【湖北】起し又川から江美国境稜線へ
Posted: 2020年7月22日(水) 21:25
【日 付】2020年7月19日(日)
【山 域】湖北 江美国境稜線P1187m周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】起し又川堰堤前駐車地7:30---8:20五色の滝---11:50炭焼窯跡ランチ場13:05---13:25 P1187m---
14:10 Ca1130mピーク---15:45連瀑帯終了---17:30駐車地
姉川沿いの県道を走っている時から、「ずいぶん水量が多いな」とは思っていたが、谷へ入ってもその印象は同じだっ
た。
姉川支流の起し又川に入るのは2度目。12年前に訪れた時は、とんだ勘違いでお茶を濁す結果に終わってしまった。
今日はきっちり遡行して、江美国境稜線へ抜けようと思っていたが、あまりにも水量が多い。出だしのゴルジュは水の中
に入る気がせず、沢沿いの登山道を歩く。
ここにはかつて石臼の加工場があり、切り出した石器時代の貨幣のような円盤状の石が転がっているのが面白い。
登山道から見る滝は凄い迫力だ。水が少ない谷は躍動感に欠けるものだが、これはちょっと躍動し過ぎである。
登山道の終点は名所にもなっている五色の滝だ。谷幅一杯に落ちるナメ滝は傾斜が緩く、普段なら簡単に直登できると
ころだが、今日はバス。左岸の巻き道で落ち口に出た。
ナメを過ぎると平流となる。驚いたことに、こんな山中にも石垣を組んだ田畑の跡がある。谷の入口の左岸側にも広大
な面積の田畑の跡が残されていた。曲谷の集落からはかなり距離があるのだが、ここまで来るだけでも大変な労力だった
だろう。
インゼルを挟んだちょっと不思議な二俣を右に取る。ここからは長大なナメが延々と続く。平水であれば花崗岩の白い
滑床を、気持ちよくヒタヒタと歩く場面だろうが、これだけ水量が多いと気楽に歩くこともできない。しかし、下流部に
比べれば難儀するほどの水量でもなく、生き生きと躍動する水流を楽しむ余裕がある。
部分的に伐採跡のヤブっぽい場面も出てくるが、概ねすっきりした沢歩きを楽しむことができる。
滝は10m以下の小滝ばかり。それも傾斜の緩い斜瀑なので圧迫感はない。
トチとサワグルミの森は予想以上に美しく、ヤブ沢かもしれないという予感はうれしい方に外れてくれた。
今日は久しぶりの青空だ。稜線に出てしまうと日陰がなく、のんびりランチできないかもしれない。食後に登りを残す
のは辛いが、源頭に近いところに炭焼窯跡のもってこいのランチ場を見つけたのでザックを降ろした。
稜線までは標高差100mばかりである。飲酒運転?でも大丈夫だろう。
下界では真夏日のはずだが、緑陰の炭焼窯跡は涼しい別世界だ。下山に要する時間が読めないので、早めに切り上げよう。
一応、歩く尾根の目星は付けたものの、歩けるかどうかは行ってみなければわからない。谷を下降することも想定に入れ
ている。
標高1050mを超えるとさすがに谷は細くなってきたが、稜線まで標高差100m足らずのところでもまだ水流が切れない。
花崗岩のザレたような溝状の流れは、超ミニサイズの釜と落差が連続する面白い景観を作り出していた。
源流の最初の一滴は、木の根のしたから流れ出していた。前方にはもう稜線が間近に見えている。
笹ヤブを避けて樹林帯へ回り込みながら、江美国境稜線に到達。例のなんの興趣もない不愛想な刈り開きが稜線を切り
裂いている。1187mピークも笹の中の単なる通過点である。わずかに開けた限られた展望の中に、伊吹や虎子の姿が認め
られた。
それにしても、さっきの場所で食べておいて良かったと思う。座ってしまえば展望もなく、日陰にもならない笹の中では
ビールもメシも美味くないというものである。
国境稜線を南下して行くと、道は西側斜面を巻くように付けられており、意外なことに笹ヤブではなく樹林帯の中を進
