【湖西】正座峰 古道を辿る小さな山旅

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yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

【湖西】正座峰 古道を辿る小さな山旅

投稿記事 by yamaneko0922 »

【 日 付 】2019年3月3日
【 山 域 】湖西
【メンバー】単独行
【 天 候 】雨
【 ルート 】駐車地11:03~12:13サケビ峠~12:29正座峰~12:49サケビ峠~13:40駐車地

正座峰、小さな里山ではあるが、実は近江百山に選定されている山であった。この山の南に位置するサケビ峠を越える峠道はその昔、針畑川流域から北川の流域を経て朽木に至る重要な交通経路であったようだ。針畑川の側からは桑原と平良の集落からこのサケビ峠を越える古道が通じていた。

膝蓋骨の骨折を負ってから2週間ほどが過ぎ、少しばかり歩けるようになった2/8のこと、南桑原からこの峠を目指したのであった。前日の降雪もあり、県道から少しはいると膝まで沈む程の積雪である。早速にもスノーシューを履いて、古い道標に従って植林地の中をトラバースする小径を歩むとすぐにも明瞭な古道が出現した。平坦で幅広い道は尾根筋を何度も跨いではなだらかに登ってゆく。牛が通れるために傾斜がかなり緩く、同時に十分な幅を有する広い道が造られたらしい。

この程度の傾斜ならば骨折を負った脚でも十分に登れると調子よく歩行していたのだが、やがて道が斜面をほぼ水平にトラバースするようになり峠に向かって南へと大きく向きを転じたところで杉の倒木の密集地帯が現れる。恐らく昨年の台風によるものだろう。
倒木地帯
倒木地帯

それでも果敢に倒木を越えようとしたが、健側の脚で倒木の間の雪を踏み抜いた瞬間、膝蓋骨を骨折した患側の膝に激痛が走った。夥しい数の倒木を不自由な脚で越えることは到底ままならないと判断し、諦めて引き返したのであった。しかし、この日以来、このサケビ峠に至る平良からのもう一つの古道を辿り、正座峰を目指すことは私の宿願となったのだった。

再びこのサケビ峠に向かうべく京都の自宅を出てR367を北に向かうと、雨は午後からの予報ではあったのだが、すぐさま小雨が降り出した。眺望を期待する登山ではないので、天気があまりよくないことは気にならない。そもそも登山という目的であればある程度天候を選んで山に入るわけだが、昔の人が道を歩んだ時には、雨がふろうと雪が降ろうと天気にかかわらず道を辿らねばならない生活の必要性があったことだろう。

平良の集落を過ぎて道が大きく左に曲がるあたり、サケビ峠の一つ南のピークから西に延びる尾根が張り出すあたりで道路脇の駐車適地に車を停める。平良からサケビ峠に至るに古道はこの尾根をどこかで横切る筈だから、尾根を辿ればどこかで古道と出遭えるだろうという読みである。

植林地の中へと入ると直ぐに広い古道が出現した。早速にも古道に巡り合ったかと糠喜びしたが、道を辿ると山の方に向かわずに道は県道に沿って北の桑原の方へと進んでゆく。どうやら針畑川に沿って往来するための昔の道のようだ。道の右手に明瞭な尾根の取り付きが見えたので、この尾根に乗ると予想通り、すぐにも古道が現れた。桑原からサケビ峠へと至る古道とほぼ同じ雰囲気の広い道だ。斜面を何度も行き来しながら緩やかに登っていく。

間もなく数本の倒木が道を塞いでいるので、そこを無理やり越えると完全に道が失くなっている。密集した藪を漕いで先に進むと舗装された林道に飛び出した。切り開かれた林道の周囲は見晴らしがよく、針畑川を挟んだ対岸には経ヶ岳を望む。しかし、辺りを見回すも肝心の古道の続きが見えない。諦めて林道を先に進んだところで、左手の斜面から尾根に登ることにした。斜面から小さな支尾根に乗ると、林道の少し上の斜面をトラバースしてくる古道に再び出遭う。
再び古道が現れる
再び古道が現れる

古道を辿ると、やはり尾根を幾度も跨いでは緩やかに斜面を上がってゆく。尾根を乗り越えて北側斜面をトラバースするようになると途端に古道の上には積雪が増え、片斜面となった。
積雪した片斜面の古道
積雪した片斜面の古道

サケビ峠はかなり近くなり、このままトラバースしていくと峠にたどり着く筈だ。ステップを刻みながら雪の片斜面の道を進む。しかし、谷を越えなければならないところで急斜面の滑り台となっており、通過を諦めることにする。右手の斜面を攀じ登るとすぐに先程の尾根に出ると、杉の樹間に正座峰が垣間見える。
樹間に垣間見る正座峰
樹間に垣間見る正座峰

