【奥越】予期せぬ大展望とブナ林 下打波から小黒見山
Posted: 2025年3月11日(火) 23:09
【日 付】2025年3月9日(日)
【山 域】奥越大野近郊 小黒見山995m
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下打波7:55---9:55尾根10:10---11:00山上台地---11;40 P1000m東ランチ場13:35---14:10小黒見山
---14:50 P842m---16:20下打波
山は登ってみなければわからない。大して期待もせずに登った山だったが、小黒見山は素晴らしい展望と
ブナ林の名山だった。
下打波の集落は、雪が消えた間だけ住民が戻ってくるようで、まだ分厚い雪に覆われてひっそりと眠って
いた。道端で用意をしていると、意外にも数台の車が通り過ぎて行った。工事関係者のようだ。
道路脇にできた雪の壁を乗り越えると、天然記念物に指定されている白山神社のカツラの巨樹と対面する。
幹周15mというこの巨樹はその昔、泰澄が昼食の時に使った爪楊枝を地面に刺したものが、時を経て大きな
カツラになったという伝説を持つ木である。その根方には清冽な清水が湧き出ていた。
北陸のスーパースター泰澄にはこんな荒唐無稽な伝説が多い。
カツラの裏手から山に取り付く。植林のない広い谷にはケヤキとトチ、イタヤカエデの森が広がっている。
この森は「下打波のトチノキ・ケヤキ・イタヤカエデ群生林」として、福井県の天然記念物に指定されている。
大カツラは何度も前を通って知っていたが、その背後にこんな森があるとは知らなかった。
朝陽を浴びて底抜けに明るい広い谷を登って行く。こんな集落の裏山で、植林も無しにいきなり豊かな自然
林を味わえるのは珍しい。雪はよく締まっているが、南向きの斜面は早くも表面が緩み始めていた。
最初は緩やかだった谷は登るにつれ傾斜を増して行く。右岸から大きなデブリが出ていた。
このまま谷を詰めるわけにはいかないので、どこが左岸側の尾根に乗らなくてはいけない。左岸の斜面を見上
げてタイミングを見計らいながら進む。
二俣になった右の谷の上に青空が覗いている。斜度もそれほど強くはなく、最後に雪庇で行く手を阻まれるこ
ともなさそうだ。しかし谷というのは下から見ると傾斜が緩く感じるものだ。
この谷も例外ではなく、上部ではかなりの傾斜となった。雪の表面はまったく緩んでおらず、スノーシューの
フレームががっちりと心地良く雪面を捉えてくれるが滑落は許されない。
この日がモンベルのスノーシューのデビュー戦だったsatoさんは苦戦を強いられている。アイゼンの爪の位置が
悪く雪面にきっちり刺さらないのと、トラバースの時にバインディングが左右に揺れて足首が固定しずらいの
とで、MSRとの歴然たる差を感じていたようだ。
まあ、普通ならアイゼンとピッケルで登るような斜面だからモンベルに文句も言えないが。
一歩一歩慎重にステップを刻みながら、ようやく尾根に這い上がると予想もしなかった見事な展望が開けた。
背後の木無山と松鞍山、小白山から白山へと続く山並みが一望できる。近いのだからあたりまえと言えばあた
りまえなのだが、樹林に覆われた山を想像していたので唐突な感が否めない。
ここからはブナロードが始まった。この尾根も部分的に傾斜が強く、直登できずに回り込んで通過するとこ
ろもあった。そういう場所では必ずブナの大木が雪をせき止めるような形で立って雪壁を作っていた。
このブナが雪の圧力から解放されるのはまだ時間がかかりそうだ。
最後の急登をこなすと広大な山上台地に放り出された。ブナの古木が点在する雪原はまさに別天地。
そして尾根に乗った場所をはるかに凌駕する展望が開けた。
まずは三角点に寄ってからと左へ進路を取ると、今度は西側に大野盆地と勝山の街並み、その奥には浄法寺山
から越前甲へと至る加越国境稜線の山々が屏風絵図のように並んでいた。
よく考えたら小黒見山の三角点は下山時に通ることに気付いて踵を返す。地形図を見た時に気になっていた
1000m標高点の前後を散策しながらランチ場を探すとしよう。
ほとんどアップダウンのない山上台地を進む。P1000mから右の支尾根に入ったところに大展望地を見つけた。
裏から見る石徹白の山々と気品あふれる別山、神々しい白山の姿が遮るものなく目に飛び込んできた。
白山の左には赤兎山と大長山、経ヶ岳という福井県を代表する名山が並ぶ。こんな最高のランチ場はなかなか
ないだろう。即決でスノースコップをふるって設営。今日も白山を遥拝しながら贅沢なランチタイムの始まりだ。
