おはようございます、山日和さん。
花折トンネルを抜けた頃から雨が降り始めた。登山口の細川には休憩所と称する建物があり、こういう天気の時にはありがたい。雨の勢いは強くはないが、まったく気にならないというレベルでもない微妙な感じだ。
ふ~さんが妙に準備にもたついていると思ったら、雨の様子を見るために引き延ばしていたらしい。
とりあえず雨具を着て出発。右岸沿いの小道を上がれば大きな堰堤が現われ、左から越えたところで入渓する。
八幡谷を訪れるのは22年振りである。その時にはこの堰堤はなかった。
堰堤を越えてしばらくは植林の中の平流が続き、変化はない。空を見上げても雨が止む気配はなく、先週のようにはいかないなあと苦笑する。
朝からのそぼ降る雨にたじろぎました。
どうせ沢登りなのですから、気にすることもないのですが・・・
そんな中、細川休憩所には救われました。
登山のベース基地として安心できましたね。
小滝がポツポツと現われるが、積極的にすべてをトレースしようという気分でもなく、杣道半分、水流半分という感じで省略して進む。
ちょっとしたゴルジュで初シャワーを試みた。一度濡れてしまえば後は同じ。腹を括ることができた。
右から大きな支流が入った。右岸には見事なカツラの巨木がある。幹周りは軽く5mを越えているだろう。
左の本流へ進めばいよいよお待ちかねの核心部突入だ。第一ゴルジュでは4~5mの滝を片っ端から直登。ステミングを交えながら快適に進む。
最初はゴロゴロした谷でしたが、だんだん谷としてまとまってきました。
それにしても、相当な水量でたじろぐほどでした。
続く第2ゴルジュは出口の8m滝が水量多くなかなかの迫力。ふ~さんトップで取付くが、水中のスタンスが見つけにくいようで苦戦模様だ。それでも登り切ってガッツポーズ。こういう天気で水量も多いとメガネのふ~さんは不利だ。
メガネだと余計な気遣いがいりますね。
8m滝の上は二俣となっており、武奈ヶ岳へ伸びる右俣が予定のルートだが左俣にも魅力的な滝が架かっていた。6m滝を越えて8m滝と対峙。イージーに行くなら右の大岩の右側だがそれでは面白くない。大岩の左隅からガリーを上がり、落ち口下までは簡単に到達する。ここから落ち口へは水流をもろに浴びて直上しなくてはならない。水中のスタンスを確認して足を踏み出した。水圧で体が引きはがされそうになるので、勝負は短時間に付けないといけない。目視の通りの手順で体を引き上げて落ち口に立った。ふ~さんと顔を見合わせてガッツポーズ。ここはロープを出して万全を期す。ところが登りだしてすぐにロープに引きずられた。まったく心の準備ができていなかったので慌てる。後で聞くと、ホールドが剥がれてしまったらしい。気を抜いてはいけないと反省。
ホールドがはがれるかもしれないというのは常に頭に入っているのですが、あれほどしっかりしているように見えるホールドだったので、油断してしまいました。
登りかけたところだったので、余計に油断もしていたのかな。
それにしても、水圧に対向しながらの登攀で大変でしたね。
4m、5mと直登した後の6m滝は手が出ず左から巻き上がった。先週の門近谷と違い、巻きルートも明瞭で気が楽である。
左岸に滝を架けた支流を見送り4度目のゴルジュに入った。
大岩が谷を塞ぐ5m滝を越え、5mクラスを3本直登して真ん中に馬の背のような岩が張り出した6m滝。岩の右側のガリーを上がると最後はハングしているので、馬の背から滝身の方へ乗り出して上がらないといけないのだが、ホールドが非常に乏しい。ここは残置スリングにセルフビレイを取ってA0で上がるが、左手と左足のホールドは微妙だ。なんとか這い上がって、スリングでふ~さんを引っ張り上げた。実に面白い。
岩がハングしていたり、垂直の岩壁登りから大岩を回り込むところが面白かったですね。
