【越美国境】高倉峠から金草岳へ 天国と地獄の往来
Posted: 2019年3月04日(月) 23:27
【日 付】2019年3月2日(土)
【山 域】越美国境 金草岳周辺
【天 候】晴れ
【コース】芋ヶ平先駐車地7:45---10:12高倉峠10:42---11:30権現山11:50---13:20金草岳14:35---
15:00ガンドウ尾根基部---16:18 Ca920mピーク---17:45駐車地
初め良ければとか終わり良ければとかはよく言う話だが、どっちも最悪で真ん中だけが天国というのはどう
表現すればいいのか。
今年の雪なら蓮如上人の遺跡がある芋ヶ平までは入れると見ていたが、その先の林道にもまったく雪はなか
った。調子よく進んで行くと、急にハンドルを取られるようになり直進するのが困難になってしまった。車を
降りてタイヤを見てみたら、なんと左の前輪がぺっちゃんこだ。わちゃー、登山開始前に最悪の事態である。
タイヤ交換自体は慣れっこなので、20分ほどでスペアタイヤに交換。元のタイヤはサイドウォールがスパッと
切れて完全なバーストである。最近の車はパンク修理剤だけでスペアタイヤを装備していないらしいが、スペ
アがなければ完全にアウトだ。携帯も繋がらない山中で途方に暮れるしかないだろう。さすがにもう前進する
気もなくなり、そこに駐車して歩き出した。
当初は13年前に歩いた尾根を上がろうと思っていたのだが、どうも体調でイマイチで急な尾根を登る気がし
ない。途中からスノーシューを装着して林道を適当な尾根を探りながら進むもヤブに捕まるのが嫌で、次々現
われる尾根を見送るうちにとうとう高倉峠まで来てしまつた。ここまで2時間20分。結局8キロの林道歩きとい
う想定外のスタートだ。出発時間が遅れたこともあり、せめて権現山だけでも登ってのんびりするかとハード
ルを下げてしまう。
13年振りの高倉峠。広々として峠らしい風情には欠けるが、雪に閉ざされたこの時期は安心できる場所だ。
長大な越美国境稜線の中で、車で越えられる峠はここ以外に冠山峠、温見峠のふたつしかない。(油坂峠はトン
ネルだ)
天気は最高で崩れる心配はない。雪は少なく潅木が頭を出しているのがやや鬱陶しいが、歩くのに邪魔とい
うほどでもない。
1143.4mの権現山に立つと大パノラマが展開した。あきらめかけていた金草岳も遠く感じない。
ついさっきまではここでのんびりランチタイムを決め込んで、北尾根から林道へ下りようと思っていた。
手招きするように聳える金草岳の姿に迷うことなく越美国境稜線へ踏み出す。
前にここを歩いた時は夕方の5時になろうかという時間で、まわりの景色を楽しむ余裕もなかった。
背後の笹ヶ峰が特に立派で、派生する尾根の先には未踏の不動山・千回沢山が横たわる。進行方向に目をやれ
ば金草岳の先に黒々とした南壁を抱いた冠山と能郷白山が大きい。今日は白山も一望だ。
細かいアップダウンはあるものの、快適な雪尾根歩きが楽しめる。のびやかな雪原歩きやなかなかのブナ林も
あり、単調にならないのがいい。
金草岳の頂稜への最後の登りは雪が消えてササを踏んで歩くところもあった。
急登を終えて広大な山頂台地に出ると、意外なことに山頂に人影が見えた。
これはまったく予想もしていなかったことである。山頂で合流した登山者は越前大野の人だった。単独で雪の
金草岳に登るぐらいだからこの辺の山にかなり通っているのかと思ったら、意外なことに地元の山はあまり登
っていないらしい。冬はアルプス方面に目が向いてしまうそうだ。
私からすれば大野に住んでいるのにもったいないことである。
河内の方へ下山する彼を見送ってランチタイムとする。2時半には下山開始したいのであまりのんびりできな
いが、この360度のパノラマを肴に祝杯を挙げるとしよう。
雪の金草岳は4度目だが、内2回はホワイトアウト。もう1回は好天だったもののここには立っていないので、こ
