【奥越・加越国境】4連休の沢2題 猿塚と大長山へ
Posted: 2020年9月28日(月) 21:32
【日 付】2020年9月20日(日)
【山 域】奥越 平家岳周辺
【天 候】晴れ
【コース】日ノ谷林道入口8:25---8:55支流出合---11:45猿塚13:45---15:25日ノ谷林道---16:15駐車地
猿塚。この奇妙な名前の山は、九頭竜湖の南、平家岳の北に位置する三角点の点名である。
おそらく12年に一度、干支の山として注目されるのが関の山だろうが、道はなく、一般的にはその存在すら知
られていないかもしれない。
久沢川の日ノ谷は、17年前に遡行して平家岳へ詰め上がった。その日ノ谷の左岸支流から猿塚を目指す。
林道ではアケボノソウが盛りを迎えていた。
出合に立つと、少し奥にきれいな滝が見えて期待を持たせる。10m程度の滝だが、この谷最大にして、唯一
の滝らしい滝だった。左から巻き上がると平流が続いた。
時折ナメ床や小滝が現われる程度の平凡な谷だが、サワグルミとトチを主体とした林相は美しく、この森に出
会えただけでも訪れた甲斐があるというものだ。
苔むした岩と深い樹林、清冽な流れのコンビネーションは絶妙で、滝がなくても十分に心を満たしてくれる
景観である。
全体的に緩やかな谷なのだが、源流部に入ると一段と傾斜が緩む。どんな景色が待っているのだろうという
期待を打ち砕く現実が目の前に現れた。至るところで大きな木が倒れて、谷を埋めるように横たわっている。
沢床はナメがさらさらと流れていた。この倒木がなければどんなに美しい源流だっただろう。
山頂に向かう源頭部は幸い無事で、ヤブ無しのまま猿塚山頂に到着。三角点の標石があるだけで、標識の類
は一切ない清々しい山頂である。切り開かれていはいるものの林相はイマイチなので、東側のブナ林でランチ
タイムとした。
下山は北への尾根から途中で東に針路を変え、その後ははっきりしない尾根を辿って、入渓点の上流に着地
する予定だ。
GPSで現在地を確認しながらルートを探る。目を瞠るようなヒノキの巨木帯や瑞々しいブナ林、トチの巨木が
見守る癒しのコバ等々、退屈しないが気も抜けない下山路である。
最後は日ノ谷が北から西へ方向を変えるあたりの林道に着地。(地形図には載っていないが、二俣近くまで林
道が延びている)
日ノ谷本流は、林道がなければさぞやと思わせる美しい渓流が続く。林道も殺伐とした雰囲気はなく、左岸
の斜面から落ちる苔むした滝と豊かな樹林の景観で、飽きることがない楽しい時間だった。
山日和
【日 付】2020年9月21日(月)
【山 域】加越国境 大長山周辺
【天 候】晴れ
【コース】小倉谷出合7:15---8:15 15m滝上---10:20 30m滝上---12:35大長山13:55---14:55小原峠15:15---
15:55林道終点---16:15駐車地
プチ遠征2日目。福井県から石川県へ移動して、大長山を目指す。
白峰から市ノ瀬へ向かう登山者の99%は白山が目的だろう。残り1%が別山か。こちらは市ノ瀬の手前から三ツ
谷の林道に入る。
地形図には名前が無く、エアリアマップでは大長谷と記されている谷が小倉谷である。
下山路として予定している小原峠からの越前禅定道は、見事なブナ林が広がっている。そのことからして、沢
として面白いかどうかは別にして、昨日同様の豊潤な樹林の下の遡行を楽しめるのではと思ったのだ。
堰堤を二つ越えて入渓する。谷にはダイモンジソウが満開で、源流近くまで目を楽しませてくれた。
唐突に前方が開けたと思うと、ワイドな大岩壁から15m滝が落ちていた。素晴らしい景観だ。右手のルンゼを
上がって落ち口へのトラバースルートを探る。中途半端な高さでトラバースを開始すると岩壁にぶち当たって
しまう。うまくラインを見つけて、ドンピシャで落ち口に出ることができた。
滝の上流は、ところどころに小さな落差はあるものの、概ね平凡な流れが続く。
少し退屈しかけたところで、前方のはるか高みに水流が見えた。あれが30mの大滝か。
近付いてみると、先ほどの15m滝をはるかに凌ぐ、迫力満点の滝が天から降り注ぐように水を落としている。
この滝も岩壁が発達して、近くを巻くことができない。右にバックするように小尾根に乗り、ジリジリと高度