尾根を辿ると間もなくサケビ峠の一つ南側のピークに至る。サケビ峠に向かう尾根には急に雪が増え、積雪の上をつぼ足で進む。緩やかに下ってサケビ峠にたどり着くと、桑原と平良から登ってくる緩やかな古道が合流している。草川啓三さんの本にも峠にはお地蔵様の写真が載せられているが、かつてはこの峠には美しいお地蔵様の石仏があったが、嘆かわしいことに数年前に盗まれてしまったらしい。萬霊等と彫られた石がかつての祠のありかを示すようだ。
サケビ峠
サケビ峠

峠から緩やかな尾根を北に辿り、正座峰のピークを目指す。杉林から落葉した自然林に入ると、途端に尾根は明るくなる。山毛欅や小楢、楓が多く見られる樹林は紅葉が美しいことだろう。尾根芯から東側は雪が残り、雪が消失した西側斜面との間に季節の境界線がひかれているようだ。
正座峰への尾根道
正座峰への尾根道

正座峰は山頂標も何もない地味な山頂であった。踏み跡を辿り引き返す。サケビ峠からの尾根には杉林の中に慎ましやかではあるが立派な山毛欅が佇んでいる。
杉林の中の山毛欅
杉林の中の山毛欅

尾根を下り再び先程の古道に出る。先程、古道を見失った地点がどうなっているか気になるところだ。見失った地点が近づいてくると、忽然と林道の法面の上に出たところで古道が切れている。先程林道に出た箇所は20m程の崖下である。すなわち林道を通すために斜面ごと大きく削られてしまっているのだった。

踏み跡なき斜面を下り、途切れた古道の先に出る。古道を戻ると、最初に古道に乗ったところあたりからは下の方に県道が見えるようになった。後はこの古道を県道まで辿るだけだ。最後は小さな谷を越えるべく斜面を大きく左手に曲がったところで息を呑んだ。谷を越えるあたりで夥しい数の杉の倒木が古道を覆って隠しているのだった。ここもおそらく昨年の台風による被害だろう。諦めて、古道から杉の植林地の中の緩斜面を歩いて、駐車地に戻った。
再び杉の倒木が密集
再び杉の倒木が密集

再びR367に出て京都に向かうと本降りの雨が降り始めた。古道の大体を歩くことが出来たのではあるが、大変な努力を払って造られたであろうこの古道が林道や倒木により寸断され、歩行困難な状況になっているのは何ともやるせない気持ちに陥るのだった。
最後に編集したユーザー yamaneko0922 [ 2019年3月13日(水) 09:44 ], 累計 1 回
山猫 🐾
SHIGEKI
記事: 1028
登録日時: 2011年7月25日(月) 18:30

Re: 【京都北山】正座峰 古道を辿る小さな山旅

投稿記事 by SHIGEKI »

yamanekoさん こんばんは。

【 日 付 】2019年3月3日
【 山 域 】京都北山
【メンバー】単独行
【 天 候 】雨
【 ルート 】駐車地11:03~12:13サケビ峠~12:29正座峰~12:49サケビ峠~13:40駐車地

渋い山歩きですね~

リハビリウォークでしょうか。


正座峰、小さな里山ではあるが、実は近江百山に選定されている山であった。

他はよく分かりませんが、この 「近江百山」に反応

たぶん、20年近く前、鈴鹿や県内の山で出会った人に何人か「この本の山行記を書いた。」

と言う方が居られました。

で、当時、早速購入しましたが、眠ってました。これ

IMG_0001.jpg
平成11年5月初版 となっています。

懐かしくと言うか、今更ながらに楽しく頁をめくれそうです。

     SHIGEKI 
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yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【湖西】正座峰 古道を辿る小さな山旅

投稿記事 by yamaneko0922 »

SHIGEKIさん コメント有難うございます。

>リハビリウォークでしょうか。


当初はリハビリが目的だったのですが、今回は古道そのものを探し当てて辿ることが目的となりました。天気が悪い日は眺望は望めないので、こういう古道を雰囲気を楽しむにはいいものだと思います。

>この「近江百山」に反応

当初の原稿では近江百山のことを書いていなかったのですが、そのことを後から思い出したのでした。こうしてコメントを頂けると、追記してよかったと思います。
この近江百山は選定作業に何十年もかかったらしいですね。上梓されたのも今から20年も前のことなので、今は廃道となってしまっている登山道もあったりするようです。やぶメンの方々はそんなことは気にしないでしょうが :lol:

>今更ながらに楽しく頁をめくれそうです。

この百山は蓬莱山や御在所岳が外されている一方、何故こんな山がというような意外な低山が選ばれているのが面白く、正座峰もそうした山の一つに思われます。山と里のつながり、歴史といったところも重視しての選定だったのだろうと勝手に推測しております。

この本における山の紹介も、ガイドブックのスタンスからはかなりかけ離れていて、山に対する想いを綴った山行紀みたいなものが多くていいですよね。

なんとか百山とか百名山とか、全山登頂を志向すると山に登る目的が別のものになってしまうようで嫌なのですが、この本に紹介されているマイナーな山はとても興味があるので、まだ登っていないものはいずれ訪れてみたいと思います。

  近江百山のどこかでお会い出来れば
山猫 🐾
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