【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

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yamaneko0922
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登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
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【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by yamaneko0922 »

【 日 付 】2018年11月18日(日)
【 山 域 】若狭
【メンバー】yamaneko0922、家内、flatwell
【 天 候 】晴れのち曇り
【 ルート 】粟柄河合谷林道と折戸谷林道の分岐点近くに駐車7:30~09:04新庄乗越09:09~12:52芦谷山13:30~15:07庄部谷山15:11~17:08ゴール地点

芦谷山、庄部谷山、いずれも地図にも山名が記載されていない山なので人口に膾炙しているとは到底いい難い山だろう。しかし驚くべきことに、このサイトでは過去の山行記録を見てもよく行かれているようでもあり、かなりメジャーな山々なのではないだろうか。芦谷山は丁度2ヶ月前に赤坂山から三国岳を経て野坂岳にかけて長男、次男を伴って縦走したところであった。その際に、地図を見ていると芦谷山の東の山腹に小さな湿原があることに気がつく。南北に約300m、幅50mほど、それなりの広さを有する湿原である。しかし、この湿原湿原に関する記載はネットでもほとんど見当たらず、どうやらその呼称すらはっきりしない。知られざる湿原か・・・訪ねてみたいという好奇心、冒険心が掻き立てられるのは私だけだろうか。

今回の山行を同行して頂くことになったflatwellさんにこの湿原を訪れる計画を提案すると、以前から庄部谷山に登ってみたいと思っておられたということで、この湿原と庄部谷山を組み合わせて周回する山行を計画することとなった。まず湿原に辿り着くルートであるが、黒河川に沿って走る黒河林道からすぐ右手に分岐して芦谷山の山腹を縫うように進む林道が湿原の近くをこの通過しているので、当初、この林道を北から南下して湿原に至るということを目論む。しかしflatwellさんの知人からこの林道は湿原の手前で大きく崩壊しているとの情報が入る。そこで、新庄の奥、折戸谷から峠を越えて、この林道に至るというコースをflatwellさんが考えて下さる。

朽木でflatwellさんと合流したのは6時であったが、粟柄河合谷林道の起点のあたりに車を停めて、折戸谷林道を歩きはじめたのは7時半過ぎであった。あるき始めると間もなく二台ほど車がほぼ立て続けに我々を追い越してゆく。赤坂山の登山口に辿り着くと、後から来た福井ナンバーの車が停められており、身支度を整えておられるところであった。どうやら赤坂山をピストン往復のご予定らしい。
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赤坂山登山口を過ぎると林道には堆積する落葉の量が増える。最初に追い越していかれた大阪ナンバーの車がなかなか見当たらない。果たしてどこまでの行かれたのだろうかと怪訝に思いながら林道を進んでいくと、忽然と広い平地に出る。その向こうでようやく大阪ナンバーが目に入る。車の主が山行の準備を整えられておられた。こんなところで人に遭遇すること自体が驚きとしかいいようがない。まず我々がこれから目指す湿原のことをご存知であり、そこに至る経路もすぐに理解される。これから通過する三国山と芦谷山の間の鞍部が新庄乗越と呼ばれる地点であることを教えて頂く。上品な風貌でありながらもカリスマ的なオーラ、どう考えても只者ではなさそうだ。

やがて前方に小さな小屋跡が見えてくると林道の終点が近い。あたりにはトチノキの大樹が目立つ。林道上は苔に覆われ、モス・グリーンが美しい林道はその終点の手前で大きく崩落している。後ろから先程の男性がすぐに追いついて来られる。この折戸谷から芦谷山に向かって伸びている沢に沿って登っていかれるらしい。男性とお別れすると、新庄乗越へと至る谷筋を見つけるまでルート・ファインディングに苦慮したが、やがて目当ての谷に入ると、沢にそって薄いが明瞭な踏み跡を辿ることが出来る。