を上げる。こちらも落ち口へのライン取りがカギを握っている。もうそろそろと思ったところでトラバースを
開始したが、落ち口はまだ目の上にあった。
さらに登ってササの繁る急斜面を、ヤブを漕ぎながらのトラバース。高度計では滝の下から50m近く上がってい
る。なんとか落ち口の少し上に着水してホッとひと息である。
それにしても、谷筋は一度伐採を受けたのか、想像していた豊かな樹林はカケラも見えなかった。あの二つの
大滝だけがこの谷の見どころだろうか。
残る興味は加越国境稜線へのツメだ。そう思っていると、流れにヤブが被さり、典型的なヤブ沢になってしま
った。ヤブを潜りながら源頭部へ突入。このあたりはヤブがなくなったのでまだマシだ。
このまま稜線までと期待したが、そんなに甘いはずはない。水流が消えると猛烈なネマガリの笹ヤブとなる。
グングンと傾斜が増して、斜度は40度を超えているだろう。ササを掴んで腕力だけで体を引き上げる激闘が続く。
腕に力が入らなくなり、だんだん嫌気がさしてきたが、とにかく登るしかない。
やっとの思いで稜線に到達。登山道が高速道路に見えた。目の前の大長山まであとひと息。
それほど不人気の山ではないはずだが、4連休の好天の日にも関わらず、誰もいなかった。
目の前にドーンと迫るはずの白山は雲の中。別山、三ノ峰の山頂部も隠れている。どうやら2000m付近で雲が発
生しているようだ。2000m以下の二ノ峰から続く山々はハッキリと見えた。
願教寺山から日岸、薙刀、野伏、小白山、枇杷倉に続く稜線。特徴的な三角錐の屏風、能郷白山、荒島、経ヶ岳、
越前甲方面と、展望は全開である。
小原峠への稜線はアップダウンが多く、疲れた足には辛いものがある。
越前禅定道の要所である小原峠は、ブナ林に包まれた素晴らしい雰囲気の場所だ。峠から30mほど石川県側に下
りたところに地蔵堂がある。勝山の平泉寺からこの峠を越えて白山に向かった人々を見守ってきたお地蔵さんは、
実にやさしい顔をしていた。
廃道と化していた越前禅定道は、10数年前に整備され復活した。この道も見事なブナ林に包まれている。
何度も見上げ、振り返りながら、三ツ谷への古道を辿った。
山日和
【山 域】奥越 平家岳周辺
【天 候】晴れ
【コース】日ノ谷林道入口8:25---8:55支流出合---11:45猿塚13:45---15:25日ノ谷林道---16:15駐車地
猿塚。この奇妙な名前の山は、九頭竜湖の南、平家岳の北に位置する三角点の点名である。
おそらく12年に一度、干支の山として注目されるのが関の山だろうが、道はなく、一般的にはその存在すら知
られていないかもしれない。
久沢川の日ノ谷は、17年前に遡行して平家岳へ詰め上がった。その日ノ谷の左岸支流から猿塚を目指す。
林道ではアケボノソウが盛りを迎えていた。
出合に立つと、少し奥にきれいな滝が見えて期待を持たせる。10m程度の滝だが、この谷最大にして、唯一
の滝らしい滝だった。左から巻き上がると平流が続いた。
時折ナメ床や小滝が現われる程度の平凡な谷だが、サワグルミとトチを主体とした林相は美しく、この森に出
会えただけでも訪れた甲斐があるというものだ。
苔むした岩と深い樹林、清冽な流れのコンビネーションは絶妙で、滝がなくても十分に心を満たしてくれる
景観である。
全体的に緩やかな谷なのだが、源流部に入ると一段と傾斜が緩む。どんな景色が待っているのだろうという
期待を打ち砕く現実が目の前に現れた。至るところで大きな木が倒れて、谷を埋めるように横たわっている。
沢床はナメがさらさらと流れていた。この倒木がなければどんなに美しい源流だっただろう。
山頂に向かう源頭部は幸い無事で、ヤブ無しのまま猿塚山頂に到着。三角点の標石があるだけで、標識の類
は一切ない清々しい山頂である。切り開かれていはいるものの林相はイマイチなので、東側のブナ林でランチ
タイムとした。
下山は北への尾根から途中で東に針路を変え、その後ははっきりしない尾根を辿って、入渓点の上流に着地
する予定だ。
GPSで現在地を確認しながらルートを探る。目を瞠るようなヒノキの巨木帯や瑞々しいブナ林、トチの巨木が
見守る癒しのコバ等々、退屈しないが気も抜けない下山路である。