の場所からこの景色を眺めるのは初めてなのである。
下山は勝手知ったるガンドウ尾根を選択した。往路と比べると距離は格段に短く時間も読める。(と思ってい
た。)
頂稜からガンドウ尾根に乗り替える部分の急斜面は壁状になっており、チェーンスパイクに履き替えストックを
ピッケルに持ち替えたが、チェーンスパイクでは心許ない。ここはアイゼンの方が良かった。バックステップを
交えながらなんとか基部まで下降。尾根に乗ってしまえば楽勝かと思われたが、雪が中途半端で尾根芯のヒノキ
のヤブと踏み抜きで苦労させられペースが上がらない。何度かチェーンスパイクとスノーシューを履き替えなが
らノロノロと前進する。
核心部は幅2~30センチの岩稜に雪がトッピングされたスリリングなヤセ尾根だ。一歩一歩慎重に足場を固め
て通過する。ふうっ。
2年前にヤマネと戯れたCa920mピークまで来ればメドが付く・・・はずだった。しかし今年の寡雪のヤブ尾根
はそう甘くはなかった。雪はボソボソ、雪のないところは濃密なヤブで、右往左往しながら進む。
スノーシューを履いているとヤブに足を取られるので脱がざるをえない。すると股まで潜りこんでしまうところ
もある。ところどころ獣道のような踏み跡があるのが救いだ。
やがて現役とおぼしき植林が現われて、明瞭な杣道を歩くようになった。地獄から天国である。
その杣道は尾根の左の方へ向かっているようで、一瞬心惹かれたながら駐車地へ向けて直進したがまたもやヤブ
に捕まってしまう。下りだからなんとでもなるが、これが登りなら心が折れてしまうだろう。
林道への着地点が心配されるところだが、出発時の観察でたいしたガケはないことがわかっていた。
最後は右手の谷へ回り込んでソフトランディング成功。
山頂から2時間半あれば十分と踏んでいたのだが、結局3時間半近くかかってしまった。
越美国境稜線を堪能して無事に下山できたのだから、終わり良ければすべて良しと言うべきなのだろうか。
山日和
【山 域】越美国境 金草岳周辺
【天 候】晴れ
【コース】芋ヶ平先駐車地7:45---10:12高倉峠10:42---11:30権現山11:50---13:20金草岳14:35---
15:00ガンドウ尾根基部---16:18 Ca920mピーク---17:45駐車地
初め良ければとか終わり良ければとかはよく言う話だが、どっちも最悪で真ん中だけが天国というのはどう
表現すればいいのか。
今年の雪なら蓮如上人の遺跡がある芋ヶ平までは入れると見ていたが、その先の林道にもまったく雪はなか
った。調子よく進んで行くと、急にハンドルを取られるようになり直進するのが困難になってしまった。車を
降りてタイヤを見てみたら、なんと左の前輪がぺっちゃんこだ。わちゃー、登山開始前に最悪の事態である。
タイヤ交換自体は慣れっこなので、20分ほどでスペアタイヤに交換。元のタイヤはサイドウォールがスパッと
切れて完全なバーストである。最近の車はパンク修理剤だけでスペアタイヤを装備していないらしいが、スペ
アがなければ完全にアウトだ。携帯も繋がらない山中で途方に暮れるしかないだろう。さすがにもう前進する
気もなくなり、そこに駐車して歩き出した。
当初は13年前に歩いた尾根を上がろうと思っていたのだが、どうも体調でイマイチで急な尾根を登る気がし
ない。途中からスノーシューを装着して林道を適当な尾根を探りながら進むもヤブに捕まるのが嫌で、次々現
われる尾根を見送るうちにとうとう高倉峠まで来てしまつた。ここまで2時間20分。結局8キロの林道歩きとい
う想定外のスタートだ。出発時間が遅れたこともあり、せめて権現山だけでも登ってのんびりするかとハード
ルを下げてしまう。
13年振りの高倉峠。広々として峠らしい風情には欠けるが、雪に閉ざされたこの時期は安心できる場所だ。
