【奥越】鍋又谷から奥越の超マイナーピーク鍋又山へ
Posted: 2023年9月05日(火) 21:23
【日 付】2023年9月2日(土)
【山 域】奥越 鍋又山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】蝿帽子林道入口7:15---9:15 750m二俣---12:50稜線---13:30鍋又山---13:45若谷下降点手前14:15
---16:40 623m標高点---17:35蝿帽子林道17:55---19:10駐車地
笹生川ダムから伊勢峠への道を何の気なしに走っていたら、道が川からどんどん高く離れていってしまった。
どうやら林道の入口を見落としたようだ。Uターンして今来た道を戻って行くと、わかりやすい橋が林道の入口
を示していた。笹生川の対岸へ渡る唯一の橋を見落とすとは情けない限りである。
橋を渡って右折すぐのところに駐車。この林道は笹生川ダムのバックウォーターに沿って、水戸天狗党で有名
な蝿帽子峠へと続いている。橋の左には地図にない林道があり、鍋又谷へと誘ってくれた。
林道の終点から入渓。しばらくの間はまったくの平流が続いて変化はないが、予想外に植林が入っておらず、
自然林の中を流れる穏やかな渓相は悪くはない。
ちょっと越戸谷川や野々小屋谷の序盤を思い起こすような雰囲気だ。
30分ほど歩いてようやく初めての滝と対面するが、4m程度の小さなものだ。釜が大きく深いので巻いて越える。
次に現れた2段7mの滝は造形が面白い。1段目を上がって2段目は登れないことはなさそうだがフルシャワー必至。
水が冷たいので左から巻き上がると、よく踏まれた杣道があった。
両方にナメ滝のかかる600m二俣は左が本流だが、谷床の高い右の支流の方が魅力的に見える。
鍋又谷は階段状の滝が多く、直登が楽しいのだがヌメりが強いので気を遣う。タワシを駆使してヌメりをこそげ
落としながらの登攀だ。8m滝では初めてロープを使った。
ここで左足に違和感を覚えた。足元を見ると、なんとソールが剥がれてブラブラしているではないか。それも
フェルトソールが剥がれたのではなく、中底が靴の本体から外れてしまっている。
どうしようもないのでチェーンスパイクを履いて固定すればなんとかなりそうである。
左足はこれ以降、下山までチェーンスパイクを履きっぱなしで歩くことになってしまった。
一見手の出せそうもない8m直瀑は左側の岩の奥に隠れたルートがあり、バンドを伝って上がる。
750mの二俣は山頂に近い右俣を選択する。ここまで2時間。まずまずのペースである。
遅くとも昼までには山頂に立てるだろうと、この時は思っていた。
いくつかの小滝を快適に直登した後の6m滝はヌメりが強く、一見登れそうだが自信が持てずに少し下ってから
右岸を巻いたのだが、これが意外に大高巻きとなった。
巻きの途中から先ほどの滝の落ち口を見ると、さらにその上に大きなツルツルのナメ滝が続いていた。あの滝を
登ったところで結局は巻かざるを得なかっただろう。
最初に巻き始めた時、ハチのような黄色い虫の攻撃を受けて一旦退却。それからもう一度直登できるか窺ったり、
巻きルートの吟味に時間がかかって、結局この巻きだけで30分以上を費やしてしまう。
流れは細くなったがこの上にも急なナメ滝が連続して気が抜けない。
源流に近づくと傾斜が増して来た。ここまで荒れの少ないスッキリした渓相で、この谷は水害を逃れたのかと思
っていたら、上流は倒木と土石流跡のオンパレードである。5m以上はありそうなミズナラが谷をふさいでいたの
には驚かされた。
岩盤が発達しているので、荒れていなければ快適な遡行を楽しめただろうが、鍋又谷も例外ではなかった。
水が切れると谷芯を歩きづらくなってきたので小尾根に逃げた。
このあたりはシャクナゲが多く、下手なルート取りをしてしまうとシャクナゲジャングルに絡めとられてしまうの
で、弱点を突くようにルートを選ぶことが必要だ。稜線まではもうすぐと思ってからずいぶん時間が経っている。
予定より1時間以上遅れてようやくヒノキの巨木が並ぶ稜線に到達した。
