山道具考2 スノーシューその2
Posted: 2011年6月13日(月) 21:46
「やっぱり山ではワカンしかないな。」そう思いながら2005年の末を迎えようとしていた。
そんな時に矢問さんから紹介されたのが、MSR社のLightning Ascent(ライトニングアッセント)というモデルである。
輸入元であるモチヅキのHPを見てもなかなか良さそうだ。第一名前がいい。「稲妻のような登高」とは、履くだけで
グイグイ登らせてくれそうなネーミングだ。
従来からあるパイプフレームのそれとは一線を画すスタイリング。ギザギザの刻まれた金属の刃のようなフレームは
いかにもグリップしてくれそうである。
早速ヤフーオークションで注文した。まさか「21th century黒竜」の二の舞はないだろう・・・
[attachment=1]P1060822_1.JPG[/attachment]
デビュー戦は2006年正月の明神平。高原状のいかにもスノーシュー向けのフィールドだが、このモデルにとっては
「いかにも」という場所でない方がいいのかもしれない。前年秋に骨折したとっちゃんのリハビリを兼ねての山行である。
ガチガチに踏まれた雪道を辿り、明神平からいよいよスノーシュー装着だ。
歩き出す。なかなかいい感じ。しかし雪がそこそこ締まっているので、それほど差を感じることはできなかった。
三ツ塚から明神岳へ斜面をトラバース気味に歩いてみた。これは具合がいい。スノーシューのエッジがよく効いて、ワ
カンのようにズルズルと滑る恐さがないのだ。
桧塚方面からの帰りでは、明神岳手前の急登で初めてヒールリフターを立ててみたが、これも非常に楽だった。
全体的な印象はよかったものの、その後のヤブ山の急登ではやはりワカンを使ったりしていた。このスノーシューの能
力を目一杯引き出すまでにはまだ数年の歳月を必要としたのである。
2006年の初めから丸5年、6シーズンが経過した。その間80回以上は使用したと思うが、山岳地における最強のスノ
ーシューであるという確信は不動のものとなった。
このモデルの最大の美点は、全身アイゼンを思わせるフレームが生み出す全方向へのトラクションである。
普通のスノーシューやワカンが苦手とするトラバースも得意種目。うまくエッジを効かせれば不安なく歩くことができる。
従来スノーシューが不得意とされていた急斜面の登高も問題ない。フカフカの新雪やクラストした雪面では慣れないと
ズルズルという場面もあるだろう。しかしこれは足の置き方を工夫すれば解決できる。
私自身いろんな場面で試行錯誤して、この1、2年でやっと歩き方を覚えたと言っていいぐらいだ。とにかく場数を踏んで、
考えながら足を出すことが肝要である。
フカフカの雪には鉛直方向への踏み込みや、足の横置き。クラスト斜面では逆ハの字歩行や斜面に対して垂直に蹴り
込む等、漫然と足を運ぶだけではこのスノーシューの能力の半分も引き出すことはできないだろう。
最近は他の登山者がアイゼンを装着する場面で、ライトニングアッセントをアイゼン代わりに履くことも多い。ガチガチの
クラスト斜面でない限り不安なくグリップしてくれるし、ヒールリフターを立てればふくらはぎへの負担も格段に少ないのだ。
ダブルストックとのコンビネーションで、階段を登るように歩くことができる。アイゼンとピッケルでえっちらおっちら登るより
もはるかに効率がいい。
くるぶし程度の潜りでツボ足でも十分歩けるという場面でも積極的に履くべきだと思う。
第一背中に担いでいても重いだけであるし、履けば足を置いたところでピタッと止まってくれて、踏ん張るのに余計な力を
使う必要がない。
以前はギリギリまで履くのを我慢していたものだが、楽するための道具は使わなければ損である。
[attachment=0]P1020389_1.jpg[/attachment]
一方で欠点もある。他のスノーシュー同様、急斜面の下りは苦手だ。テールの長いモデルほどその傾向は強い。
テールから踏み込んで行ける雪質なら比較的楽に下りられるものの、セカンド以降でトップのトレースを辿る場面ではそれ
も難しい。こういうシーンではワカンの独壇場だ。
延長用のフローティングテールというのがあるが、逆に下りでテール部分を取り外せるモデルがあれば使い勝手はもっと
よくなるかもしれない。
この2年ほどはワカンを履こうという気持ちもなくなった。ワカンがこのスノーシューより優れているのは重量と下りの取り
回しだけだ。それ以外はワカンを遥かに凌駕する性能が、いかなる山行にもこのスノーシューを選択させるのである。
長所と欠点を比較すれば、欠点がほとんど気にならないほど優れたスノーシューであると自信を持って言える。
人に聞かれれば必ずこのモデルを薦め、20台以上購入のお世話をしてきた。
昨年出た最新モデルでは、バインディングの止め具の形状が変わってやや扱いずらいようだ。バインディングシステム自
体が変わった「ライトニングアクシス」というモデルもリリースされた。
ただ、マイナーチェンジの度に少しずつ重量が増えているのが残念ではある。いつかフルモデルチェンジがあるとすれば、