長大な越美国境稜線の中で、車で越えられる峠はここ以外に冠山峠、温見峠のふたつしかない。(油坂峠はトン
ネルだ)
天気は最高で崩れる心配はない。雪は少なく潅木が頭を出しているのがやや鬱陶しいが、歩くのに邪魔とい
うほどでもない。
1143.4mの権現山に立つと大パノラマが展開した。あきらめかけていた金草岳も遠く感じない。
ついさっきまではここでのんびりランチタイムを決め込んで、北尾根から林道へ下りようと思っていた。
手招きするように聳える金草岳の姿に迷うことなく越美国境稜線へ踏み出す。
前にここを歩いた時は夕方の5時になろうかという時間で、まわりの景色を楽しむ余裕もなかった。
背後の笹ヶ峰が特に立派で、派生する尾根の先には未踏の不動山・千回沢山が横たわる。進行方向に目をやれ
ば金草岳の先に黒々とした南壁を抱いた冠山と能郷白山が大きい。今日は白山も一望だ。
細かいアップダウンはあるものの、快適な雪尾根歩きが楽しめる。のびやかな雪原歩きやなかなかのブナ林も
あり、単調にならないのがいい。
金草岳の頂稜への最後の登りは雪が消えてササを踏んで歩くところもあった。
急登を終えて広大な山頂台地に出ると、意外なことに山頂に人影が見えた。
これはまったく予想もしていなかったことである。山頂で合流した登山者は越前大野の人だった。単独で雪の
金草岳に登るぐらいだからこの辺の山にかなり通っているのかと思ったら、意外なことに地元の山はあまり登
っていないらしい。冬はアルプス方面に目が向いてしまうそうだ。
私からすれば大野に住んでいるのにもったいないことである。
河内の方へ下山する彼を見送ってランチタイムとする。2時半には下山開始したいのであまりのんびりできな
いが、この360度のパノラマを肴に祝杯を挙げるとしよう。
雪の金草岳は4度目だが、内2回はホワイトアウト。もう1回は好天だったもののここには立っていないので、こ
の場所からこの景色を眺めるのは初めてなのである。
下山は勝手知ったるガンドウ尾根を選択した。往路と比べると距離は格段に短く時間も読める。(と思ってい
た。)
頂稜からガンドウ尾根に乗り替える部分の急斜面は壁状になっており、チェーンスパイクに履き替えストックを
ピッケルに持ち替えたが、チェーンスパイクでは心許ない。ここはアイゼンの方が良かった。バックステップを
交えながらなんとか基部まで下降。尾根に乗ってしまえば楽勝かと思われたが、雪が中途半端で尾根芯のヒノキ
のヤブと踏み抜きで苦労させられペースが上がらない。何度かチェーンスパイクとスノーシューを履き替えなが
らノロノロと前進する。
核心部は幅2~30センチの岩稜に雪がトッピングされたスリリングなヤセ尾根だ。一歩一歩慎重に足場を固め
て通過する。ふうっ。
2年前にヤマネと戯れたCa920mピークまで来ればメドが付く・・・はずだった。しかし今年の寡雪のヤブ尾根
はそう甘くはなかった。雪はボソボソ、雪のないところは濃密なヤブで、右往左往しながら進む。
スノーシューを履いているとヤブに足を取られるので脱がざるをえない。すると股まで潜りこんでしまうところ
もある。ところどころ獣道のような踏み跡があるのが救いだ。
やがて現役とおぼしき植林が現われて、明瞭な杣道を歩くようになった。地獄から天国である。
その杣道は尾根の左の方へ向かっているようで、一瞬心惹かれたながら駐車地へ向けて直進したがまたもやヤブ
に捕まってしまう。下りだからなんとでもなるが、これが登りなら心が折れてしまうだろう。
林道への着地点が心配されるところだが、出発時の観察でたいしたガケはないことがわかっていた。
最後は右手の谷へ回り込んでソフトランディング成功。
山頂から2時間半あれば十分と踏んでいたのだが、結局3時間半近くかかってしまった。
越美国境稜線を堪能して無事に下山できたのだから、終わり良ければすべて良しと言うべきなのだろうか。
山日和