【高見山地東部】ぐーさんの伊勢山上ツアー

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yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

【高見山地東部】ぐーさんの伊勢山上ツアー

投稿記事 by yamaneko0922 »

【 日 付 】2019年4月20日(土曜日)
【 山 域 】高見山地東部
【メンバー】山猫、家内、グー
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】飯福田寺13:35~14:04小天上14:07~14:18大天井14:25~14:58飛石15:10~15:21飯福田寺15:30~15:36裏行場上り口15:59~16:04飯福田寺

翌日のグーさん主催の天井桟敷ツアーに参加をさせて頂くことにしたが、土曜日は名古屋で午前中に仕事の予定があったので、名古屋で家内と待ち合わせて松阪に向かうことにした。松阪の近辺で午後の軽めの山行にいい山はないでしょうかとグーさんにお伺いしたところ、伊勢山上をグーさん直々にご案内して下さることとなった。名古屋の仕事が終わるとその足で伊勢中川に向かう。

伊勢山上はグーさんのお蔭でこのサイトではすっかりお馴染みかもしれないが、私は当初、その名前からして伊勢の近くかと思っていたところ、松阪の山奥にある修験道の寺院、飯福田寺の別称であり、伊勢神宮のあたりからはかなり離れている。寺の裏山は行場となっており、スリルに富んだ岩場めぐりを目的に訪れる人もおられるようだ。

伊勢中川の駅までグーさんが迎えに来て下さり、グーさんの車で飯福田寺にむかうと、山に入るにつれ新緑がなんとも美しい。若緑、黄緑、薄緑、萌黄色、鶯色、萌黄色、萌木色、若草色、黄浅緑・・・緑に関する様々な色の名称を並べたところで、色とりどりの新緑のパッチワークを表現することは出来ないのだが、低山の新緑が最も美しい時期だろう。あと一週間もすると、瞬く間に新緑は山の上へと駆け上がってゆくことになる。

飯福田寺に到着すると、立派な山門の脇には何台もの車が停められている。この辺鄙な山奥の寺に多くの先客が訪れていることに驚かざるを得ない。飯福田川沿いに参道を歩いていくと、折しも7~8人のパーティーが下山してきたところに居合わせる。いずれの方もヘルメットに腰からはカラビナをいくつもぶら下げて、完全な岩登りの装備である。もちろん、岩登りは想定してはいない。まだ仕事明けのビジネス・シューズに仕事用のワイシャツにネクタイという出で立ちだったので、まずは住職のご厚意で庫裏の右手のコモリ堂で着替えさせて頂く。

役行者の開創と伝えられる寺院の歴史は相当に古く、戦国の時代は北畠家の祈祷寺となり、伽藍が立ち並ぶ大寺院であったようだ。しかし北畠家の滅亡と共に衰退し、日野から松阪に転封された蒲生氏郷に至っては伽藍を解体し、松阪城の築城のための材料にしたらしい。戦国時代の名君として知られる氏郷であり好きな人物ではあったが、この時ばかりは余計なことをしてくれたものだと思う。

苔むした階段を登ると若緑のイロハカエデに包まれた藥師堂に寺の本尊である薬師如来が祀られている。藥師堂の右手の宝篋印塔と共にその趣ある佇まいは歴史ある寺院の風格を感じされる。
新緑に包まれる薬師堂
新緑に包まれる薬師堂
薬師堂の左手の斜面を登ると曲がり角毎に石仏や祠が現われる。無造作に開扉された祠に祀られる愛染明王の坐像は博物館に陳列されてもおかしくないような立派な木像である。グーさんに「どなたかが祠の扉を開扉するのですか?」とお伺いすると、「いや、開け放しでしょう」とのこと。

最初の岩場、油こぼしの急斜面が現われる。斜度はかなり急峻ではあるが、ホールドが多いので登りやすい。
油こぼしを登り詰めると、断崖に沿って行者堂のある岩屋本堂へと下ってゆく。鉄の手すりがついているので安心して下ることが出来るが、手すりがなければ相当に度胸が必要なところであったかもしれない。

