【 日 付 】2020年11月1日(日曜日)
【 山 域 】鈴鹿
【メンバー】山猫、マッキナさん
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】ダイラ13:42〜14:19三国岳山頂〜14:24三国岳最高点〜14:59鞍掛峠〜15:46鈴北岳〜16:14鈴ヶ岳〜16:52茶野〜17:59茶野登山口〜18:03権現谷入口
ダイラは文字通り山中に忽然と現れる平地であり、広々としたた自然林には下生えもなく、快適な樹林が広がっている。黄葉のせいで柔らかで透明な秋特有の光が満ち溢れた中でのオフ会は桃源郷の趣があった。もっと多くの方とお話ししたかったところではあるが、この日の後半は大君ヶ畑をゴールとするタイトな下山コースの予定だ。後ろ髪をひかれる思いでmacchinaさんと共に会場を後にする。
稜線に出ると再びタカノツメの鮮やかな黄葉の世界が広がる。三国岳からは随所に広がる錦繍の山肌と展望を楽しみながら稜線を南下する。やはり錦繍は陽光が当たると一層、鮮やかに見えるようだ。鮮やかな色彩に心を奪われる度に立ち止まってはカメラのシャッターを切るのだが、その度に写真で再現することが難しいことを認識する羽目に陥るのだった。
- 三国岳を振り返って
鞍掛峠にほぼ15時に到着する。鈴北岳への登りかえしに入ると続々と降りて来られる登山客と多くすれ違う。皆一様にすれ違う瞬間、macchinaさんの足元に目が釘付けとなるのも無理はないだろう。
樹林帯を抜けると色鮮やかな苔が広がる。macchinaさんによる数年前にはこんな鮮やかな苔は広がっていなかったとのこと。登山道の周囲にロープを張ったのが苔の保全に効果的だったのかも・・・とのこと。
ここに来て急に疲労を感じ始めたせいか、明らかに速度が落ちる。どうやら速度が落ちたのは私のみならずmacchinaさんも同様らしい。右手に見える鈴ヶ岳への登り返しが思いやられるところだ。急に雲が広がり、先ほどまで広がっていた青空はいつの間にか姿を消している。風も冷たくなってきた。
鈴北岳に到着したのは15時46分。雲が厚くなり始めたせいか、時間にしては薄暗く感じる。庭園のような山頂台地に御池岳の山頂がすぐ目の前に見えるのだが、鈴ヶ岳、茶野を経て大君ヶ畑に向かうには御池岳の山頂往復を諦めざるを得ない。御池岳を往復するにはあと30分、いや少なくとも20分は早く到着している必要があっただろう。
最近の長距離の山行ではある時点で急にスピード・ダウンすることが多かったことに今更ながらに思い当たる。秋に石徹白から白川郷への白山の縦走、南アルプスの畑薙から赤石岳への周回でもそうだった。春先の土倉岳から横山岳の周回においても午後の大幅なスピード・ダウンは雪のコンディションと藪のせいだとばかり思っていたが、それだけではなかったのだろう。昔のように体が動かないことを自覚せざるを得ない・・・オフ会での山日和導師の言葉が急に脳裏に大きく響いた。
鈴北岳の好展望の苔の稜線はすぐにも終わり、黄葉の美しいヒルコバの樹林へと下降する。鈴ヶ岳への登りは距離は大したことはないのだが、やはり足取りが重く感じられる。鈴ヶ岳の山頂を乗り越え、イワヒメワラビの繁茂する草原を下ると突如として下生えのない梢の高い壮麗な自然林となる。ここも林相の美しい尾根だ。しかし樹林に見惚れている余裕はない。先を急ぎたいところだ。
突然、後ろから「ウォー」とmacchinaさんの悲鳴のような叫び声が聞こえる。何かと思って振り返ると、裸足に栗の毬(いが)が刺さったらしい。オフ会ではよろめいた拍子に栗の毬の上に手をついてしまった雨子庵さんの教訓的な話を聞いたばかりであるが、早速にも自らが同様の羽目に陥ることになるとは・・とmacchinaさんが自省される。
茶野にたどり着くとカレンフェルトの山頂からは遠くの雲の下に美しい琥珀色の空が広がっている。
まもなく日没の時間だろうが、太陽は雲に隠れてしまっており、夕陽の茜色が広がる気配はないようだ。
北に望む霊仙の彼方ではすでに重苦しい雲が広がり始めている。茶野から尾根を下降すると、雲の彼方で日が沈んだのであろう、先程まで西の空に見えていた琥珀色の空は急速に鈍い鉛色に変わってゆく。
尾根の急下降が始まるところで急速に夜のとばりが降りてくる。ここは急斜面ではあるがメタセコイアの樹林が広がるところであり、明るいうちであれば頃は美しく紅葉を楽しみながら下降することが出来たところだろう。しかし、ヘッドライトを灯したところで暗闇の中を急斜面のバリエーション・ルートを下降するのはあまりいい方策ではない。右手の斜面をトラバースする送電線巡視路があったことを思い出し、斜面を右に進むと、すぐに巡視路の明瞭な踏み跡が植林の暗闇の中から現れた。
トラバースが終わり尾根の端に出ると暗闇の中で一瞬、道を見失う。今年の春先に長男、次男と共に訪れた時には二重尾根の間を歩いたことを思い出す。尾根の間を探るとすぐにも明瞭な道を見つけることが出来る。後は深い掘割の古道となり、ルートファインディングに苦慮することなく登山口に降り立つことが出来た。macchinaさんが車を停められた権現谷林道の入り口までは歩いてわずかな距離であった。
下山後は南彦根の駅までmacchinaさんが送って下さる。今回の私の目論見の甘い山行にお付き合い下さったmacchinaさんに改めて感謝である。