【 日 付 】2020年8月3日(月)~8月4日(火)
【 山 域 】北アルプス
【メンバー】単独
【 天 候 】薄曇り>晴れ
【 ルート 】新穂高>小池新道>双六テン場泊>双六・三俣巻道>三俣山荘>鷲羽岳>三俣蓮華岳>双六岳>小池新道>新穂高
今年の夏はコロナ禍に加えて梅雨明の遅れと登山には困難な条件が山積みです。山小屋は定員を大幅に減らして営業を続けるところが多いようです。寝具については消毒が難しいのでシュラフなどの持参を求めるようです。それにしてもどこから来たかも分からない登山者と同室で一夜を過ごすのは相当勇気があるか無神経な人でないと無理な気がします。
宿泊するなら、やはりテント泊ということになりますが、それも予約を取って人数制限しているようです。
色々な制約を考慮して今回は、新穂高から小池新道で双六小屋のテン場に宿泊し鷲羽岳に登ることにしました。
8月3日の朝4時に鈴鹿を出発し新穂高へ向かいました。7月の豪雨で国道41号線が通行止めになっていて美濃加茂IC飛騨清美IC間が無料通行できるのでそちらを使わせてもらいました。9時過ぎに新穂高の深山荘Pに着くと8割り方車で埋まっていましたが、無時に止めることができました。平年なら平日でも駐車するのは無理だったでしょう。
荷物をまとめて9時半に新穂高を出発しました。帰りのことを考えて登山口までMTBを押していくことにしました。
曇空で日射がないのは助かりましたが、蒸し暑いことに変わりありません。1時間20分歩いて、やっとわさび平小屋に着きました。時間が遅かったので登山者はあまり見られませんでした。
一休みしたら、さらに林道を歩いていきます。11時10分、ようやく登山口に着きました。頼りない木橋を渡って小池新道を進みます。
青いウツボグサが出迎えてくれました。
秩父沢まで来ると先行する登山者に追いついてきました。雪渓から流れ出す水は冷たくここだけ天然クーラーが効いていて快適です。
切絵細工のような花びらが特徴的なセンジュガンピも咲いていました
伊吹山で見たヒメレンゲに似た花も咲いていましたが、何だかはっきりしません。
大きな花のオトギリソウはシナノオトギリでしょうか。
低木の中の登山道を登っていくとシシウドヶ原に着きました。ここだけは展望が開けていて大ノマ岳の斜面や、そこに残る雪渓などが見渡せます。標高も上がって2千メートルを越えました。
少し遅れて70代の男性3人組がやってきました。今日は鏡平小屋に泊まるそうです。御年からしてコロナに罹れば重症化必死ですが、怖くないのでしょうか。それとも先行き短いから好きなように生きると決めているのでしょうか。
シシウドの花は付いていませんでしたが、ミヤマキンポウゲが咲いていました。
ニッコウキスゲも少し見られました。
草むらの下の方ではゴゼンタチバナが陽の光を避けるようにが咲いています。
鏡平が近づくとクルマユリが出てきて華やかになってきました。
エンレイソウの花は終わって緑の実が付いています。
一番ありふれているのはカラマツソウでしょうか。
鏡平まで500mと岩に書いてあります。近いか遠いか微妙なところです。ぬか喜びせずじっくり行きましょう。
鏡池に着きました。あいにくのお天気で池に映るはずの槍や穂高は見えません。
途中で追い抜いた若い女性二人も着きました。大きなザックを担いでいて私と同じ双六のテン場に泊まるそうです。若い子相手だと、つい長話になりそうだが、夜の街でなくとも長話は禁物だ。切り上げて先に行かせてもらいましょう。
小さなリンドウはミヤマリンドウかな?
