山日和さん、こんにちは
【奥美濃】笠羽湿原 山上の別天地と地獄のヤブ漕ぎと花の回廊
【日 付】2021年6月5日(土)
【山 域】奥美濃 石徹白周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】大杉登山口7:20---8:35笠羽谷入渓点---11:15林道出合---12:45笠羽湿原14:20---15:45 P1784m---16:05銚子ヶ峰16:20---16:50神鳩避難小屋---18:00登山口
速いもので、私が願教寺山に登ってから、もう、一か月以上経ちました。
おこがましい考えかもしれませんが、私の願教寺山歩きが、呼び水になったように思えて、なんとなく嬉しい。
思い出は美化されがちである。いい印象の強い思い出は、その前後の苦しかった記憶を薄めてしまうのだ。
今回の山行はまさにそれで、昔の記憶を忘れて最初から楽勝ムードを漂わせていた。
私は反対かもしれません。苦いことばかり覚えているような気がします。
石徹白大杉の登山口にはすでに数台の車が止まっていた。全員が銚子ヶ峰や三ノ峰、あるいは別山まで足を延ばすのだろう。少なくとも林道を奥に進む登山者はまずいない。
昔、ご年配の男女のパーティーが願教寺を目指して林道に進まれたのを見送ったことがあります。年配の方でも行けるところだと勝手に思っていました。
美濃禅定道、ハクサンコザクラの咲く別山平に行きたいのだけど、距離を考えると気合が要ります。
昨日の大雨のおかげで、登山口までの舗装林道上も川のように水が流れているところが多かった。
笠羽谷へ向かう道もジュクジュクで、最初から沢靴を履いていて正解だ。
私が歩いたときも、かなりの厚さのどろのような堆積がずっと続き、水が流れない状態になっていてジュクジュクでした。
防水性の高い雪山用の靴を履いていたので内部に浸み込むことは無かったのですが、外側は汚くなりました。
大滝の手前あたりから荒れが酷くなり、もはや林道の体をなしていない。笠羽橋の入口も分からないような状態で、かつては車で走れる道だったとはとても思えない。
登山道よりも酷いレベルの薄い踏み跡を辿って入渓点に到着。10数年前に2度この道を歩いているが、もう復活することもなく、荒れるに任せるだけだろう。
せっかく自然を壊してまで作ったのだからもったいないような気がします。
維持するのにもお金が掛かるから、放置なのでしょうね。
笠羽谷はやや増水気味だが、遡行が困難というほどではない。ただ、できるだけ浸かりたくないので、岸に踏み跡がある部分は水を避けて距離を稼ぐ。
ここから先は未踏の場所です。
2017年に願教寺山、よも太郎山の下山時に少しだけ笠羽谷右岸を北上しました。
倒木地帯が終わり、ようやく普通に歩ける状態になった。しかし今度は別の意味でペースが落ちてしまうようになる。
次々に現れる花に、つい足を止めることを余儀なくされるのだ。
ふと見上げた右岸の枯れ谷にサンカヨウの群落を発見。先は長いがここを素通りするわけにはいかない。サンカヨウは私のもっとも好きな花のひとつなのだ。
この後も、スミレの類は当然として、リュウキンカやミズバショウ、ツバメオモト、ミゾホオズキ、エンレイソウといった花達が先を急がせてくれない。
花が咲いていたら、なるべくきれいに写真を撮っておきたいです。
写真を撮るのに、時間が掛かるし、何故か写真を撮るとき呼吸をしないで疲れて、体力も使います。
源流で1本手前の支流に入る。ここまで来ると溝の中をヤブ漕ぎしている状態だ。すると小さく開けた場所が現れた。
ミズバショウも咲いている。ここは以前「第二笠羽湿原」と名付けたミニ湿原だ。ここまで来れば笠羽湿原は近い。
「第二笠羽湿原」、行ってみたい気がします。沢登りは無理なので、県境からヤブ漕ぎ。でも地獄のヤブ漕ぎとのこと、これも無理か。
やがてササの向こうにポッカリと広がる平地に飛び出した。これが真正の笠羽(笠場)湿原である。
かつては一面に広がる池塘にミズバショウが群生する、まさに天上の楽園と呼ぶに相応しい場所だった。(私はその頃を知らないが、20年ほど前まではそうだったらしい)
「笠羽湿原」、なんとなくあこがれる場所です。
今は裸地が進み、池塘の面積もずいぶん小さくなってしまった。おまけにミズバショウの姿もほとんど見られない。
以前、白山の写真家の木村芳文氏にメールで問い合わせた時の話では、2002年頃にイノシシの仕業でこうなってしまったのではということだった。これも自然の摂理ならしょうがないことだが、いかにも残念である。
地獄のヤブ漕ぎをしてまで行く価値が無い?