この時点では予定していた長い若谷ルートをあきらめて、鍋又谷の出合に延びる尾根を下山しようという気にな
っていた。しかし尾根上の踏み跡の状態を見て、それが大きな間違いだということに気が付いた。
確かに薄い踏み跡は続いているが、障害物が多いのでスピードが上がらない。両手両足を駆使して跨いだりかが
んだり押し分けたりで、まったく時間が読めない。谷の中なら少なくともヤブを漕ぐ必要は少ないだろうし登り
もないだろう。ほとんど滝もないおとなしい谷だということがわかっているなら、谷を下りる方がリスクが少な
い。ずいぶん遠まわりになるので、歩く距離だけが問題だ。なんせ、スタートから山頂までの距離の3倍近くを残
しているのである。
ヒノキの奇木・怪木を愛でる余裕もなく、ひたすら鍋又山の山頂を目指す。地図で見るとすぐそこなのだが、
なかなか近づかないのがもどかしい。
支尾根とのジャンクションまで来ると、鍋又山の尖峰が姿を現わした。東面は岩の鎧をまとっている。
この先からしばらく突然のように明瞭な踏み跡となって、最後の急登で楽をさせてもらった。
傾斜がなくなると潅木のヤブを体で押し広げたところが、小さく刈り込まれた鍋又山、三角点名「下髪」の山頂
だった。標識のひとつもない清々しい山頂である。
潅木の背が低いので、間近に屏風山、その向こうには石徹白の山々と白山を望むことができた。
去年の秋、伊勢峠からヒノキの巨木探訪で歩いた尾根から見た、今度はあっちだと決めた鍋又山に今立ってい
ると思うと感慨深い。
狭い山頂は日陰もなく暑いのでランチには不向きだ。少し戻ってヒノキの木陰のある開けた場所でランチタイ
ムとしよう。
いつものように長いランチタイムが取れず、下山ルートが長いのでsatoさんはビールを控えた。
私は飲まないわけにいかないので、暑さと疲れで食欲が湧かないこともあり、カロリー補給を兼ねてビールを流
し込む。若谷を下って林道に出合うまで3時間あれば下れるだろうか。少なくとも暗くなる前に林道に達すること
ができればOKだ。
短かめのランチタイムを終えて出発。ジャンクションとの鞍部から若谷源頭へ飛び込んだ。
歩いてみなければわからないもので、鍋又谷の源頭はまったく雰囲気が違う密度の薄いササヤブが広がる普通の
急斜面が続いていた。谷の形はなかなか現れず、水も流れていない。これは助かった。
結局300mほど下るまで谷らしい地形は現れなかった。おかげでペースも上がり、順調に下ることができた。
ようやく水が流れ出したと思ったら、これも鍋又谷とは大違いの広々とした谷底に深い森が続いていた。
サワグルミ、トチ、カツラ、ミズナラのそこそこ大きな木に包まれた森は素晴らしく、鍋又谷よりも自分的には
好みの林相だ。「越の谷」には何もない谷と書かれていたが、「何もない」ということの捉え方が人によって変
わってくるのだろう。滝やゴルジュがなくてもこんなに美しい森とやさしい流れがあれば十分だ。
分かれた幹が上部でドッキングして窓のようになったトチの巨木やカツラの巨樹は見応えがあった。
秋に来れば赤と黄に染まって、さぞ美しい風景を楽しめるに違いない。
谷には大部分踏み跡が続いており、水の中を歩く場面はほとんど無くて済んだのも助かった。
もちろん時間に余裕があれば、流れに足を浸して楽しみたいところだが、今は日没までの戦いである。
2か所ほどゴルジュと滝場があるが、比較的楽に巻いて通過することができる。数少ない滝場をじっくり味わえ
ないのが少し残念ではあるが。
最後に大堰堤にぶつかり、垂直のアングルハシゴの上り下りとなった。下りは何段かに分かれてはいるものの、
トータルでは結構な高さのハシゴ下りだ。
蝿帽子川の林道に出るとホッとひと息。ここまで来れば安全圏である。とは言え、まだ5キロほどの林道歩きが
残っている。
左足の渓流シューズはもうバラバラで、中底の上のインナーソールが踵から飛び出している。
暮れなずむ林道の向こうにダム湖のバックウォーターが広がり、一日の最後の残照が湖面を照らしていた。
オレンジのような紫のような微妙な光の輝きが美しい。
