【日 時】 8月17日(土)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 6613389737
【同行者】 単独
【天 候】 晴れ
【ルート】 P(6:19)~権現山(7:39)~五合目(9:14)~八丁立(10:46)~西駒山荘(12:00)~将棊頭山(12:15/27)~茶臼山(13:16/52)~西駒山荘(14:42)~八丁立(15:36)~五合目(16:34)~権現山(17:35)~P(18:31)
将棊頭山と茶臼山に登るのなら、桂小場から登れば話は早い。しかし、それを敢えて権現づるねから?
権現づるねは歴史の道である。明治24年、ウエストンは木曽上松から木曽駒に登頂し、伊那への下山路に権現づるねを選んだ。しかし、昭和42年に駒ヶ岳ロープウェイが開通して以来、木曽駒ヶ岳への登山地図は様変わりした。
- 将棊頭山
権現づるねは廃道と化した。それを復活させたのは地元の愛好家の尽力であったと伺った。
未踏の権現づるねと、同じく未踏の将棊頭山、茶臼山を絡めたのが今回の登山であった。単独行ゆえ、置き車もできない。権現づるねピストンでいくしかない。
- コース概要
伊那スキーリゾートのゲレンデトップに車を停めて歩き出す。キノコの笠やホトトギス咲く道を歩き、常輪寺からの登路を合わせれば、ほどなくして権現山である。
尊崇の対象であるイワクラと祠、ダケカンバ際立つ古木の山頂。ボーイスカウトや地元の西春近北小の登頂記念の立て札が目に入る。毎年春、六年生が権現山に登頂して校歌を歌う・・・とHPにあった。
その歌詞が心に響く。『駒・権現のすそひろく/小黒天竜おちあひて/清き流れのゆくところ/ながめはるけき春近や』『このうるはしき山川に/われら朝夕はぐくまれ・・・』
三角点広場を通過してからが俄然ササヤブっぽくなる。が、踏み跡はしっかりしている。コメツガやダケカンバが点在する山路を往く。
- 将棊頭山
板沢の頭を経て五合目へ。コブを二つ通過すると谷地の道。ウソの歌声が聞こえてきた。その伴奏に主旋律を奏でる小鳥がいない。時折、ソプラノでオブリガードだけが入る。歌い手は誰だろう。センダイムシクイ、コマドリと主役を入れ替えながら歩くと、トトロの森に吸い込まれる。
こういう森は人によって評価はまちまちだろうが、私は嫌いではない。マイヅルソウが青い実を結び、カニコウモリの白花が今を盛りと幻想的に花開く。よく見ると、美しくも複雑な花弁で感心しきり。
- ベニテングタケ
急登に耐えていると下山される方にすれ違った。昨夜は小屋泊まりのご様子。勇次郎峠の記載のある分岐を過ぎると、ダケカンバの幼木帯。ナカカマドやコメツガを分けるうち、空が近くなったり遠くなったりを繰り返して八丁立の三角点だ。
ハイマツの中を歩くようになれば森林限界である。木曽駒エリアには既にガスが沸き立ち始めた。大パノラマというわけにはいかない。それでも心解き放たれて気分も高揚する。西駒山荘の奥に将棊頭山が鎮座している。登山者の姿が見える。
人工物のある将棊之頭から展望も約束された。足下にはイワツメクサやトウヤクリンドウなど清楚な高山植物がひっそりと咲き誇っている。西駒山荘に降り立った。
- 西駒山荘
西南の分岐から将棊頭山に向かえば天水岩だ。干天続きでどうかと思うが、さすが干上がっていない摩訶不思議。
将棊頭山から下山する登山者とあいさつを交わしてすれ違った。山頂付近に動くものがある。よく見ればお猿さんではないか。山頂に立って木曽駒高原側を見下ろすと、すぐ先の露岩に猿が群れている。猿の間でも将棊頭山登山がブームとは知らなかった。
あかんあかん。猿の観察に来たのではない。馬の背の奥に木曽駒本峰がのぞく。伊那前岳や木曽前岳、麦草岳らの名だたる衛生峰は見栄えがする。
ガラガラした斜面を冬道を使い、行者岩に向かった。胸突ノ頭付近に届くと分水嶺の表示がある。霞む御岳を眺めながら行者岩の岩塊が近づいてくるのを待った。
- 行者岩
一旦、鞍部に降りてから登り返すと本日のゴール地点、茶臼山である。さっそく祠にお参りだよ。ここは格別だ。いつだったか、苦労して登った大棚入山が眼下にある。あの日、茶臼山を、そして将棊頭山を見上げて「いつかきっと!」とコブシを固めたものだ。
そうこうするうち、一人の登山者が現れた。「まさか茶臼のてっぺんで人に会うとは思いもしませんでしたよ。」彼は福島Bで木曽駒と宝剣を登頂してきたと言う。日焼けして精悍な彼は「朝3時半発なんです!」と言うから私のような軟弱者とは大違いである。
「そりゃ、朝の展望は富士山含めて最高でした」とよだれの垂れそうな一言まで頂戴する。昨年夏、家族で木曽駒から富士山拝んだからまぁいいや・・・と心の中で一人自分を慰める。
- ウサギギク
伊那側からガスがにわかにがわき上がってきた。長居は無用だ。日没6時39分。茶臼の山頂を辞するに、ほどよい時間である。
トラバース道は足に優しいばかりか、目にも優しい。ウサギギク、クルマユリ、ハクサンフウロ、ニッコウキスゲ、モミジカラマツ・・・と華麗な花々。その数、枚挙にいとまない。
- 馬の背と木曽駒
西駒山荘から権現づるねに取り付くと、伊那盆地を覆っていたガスがさっと霧散した。天竜川が盆地を貫流し、三峰川の扇状地形が美しい。おまけに権現山のポコンが見えたから微妙な心理に陥る。権現山まではあまりに距離がありすぎるからだ。
そうは言っても、救助ヘリを要請するわけにはいかない。ゴージャスな山岳展望に憩い、花を愛で、森を楽しみ、ヤブを分け、小鳥のさえずりに和み、筋肉痛と戦いながら完結するのも自分流の登山なのだから。
ふ~さん