当初の予定ではもう少し北のゆるやかな地形に窪地記号があるあたりまで足を延ばすつもりだったが少々疲れ
気味だ。satoさんはどうしても見に行きたいということで、ひとり空身で向かう。
こちらはのんびりと風景を堪能。浮世の憂さを忘れてしまうのんびりとした時間を過ごす。
走って来たようなスピードでsatoさんが戻って来た。ここから眺めても実に良さげなところだが、実際素晴らし
いところだったと聞いてちょっと後悔の念が走った。
いつまでも去り難い風景だが、後ろ髪を引かれながら腰を上げる。
小黒見山頂へ戻る雪尾根では、緩やかな曲線を描く雪面に午後の光が作り出す陰影が美しく、思わず見とれて
しまった。
小黒見山の山頂も広い雪原になっていた。GPSで確かめた山頂のポイントよりも高いところがあったが、これ
は積雪の加減かもしれない。
山頂からは南の尾根に入ったが、これがまた第一級のプナ林の尾根だった。
広い尾根にはほぼブナの純林が続き、得も言われぬ微妙な起伏の地形が連続する。
この山のブナはスラっとしたものより古武士のような苔むした風格のある木が多く、実に見応えがある。
荒島岳を正面に見ながら歩くブナ林は格別の味わいがあった。
30分ほどで842m標高点まで来たのでこれは楽勝かと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
地形図で急傾斜なのはわかっていたが、午後になって腐ってきた雪はスノーシューを履いたままではまともに
歩けそうにない。スノーシューを脱いでツボ足に切り替えたがヒザ近くまで潜る。
それでも重力に任せて足を出せば前進できるが、たまに木の近くの穴にはまりこんで脱出にひと苦労。
七転八倒しながらの下りだが、ずっとブナ主体の林が続いているのが慰めだ。
尾根芯が歩きにくそうになってきたので右側の谷へ逃げて再びスノーシューを履いた。
雪の詰まった谷は歩きやすいが、時折雪崩止めの鉄柵が障害物競走のように現れる。
ようやく道路が見えてきた。手前に雪原が見えたが、あれはスノーシェッドの屋根の部分だろう。
このまま下れば屋根から降りられるかどうかわからない。左へトラバースしてスノーシェッドの出口の先に段差
の小さいところを見つけてソフトランディング。
山上の天国から最後はアトラクション満載の下りだったが、楽園の輝きを一層印象深いものにしてくれたエピロ
ーグだった。
山日和
【山 域】奥越大野近郊 小黒見山995m
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】下打波7:55---9:55尾根10:10---11:00山上台地---11;40 P1000m東ランチ場13:35---14:10小黒見山
---14:50 P842m---16:20下打波
山は登ってみなければわからない。大して期待もせずに登った山だったが、小黒見山は素晴らしい展望と
ブナ林の名山だった。
下打波の集落は、雪が消えた間だけ住民が戻ってくるようで、まだ分厚い雪に覆われてひっそりと眠って
いた。道端で用意をしていると、意外にも数台の車が通り過ぎて行った。工事関係者のようだ。
道路脇にできた雪の壁を乗り越えると、天然記念物に指定されている白山神社のカツラの巨樹と対面する。
幹周15mというこの巨樹はその昔、泰澄が昼食の時に使った爪楊枝を地面に刺したものが、時を経て大きな
カツラになったという伝説を持つ木である。その根方には清冽な清水が湧き出ていた。
北陸のスーパースター泰澄にはこんな荒唐無稽な伝説が多い。
カツラの裏手から山に取り付く。植林のない広い谷にはケヤキとトチ、イタヤカエデの森が広がっている。
この森は「下打波のトチノキ・ケヤキ・イタヤカエデ群生林」として、福井県の天然記念物に指定されている。
大カツラは何度も前を通って知っていたが、その背後にこんな森があるとは知らなかった。
朝陽を浴びて底抜けに明るい広い谷を登って行く。こんな集落の裏山で、植林も無しにいきなり豊かな自然
林を味わえるのは珍しい。雪はよく締まっているが、南向きの斜面は早くも表面が緩み始めていた。
最初は緩やかだった谷は登るにつれ傾斜を増して行く。右岸から大きなデブリが出ていた。
このまま谷を詰めるわけにはいかないので、どこが左岸側の尾根に乗らなくてはいけない。左岸の斜面を見上
げてタイミングを見計らいながら進む。
二俣になった右の谷の上に青空が覗いている。斜度もそれほど強くはなく、最後に雪庇で行く手を阻まれるこ
ともなさそうだ。しかし谷というのは下から見ると傾斜が緩く感じるものだ。
この谷も例外ではなく、上部ではかなりの傾斜となった。雪の表面はまったく緩んでおらず、スノーシューの