やがて夜の帳が降りて、ヘッデンの光の先に愛車の姿を捉えるまでにはまだしばらく時間がかかった。
山日和
【山 域】奥越 鍋又山周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】蝿帽子林道入口7:15---9:15 750m二俣---12:50稜線---13:30鍋又山---13:45若谷下降点手前14:15
---16:40 623m標高点---17:35蝿帽子林道17:55---19:10駐車地
笹生川ダムから伊勢峠への道を何の気なしに走っていたら、道が川からどんどん高く離れていってしまった。
どうやら林道の入口を見落としたようだ。Uターンして今来た道を戻って行くと、わかりやすい橋が林道の入口
を示していた。笹生川の対岸へ渡る唯一の橋を見落とすとは情けない限りである。
橋を渡って右折すぐのところに駐車。この林道は笹生川ダムのバックウォーターに沿って、水戸天狗党で有名
な蝿帽子峠へと続いている。橋の左には地図にない林道があり、鍋又谷へと誘ってくれた。
林道の終点から入渓。しばらくの間はまったくの平流が続いて変化はないが、予想外に植林が入っておらず、
自然林の中を流れる穏やかな渓相は悪くはない。
ちょっと越戸谷川や野々小屋谷の序盤を思い起こすような雰囲気だ。
30分ほど歩いてようやく初めての滝と対面するが、4m程度の小さなものだ。釜が大きく深いので巻いて越える。
次に現れた2段7mの滝は造形が面白い。1段目を上がって2段目は登れないことはなさそうだがフルシャワー必至。
水が冷たいので左から巻き上がると、よく踏まれた杣道があった。
両方にナメ滝のかかる600m二俣は左が本流だが、谷床の高い右の支流の方が魅力的に見える。
鍋又谷は階段状の滝が多く、直登が楽しいのだがヌメりが強いので気を遣う。タワシを駆使してヌメりをこそげ
落としながらの登攀だ。8m滝では初めてロープを使った。
ここで左足に違和感を覚えた。足元を見ると、なんとソールが剥がれてブラブラしているではないか。それも
フェルトソールが剥がれたのではなく、中底が靴の本体から外れてしまっている。
どうしようもないのでチェーンスパイクを履いて固定すればなんとかなりそうである。
左足はこれ以降、下山までチェーンスパイクを履きっぱなしで歩くことになってしまった。
一見手の出せそうもない8m直瀑は左側の岩の奥に隠れたルートがあり、バンドを伝って上がる。
750mの二俣は山頂に近い右俣を選択する。ここまで2時間。まずまずのペースである。
遅くとも昼までには山頂に立てるだろうと、この時は思っていた。
いくつかの小滝を快適に直登した後の6m滝はヌメりが強く、一見登れそうだが自信が持てずに少し下ってから
右岸を巻いたのだが、これが意外に大高巻きとなった。
巻きの途中から先ほどの滝の落ち口を見ると、さらにその上に大きなツルツルのナメ滝が続いていた。あの滝を
登ったところで結局は巻かざるを得なかっただろう。
最初に巻き始めた時、ハチのような黄色い虫の攻撃を受けて一旦退却。それからもう一度直登できるか窺ったり、
巻きルートの吟味に時間がかかって、結局この巻きだけで30分以上を費やしてしまう。
流れは細くなったがこの上にも急なナメ滝が連続して気が抜けない。
源流に近づくと傾斜が増して来た。ここまで荒れの少ないスッキリした渓相で、この谷は水害を逃れたのかと思
っていたら、上流は倒木と土石流跡のオンパレードである。5m以上はありそうなミズナラが谷をふさいでいたの
には驚かされた。
岩盤が発達しているので、荒れていなければ快適な遡行を楽しめただろうが、鍋又谷も例外ではなかった。
水が切れると谷芯を歩きづらくなってきたので小尾根に逃げた。
このあたりはシャクナゲが多く、下手なルート取りをしてしまうとシャクナゲジャングルに絡めとられてしまうの
で、弱点を突くようにルートを選ぶことが必要だ。稜線まではもうすぐと思ってからずいぶん時間が経っている。
予定より1時間以上遅れてようやくヒノキの巨木が並ぶ稜線に到達した。
この時点では予定していた長い若谷ルートをあきらめて、鍋又谷の出合に延びる尾根を下山しようという気にな
