【台高】霧氷の回廊を行く 中奥川源流周回
Posted: 2018年12月18日(火) 21:27
【日 付】2018年12月15日(土)
【山 域】台高 薊岳・笹ヶ峰周辺
【天 候】曇り
【コース】中奥林道駐車地8:20---9:47二階岳---10:27木ノ実ヤ塚---10:56薊岳---12:00三ツ塚13:15---
14:00笹ヶ峰標高点14:20---16:00林道終点---16:16駐車地
先週は通行止めで予定変更を余儀なくされたこともあり、期待していた霧氷に関しては「ハズレ」
になってしまった。今週も条件は申し分ない。中奥川からの周回で笹ヶ峰を目指そう。
中奥林道は整備も万全で、尾根の取付きまで問題なく入ることができた。林業関係者と思しきトラ
ックが通りかかったので、念のためにここに止めていいか聞いてみた。伐採した木の残骸が転がって
いたからである。この奥はヘリが入るのでダメだが、ここはいいという話だ。
林業の作業中の山はこういうことがあるので、仕事の迷惑がかからないに注意することが肝要だ。
実際登っている間、何度もヘリの爆音が聞こえていた。
駐車地の真ん前から斜面に取り付く。急だが斜面を切るように踏み跡が付けられていた。
最初は面白くない植林帯だが、さすがに吉野杉だけあってよく手入れされているので嫌な感じではな
い。晴れの予報を信じて南の方へ来たのに空の色はイマイチ冴えない。目的の霧氷はどうだろうか。
二階岳の南東尾根を歩くのはシャレではないが二回目である。ひとつ北の木ノ実ヤ塚南東尾根と並ん
で、中盤以降はブナとミズナラ・ヒメシャラの見事な樹林を楽しめるルートだ。
まったくヤブのない歩きやすい尾根だが風が冷たい。せめて日差しがあればいいのだが、なかなか
ザックを降ろして休む気にもなれない。雪はうっすらと地面を覆う程度だが、落ち葉のカラフルな色
を覆い隠してモノトーンの世界を演出している。
1200mを超えたあたりから待望の霧氷が現れ始めた。よしよし。これで霧氷の回廊散策は確定だ。
しかし足が重い。条件が良くても予定通りのコースを歩けるのかどうかが心配である。
二階岳の山頂まで来るとブナの巨木が立ち並んで圧倒される。ここから木ノ実ヤ塚を経て薊岳の手
前までが素晴らしい。標高が上がると霧氷の付き方も華やかになってきた。日差しのないのがいかに
も残念である。昼からは少しは期待できるだろうか。
薊岳で今日初めての登山者に会った。大又から登ってきたようだ。少し話をして明神平への尾根に
踏み出した。西風が強いので、東西方向に伸びる尾根に入ればマシになるかと思っていたら今度は北
からの風で適当なランチ場がない。空はやや明るくなってたまに青い部分が覗く。とりあえず明神平
との分岐まで行くしかないか。
木の間越しに開けた視界に入るのは、白鬚岳の向こうに大峰の大普賢岳。これから向かう笹ヶ峰から
続く千石山と赤倉山。そして今歩いて来た木ノ実ヤ塚のどんぐりのような特徴ある姿だ。
こちらの山がびっしりと霧氷に覆われているのに対して白鬚岳は真っ黒でカケラも見えない。川一つ
挟んでいるだけなのにずいぶん違うものだ。この後に見た迷岳方面にもまったく霧氷が見えなかった。
前山まで来ると明神平の南端で数人の登山者がランチタイムを楽しんでいた。ここは風もなく、雪
を乗せた笹原の向こうに水無山と国見岳が見えるいい場所だ。
人の横に陣取るのは嫌なので三ツ塚へ向かう。ここは明神岳方面と明神平へ下る道との三叉路。
結局ここでランチになることが多いような気がする。
ここまで来ると霧氷の密度が違う。どちらを向いても霧氷しか見えないというぐらいの凄まじさで
ある。これに青空が加わればどれほど素晴らしいだろう。時折陽光が差し込んで期待させるが、すぐ
に元のグレーに戻ってしまう繰り返しだ。
風はないが、持ってきたものを全部着込んでも寒いので立ったまま鍋を食べる。幾組ものパーティー
が横を通過して行った。
明神岳は北面をトラバースしてパス。笹ヶ峰三兄弟へ向かう。末弟の登りあたりまで来ると、時間
の経過のせいか霧氷のスケールが小さくなった。それでも霧氷満開の笹ヶ峰を歩くことができて所期
の目的は達成したと言えるだろう。本当ならこっちでランチを楽しみたかったのだが。
標高点のある次兄ピークで大きな声が聞こえた。それも東に伸びる尾根の方からだったので想定外だ。
前を歩いていた女性と会話を交わすしていると、「山日和さん?」と後方の男性から声がかかった。
ありゃ、グーさんじゃないの。「こんにちわ~」と他人行儀な挨拶をしている場合じゃなかったのだ。
女性はナズナさんだった。名前だけはよく聞いていたが会うのは初めてである。