むようになった。ここは昔から踏み跡があったのではないかと思えるような、自然に踏み固められた道ができていた。
木の切り口を見ても、あまり新しいものではなさそうだ。ともあれ、ジリジリと太陽に焼かれるのを覚悟していたところ、
日陰を快適に歩けるのはうれしい誤算だ。特に1187mピーク南の鞍部は、遡行してきた谷の支流の源流がすぐ横にあり、
自然林のすっきりとした佇まいが素晴らしい。この潤いに乏しい稜線直下で水を得られるというのは想像もしなかったこ
とだ。
目星を付けていた尾根の分岐は笹の海だった。強引に体をねじ込んで進む。少し先には背の高い木が見えている。
あそこまで行けば少しは楽になるだろう。その通り、そこからは大したヤブもなく、これなら楽勝と思ったが、GPSで確
認すると尾根を1本外していた。少し戻って正しい尾根の方向を見ると、かなり密度の濃い笹の海が広がっている。
次善の策として考えていた谷下りに方針変更だ。登って来た谷から考えれば、それほど難儀する場面はないだろう。
しかし、それはちょっと甘い考えだった。
10m以上の滝が次々に現れ、懸垂下降の支点になる木もない。幸い、左右どちらかにノーロープで辛うじて下りられる
斜面があったので、なんとか切り抜けることができた。ロープは持っているものの20mが1本だけ。最悪は尾根に登り返
すつもりをしていたが、やはり谷を下るには備えが足りない。
考えようによっては、懸垂の支点が無くてよかったかもしれない。懸垂でしか下りられないところでロープを抜いてしま
い、その先に下降も巻きも不可能な場所に出くわせば万事休すである。
シビアな下降を繰り返して、やっと平流地帯に到達したと思えば、今度は流れの上にヤブが被さるヤブ沢状態で心が折
れそうになる。
ようやく右岸側に踏み跡が現われた。もう満腹だ。いつもならモチベーションが下がる植林帯がありがたい。杣道が必
ずあるからだ。
左岸に渡り返すと、朝の広大な田畑跡の続きに出た。
何も考えずに足を動かせば前進できるというのは、こんなに楽なことなのかと実感させられた一日のエピローグだった。
山日和
【山 域】湖北 江美国境稜線P1187m周辺
【天 候】晴れ
【メンバー】sato、山日和
【コース】起し又川堰堤前駐車地7:30---8:20五色の滝---11:50炭焼窯跡ランチ場13:05---13:25 P1187m---
14:10 Ca1130mピーク---15:45連瀑帯終了---17:30駐車地
姉川沿いの県道を走っている時から、「ずいぶん水量が多いな」とは思っていたが、谷へ入ってもその印象は同じだっ
た。
姉川支流の起し又川に入るのは2度目。12年前に訪れた時は、とんだ勘違いでお茶を濁す結果に終わってしまった。
今日はきっちり遡行して、江美国境稜線へ抜けようと思っていたが、あまりにも水量が多い。出だしのゴルジュは水の中
に入る気がせず、沢沿いの登山道を歩く。
ここにはかつて石臼の加工場があり、切り出した石器時代の貨幣のような円盤状の石が転がっているのが面白い。
登山道から見る滝は凄い迫力だ。水が少ない谷は躍動感に欠けるものだが、これはちょっと躍動し過ぎである。
登山道の終点は名所にもなっている五色の滝だ。谷幅一杯に落ちるナメ滝は傾斜が緩く、普段なら簡単に直登できると
ころだが、今日はバス。左岸の巻き道で落ち口に出た。
ナメを過ぎると平流となる。驚いたことに、こんな山中にも石垣を組んだ田畑の跡がある。谷の入口の左岸側にも広大
な面積の田畑の跡が残されていた。曲谷の集落からはかなり距離があるのだが、ここまで来るだけでも大変な労力だった
だろう。
インゼルを挟んだちょっと不思議な二俣を右に取る。ここからは長大なナメが延々と続く。平水であれば花崗岩の白い
滑床を、気持ちよくヒタヒタと歩く場面だろうが、これだけ水量が多いと気楽に歩くこともできない。しかし、下流部に
比べれば難儀するほどの水量でもなく、生き生きと躍動する水流を楽しむ余裕がある。
