[野坂山地] 新雪の里山に遊ぶ 岩籠山
Posted: 2019年2月13日(水) 15:15
[日付] 2019年1月29日(火)
[山域] 野坂山地
[メンバー] sato
[天候] 雪のち曇り一時晴れ
[ルート] 駄口~インディアン平原~駄口
雨戸を開け外を覘くとどんより湿った空気が頬に触れた。青灰色の空を見上げる。雪は止んだ。よし出かけよう。
昨晩アルバイト先から「明日は休み」のメールを受け取った。明日はどうしようかな、起きてから考えようと眠りについたのだ。
北小松の地図を眺めながら朝ごはんを食べていると、つるりとした雪の平原が頭に浮かんできた。
「そうだ、岩籠山に行こう。」駄口の地図を取りに立ち上がる。
明るくなってから家を出る。マキノに入ると雪になる。側道に積もった雪を見て、駐車場に入れるかなと心配になる。着いてみると12,3cmの積雪。
胸をなでおろすが奥まで進む勇気が出ず一番手前にでんと駐車する。
昨晩からの積雪で踏み跡は見当たらない。よかった。まっさらな雪の風景に出合える。わくわくした気分で歩き始める。尾根に乗るまでの登山道の
位置を忘れてしまったので、適当に植林の斜面を登っていく。すぐに乗れるだろうと思ったが、やぶっぽくなってきて、いばらの棘が服に引っかかる。
あぁ失敗した。近道と直登したがる自分に苦笑する。
尾根に出るとすっきりとした雪道が現れた。てくてくと足が進む。積もりたての雪は柔らかで次第にふくらはぎまで潜るようになるが、足裏の雪の感触
が心地よく677mピークまでツボ足で歩く。
さぁブナの林が始まる。スノーシューを履き出発する。
鹿やウサギもまだ通っていない雪の斜面が目の前に広がる。小雪舞うしんと静まり返った世界。すらりとしたブナの木が無表情で立ち並ぶ。ドキリとし
て立ち止まる。あまりの静けさに足音をたてるのをためらう。ぐるりとブナを見渡す。無表情のブナ・・・沈黙の世界に吸い込まれそうになる。我に返り
斜面を勢いよく駆け降りる。ブナを見る。くすりと笑ったような気がした。あぁよかった。愉快な気分に戻る。
「今日はブナと戯れよう」
まっすぐに山頂に向かうのをやめ、右に行ったり左に行ったり、かっこいいブナ、素敵なブナを探しながらゆらゆらブナの林を彷徨う。
斜面の上に岩が見えた。インディアン平原の入り口だ。岩を目指し灌木の間を直登する。
ぽんと台地に出たと同時に、「あっ」と息を飲む。白く滑らかな雪原、霧氷で飾られた木々、凛とそびえ立つ岩。期待を超えた美しい世界の展開に暫し
夢うつつになる。吸い寄せられるように銀色の木々の先、尖った岩が立つ山頂南のピークへと向かう。
岩の傍らに立つ。ふいにこの山を初めて訪れた日の光景が甦る。暑い夏の最中、あの日もここに立ち、ぼんやり景色を眺めていた。あれからどれだ
けの年月が経ったのだろう。何年か後、また同じ場所に立ち同じことを思うのだろうな、こんな風にぐるぐる同じことを繰り返しながら年を取っていくのだ
ろうな。一人感慨にふける。曇天の情景はこころの奥深くに呼びかける。
お腹が空いてきた。お昼ご飯にしよう。岩籠山の山頂はまた今度とつぶやき、斜面を駆け降りる。
風を避け岩影に縮こまり、パンをかじりチャイを飲みながら冬の野坂山地の山並みを幾度となく目で追う。青空が広がってきた。ぱっと明るくなった風景
を眺めていると、登り始めに浮かんだ周回コースを歩くのが面倒になる。帰りもブナの林で遊ぼう。重い腰を上げ白銀の平原にさよならをする。
足の向くまま、ブナの木々の間をすり抜け708mと677mの鞍部に戻る。
白く冷たい斜面には、ジグザグとわたしの足跡が刻まれ雑音を感じる。無表情だったブナたちは、つんと澄ました顔で立っている。あれはいったい何だっ
たのだろう・・・可笑しくなる。雪道を辿り下っていくと登山口に着いた。急がば回れということなのね。うんうんと頷く。