行者堂へ辿り着くと、右手の壁面からいくつもの不自然な突起が突き出しているかと思えば、いくつもの小さな穴も穿たれている。この岩の内部は巨大な砂岩をくり抜いて作ったもののように思われるのだが、自然に出来たものらしい。岩から突き出た突起や穴は上へと登るための足がかりのようだ。果たして、オーバーハングの壁面をこれらの足がかりと穴をホールドにしてトラバースして、岩の右手の側面に出る。
行者堂の右手の壁を登る
行者堂の右手の壁を登る

今度は垂直の壁に上から垂れ下がる鎖を頼りに登ってゆく。壁にはわずかに足を載せるための窪みが作られている。ここの通過が行場の中でも核心といえるだろう。岩屋の上に登ると、我々の登攀を祝うファンファーレのように狭い谷間にいくつもの法螺貝の音が響き渡る。
岩屋の上から.jpg

前半の最後は抱きつき岩である。文字通り、岩に抱きつくような形で岩を越えると難所は過ぎたようだ。岩の上の出ると役行者の像が歓迎するかのように莞爾されている。

わずかに登って尾根に乗り、小さな金剛童子の石仏がある小天井を過ぎると、杉の植林地の中の歩きやすい道となる。大天井の大日如来の石仏が杉林に厳かな雰囲気を与える。

谷を周回して尾根を下ってゆくと先の方から女性の黄色い声が聞こえる。先へ進むと、岩の上で寛いでおられる若い美男美女のカップルがおられた。後ろから我々が来る気配を察して、先に行ってもらおうと待機してくれていたらしい。岩の上からは当然ながら、絶景が広がる。いくつかの鋭鋒がつらなる矢頭山、その左手に円錐形の髯山、そして正面には後山とグーさんが教えて下さる。
矢頭山(右)と髯山(左)
矢頭山(右)と髯山(左)
正面に後山
正面に後山

岩場を通過した後で後ろを振り返ると、二人で手をつなぎながら蟻の戸渡りを通過してくるのが見える。女の子が握る彼の手に力が入っているのは無理もない。今にも彼氏にしがみつきそうな勢いだ。このような場所に連れて来たらそのような状況になるのは間違いない。
岩を振り返る.jpg

不動の棚に来ると小さな不動明王の石仏がある。グーさんに促されて不動の棚の岩の下へと出る。どうやら今度はこの岩を下から攀じ登るらしい。砂岩に穿たれた穴を足がかりにして岩壁を登ると、その先に穿たれた大きな穴には首のない石仏が祀られているのであった。印相からすると定印の阿弥陀仏のように思われる。この石仏を拝むために難易度の高い岩壁を登るのが修行のようだ。南無阿弥陀仏。

我々が不動の棚に寄り道している間に先に行かれた先ほどのカップルに再び追いつく。岩の上からは先程の岩屋本堂を正面に望む。よくぞあの側面から上に登ったものだと思うが、それよりもこのような岩の造形の妙に感心する。
岩屋を展望.jpg

「昔はこの岩には鎖はありませんでしたよね」とグーさんに話しかけられている。どうやら男の子の方は幼少の頃からこの場所は何度も来たことがある馴染みの場所のようだ。勿論、女の子は初めてだろう。「小尻返し」からの下りでは女の子が下るのに足場をみておいてあげましょうと、グーさんが彼氏に替わって女の子が降りるのに下から指示を出す。

飛石の岩の上に家内と共に登って、gooさんに写真を撮ってもらっているところに再びカップルが登場する。写真を撮ってあげましょうと若いカップルのスマホをグーさんが預かり、若い二人は飛石の上に登るが女の子は怖がってなかなか立ち上がらない。期待通り、すかさずグーさんの罵声が飛ぶが、女の子はなかなか立ち上がろうとしないが、家内の「彼氏の手を繋いだら大丈夫」という声には反応して、彼の手を握りしめてゆっくりと立ち上がると、何とも幸せそうな笑顔で二人で微笑む。そこでスマホのシャッター・ボタンを押したグーさんの指にも力が入りすぎたのかもしれない。長押しのせいで連写する。

