【日 時】 3月30日(金)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.html ... 5165804188
【同行者】 単独
【天 候】 曇り~晴れ
【ルート】 駐車地(7:25)~小坊主峰(8:27)~坊主岳(10:10/39)~仏谷(13:48/14:07)~1680峰(15:16)~駐車地(17:31)
休日勤務しても、なかなか代休なんて取れそうもないのだが、今回ばかりは強引に振替休日をもぎ取った。そうとなれば早起きも苦にならないから現金なもんだ。
すっかり雪の消えたイノコ沢橋の駐車地。愛車を置いて歩き出す。イノコ沢対岸の急崖を見た途端に一抹の不安がよぎった。今日は自宅にロープを置いてきてしまったからだ。
努めて装備の不安を忘れ、ジグを切って登るとすぐに祠が迎えてくれる。手を合わせて登山の安全を祈願する。
道型は山腹をトラバースしていく。それを避けて尾根筋に戻って高みを目指す。アカマツや白樺がカラマツ林に変わった。急登を経て小坊主峰(1429m)に登り着く。
笹道に雪が詰まり始めるが、これが厄介だ。日中に緩んだ雪が深夜の氷点下に凍てついてツルツル滑る。まさかここでアイゼンを履くわけにもいかない。かと言って笹ヤブを歩くのも骨が折れる。
それでも正面に坊主岳が見えてくると元気も出てくる。雪道になったり笹ヤブになったりするうち、最後の急登にさしかかる。

- 坊主岳
1600mを越えるあたりから、シラビソなどの針葉樹やダケカンバの樹相になった。樹間を透かして仏谷が見えると気分も浮き立つ。背後から視線を感じて振り返ると、御岳や乗鞍の激励を受ける。
一気に空が近くなると坊主岳の山頂だ!青空が広がり、360度の大パノラマが待ち受けていた。
中央アルプスの主峰がそびえ立ち、御岳や乗鞍は勿論、鉢盛山の向こうには北アルプスが挨拶してくれている。そしていよいよ厳しい表情の仏谷と対峙する。
時間読みをしてみる。そして地図と照らし合わせて地形を読んでみる。連綿と続く稜線。鞍部まではかなり高度を下げる印象だが、それより1800mを越えてからの登り返しは相当つらそうだ。

- 仏谷へと連綿と続く尾根
ちょっぴり緊張しながらコルに立つと『仏谷・唐沢・坊主岳』の道標が立っている。先を急げば、ふり仰ぐ坊主岳が立派だ。ここから見ると、坊主岳は双耳峰であることがよくわかる。地形図を見ると北峰の方が40cmほど高いんだ。
西方を見やれば登ってきた尾根と下山尾根が一望のもと。奈良井ダムは凍結が緩んで白と碧のツートンだよ。やがて赤茶けた岩の堆積したやせ尾根となった。胸を突くような急登が迫る。脆い岩に注意しながら切り抜ける。
ルートを選びながら前へ前へ。なかなか捗らない区間だが、ここを過ぎると右手に凹地が現れる。下山尾根の分岐周辺にさしかかったようだ。なおも進むと仏谷がどか~んと眼前に迫り、遮るものが一切ない。いよいよ目標を射程圏内に捉えたぞ。
深くなった雪の中、着実に一歩一歩を刻むのみ。頑張れば何とかなるもので、ようやく頂上に立てた私。ここより高い場所はないことを確認して快哉を叫ぶ。

- 仏谷
坊主岳があんなに目線の下にあるよ。経ヶ岳と黒沢山がデカいな。遠くを見やれば南アや八ヶ岳の晴れ姿もある。美ヶ原・霧ヶ峰方面からぐるっと視線を移すと常念や槍穂が丸見えだ。生きてて良かったぁ。
大展望に別れを告げ、一気に下る。しかし、振り返り、振り返りだから捗らない。湿原状の地形に雪の詰まった雪田をのんびり歩く。そして下降ポイントへと高度を下げた。振り向くと、ほら、経ヶ岳もあんなに背が伸びた。
下山開始。笹混じりの尾根から雪稜を辿り、カラマツ林と笹ヤブを抜けていく。樹間に覗く坊主岳に終始見守られながら標高を下げていく。1680峰でひと息つく。ここまではルートに迷う箇所はなかったが、ここからの尾根は気むずかしそうだ。
やや下りかけるとミズナラの巨木。これは鑑賞のしがいがある。胸高で四裂してそれぞれが存在を誇っている。巨木が目立つのはこの辺りで、針葉樹や広葉樹の大木がそこかしこに散見される。

- ミズナラの巨木
戸沢への尾根を分けると、いよいよ長野営林署の「境界見出標」も見えなくなった。雪が薄くなると、いよいよ笹ヤブの道と化す。動物の目で踏跡を探すが、倒木に隠れたり薮に埋もれたりで不明瞭の極みだ。
重力に任せて笹ヤブを踏み倒すうち、突然ヤブが薄くなった。だが、相変わらず地図と睨めっこのノロノロ歩きは効率が悪すぎる。焦る気持ちを抑えて、我慢に我慢を重ねて高度を下げていく。
突如として踏跡にぶち当たった。明らかに人が歩いた道型に思える。いろいろ考えた末、尾根末端を狙う作戦を捨てて北東にトラバースしてみる。しかし、途中でそのプランを再検討。踏跡を外して試しに急降下してみる。しかし、どうにもならない急傾斜に手詰まりになった。
しばらくは胸の鼓動を押さえて山肌に貼り付いていたが、必死の思いでピッケルで掻き上がって踏跡に復帰する。なんで今日に限ってロープを自宅に置いてきたのか自責の念。
さぁ、振り出しに戻ったぞ。だが、当初の計画通り尾根末端を探ればいいのに、北東へのトラバースにこだわってみる。すると、嬉しいことにトチの大木との邂逅があった。
人が歩いた道なのか、動物が歩く道なのか判然としないまま、強引に高度を落とすと苔むした砂防ダムの護岸壁に降り立った。やれやれ。踏跡に出会ってから既に小一時間が経過。ああ、冷や汗かいたぜ。
難なく渡渉して駐車地へ。ちなみに尾根末端を目指せば階段道が使えた。完全に登る前の現地調査を怠った罰ですね。
さあ、寄り道しなければ子供が寝る前に自宅に帰れるはずだ。帰路は木曽谷ではなく、伊那谷から高速に乗ろう。
私は、春まだ浅い山道を辿って、家路についた。
ふ~さん