風車の羽のように花を付けるのはエゾシオガマ。
小さな池のある弓折中段まで来ました。
ここから弓折岳の斜面を緩やかにトラバースしていきます。
斜面はイブキボウフウか何か白い花のお花畑になっている
トリカブトを見ると夏も終りかなと思ってしまう。まだ8月に入ったばかりなのに。
オトギリソウは結構適応性があって稜線近くまで咲いていました。兄がこの花の薬効を口外した弟を切りつけたという花名とは裏腹に長いまつ毛が可愛い。
シオガマで一番多く見られるのはヨツバシオガマ。4枚の葉っぱが十文字に付いています。
稜線に出る手前から鮮やかなハクサンフウロなどのお花畑になります。
鮮やかな色合いはこれまでの疲れを癒してくれます。
弓折岳分岐で稜線に出ました。小学生の子供二人を連れた外人さんが大きな声で電話をかけていました。今日初めて見た外人さんです。日本中にあふれていた外人さんはどこに消えたのでしょう。「日本に住んでるの?」と聞いたら「yes」と答えていましたが、下手な英語でそれ以上聞くのは止めておきましょう。英語圏の人ですから東京や大阪などの大都市に住んでいるのでしょう。
稜線はお花畑が絶え間なく続く感じですが、弓折分岐付近は特に綺麗です。
イエロークイーンのシナノキンバイとホワイトクイーンのハクサンイチゲが華やかさを競っています。
清楚な白さを誇るハクサンイチゲ
キンポウゲ科の花でも一際大きくてゴージャスな雰囲気のシナノキンバイ
ミヤマダイモンジソウも咲いています。
大群落で見かけることが少ないシナノキンバイもここでは普通に咲いています。
ハクサンチドリも見つけました。
花見平も大きな花畑です。
木道も設置されています。
ハクサンシャクナゲは標高の高い稜線で見られます。
テガタチドリに
大きな葉っぱのキヌガサソウ。白い部分はガクのようです。真ん中の実が膨らんでいました。
双六小屋とカラフルなテント村が見えてきました。裏銀座縦走路の拠点というべきこの小屋はボリュームがあっておいしい食事で有名です。
双六池のほとりにクロユリが咲いているのを見つけました。稜線のクロユリベンチのところでは見つからなかったのでこれで完璧。夏を彩る常連さん達と再会を果たすことができました。
小屋の前で手を洗い、マスクをして幕営手続きをしました。ネットの「コンパス」で提出した登山届のコピーを渡して終わりです。ボールペンを触る必要もないのでリスクは最小です。
テントはフライシート付のものを新調しました。昨年は雨に降り込まれて苦労しましたが、これで安心です。1万円以下の安物なのでちょっと重くなりましたが、値段が何倍もする最新ブランド品より缶ビール一本分ほど重くなるだけなので我慢しましょう。
テントを設営したらビールを飲んで一休み。鏡池にいたアマゾネス姉さん達もかなり遅れてテン場に着きました。夕食はα化米の五目飯をソーセージをかじりながら食べました。
テン場の予約は60張りまでですが、平日だったせいか実際はそれ以下で8時を過ぎると話声も聞こえなくなり静かなものでした。Withコロナの山登りはなかなか快適です。というか昨年までのテン場の様子が異常だったというべきかもしれません。
睡眠薬を飲んでシュラフに潜り込みますが、相変わらず寝付けません。考え事をすると余計に眠れないので大人しく横になっていましょう。明日は明日で何とかなるでしょう。
二日目の夜明けが近づきました。4時ごろになると出発の準備をする人たちがゴトゴト音を立て始めました。テントから首を出してみると星も月も出ています。今日はいい天気になりそうです。
ラーメンを作って朝食にし荷物をまとめて4時50分に出発しました。テントはそのままにして帰りに回収します。
双六岳の方に少し登るとカメラだけ持った男性が夜明けを待っていました。東の方を見ると燕岳の辺りが明るくなっていますが、遠くの雲は低く稜線との隙間は僅かです。暫く待つと稜線と雲の隙間から朝日が顔を出しました。雲が低いので3分もすると朝日はその中に隠れましたが、今日一日の門出を祝福するようで力を貰えました。
穂高岳は雲海に浮かんでいます。
足元には様々な花が咲き乱れています。おっと、これは何だ?ミツバオウレン?