部分的に伐採跡のヤブっぽい場面も出てくるが、概ねすっきりした沢歩きを楽しむことができる。
滝は10m以下の小滝ばかり。それも傾斜の緩い斜瀑なので圧迫感はない。
トチとサワグルミの森は予想以上に美しく、ヤブ沢かもしれないという予感はうれしい方に外れてくれた。
今日は久しぶりの青空だ。稜線に出てしまうと日陰がなく、のんびりランチできないかもしれない。食後に登りを残す
のは辛いが、源頭に近いところに炭焼窯跡のもってこいのランチ場を見つけたのでザックを降ろした。
稜線までは標高差100mばかりである。飲酒運転?でも大丈夫だろう。
下界では真夏日のはずだが、緑陰の炭焼窯跡は涼しい別世界だ。下山に要する時間が読めないので、早めに切り上げよう。
一応、歩く尾根の目星は付けたものの、歩けるかどうかは行ってみなければわからない。谷を下降することも想定に入れ
ている。
標高1050mを超えるとさすがに谷は細くなってきたが、稜線まで標高差100m足らずのところでもまだ水流が切れない。
花崗岩のザレたような溝状の流れは、超ミニサイズの釜と落差が連続する面白い景観を作り出していた。
源流の最初の一滴は、木の根のしたから流れ出していた。前方にはもう稜線が間近に見えている。
笹ヤブを避けて樹林帯へ回り込みながら、江美国境稜線に到達。例のなんの興趣もない不愛想な刈り開きが稜線を切り
裂いている。1187mピークも笹の中の単なる通過点である。わずかに開けた限られた展望の中に、伊吹や虎子の姿が認め
られた。
それにしても、さっきの場所で食べておいて良かったと思う。座ってしまえば展望もなく、日陰にもならない笹の中では
ビールもメシも美味くないというものである。
国境稜線を南下して行くと、道は西側斜面を巻くように付けられており、意外なことに笹ヤブではなく樹林帯の中を進
むようになった。ここは昔から踏み跡があったのではないかと思えるような、自然に踏み固められた道ができていた。
木の切り口を見ても、あまり新しいものではなさそうだ。ともあれ、ジリジリと太陽に焼かれるのを覚悟していたところ、
日陰を快適に歩けるのはうれしい誤算だ。特に1187mピーク南の鞍部は、遡行してきた谷の支流の源流がすぐ横にあり、
自然林のすっきりとした佇まいが素晴らしい。この潤いに乏しい稜線直下で水を得られるというのは想像もしなかったこ
とだ。
目星を付けていた尾根の分岐は笹の海だった。強引に体をねじ込んで進む。少し先には背の高い木が見えている。
あそこまで行けば少しは楽になるだろう。その通り、そこからは大したヤブもなく、これなら楽勝と思ったが、GPSで確
認すると尾根を1本外していた。少し戻って正しい尾根の方向を見ると、かなり密度の濃い笹の海が広がっている。
次善の策として考えていた谷下りに方針変更だ。登って来た谷から考えれば、それほど難儀する場面はないだろう。
しかし、それはちょっと甘い考えだった。
10m以上の滝が次々に現れ、懸垂下降の支点になる木もない。幸い、左右どちらかにノーロープで辛うじて下りられる
斜面があったので、なんとか切り抜けることができた。ロープは持っているものの20mが1本だけ。最悪は尾根に登り返
すつもりをしていたが、やはり谷を下るには備えが足りない。
考えようによっては、懸垂の支点が無くてよかったかもしれない。懸垂でしか下りられないところでロープを抜いてしま
い、その先に下降も巻きも不可能な場所に出くわせば万事休すである。
シビアな下降を繰り返して、やっと平流地帯に到達したと思えば、今度は流れの上にヤブが被さるヤブ沢状態で心が折
れそうになる。
ようやく右岸側に踏み跡が現われた。もう満腹だ。いつもならモチベーションが下がる植林帯がありがたい。杣道が必
ずあるからだ。
左岸に渡り返すと、朝の広大な田畑跡の続きに出た。
何も考えずに足を動かせば前進できるというのは、こんなに楽なことなのかと実感させられた一日のエピローグだった。
山日和