しかし、逆層の岩であることと、岩が雨で濡れていることとで、かなり難易度も上がってしまいました。
しかもあの水量だし。
その後も連瀑帯は続き、左からのガレ谷を見送るとルンゼの中に小滝が続いた。もちろんすべて直登して進むと沢の直進方向にはほとんど水のないルンゼが延びていた。左斜面から10mほどの滝が落ちている。滝身を登れそうだが、ややぬめりがあるようで、万全を期して左の草付きから上った。
最初は行けそうに思ったですが、そうは問屋はおろさない・・・
あの黒い岩壁はぬめって登攀を拒否してる感じ。
そうは言っても、左岸の草つき登りも大変でしたが。
滝の上は細流ながら更に滝とナメが続いていた。トータル50mほどはあるだろうか。なかなか美しい渓相だった。
次の6m滝はもう登ろうという気力もなく、左から巻き上がると水が切れ、谷の中はガレがどこまでも延びている。足場の悪いガレを一歩一歩高度を上げて行くと尾根らしきラインが近付いてきた。
晴れていれば青空がぐんぐん大きくなって稜線間近を感じさせる場面だが、ガスに覆われた今日は立ち木の並び方で判断するしかない。
お猿さんや鹿さんが出迎えてくれました。
ガスが出て幽玄な源流風景となりました。
幸運にもいつしか雨は上がり、高速道路のような武奈ヶ岳の北尾根に飛び出す。何も見えない。視程は20~30mだろうか。武奈ヶ岳の山頂はもう指呼の間である。下山路の細川尾根の分岐を確認しながら進めば、ガスの中から山頂の標識が浮かび上がった。いつもなら大賑わいのはずの比良最高峰も、さすがに今日の天気では誰もいない。
恒例のハイタッチ&握手をガッチリ決める。遮るもののない展望が楽しめるはずの武奈ヶ岳山頂だが、ガスの中も風情があってまた良し。滅多に来られない山頂ならこんな感想も出ないだろうが。
私も久しぶりの武奈の山頂。そうは言っても、展望もなく、昔の記憶が蘇ることはありませんでしたねぇ。
沢から登るといのは初めてでしたので、これまた格別。
のんびりしていると、予想に反して南西稜から2人パーティーが上がってきた。若いカップルで、男性はコンビニで売っているようなビニールカッパ、女性の足元はバスケットシューズという軽装だ。この天気で頑張って登って来るような出で立ちではないが、二人ならどんな天気でも楽しいというところだろうか。願わくば、ちゃんと装備を揃えて山を続けていってほしいものである。
足下までは見てませんでしたが、あのビニカッパはどうも・・・
再び雨がパラ付き始めたところで下山にかかる。ふ~さんはヒル対策もあって渓流シューズのまま下るという。
八幡谷と貫井谷を分ける細川尾根には概ね明瞭な踏み跡がある。ごく一部だがブナ林のコバもあり、沢の下山路としては短くて使い勝手のいいルートだ。
しかし距離が短くて標高差が大きいということは、それだけ急だということである。
案の定、登山靴に履き替えた私でもエッチラオッチラ下る場面でふ~さんがかなり苦戦していた。足首の古傷も影響しているようだ。私も右ひざが痛み出して、さながら敗残兵の行軍のような歩みとなった。
フェルトシューズで急斜面を下るのは大変なことですね。
余分な気を遣います。
しかし、あっという間に下降。
一時間半という読みがそのまま当たりましたね。
集落に出てほっと一息。
植林を抜けて送電鉄塔が現われると下りも終了だ。にこやかな笑顔を見せて迎えてくれた民家のおばあさんに挨拶して休憩所に戻ると、ほどなく大粒の雨が屋根を叩き始めた。
あのおばあちゃん、ほんと嬉しそうにニコニコして迎えてくれましたね。
寒村に暮らしてきたおばあちゃんの苦労が刻まれた顔のしわがひときわ印象的でした。
絶妙のタイイングで雨脚が強まって・・・
釣り師さんもこの雨に塗り込まれて退屈そうにしていました。
雨の中の遡行ですが、立派な水量で滝も壮観。
巨木の見られる素晴らしい沢でした!
お疲れさまでした。
ふ~さん