【鈴鹿】強風と雨とガスのテーブルランド
Posted: 2019年6月18日(火) 22:04
【日 付】2019年6月16日(日)
【山 域】鈴鹿 御池岳
【天 候】曇り時々雨 風強し
【メンバー】sato、山日和
【コース】御池橋9:10---10:10 P918m---10:45ブナ権現---11:15テーブルランド---11:45南峰下ランチ場13:00
---13:35丸山---14:30丸池---15:30ゴロ谷----16:10駐車地
天気予報をにらんで一番マシそうに思えて選んだはずだった。朝目が覚めて車の屋根を叩く無情の雨。夜半
には上がるはずだったのに話が違う。まあ東近江市の予報と言っても琵琶湖岸から鈴鹿の山中まで広大な範囲
をカバーできるはずはないのだが。
奥永源寺の道の駅で集合。雨が小止みになるのを待って御池林道へ向かう。
林道の土砂崩れや落石に土木工事をしながら御池橋に到着。出発する頃には雨は上がっていた。昼頃には青空
も拝めるはずだ。
それにしても風が強く寒い。ここでこの風ならテーブルランドの上はのんびりランチを楽しむどころではない
かもしれない。
当初は沢を歩くつもりだったが、こんなに寒いと水の中に入る気がしない。一応両方の用意をしてきたので
尾根通しのコースに切り替えた。
何度も歩いているT字尾根だから新鮮な発見があるはずもないが、途中から続くブナ林はやはりいい。
P918mに立つ大木(ハリマオさんによるとお母さんブナ)やブナ権現と呼ばれる小台地に広がるブナ林は霧に煙っ
て幻想的な雰囲気を漂わせている。木の幹を流れ落ちる雨水に手を触れると冷たいような温かいような、ブナ
の体温を感じるような気がした。
T字尾根は踏み跡明瞭・道標完備で、もうすっかり一般登山道になってしまった。テーブルランドから下る度
に尾根を外していたのも今は昔の感がある。
テーブルランドへの最後の登りに掛かると風は一層強さを増した。休憩して一服という気も起こらないので
一定のペースで足を進めて行く。尾根が形を失い急斜面に吸収されていくようになると、尾根芯を真っ直ぐ進
んでいた道はジクザクを切り始めた。石灰岩がゴロゴロと転がる斜面にフタリシズカの群落が現れて目を慰め
てくれる。
樹林が切れてテーブルランドに飛び出した。いきなり強風に襲われる覚悟をしていたのだが、拍子抜けする
ぐらいのそよ風が吹いていた。場所によって風の通り道になるところと穏やかなところに分かれているのだろ
う。これならランチ場も確保できそうである。
ホワイトアウト状態ならどっちへ進めばまったくわからない茫洋とした地形が広がるテーブルランドではあ
るが、100m先ぐらいまでは視界が利いているので助かった。
色彩のないモノトーンの世界は荒涼としたイメージにも思えるが、オオイタヤメイゲツの樹林、苔むした石灰
岩、そこここに点在する池やドリーネ、そして清楚なフタリシズカの群落と揃った道具立てがあれば、こんな
日の山歩きも退屈することはない。要は山を楽しむこころの持ちようなのだ。
歩き進むうちにまた風が強くなってきた。快適なランチ場を探してウロウロした末に南峰の手前の斜面で風
の陰を見つけて腰を降ろす。敷いたシートに茶色の物体がクネクネと動いていた。今シーズン初ヒルである。
satoさんがためらいもせずに指でつまんで放り投げた。ヒルにまったく動じない女性を見るのは初めてかもし
れない。
今日は6月半ばとは思えない寒さで、フリースかダウンが欲しいぐらいである。
ランチを温かい麺類にしてよかったと思う。
南峰から奥ノ平最高点へ向かうと今日一番の風に吹き付けられた。さすがに登山者の影は見えない。
人気の御池岳も今日は貸切りだろうか。
ここで再び大粒の雨が降り始めた。予定では青空の下を歩いているはずである。予想外の雨と風にフードを
深く被り直す。
ボタンブチから幸助の池に挨拶を済ませ、風池に寄り道して杣人さんにあんばんをお供えしようと思ってい
たのだが、強風に気を取られてそのまま丸山まで上がってしまった。いつも賑わう山頂にも誰もいない。
下山は「ゴロ1」と呼ばれる尾根を選んだ。ゴロ谷からテーブルランドへ突き上げる5本の尾根の中で一番下
流側のもの。ゴロ谷第一尾根というわけである。
勝手知ったるという感じで歩いて行くが、どうも様子がおかしい。目の前に登山道が出てきてしまった。
北西を向いて進んだつもりが北東へ歩いていたのだ。これはいかんと少し戻って進路修正。今度正しくP1182m
方向を目指したはずが、またもや先ほどと同じような場所に出てしまった。GPSの軌跡を見るとキレイに円を描