新雪の積もった小さな里山を足の向くまま、気の向くままに歩く愉しさ、山の秘密の表情に出合う嬉しさを満喫し、にんまりしながら帰路に就く。
[山域] 野坂山地
[メンバー] sato
[天候] 雪のち曇り一時晴れ
[ルート] 駄口~インディアン平原~駄口
雨戸を開け外を覘くとどんより湿った空気が頬に触れた。青灰色の空を見上げる。雪は止んだ。よし出かけよう。
昨晩アルバイト先から「明日は休み」のメールを受け取った。明日はどうしようかな、起きてから考えようと眠りについたのだ。
北小松の地図を眺めながら朝ごはんを食べていると、つるりとした雪の平原が頭に浮かんできた。
「そうだ、岩籠山に行こう。」駄口の地図を取りに立ち上がる。
明るくなってから家を出る。マキノに入ると雪になる。側道に積もった雪を見て、駐車場に入れるかなと心配になる。着いてみると12,3cmの積雪。
胸をなでおろすが奥まで進む勇気が出ず一番手前にでんと駐車する。
昨晩からの積雪で踏み跡は見当たらない。よかった。まっさらな雪の風景に出合える。わくわくした気分で歩き始める。尾根に乗るまでの登山道の
位置を忘れてしまったので、適当に植林の斜面を登っていく。すぐに乗れるだろうと思ったが、やぶっぽくなってきて、いばらの棘が服に引っかかる。
あぁ失敗した。近道と直登したがる自分に苦笑する。
尾根に出るとすっきりとした雪道が現れた。てくてくと足が進む。積もりたての雪は柔らかで次第にふくらはぎまで潜るようになるが、足裏の雪の感触
が心地よく677mピークまでツボ足で歩く。
さぁブナの林が始まる。スノーシューを履き出発する。
鹿やウサギもまだ通っていない雪の斜面が目の前に広がる。小雪舞うしんと静まり返った世界。すらりとしたブナの木が無表情で立ち並ぶ。ドキリとし
て立ち止まる。あまりの静けさに足音をたてるのをためらう。ぐるりとブナを見渡す。無表情のブナ・・・沈黙の世界に吸い込まれそうになる。我に返り
斜面を勢いよく駆け降りる。ブナを見る。くすりと笑ったような気がした。あぁよかった。愉快な気分に戻る。
「今日はブナと戯れよう」
まっすぐに山頂に向かうのをやめ、右に行ったり左に行ったり、かっこいいブナ、素敵なブナを探しながらゆらゆらブナの林を彷徨う。
斜面の上に岩が見えた。インディアン平原の入り口だ。岩を目指し灌木の間を直登する。
ぽんと台地に出たと同時に、「あっ」と息を飲む。白く滑らかな雪原、霧氷で飾られた木々、凛とそびえ立つ岩。期待を超えた美しい世界の展開に暫し
夢うつつになる。吸い寄せられるように銀色の木々の先、尖った岩が立つ山頂南のピークへと向かう。
岩の傍らに立つ。ふいにこの山を初めて訪れた日の光景が甦る。暑い夏の最中、あの日もここに立ち、ぼんやり景色を眺めていた。あれからどれだ
けの年月が経ったのだろう。何年か後、また同じ場所に立ち同じことを思うのだろうな、こんな風にぐるぐる同じことを繰り返しながら年を取っていくのだ
ろうな。一人感慨にふける。曇天の情景はこころの奥深くに呼びかける。
お腹が空いてきた。お昼ご飯にしよう。岩籠山の山頂はまた今度とつぶやき、斜面を駆け降りる。
風を避け岩影に縮こまり、パンをかじりチャイを飲みながら冬の野坂山地の山並みを幾度となく目で追う。青空が広がってきた。ぱっと明るくなった風景
を眺めていると、登り始めに浮かんだ周回コースを歩くのが面倒になる。帰りもブナの林で遊ぼう。重い腰を上げ白銀の平原にさよならをする。
足の向くまま、ブナの木々の間をすり抜け708mと677mの鞍部に戻る。
白く冷たい斜面には、ジグザグとわたしの足跡が刻まれ雑音を感じる。無表情だったブナたちは、つんと澄ました顔で立っている。あれはいったい何だっ
たのだろう・・・可笑しくなる。雪道を辿り下っていくと登山口に着いた。急がば回れということなのね。うんうんと頷く。
新雪の積もった小さな里山を足の向くまま、気の向くままに歩く愉しさ、山の秘密の表情に出合う嬉しさを満喫し、にんまりしながら帰路に就く。