っていた。しかし尾根上の踏み跡の状態を見て、それが大きな間違いだということに気が付いた。
確かに薄い踏み跡は続いているが、障害物が多いのでスピードが上がらない。両手両足を駆使して跨いだりかが
んだり押し分けたりで、まったく時間が読めない。谷の中なら少なくともヤブを漕ぐ必要は少ないだろうし登り
もないだろう。ほとんど滝もないおとなしい谷だということがわかっているなら、谷を下りる方がリスクが少な
い。ずいぶん遠まわりになるので、歩く距離だけが問題だ。なんせ、スタートから山頂までの距離の3倍近くを残
しているのである。
ヒノキの奇木・怪木を愛でる余裕もなく、ひたすら鍋又山の山頂を目指す。地図で見るとすぐそこなのだが、
なかなか近づかないのがもどかしい。
支尾根とのジャンクションまで来ると、鍋又山の尖峰が姿を現わした。東面は岩の鎧をまとっている。
この先からしばらく突然のように明瞭な踏み跡となって、最後の急登で楽をさせてもらった。
傾斜がなくなると潅木のヤブを体で押し広げたところが、小さく刈り込まれた鍋又山、三角点名「下髪」の山頂
だった。標識のひとつもない清々しい山頂である。
潅木の背が低いので、間近に屏風山、その向こうには石徹白の山々と白山を望むことができた。
去年の秋、伊勢峠からヒノキの巨木探訪で歩いた尾根から見た、今度はあっちだと決めた鍋又山に今立ってい
ると思うと感慨深い。
狭い山頂は日陰もなく暑いのでランチには不向きだ。少し戻ってヒノキの木陰のある開けた場所でランチタイ
ムとしよう。
いつものように長いランチタイムが取れず、下山ルートが長いのでsatoさんはビールを控えた。
私は飲まないわけにいかないので、暑さと疲れで食欲が湧かないこともあり、カロリー補給を兼ねてビールを流
し込む。若谷を下って林道に出合うまで3時間あれば下れるだろうか。少なくとも暗くなる前に林道に達すること
ができればOKだ。
短かめのランチタイムを終えて出発。ジャンクションとの鞍部から若谷源頭へ飛び込んだ。
歩いてみなければわからないもので、鍋又谷の源頭はまったく雰囲気が違う密度の薄いササヤブが広がる普通の
急斜面が続いていた。谷の形はなかなか現れず、水も流れていない。これは助かった。
結局300mほど下るまで谷らしい地形は現れなかった。おかげでペースも上がり、順調に下ることができた。
ようやく水が流れ出したと思ったら、これも鍋又谷とは大違いの広々とした谷底に深い森が続いていた。
サワグルミ、トチ、カツラ、ミズナラのそこそこ大きな木に包まれた森は素晴らしく、鍋又谷よりも自分的には
好みの林相だ。「越の谷」には何もない谷と書かれていたが、「何もない」ということの捉え方が人によって変
わってくるのだろう。滝やゴルジュがなくてもこんなに美しい森とやさしい流れがあれば十分だ。
分かれた幹が上部でドッキングして窓のようになったトチの巨木やカツラの巨樹は見応えがあった。
秋に来れば赤と黄に染まって、さぞ美しい風景を楽しめるに違いない。
谷には大部分踏み跡が続いており、水の中を歩く場面はほとんど無くて済んだのも助かった。
もちろん時間に余裕があれば、流れに足を浸して楽しみたいところだが、今は日没までの戦いである。
2か所ほどゴルジュと滝場があるが、比較的楽に巻いて通過することができる。数少ない滝場をじっくり味わえ
ないのが少し残念ではあるが。
最後に大堰堤にぶつかり、垂直のアングルハシゴの上り下りとなった。下りは何段かに分かれてはいるものの、
トータルでは結構な高さのハシゴ下りだ。
蝿帽子川の林道に出るとホッとひと息。ここまで来れば安全圏である。とは言え、まだ5キロほどの林道歩きが
残っている。
左足の渓流シューズはもうバラバラで、中底の上のインナーソールが踵から飛び出している。
暮れなずむ林道の向こうにダム湖のバックウォーターが広がり、一日の最後の残照が湖面を照らしていた。
オレンジのような紫のような微妙な光の輝きが美しい。
やがて夜の帳が降りて、ヘッデンの光の先に愛車の姿を捉えるまでにはまだしばらく時間がかかった。
山日和