大群落で地面を覆っているのは、チングルマです。
標高の高いところではミヤマキンポウゲに代わってミヤマキンバイが主役です。
アオノツガザクラとミヤマイワカガミのコラボです。
往路は双六岳の下の巻道でトラバースして行きます。
巻道は三俣蓮華岳の下の峠まで続きます
ハクサンイチゲも大きな群落で咲いています。
目指す鷲羽岳が迫ってきました。水晶岳も左端の奥の方に見えています。黒岳の別称どおり、そこだけ黒っぽく見えます。
ハクサンフウロも咲いていて今日も稜線は花見三昧だ。
三俣峠まで来ると下のコルに三俣山荘が見えてきました。そこから一直線に鷲羽岳を登っていきます。
三俣山荘に着きました。双六小屋に比べるとずっと小ぶりでテント場も狭い。
鷲羽岳をじわじわ登っていくと岩場が険しくなってきました。
山頂が見えてきました。もう少しです。ファイト~ぉ!
稜線の下に鷲羽池が見えました。遠く見える槍ヶ岳との対比が絵になります。インスタグラマーさんもこの写真を撮るには体力だけでなく運も必要なので大変でしょう。
8時16分、鷲羽山頂(2924m)に到着しました。
先に見える黒岳は、まだ遠い。もう一泊すれば往復できるのですが、今日は見るだけにしましょう。(~なんて言ってたら、もう来れないかもよ)
名残惜しいが、山頂に別れを告げて下山します。帰りは三俣蓮華岳から双六岳に連なるたおやかな稜線を進みましょう。
帰りも花見三昧。ミヤマダイコンソウとハクサンフウロのコラボです。
最初の三俣蓮華岳は、ちょっと岩場が目立つ山です。
三俣峠まで来れば、山頂までもう少しです。
三俣蓮華岳(2841m)に着きました。ここから鷲羽岳を振り返ると標高があまり違わないせいか数ある山のひとつにしか見えません。
黒部五郎岳の方は、近くに山が少ないせいか存在感があります。この山は反対側の北の俣岳から登ったことしかないので正面に見える五郎のカールから登ってみたいものです。
たおやかに見えた稜線も、実際に来てみると双六岳との間に丸山(2854m)があってスイスイとは行きません。
稜線を歩いていくと、前から昨日のアマゾネス姉さん達が歩いてきました。黒岳まで行くと言ってたのに今頃何やってんだろう。予定変更したのかな。まあ、無理せず行ってください。
この独特な葉っぱの花は何だっけ?NHKの百名山で紹介していた花だよな。
横向きに咲くキキョウはチシマギキョウです。花の中に産毛が生えていたから間違いなし。
下の方には、今朝歩いた巻道が見えています。やっぱ、あちらの方が楽そうだ。
最後の双六岳が見えてきました。今度はジワジワ登って行く感じで楽そうに見える。
最後は、ちょっときつそう。でも、大したことはない。
11時18分、最後のピークとなる双六岳(2860m)に着きました。
双六岳と言えば、山頂よりも南東の肩ピークが印象的です。月面を連想させる丸い展望台から望む険しい槍ヶ岳は、その対比が面白くインスタスポットです。
双六のテン場に戻り、朝露が乾いたテントを撤収したら休む間もなく下山を続けます。
鏡池まで降りてきました。槍、穂高も見えましたが、肝心の槍の穂先がガスっています。
シシウドヶ原で休まず無理をして秩父沢まで一気下りをしたのが体に堪えました。真っすぐ立っているのも難しくなり転倒しないようにするのが精一杯でした。
16時25分、やっとのことで登山口にたどり着きました。テント撤収にかかった20分を差し引いても歩行時間は11時間を超えていました。最近10時間以上歩いたことがないので、体はズタボロ。最初の計画から無理があったようです。一日目に前夜泊をして三俣山荘まで行っておかないと山中一泊で下山するのは無謀なところがありました。
登山口から新穂高までMTBに跨り一気下りで深山荘Pに戻りました。林道には尖った石も多く転がっているので調子に乗ってパンクさせてしまうと元も子もありません。慎重に下ってパンクすることなく駐車場に戻った時は、大きく安堵しました。
帰路はコロナ対策もあって温泉もレストランも寄らずトイレ休憩のみで鈴鹿へ帰りました。(栃尾温泉の露天風呂は入り口が鎖で締め切られていました。未練ありありやないの)
夏山第一弾は、ずさんな計画で二日目はオーバーワークになりましたが、天候に恵まれて充実の中身でした。