いている。これがリングワンデリングというヤツか。長い登山人生で初の体験である。
しばらく登山道を辿って適当なところからP1182m手前の丸池へ出ればいいと登山道を進み始めた。
途中でGPSを確認すると、なんとまた北東へ進んでいるではないか。地図上の登山道は実際の道とは異なってい
た。テーブルランドで登山道を歩くことはほとんどないので、登山道の付け方そのものが頭に入っていないのだ。
コンパスを見ていればすぐにわかるミスを3度も繰り返すとは情けない限りである。
今度はコンパスだけを見てひたすら南南西に針路を取り、難なく丸池に到着した。雨のおかげで水をたっぷり
と湛えて池らしい風情を醸し出している。霧の中から浮かび上がる丸い水面はまさに幽玄の世界だ。
モリアオガエルのとろろのような白い卵がこの梅雨の季節を感じさせる。
ここからの下りは地形図通り、テーブルランド西面でも最も等高線が詰まったところを落ちて行く。
ズルズルの斜面に備えてチェーンスパイクを装着。これが大正解だった。履いていなければ何度転倒したかわか
らないだろう。
石灰岩の浮石がゴロゴロと転がっている危険地帯を過ぎれば傾斜が緩み、尾根らしい形が現れて落ち着いて歩
けるようになる。それにしてもこんなところにまで炭焼窯跡があるのは驚きだ。運び出すのも並大抵の苦労では
ないだろう。
尾根の末端では再び急傾斜となり、岩壁の間にここを通れとばかりに開けられた急峻なルンゼ状を慎重に下っ
てゴロ谷へ着地した。水晶岳東尾根や急傾斜のこの尾根を喜々として歩くsatoさんは、やぶこぎメンバーの資質
を十二分に備えていると言っていいだろう。
ゴロ谷はたび重なる水害で目を覆うばかりに荒れ果てている。
御池川本流の出合から、何もない平凡な流れが蛇行しながら美しい樹林の下をゆったりと流れる様は大好きな景
色のひとつだった。これもまた自然の営みの一部だとは分かっていても、この現状を目の当たりにすれば残念と
しか言いようがない。
ここまで下りてきてようやく雲が切れ、空が明るくなってきた。時すでに遅しというところだが、車に戻った
時に降られるよりは格段にいい。
増水した谷は登山靴を濡らさずに渡ることは不可能だ。車まであと30分ほど。靴に浸水するのも委細構わず、
何度も渡渉を繰り返しながら今日の山を反芻した。御池橋はすぐそこだ。
山日和
【山 域】鈴鹿 御池岳
【天 候】曇り時々雨 風強し
【メンバー】sato、山日和
【コース】御池橋9:10---10:10 P918m---10:45ブナ権現---11:15テーブルランド---11:45南峰下ランチ場13:00
---13:35丸山---14:30丸池---15:30ゴロ谷----16:10駐車地
天気予報をにらんで一番マシそうに思えて選んだはずだった。朝目が覚めて車の屋根を叩く無情の雨。夜半
には上がるはずだったのに話が違う。まあ東近江市の予報と言っても琵琶湖岸から鈴鹿の山中まで広大な範囲
をカバーできるはずはないのだが。
奥永源寺の道の駅で集合。雨が小止みになるのを待って御池林道へ向かう。
林道の土砂崩れや落石に土木工事をしながら御池橋に到着。出発する頃には雨は上がっていた。昼頃には青空
も拝めるはずだ。
それにしても風が強く寒い。ここでこの風ならテーブルランドの上はのんびりランチを楽しむどころではない
かもしれない。
当初は沢を歩くつもりだったが、こんなに寒いと水の中に入る気がしない。一応両方の用意をしてきたので
尾根通しのコースに切り替えた。
何度も歩いているT字尾根だから新鮮な発見があるはずもないが、途中から続くブナ林はやはりいい。
P918mに立つ大木(ハリマオさんによるとお母さんブナ)やブナ権現と呼ばれる小台地に広がるブナ林は霧に煙っ
て幻想的な雰囲気を漂わせている。木の幹を流れ落ちる雨水に手を触れると冷たいような温かいような、ブナ
の体温を感じるような気がした。
T字尾根は踏み跡明瞭・道標完備で、もうすっかり一般登山道になってしまった。テーブルランドから下る度
に尾根を外していたのも今は昔の感がある。
テーブルランドへの最後の登りに掛かると風は一層強さを増した。休憩して一服という気も起こらないので
一定のペースで足を進めて行く。尾根が形を失い急斜面に吸収されていくようになると、尾根芯を真っ直ぐ進
んでいた道はジクザクを切り始めた。石灰岩がゴロゴロと転がる斜面にフタリシズカの群落が現れて目を慰め
てくれる。
樹林が切れてテーブルランドに飛び出した。いきなり強風に襲われる覚悟をしていたのだが、拍子抜けする