新庄乗越を過ぎると途端に赤テープが頻繁に現れる。踏み跡も明瞭であり、道を塞ぐ倒木もほとんどない。間もなく黒河川側の林道に出る。ここからは林道歩きとなるので快足に進むだろうと思ったのは大きな間違いであった。快適な林道歩きが出来たのは最初のわずか数10mほどであった。すぐに林道には法面からほぼ水平に伸びる樹が目立ちはじめる。冬の豪雪のせいでこうなるのであろう。それにしても意外なほど立派に成長した樹々が多い。果たしてどのくらい放置したらこのようになるのだろう。樹の成長ぶりからすると、どうやら数年という単位ではなさそうだ。小さな谷を越えるところで、忽然と林道が消えている。そんな馬鹿なと思うのだが、先に林道が見当たらない・・・谷を渡る橋がもともとあったのが流されたか崩落したかで消失したのだろう。谷から先は林道が藪化しているのだった。既に多くの下草が落葉しているからいいものの葉をつけた状態であれば半端ない藪こぎとなったに違いない。しかし、法面から水平に伸びだす樹々のお陰で倒木を乗り越えるのと対して変わらない歩き難さである。踏み跡ではない、林道そのものを探すのが容易ならざる状況といっても信じていただけるだろうか。
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林道の展望地にでは真紅の紅葉の間から芦原岳を望む。林道の上の樹々が少なくなり歩きやすくなったと思うと、ようやく黒河林道から周回する林道に辿り着く。黒河川の源流に沿って林道は北上してゆく。こちらは先ほどの林道と異なり、随所に舗装された箇所もあり、それなりに保全が行き届いているようだ。湿原の南にかけて林道は緩やかに上り坂となっている。
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林道脇には多くのススキの穂が満開である。逆光にみると、透き通った青空から降り注ぐ陽光に照らされて、銀色に輝く穂先が風にそよぐ。しかし、そろそろ湿原も近くなっただろうかというあたりで、林道は突然、大きく崩落している。崩落した林道の端を辿ってなんとか通過することは出来るが、自転車を担いで通過するのも困難と思われる。崩落地を越えて林道を登ると前方から大勢の人の声がする。およそ10名ほどのパーティーが林道の先におられる。先方もリンリンと熊鈴を鳴らしながら林道を登る我々に気がついて驚かれたようだ。果たして一体どこからと疑問に思われるのも無理はない。先方はなんと我々が目指す湿原を訪れたということ。林道は何箇所か崩落地点はあったものの問題なく通過することが可能であったとのことである。ここからは我々が辿って来た林道を南下し、黒河林道を周回されるという。それにしても、滅多に訪れる人のいないであろう湿原を目指した2つのパーティーとこうして出遭うとは、こちらも驚き意外の何ものでもない。
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丁度、遭遇した場所が湿原の南端部へと下る尾根の下降点であった。尾根からは新鮮な踏み跡がついている。今しがたのパーティーが通過した跡だろう。さて湿原に降り立ってみると、足元は泥濘状であり、ズブズブと靴が沈んでいく。乾燥化が進んで草地になっているのではないかと心配されたが、それなりの湿原である。動物の踏み跡を辿ってみると、動物はやはり歩きやすいところを選んで通っているのだろう。踏み跡を外さなければあまり沈まずに湿原の中に少し入ることが出来た。既にここまででかなりの時間を要してしまっているので、改めて捲土重来したいという探検意欲を残したまま、今回はこの湿原の南端のみで引き上げることにする。

湿原から上がるとここからが今回の山行における最大のハードル、芦谷山への登りである。まずはその東にある792m峰を目指すことになる。湿原から上がった尾根は斜度は急であるが、下草の少なそうなブナ林が見えている。後になって考えれば、急登を厭わずにこの尾根に取り付いていたら良かったのかもと思うのであった。少し林道を北上したところで次の尾根が見える。尾根に取り付くべく林の中に突入したところ、猛烈な灌木の藪である。先程の林道でもそうであったように樹々は斜面から水平方向に生えているので、普通の藪漕ぎの感覚とは異なる。尾根を登るにつれて樹木が低くなると、心配していた事態に遭遇する。蔓性のイバラが多いのである。
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一本だけ、古いビニールテープが巻きつけられた樹を目にする。尾根がなだらかになる地点を過ぎるとブナが多くなり、藪は少しましになる。しかし、尾根の上部ではブナも少なくなり、再び灌木の藪となる。藪こぎには難儀するが、低木が多いので尾根からは絶好の見晴らしである。東には金糞岳、横山岳、南東の方角には芦原岳から乗鞍岳へと至る高島トレイルの上には伊吹山が顔を覗かせる。近くの岩籠山の上には、綿をちぎったかのような羊雲が一片、すっかり晴れ渡った青空に浮かんでいる。

藪と格闘するうちに792m峰のピークが近づくにつれブナの樹が多くなると、斜面もなだらかになり、ようやく歩きやすくなった。792m峰からは芦谷山にかけて微かな踏み跡がある。おそらく他の尾根から792m峰に登られる方がおられるのだろう。北の斜面からはすぐ北に野坂岳を望むことが出来る。「ヤッホー」という声が聞こえるのは、どうやら野坂岳の山頂からのようだ。

芦谷山の山頂に辿り着くとランチ休憩とする。この日はまずベーコンとシメジのバター炒めにライスを投入してリゾット風に仕上げる。もう一つの鍋では崎陽軒の焼売を鍋で蒸す。flatwellさんが持参した水を飲みきってしまったというので、私のペットボトルの水を半分差し上げる。山頂は樹林の中ではあるが、南側の斜面に出ると樹の間からは周囲の山々の眺望が得られる。前回、縦走した際にも芦谷山で昼食をとったのだが、このあたりからはガスの中だったので展望の良さを知る由もなかった。
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この芦谷山の周囲は樹高の高いブナの林が見事であり、随所に幹の太い大樹が散見する。前回訪れたときから丁度2ヶ月前が経過しているのだが、ブナは落葉して森林の景観が全く異なる。壮麗な森の雰囲気は相変わらずであるが、落葉による茶色いカーペットを敷き詰めた中の明るい林はそれはそれで綺麗である。この頃になると先程までの青空が一変して、乳液を溶かしたかのような薄曇りの空になる。雲の彼方から太陽の鈍い光がブナの林に届くと、景色の中に美しい樹影が浮かび上がるようだ。
芦谷山からなだらかな稜線を南に下ると、樹間からは右手に伸びる稜線とその先にこれから赴く庄部谷山を望むことが出来る。庄部谷山への稜線に入るとアップダウンを繰り返しながら進む。踏み跡は不明瞭であるが、ブナの林の尾根筋は藪は少ないので、ルート・ファインディングに苦慮することはない。