より軽量化された扱いやすいモデルの登場を望みたいものだ。
山日和
そんな時に矢問さんから紹介されたのが、MSR社のLightning Ascent(ライトニングアッセント)というモデルである。
輸入元であるモチヅキのHPを見てもなかなか良さそうだ。第一名前がいい。「稲妻のような登高」とは、履くだけで
グイグイ登らせてくれそうなネーミングだ。
従来からあるパイプフレームのそれとは一線を画すスタイリング。ギザギザの刻まれた金属の刃のようなフレームは
いかにもグリップしてくれそうである。
早速ヤフーオークションで注文した。まさか「21th century黒竜」の二の舞はないだろう・・・
[attachment=1]P1060822_1.JPG[/attachment]
デビュー戦は2006年正月の明神平。高原状のいかにもスノーシュー向けのフィールドだが、このモデルにとっては
「いかにも」という場所でない方がいいのかもしれない。前年秋に骨折したとっちゃんのリハビリを兼ねての山行である。
ガチガチに踏まれた雪道を辿り、明神平からいよいよスノーシュー装着だ。
歩き出す。なかなかいい感じ。しかし雪がそこそこ締まっているので、それほど差を感じることはできなかった。
三ツ塚から明神岳へ斜面をトラバース気味に歩いてみた。これは具合がいい。スノーシューのエッジがよく効いて、ワ
カンのようにズルズルと滑る恐さがないのだ。
桧塚方面からの帰りでは、明神岳手前の急登で初めてヒールリフターを立ててみたが、これも非常に楽だった。
全体的な印象はよかったものの、その後のヤブ山の急登ではやはりワカンを使ったりしていた。このスノーシューの能
力を目一杯引き出すまでにはまだ数年の歳月を必要としたのである。
2006年の初めから丸5年、6シーズンが経過した。その間80回以上は使用したと思うが、山岳地における最強のスノ
ーシューであるという確信は不動のものとなった。
このモデルの最大の美点は、全身アイゼンを思わせるフレームが生み出す全方向へのトラクションである。
普通のスノーシューやワカンが苦手とするトラバースも得意種目。うまくエッジを効かせれば不安なく歩くことができる。
従来スノーシューが不得意とされていた急斜面の登高も問題ない。フカフカの新雪やクラストした雪面では慣れないと
ズルズルという場面もあるだろう。しかしこれは足の置き方を工夫すれば解決できる。
私自身いろんな場面で試行錯誤して、この1、2年でやっと歩き方を覚えたと言っていいぐらいだ。とにかく場数を踏んで、
考えながら足を出すことが肝要である。
フカフカの雪には鉛直方向への踏み込みや、足の横置き。クラスト斜面では逆ハの字歩行や斜面に対して垂直に蹴り
込む等、漫然と足を運ぶだけではこのスノーシューの能力の半分も引き出すことはできないだろう。
最近は他の登山者がアイゼンを装着する場面で、ライトニングアッセントをアイゼン代わりに履くことも多い。ガチガチの
クラスト斜面でない限り不安なくグリップしてくれるし、ヒールリフターを立てればふくらはぎへの負担も格段に少ないのだ。
ダブルストックとのコンビネーションで、階段を登るように歩くことができる。アイゼンとピッケルでえっちらおっちら登るより
もはるかに効率がいい。
くるぶし程度の潜りでツボ足でも十分歩けるという場面でも積極的に履くべきだと思う。
第一背中に担いでいても重いだけであるし、履けば足を置いたところでピタッと止まってくれて、踏ん張るのに余計な力を
使う必要がない。
以前はギリギリまで履くのを我慢していたものだが、楽するための道具は使わなければ損である。
[attachment=0]P1020389_1.jpg[/attachment]
一方で欠点もある。他のスノーシュー同様、急斜面の下りは苦手だ。テールの長いモデルほどその傾向は強い。
テールから踏み込んで行ける雪質なら比較的楽に下りられるものの、セカンド以降でトップのトレースを辿る場面ではそれ
も難しい。こういうシーンではワカンの独壇場だ。
延長用のフローティングテールというのがあるが、逆に下りでテール部分を取り外せるモデルがあれば使い勝手はもっと
よくなるかもしれない。
この2年ほどはワカンを履こうという気持ちもなくなった。ワカンがこのスノーシューより優れているのは重量と下りの取り
回しだけだ。それ以外はワカンを遥かに凌駕する性能が、いかなる山行にもこのスノーシューを選択させるのである。
長所と欠点を比較すれば、欠点がほとんど気にならないほど優れたスノーシューであると自信を持って言える。
人に聞かれれば必ずこのモデルを薦め、20台以上購入のお世話をしてきた。
昨年出た最新モデルでは、バインディングの止め具の形状が変わってやや扱いずらいようだ。バインディングシステム自
体が変わった「ライトニングアクシス」というモデルもリリースされた。
ただ、マイナーチェンジの度に少しずつ重量が増えているのが残念ではある。いつかフルモデルチェンジがあるとすれば、
より軽量化された扱いやすいモデルの登場を望みたいものだ。
山日和