ぐらいのそよ風が吹いていた。場所によって風の通り道になるところと穏やかなところに分かれているのだろ
う。これならランチ場も確保できそうである。
ホワイトアウト状態ならどっちへ進めばまったくわからない茫洋とした地形が広がるテーブルランドではあ
るが、100m先ぐらいまでは視界が利いているので助かった。
色彩のないモノトーンの世界は荒涼としたイメージにも思えるが、オオイタヤメイゲツの樹林、苔むした石灰
岩、そこここに点在する池やドリーネ、そして清楚なフタリシズカの群落と揃った道具立てがあれば、こんな
日の山歩きも退屈することはない。要は山を楽しむこころの持ちようなのだ。
歩き進むうちにまた風が強くなってきた。快適なランチ場を探してウロウロした末に南峰の手前の斜面で風
の陰を見つけて腰を降ろす。敷いたシートに茶色の物体がクネクネと動いていた。今シーズン初ヒルである。
satoさんがためらいもせずに指でつまんで放り投げた。ヒルにまったく動じない女性を見るのは初めてかもし
れない。
今日は6月半ばとは思えない寒さで、フリースかダウンが欲しいぐらいである。
ランチを温かい麺類にしてよかったと思う。
南峰から奥ノ平最高点へ向かうと今日一番の風に吹き付けられた。さすがに登山者の影は見えない。
人気の御池岳も今日は貸切りだろうか。
ここで再び大粒の雨が降り始めた。予定では青空の下を歩いているはずである。予想外の雨と風にフードを
深く被り直す。
ボタンブチから幸助の池に挨拶を済ませ、風池に寄り道して杣人さんにあんばんをお供えしようと思ってい
たのだが、強風に気を取られてそのまま丸山まで上がってしまった。いつも賑わう山頂にも誰もいない。
下山は「ゴロ1」と呼ばれる尾根を選んだ。ゴロ谷からテーブルランドへ突き上げる5本の尾根の中で一番下
流側のもの。ゴロ谷第一尾根というわけである。
勝手知ったるという感じで歩いて行くが、どうも様子がおかしい。目の前に登山道が出てきてしまった。
北西を向いて進んだつもりが北東へ歩いていたのだ。これはいかんと少し戻って進路修正。今度正しくP1182m
方向を目指したはずが、またもや先ほどと同じような場所に出てしまった。GPSの軌跡を見るとキレイに円を描
いている。これがリングワンデリングというヤツか。長い登山人生で初の体験である。
しばらく登山道を辿って適当なところからP1182m手前の丸池へ出ればいいと登山道を進み始めた。
途中でGPSを確認すると、なんとまた北東へ進んでいるではないか。地図上の登山道は実際の道とは異なってい
た。テーブルランドで登山道を歩くことはほとんどないので、登山道の付け方そのものが頭に入っていないのだ。
コンパスを見ていればすぐにわかるミスを3度も繰り返すとは情けない限りである。
今度はコンパスだけを見てひたすら南南西に針路を取り、難なく丸池に到着した。雨のおかげで水をたっぷり
と湛えて池らしい風情を醸し出している。霧の中から浮かび上がる丸い水面はまさに幽玄の世界だ。
モリアオガエルのとろろのような白い卵がこの梅雨の季節を感じさせる。
ここからの下りは地形図通り、テーブルランド西面でも最も等高線が詰まったところを落ちて行く。
ズルズルの斜面に備えてチェーンスパイクを装着。これが大正解だった。履いていなければ何度転倒したかわか
らないだろう。
石灰岩の浮石がゴロゴロと転がっている危険地帯を過ぎれば傾斜が緩み、尾根らしい形が現れて落ち着いて歩
けるようになる。それにしてもこんなところにまで炭焼窯跡があるのは驚きだ。運び出すのも並大抵の苦労では
ないだろう。
尾根の末端では再び急傾斜となり、岩壁の間にここを通れとばかりに開けられた急峻なルンゼ状を慎重に下っ
てゴロ谷へ着地した。水晶岳東尾根や急傾斜のこの尾根を喜々として歩くsatoさんは、やぶこぎメンバーの資質
を十二分に備えていると言っていいだろう。
ゴロ谷はたび重なる水害で目を覆うばかりに荒れ果てている。
御池川本流の出合から、何もない平凡な流れが蛇行しながら美しい樹林の下をゆったりと流れる様は大好きな景
色のひとつだった。これもまた自然の営みの一部だとは分かっていても、この現状を目の当たりにすれば残念と
しか言いようがない。
ここまで下りてきてようやく雲が切れ、空が明るくなってきた。時すでに遅しというところだが、車に戻った
時に降られるよりは格段にいい。
増水した谷は登山靴を濡らさずに渡ることは不可能だ。車まであと30分ほど。靴に浸水するのも委細構わず、
何度も渡渉を繰り返しながら今日の山を反芻した。御池橋はすぐそこだ。
山日和