しばし歓談した後、大又へ戻る御一行と別れて瀬戸越へ向かった。
地形図に破線が書かれている瀬戸越の旧道は、10年ほど前に一度辿ったことがある。途中で左の谷の
左岸へ移る厳しい道だった。今ではどうなっているかわからないし、雪の時期に歩く道でもないので、
尾根通しに進んで最後は林道終点へ着地する算段である。
次のピークから下降開始。ヤセ気味の尾根だがヤブもなく歩きやすい。一ヶ所だけガケ状の急斜面
が出てくるが、右から回り込んでトラバース。だんだん雪も少なくなってくるとようやく晴れ間が広
がり始めた。
木立のない展望地があり、真正面に木ノ実ヤ塚、振り返れば明神岳から笹ヶ峰へと、今日歩いてきた
尾根が一望だ。それも1200mラインあたりを境にして上が真っ白、下が茶色に色分けされている。
尾根の下部はさすがに潅木のヤブっぽくなってきた。Ca1050mあたりから北西への尾根に入らない
といけなかったのだが、白いテープにつられて気が付けば南西への尾根を下っていた。
地形図を見ればそのまま下りて行けそうにも見えるが、このあたりの尾根はどこで岩壁にぶちあたる
かわからないので安易に下ることはできない。そこで斜面を戻り気味にトラバースして行くと再びテ
ープが現われた。これが正解か。しかしそのテープはすぐに途切れて急な斜面が広がるのみ。50mほ
ど下には植林が見えているのであそこまで下ればなんとかなるだろう。
植林の中には明瞭な杣道があり、やがて林道の橋が見えてきた。このまままっすぐ下れば川に出て
しまうので、右手の橋の方へトラバースして行く。橋の上まで来たがどうにも下りられそうにない。
さらにトラバースして行くと、急に足元がズルっと滑った。一瞬何が起きたのかわからず、四つん這
いになって持ちこたえたが、足はまったくグリップせずにバタバタするのみ。なんとか手で支えなが
ら足を脇に伸ばして脱出した。振り返ってみると、そこは谷状の濡れた岩盤に薄く土砂が乗っている
状態だった。普通の斜面のつもりで足を出したら抵抗なく滑ってしまったというわけだ。
その下は10m以上切れ落ちていた。やばいやばい。
そこからすぐに着地点があった。残置ロープがぶら下がっているが、ハングしていて気楽に下りられ
るところではない。
結局ロープは使わず、横の木の根をつかんで懸垂方式で着地。最後まで気の抜けない下山路だった。
山日和
【山 域】台高 薊岳・笹ヶ峰周辺
【天 候】曇り
【コース】中奥林道駐車地8:20---9:47二階岳---10:27木ノ実ヤ塚---10:56薊岳---12:00三ツ塚13:15---
14:00笹ヶ峰標高点14:20---16:00林道終点---16:16駐車地
先週は通行止めで予定変更を余儀なくされたこともあり、期待していた霧氷に関しては「ハズレ」
になってしまった。今週も条件は申し分ない。中奥川からの周回で笹ヶ峰を目指そう。
中奥林道は整備も万全で、尾根の取付きまで問題なく入ることができた。林業関係者と思しきトラ
ックが通りかかったので、念のためにここに止めていいか聞いてみた。伐採した木の残骸が転がって
いたからである。この奥はヘリが入るのでダメだが、ここはいいという話だ。
林業の作業中の山はこういうことがあるので、仕事の迷惑がかからないに注意することが肝要だ。
実際登っている間、何度もヘリの爆音が聞こえていた。
駐車地の真ん前から斜面に取り付く。急だが斜面を切るように踏み跡が付けられていた。
最初は面白くない植林帯だが、さすがに吉野杉だけあってよく手入れされているので嫌な感じではな
い。晴れの予報を信じて南の方へ来たのに空の色はイマイチ冴えない。目的の霧氷はどうだろうか。
二階岳の南東尾根を歩くのはシャレではないが二回目である。ひとつ北の木ノ実ヤ塚南東尾根と並ん
で、中盤以降はブナとミズナラ・ヒメシャラの見事な樹林を楽しめるルートだ。
まったくヤブのない歩きやすい尾根だが風が冷たい。せめて日差しがあればいいのだが、なかなか
ザックを降ろして休む気にもなれない。雪はうっすらと地面を覆う程度だが、落ち葉のカラフルな色
を覆い隠してモノトーンの世界を演出している。
1200mを超えたあたりから待望の霧氷が現れ始めた。よしよし。これで霧氷の回廊散策は確定だ。
しかし足が重い。条件が良くても予定通りのコースを歩けるのかどうかが心配である。
二階岳の山頂まで来るとブナの巨木が立ち並んで圧倒される。ここから木ノ実ヤ塚を経て薊岳の手
前までが素晴らしい。標高が上がると霧氷の付き方も華やかになってきた。日差しのないのがいかに
も残念である。昼からは少しは期待できるだろうか。