フレームががっちりと心地良く雪面を捉えてくれるが滑落は許されない。
この日がモンベルのスノーシューのデビュー戦だったsatoさんは苦戦を強いられている。アイゼンの爪の位置が
悪く雪面にきっちり刺さらないのと、トラバースの時にバインディングが左右に揺れて足首が固定しずらいの
とで、MSRとの歴然たる差を感じていたようだ。
まあ、普通ならアイゼンとピッケルで登るような斜面だからモンベルに文句も言えないが。
一歩一歩慎重にステップを刻みながら、ようやく尾根に這い上がると予想もしなかった見事な展望が開けた。
背後の木無山と松鞍山、小白山から白山へと続く山並みが一望できる。近いのだからあたりまえと言えばあた
りまえなのだが、樹林に覆われた山を想像していたので唐突な感が否めない。
ここからはブナロードが始まった。この尾根も部分的に傾斜が強く、直登できずに回り込んで通過するとこ
ろもあった。そういう場所では必ずブナの大木が雪をせき止めるような形で立って雪壁を作っていた。
このブナが雪の圧力から解放されるのはまだ時間がかかりそうだ。
最後の急登をこなすと広大な山上台地に放り出された。ブナの古木が点在する雪原はまさに別天地。
そして尾根に乗った場所をはるかに凌駕する展望が開けた。
まずは三角点に寄ってからと左へ進路を取ると、今度は西側に大野盆地と勝山の街並み、その奥には浄法寺山
から越前甲へと至る加越国境稜線の山々が屏風絵図のように並んでいた。
よく考えたら小黒見山の三角点は下山時に通ることに気付いて踵を返す。地形図を見た時に気になっていた
1000m標高点の前後を散策しながらランチ場を探すとしよう。
ほとんどアップダウンのない山上台地を進む。P1000mから右の支尾根に入ったところに大展望地を見つけた。
裏から見る石徹白の山々と気品あふれる別山、神々しい白山の姿が遮るものなく目に飛び込んできた。
白山の左には赤兎山と大長山、経ヶ岳という福井県を代表する名山が並ぶ。こんな最高のランチ場はなかなか
ないだろう。即決でスノースコップをふるって設営。今日も白山を遥拝しながら贅沢なランチタイムの始まりだ。
当初の予定ではもう少し北のゆるやかな地形に窪地記号があるあたりまで足を延ばすつもりだったが少々疲れ
気味だ。satoさんはどうしても見に行きたいということで、ひとり空身で向かう。
こちらはのんびりと風景を堪能。浮世の憂さを忘れてしまうのんびりとした時間を過ごす。
走って来たようなスピードでsatoさんが戻って来た。ここから眺めても実に良さげなところだが、実際素晴らし
いところだったと聞いてちょっと後悔の念が走った。
いつまでも去り難い風景だが、後ろ髪を引かれながら腰を上げる。
小黒見山頂へ戻る雪尾根では、緩やかな曲線を描く雪面に午後の光が作り出す陰影が美しく、思わず見とれて
しまった。
小黒見山の山頂も広い雪原になっていた。GPSで確かめた山頂のポイントよりも高いところがあったが、これ
は積雪の加減かもしれない。
山頂からは南の尾根に入ったが、これがまた第一級のプナ林の尾根だった。
広い尾根にはほぼブナの純林が続き、得も言われぬ微妙な起伏の地形が連続する。
この山のブナはスラっとしたものより古武士のような苔むした風格のある木が多く、実に見応えがある。
荒島岳を正面に見ながら歩くブナ林は格別の味わいがあった。
30分ほどで842m標高点まで来たのでこれは楽勝かと思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
地形図で急傾斜なのはわかっていたが、午後になって腐ってきた雪はスノーシューを履いたままではまともに
歩けそうにない。スノーシューを脱いでツボ足に切り替えたがヒザ近くまで潜る。
それでも重力に任せて足を出せば前進できるが、たまに木の近くの穴にはまりこんで脱出にひと苦労。
七転八倒しながらの下りだが、ずっとブナ主体の林が続いているのが慰めだ。
尾根芯が歩きにくそうになってきたので右側の谷へ逃げて再びスノーシューを履いた。
雪の詰まった谷は歩きやすいが、時折雪崩止めの鉄柵が障害物競走のように現れる。
ようやく道路が見えてきた。手前に雪原が見えたが、あれはスノーシェッドの屋根の部分だろう。
このまま下れば屋根から降りられるかどうかわからない。左へトラバースしてスノーシェッドの出口の先に段差
の小さいところを見つけてソフトランディング。
山上の天国から最後はアトラクション満載の下りだったが、楽園の輝きを一層印象深いものにしてくれたエピロ
ーグだった。
山日和
最初は緩やかだった谷は登るにつれ傾斜を増して行く。右岸から大きなデブリが出ていた。