最後は日ノ谷が北から西へ方向を変えるあたりの林道に着地。(地形図には載っていないが、二俣近くまで林
道が延びている)
日ノ谷本流は、林道がなければさぞやと思わせる美しい渓流が続く。林道も殺伐とした雰囲気はなく、左岸
の斜面から落ちる苔むした滝と豊かな樹林の景観で、飽きることがない楽しい時間だった。
山日和
【日 付】2020年9月21日(月)
【山 域】加越国境 大長山周辺
【天 候】晴れ
【コース】小倉谷出合7:15---8:15 15m滝上---10:20 30m滝上---12:35大長山13:55---14:55小原峠15:15---
15:55林道終点---16:15駐車地
プチ遠征2日目。福井県から石川県へ移動して、大長山を目指す。
白峰から市ノ瀬へ向かう登山者の99%は白山が目的だろう。残り1%が別山か。こちらは市ノ瀬の手前から三ツ
谷の林道に入る。
地形図には名前が無く、エアリアマップでは大長谷と記されている谷が小倉谷である。
下山路として予定している小原峠からの越前禅定道は、見事なブナ林が広がっている。そのことからして、沢
として面白いかどうかは別にして、昨日同様の豊潤な樹林の下の遡行を楽しめるのではと思ったのだ。
堰堤を二つ越えて入渓する。谷にはダイモンジソウが満開で、源流近くまで目を楽しませてくれた。
唐突に前方が開けたと思うと、ワイドな大岩壁から15m滝が落ちていた。素晴らしい景観だ。右手のルンゼを
上がって落ち口へのトラバースルートを探る。中途半端な高さでトラバースを開始すると岩壁にぶち当たって
しまう。うまくラインを見つけて、ドンピシャで落ち口に出ることができた。
滝の上流は、ところどころに小さな落差はあるものの、概ね平凡な流れが続く。
少し退屈しかけたところで、前方のはるか高みに水流が見えた。あれが30mの大滝か。
近付いてみると、先ほどの15m滝をはるかに凌ぐ、迫力満点の滝が天から降り注ぐように水を落としている。
この滝も岩壁が発達して、近くを巻くことができない。右にバックするように小尾根に乗り、ジリジリと高度
を上げる。こちらも落ち口へのライン取りがカギを握っている。もうそろそろと思ったところでトラバースを
開始したが、落ち口はまだ目の上にあった。
さらに登ってササの繁る急斜面を、ヤブを漕ぎながらのトラバース。高度計では滝の下から50m近く上がってい
る。なんとか落ち口の少し上に着水してホッとひと息である。
それにしても、谷筋は一度伐採を受けたのか、想像していた豊かな樹林はカケラも見えなかった。あの二つの
大滝だけがこの谷の見どころだろうか。
残る興味は加越国境稜線へのツメだ。そう思っていると、流れにヤブが被さり、典型的なヤブ沢になってしま
った。ヤブを潜りながら源頭部へ突入。このあたりはヤブがなくなったのでまだマシだ。
このまま稜線までと期待したが、そんなに甘いはずはない。水流が消えると猛烈なネマガリの笹ヤブとなる。
グングンと傾斜が増して、斜度は40度を超えているだろう。ササを掴んで腕力だけで体を引き上げる激闘が続く。
腕に力が入らなくなり、だんだん嫌気がさしてきたが、とにかく登るしかない。
やっとの思いで稜線に到達。登山道が高速道路に見えた。目の前の大長山まであとひと息。
それほど不人気の山ではないはずだが、4連休の好天の日にも関わらず、誰もいなかった。
目の前にドーンと迫るはずの白山は雲の中。別山、三ノ峰の山頂部も隠れている。どうやら2000m付近で雲が発
生しているようだ。2000m以下の二ノ峰から続く山々はハッキリと見えた。
願教寺山から日岸、薙刀、野伏、小白山、枇杷倉に続く稜線。特徴的な三角錐の屏風、能郷白山、荒島、経ヶ岳、
越前甲方面と、展望は全開である。
小原峠への稜線はアップダウンが多く、疲れた足には辛いものがある。
越前禅定道の要所である小原峠は、ブナ林に包まれた素晴らしい雰囲気の場所だ。峠から30mほど石川県側に下
りたところに地蔵堂がある。勝山の平泉寺からこの峠を越えて白山に向かった人々を見守ってきたお地蔵さんは、
実にやさしい顔をしていた。
廃道と化していた越前禅定道は、10数年前に整備され復活した。この道も見事なブナ林に包まれている。
何度も見上げ、振り返りながら、三ツ谷への古道を辿った。
山日和