薊岳で今日初めての登山者に会った。大又から登ってきたようだ。少し話をして明神平への尾根に
踏み出した。西風が強いので、東西方向に伸びる尾根に入ればマシになるかと思っていたら今度は北
からの風で適当なランチ場がない。空はやや明るくなってたまに青い部分が覗く。とりあえず明神平
との分岐まで行くしかないか。
木の間越しに開けた視界に入るのは、白鬚岳の向こうに大峰の大普賢岳。これから向かう笹ヶ峰から
続く千石山と赤倉山。そして今歩いて来た木ノ実ヤ塚のどんぐりのような特徴ある姿だ。
こちらの山がびっしりと霧氷に覆われているのに対して白鬚岳は真っ黒でカケラも見えない。川一つ
挟んでいるだけなのにずいぶん違うものだ。この後に見た迷岳方面にもまったく霧氷が見えなかった。
前山まで来ると明神平の南端で数人の登山者がランチタイムを楽しんでいた。ここは風もなく、雪
を乗せた笹原の向こうに水無山と国見岳が見えるいい場所だ。
人の横に陣取るのは嫌なので三ツ塚へ向かう。ここは明神岳方面と明神平へ下る道との三叉路。
結局ここでランチになることが多いような気がする。
ここまで来ると霧氷の密度が違う。どちらを向いても霧氷しか見えないというぐらいの凄まじさで
ある。これに青空が加わればどれほど素晴らしいだろう。時折陽光が差し込んで期待させるが、すぐ
に元のグレーに戻ってしまう繰り返しだ。
風はないが、持ってきたものを全部着込んでも寒いので立ったまま鍋を食べる。幾組ものパーティー
が横を通過して行った。
明神岳は北面をトラバースしてパス。笹ヶ峰三兄弟へ向かう。末弟の登りあたりまで来ると、時間
の経過のせいか霧氷のスケールが小さくなった。それでも霧氷満開の笹ヶ峰を歩くことができて所期
の目的は達成したと言えるだろう。本当ならこっちでランチを楽しみたかったのだが。
標高点のある次兄ピークで大きな声が聞こえた。それも東に伸びる尾根の方からだったので想定外だ。
前を歩いていた女性と会話を交わすしていると、「山日和さん?」と後方の男性から声がかかった。
ありゃ、グーさんじゃないの。「こんにちわ~」と他人行儀な挨拶をしている場合じゃなかったのだ。
女性はナズナさんだった。名前だけはよく聞いていたが会うのは初めてである。
しばし歓談した後、大又へ戻る御一行と別れて瀬戸越へ向かった。
地形図に破線が書かれている瀬戸越の旧道は、10年ほど前に一度辿ったことがある。途中で左の谷の
左岸へ移る厳しい道だった。今ではどうなっているかわからないし、雪の時期に歩く道でもないので、
尾根通しに進んで最後は林道終点へ着地する算段である。
次のピークから下降開始。ヤセ気味の尾根だがヤブもなく歩きやすい。一ヶ所だけガケ状の急斜面
が出てくるが、右から回り込んでトラバース。だんだん雪も少なくなってくるとようやく晴れ間が広
がり始めた。
木立のない展望地があり、真正面に木ノ実ヤ塚、振り返れば明神岳から笹ヶ峰へと、今日歩いてきた
尾根が一望だ。それも1200mラインあたりを境にして上が真っ白、下が茶色に色分けされている。
尾根の下部はさすがに潅木のヤブっぽくなってきた。Ca1050mあたりから北西への尾根に入らない
といけなかったのだが、白いテープにつられて気が付けば南西への尾根を下っていた。
地形図を見ればそのまま下りて行けそうにも見えるが、このあたりの尾根はどこで岩壁にぶちあたる
かわからないので安易に下ることはできない。そこで斜面を戻り気味にトラバースして行くと再びテ
ープが現われた。これが正解か。しかしそのテープはすぐに途切れて急な斜面が広がるのみ。50mほ
ど下には植林が見えているのであそこまで下ればなんとかなるだろう。
植林の中には明瞭な杣道があり、やがて林道の橋が見えてきた。このまままっすぐ下れば川に出て
しまうので、右手の橋の方へトラバースして行く。橋の上まで来たがどうにも下りられそうにない。
さらにトラバースして行くと、急に足元がズルっと滑った。一瞬何が起きたのかわからず、四つん這
いになって持ちこたえたが、足はまったくグリップせずにバタバタするのみ。なんとか手で支えなが
ら足を脇に伸ばして脱出した。振り返ってみると、そこは谷状の濡れた岩盤に薄く土砂が乗っている
状態だった。普通の斜面のつもりで足を出したら抵抗なく滑ってしまったというわけだ。
その下は10m以上切れ落ちていた。やばいやばい。
そこからすぐに着地点があった。残置ロープがぶら下がっているが、ハングしていて気楽に下りられ
るところではない。
結局ロープは使わず、横の木の根をつかんで懸垂方式で着地。最後まで気の抜けない下山路だった。
山日和