飛石からの下りは後半のハイライトだろう。我々が降りたあと、再びグーさんは女の子が無事に降りるのを確認して、カップルとお別れする。この行場から戻ると住職に無事の帰還を報告する決まりのようだ。

飯福田寺を後にすると飯福田川の対岸の裏行場へと向かう。川沿いの山桜は散りはじめであるが、まだかなり花が残っている。裏行場の最初の岩場はやはり油こぼしである。岩場の上から垂れた鎖に頼って一気に上まで登る。尾根を緩やかに辿ると尾根上に巨岩が出現する。獅子ヶ岩と呼ばれる巨岩らしい。

獅子ヶ岩を後にすると尾根から谷筋を下る。踏み固められた行者道を下ると目の前を小さな動物が転がるように下っていき、傍らの樹を攀じ登る。樹の陰から小さな顔を覗かせる。もう一匹、今度は大きな動物が別の樹からこちらにじっと顔を向けている。最初は栗鼠かと思ったが、可愛らしい姿をしてはいるものの明らかに栗鼠よりは険しい顔立ちの動物である。すぐには思い出せなかったが、どうやらムササビのようだ。
ムササビ.jpg

谷沿いに歩き、桜が満開の廃屋へと出ると再び川を渡り、飯福田寺へと戻る。グーさんの車に乗り越み寺を後にすると、後山の山麓を越えて、R166に入り粥見のスーパー、ミセスマートで会計をする段になって気がついた。何と、財布がない。どうやら着替えごと飯福田寺のコモリ堂に置き忘れてきてしまったらしい。グーさんに再び40分程の運転をお願いする羽目になるのであった。

飯福田寺のコモリ堂で無事、着替えと財布を回収すると、住職さんが国道沿いの酒屋で売られている「飯南」という美味しい地酒を教えて下さる。グーさんによると呑兵衛の住職が云うのだから実際に美味しい可能性があるという。再びR166に入り西に向かうと西に陽が沈む。この日は雲が全くないので、夕焼けが見られない。よくよく見ると一条の飛行機雲が茜色に焼けているのだった。国道沿いの酒屋を訪ねてみると、この「飯南」は酒屋の店主が近くの深沢の棚田で栽培した酒米、五百万石を福井は越前大野にある花垣酒造で醸造した純米大吟醸であった。

道の駅いいたかに併設されたいいたかの湯で一風呂浴びた後はグーさん宅で鍋を囲む。鍋の用意をしていると、グーさんがおもむろに新聞紙に包まれた山菜を取り出す。ご自宅の近くで採ってこられたイタドリらしい。軽く皮を剥いてから、数センチの長さに切ると、茎を潰し砂糖と塩昆布で味つけして出来上がり。これが先程の日本酒と抜群の相性、図らずも酒がすすむ。忘れ得ぬ味であった。
山猫 🐾
グー(伊勢山上住人)
記事: 2227
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:10
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Re: 【高見山地東部】ぐーさんの伊勢山上ツアー

投稿記事 by グー(伊勢山上住人) »

20190420-17.jpg


yamanekoさん、こんばんは。

レスをするのはグーひとりしかいないだろうからと思い、当初は
「伊勢山上レポはアップしなくてもいいですよ」と言っていたが
「yamaneko文学で伊勢山上を書いて欲しいな」と思い直してお願いしました。


【高見山地東部】ぐーさんの伊勢山上ツアー

「伊勢山上の山域は何て書いたらいいのでしょうか?」
と聞かれて「ハテ?」考えたこともない。
近くの堀坂山を検索すると「高見山地」と出てきた。
しかしなぁ~、高見山地と言われてもピンとこないよなぁ~。


土曜日は名古屋で午前中に仕事。午後の軽めの山行にいい山はないでしょうか

ついこの前も翌日の関東での仕事のための移動日。新幹線に乗るまでの時間に山遊び。
時間を有効に活用しているとは言えるけど・・・重症の山中毒患者です。


最初の岩場、油こぼしの急斜面が現われる。斜度はかなり急峻ではあるが、ホールドが多いので登りやすい。

クサリをつかまずにとっとと登り始めてちょっとびっくりしました。
確かに通い慣れた修験者はクサリを頼らずに登るけど・・・初めて来た行場でいきなりとは。


20190420-14.jpg

垂直の壁に上から垂れ下がる鎖を頼りに登ってゆく。壁にはわずかに足を載せるための窪みが作られている。

「上から確保のためのロープを垂らしましょうか?」と言ったのですが「とりあえず登ってみます」
家内さんは次の足場まで右足が上がらず、左手ひとつでクサリにぶら下がり右手で足を持ち上げる。
見ているグーの方が冷や汗でした。