鈴鹿の西藤原のセツブンソウの群生が、イノシシがほじくってメチャメチャになっていたのを見たことがあります。
往時の姿は失われたとは言え、三ノ峰と願教寺山を望む山上の別天地であることに変わりはない。
ほとんどがササで覆われたこの山稜上に、奇跡のように存在するオアシスなのだ。
積雪期にこの上を通過する登山者は多いが、無雪期にこの風景を眺めた人は数少ないだろう。
この極上のレストランでのんびりとランチタイムを楽しんだ。
積雪期に2度、県境を歩いていますが、残念ながら、この上を歩いていません。
無雪期の情報、ネットを探しても、1件しか探せませんでした。
帰路の美濃禅定道まで標高差200mばかり。道はないがそれほど苦労した記憶はない。(と勘違いしていた)
腰を上げてササの海へ漕ぎ出した。ササの背丈の低いところ、生え方の薄いところを選んで進もうとするが、なかなか
そんな具合のいい場所はない。とにかく方向を決めてひたすら泳ぐしかないのである。
考えてみれば、以前と言っても10数年前。自分もまだ50歳そこそこだった。ヤブを漕ぐにしてもパワーが違う。
昔の記憶と違うのはあたり前なのだ。
1784ピークから県境は道が無いのですね。地図にも点線がありません。
積雪期は、登りのしんどさはありますが普通に歩けました。
やがて傾斜がなくなると、1784mピークに到着。目の前には高速道路のような美濃禅定道があった。
道というのはこんなにも楽なものなのかと実感させられる瞬間だ。
スノーシューでは、美濃禅定道は踏み跡が多く、岩が露出していたりして、かえって歩き難くなったのですが、1784mピークに到着したという安心感がありました。
ここまで来れば下山したも同然である。また花を楽しみながらのんびりと歩く。ミツバオウレンの絨毯が続き、ミヤマキンポウゲやキンキマメザクラ、ムラサキヤシオ、ツボスミレなどが目を楽しませてくれる。
私は、安心感はありましたが、のんびり気分は全く無かったです。急いで下山して、なんとか明るいうちに駐車場に着き、更に、家まで帰らなければ、と。もっとも、花は咲いて無かったです。
展望も最高で、別山から日照岳へと続く長い稜線、石徹白川両岸の願教寺、日岸、薙刀、野伏、丸山、芦倉、奥越の赤兎、大長、経ヶ岳、荒島、そして越美国境稜線の山々に加えて、御嶽、乗鞍、穂高の山々まで、一望のもとだ。
私でもかなり分かる展望です。
日岸がまだ未踏です。
銚子ヶ峰を出発したのは4時を回っていた。早足で下山を開始したが、足元を見るとスピードが落ちて足が止まってしまう。ツバメオモト、イワナシ、タムシバ、ウワミズザクラ、マイズルソウ、ユキザサと、途切れることなく花は続き、最後はブナ林へ突入。仕上げに石徹白大杉を見て濃厚な一日を終えた。
私は、銚子ヶ峰には17時近かったです。展望の写真だけ撮って、とっとと下山しました。幸い(?)花はまだ咲いてなかったので、がんがん下山しました。もっとも、避難小屋のところで、ルートミスして15分ほどロスしました。
大杉に着くとホッとするのですが、石段がとても長く感じます。道路に降りた時は、疲れ果てた充実感です。
お疲れ様でした。
クロオ