩盤が露出しており,何かありそうだと思ったら向こうに大きなナメ滝が見えた。布引滝25mだ。これも大きな釜を持った綺麗なナメ滝だ。なめらかな岩盤の上を水が白い模様を描きながら流れ落ちている。しばらく滝を愛でる。
- 岩間滝の向こうに布引滝が見える
下段はフリクションをきかせて登りきる。下段と上段の間の小さな釜には甌穴(ポットホール)があった。いかにも深そうだ。固い岩盤をここまで掘り下げるのにどれくらいの時間がかかったのだろうか。
- 甌穴
上段は傾斜がきつくなり,登れそうにない。もし滑れば甌穴にそのまますっぽりはまりこみそうだ。幸い,滝のすぐ横に木が生えているので,滝の右側を流れを眺めながら小さく巻き登ることができた。
- 布引滝
滝上はまるで舗装道路のようなナメが続いている。こんな綺麗なナメは滅多にあるもんじゃない。至福のナメ歩き。左側から流れ込む支谷の滝もナメ滝だ。綺麗なナメは100mほど続き,3mほどのナメ滝を登ると東海自然歩道が横切り,そこで終了していた。
- 左:支谷の滝 右:本流
2mほどの滝があり,そのすぐ後ろに小規模な山抜けの跡と思われる岩の堆積があった。その後,沢はすっかり源流の様相となり,大人しくなる。自然林であれば癒しの渓だろうが,残念ながら両側は植林である。このまま進むと住塚山と国見山の間の鞍部に突き上げるようだが,行く価値はないだろう。引き返すことにする。
東海自然歩道が横切っているたりで沢に戻り,支谷から流れ込んでいるナメ滝を登ってみる。その上は少しナメが続いていたが,すぐに平凡な流れになった。舗装道路のようなナメを布引滝の落ち口まで下り,その後,東海自然歩道に戻る。南松の滝の下で滝を愛でながら昼食休憩。
駐車地まで戻るとまだ1時だった。さあ,早く戻って大相撲を見よう。