20190420-20.jpg

家内の「彼氏の手を繋いだら大丈夫」という声には反応して、彼の手を握りしめてゆっくりと立ち上がる

きっといい思い出になることでしょう。

20190420-26.jpg


すぐには思い出せなかったが、どうやらムササビのようだ。

初めて見ました。かなり大きな体なのですね。翼はわきの下に丸めているのかな?
それに空を飛ぶには太すぎて重たそうなしっぽでした。


20190420-27.jpg

住職さんが国道沿いの酒屋で売られている「飯南」という美味しい地酒を教えて下さる。

大容量のワインも買い込んで自宅に発送していましたね。

20190420-10.jpg

グーさん宅で鍋を囲む。

手際よく段取りされて、あっという間に「出来ました。食べましょう」
「倉敷味工房・鶏塩鍋」あっさりしているのにコクがある。とっても美味しかったです。
ご馳走様でした。

イタドリ。これが先程の日本酒と抜群の相性、図らずも酒がすすむ。忘れ得ぬ味であった。

「イタドリの塩コブ和え」は闇天で作るつもりでしたがまだ生え出ていませんでした。
yamanekoさんは酔いの回っていることが見てとれましたが、家内さんのお酒に強いこと!
yamanekoさんも安心して酔いつぶれることのできる頼もしい晩酌相手です。

台高登山の前線基地としてグーの別荘をまたご利用ください。


                     グー(伊勢山上住人)
yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【高見山地東部】ぐーさんの伊勢山上ツアー

投稿記事 by yamaneko0922 »

グーさん コメント有難うございます。それから、二日間ににわたるツアー、お世話になりました。

>レスをするのはグーひとりしかいないだろうからと思い、当初は
「伊勢山上レポはアップしなくてもいいですよ」と言っていたが
「yamaneko文学で伊勢山上を書いて欲しいな」と思い直してお願いしました。


私は山行は基本的には文章を残すので、アップするしないの問題だけです。
しかし、伊勢山上の魅力を十分にお伝え出来ていなくて申し訳なく思います。

ネットで検索すると雪彦山や石鎚山より凄いとか、最強の岩場とか書いてあるものがありますね。実際、私のこれまでの経験では剣岳や両神山の八丁尾根に匹敵するレベルだと思います。それにしても新緑の美しさという点では最高の時期にお邪魔させて頂くことが出来て、良かったです。

>ついこの前も翌日の関東での仕事のための移動日。新幹線に乗るまでの時間に山遊び。
時間を有効に活用しているとは言えるけど・・・重症の山中毒患者です。


否定は致しませんが、一年の週末のうち大半は出張で潰れるので、出張前後でこうして山遊びでもしないと・・・

>家内さんは次の足場まで右足が上がらず、左手ひとつでクサリにぶら下がり右手で足を持ち上げる。
見ているグーの方が冷や汗でした。


そんなことをしているとは知りませんでした。見ての通り、家内は手足が短いので

>手際よく段取りされて、あっという間に「出来ました。食べましょう」
「倉敷味工房・鶏塩鍋」あっさりしているのにコクがある。とっても美味しかったです。
ご馳走様でした。


料理とはいえないようなものですが、喜んでいただければこちらも幸甚です。

>yamanekoさんは酔いの回っていることが見てとれましたが、家内さんのお酒に強いこと!
yamanekoさんも安心して酔いつぶれることのできる頼もしい晩酌相手です。

家内は顔色が変わらないだけであって、私の方がマシ・・・というのは子供たちも認めるところなのです。家内と酒の強さを比べても致し方のないところですが・・・

>台高登山の前線基地としてグーの別荘をまたご利用ください。


有難うございます。またお世話になります。
山猫 🐾
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