庄部谷山の手前のピークで山日和さんと再びお遭いする。「庄部谷山から西側の斜面を下る尾根は支尾根が多いので、道迷いの可能性が大きい。初めてなのであれば避けた方が良いだろう。南に下る尾根にはどちらも道がついているが、車を停めたあたりまで下ることの出来る長い尾根に入るにはピークを下ったところに広い平地があるので、そこを大きく右手に曲がる必要がある」・・・と教えて頂く。驚くほどこのマイナーな山域にお詳しい。
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庄部谷山の山頂の南では尾根上にある多くのイワウチワに花が咲いているのにまず家内が気がついた。今年はあちこちの山でイワカガミの秋咲きをよく目にしたが、イワウチワも例外ではないようだ。少し嬉しい気持ちになるが、度重なる台風を含む異常気象のせいかと思うと将来が心配ではある。

さて、庄部谷山からは今回の山行の最終章に相応しい、非常に美しい光景が待っていた。南になだらかな尾根を下ると、教えて頂いたようにすぐに広い平地に出る。この平地を右に大きく曲がると目指す尾根に入ることが出来た。教えて頂いた情報がなければ迷いやすいポイントであったと思われる。この尾根は左手の黒谷に沿って南下しており、他のレコで黒谷右岸尾根とされていることを後で知る。落葉を敷き詰めたカーペットの上に美しいブナ林が延々と続く。
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やがて送電線鉄塔が二本連続する場所に出るのだが、その向こうには草地で覆われたピークが目に入る。三角点ピークの583m峰のようだ。ピークに辿り着くとあたりは一面のすすきの原であり、360度の好展望が開ける。東には三国山から赤坂岳、大谷山を経て大御影山と高島トレイルの藍鼠色のシルエット、西には雲谷山の彼方に落日の光芒が遠い雲の隙間から零れ落ちている。

ここからは南に下る尾根が複数本見えるが、ススキの斜面を下ると斜面を左方向にすすむ踏み跡とそのさきにピンクテープが目に入る。踏み跡を辿ってみるとすぐに、ほとんど地面には埋没はしているものの、見覚えがある黒いプラスチック製の階段が目に入る。薄い踏み跡を辿ると最後の送電線鉄塔に出る。鉄塔からは送電線巡視路は左手の斜面をトラバースしていく。踏み跡のお陰で急斜面を通過出来るが、積雪時は通過が困難なことが予想される。最後は巡視路を見失うが川まではあと僅かだったので斜面をそのまま下ると、斜面の左手に登っていく黒い階段を見つけるのだった。川にかけられた巡視路用の橋は無残にも落ちているが、水量が少ないせいか問題なく渡渉可能であった。明るいうちに林道にたどり着いて一安心である。車を停めた場所まで歩くうちに、我々の下山を待っていてくれたかのようにあたりは急速に暗くなっていくのであった。

さすがに山行の後半ではかなり喉が乾くのだった。flatwellさんが道端に美味しい水が湧き出しているところを教えて下さる。車のライトで照らして下さって水を汲んでいると、後ろから大阪ナンバーの車が来られた・・・山行の後にこのソロの男性こそがやぶこぎネットを主催する山日和さんであることを知る。
山日和さんにお遭いし、そしてこのやぶこぎネットを知ったという点で、この山行の意義が私にとってはとてつもなく大きなものに思われるのであった。

※上記記事はヤマレコにおける記録を大幅に加筆・改訂したものです。
https://www.yamareco.com/modules/yamare ... 53966.html
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山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
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Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by 山日和 »

yamanekoさん、こんばんは。

芦谷山、庄部谷山、いずれも地図にも山名が記載されていない山なので人口に膾炙しているとは到底いい難い山だろう。しかし驚くべきことに、このサイトでは過去の山行記録を見てもよく行かれているようでもあり、かなりメジャーな山々なのではないだろうか。

まあ、メジャーとは言いませんが、特別珍しい山でないことは確かですね。
現地でのやぶメンとの遭遇もたまにあります。 :D

芦谷山は丁度2ヶ月前に赤坂山から三国岳を経て野坂岳にかけて長男、次男を伴って縦走したところであった。その際に、地図を見ていると芦谷山の東の山腹に小さな湿原があることに気がつく。南北に約300m、幅50mほど、それなりの広さを有する湿原である。しかし、この湿原湿原に関する記載はネットでもほとんど見当たらず、どうやらその呼称すらはっきりしない。知られざる湿原か・・・訪ねてみたいという好奇心、冒険心が掻き立てられるのは私だけだろうか。

「私」だけじゃないんですねえ。 :mrgreen:
13年前に私も行きました。地図を見てれば気になりますよね。湿地マークもそうですが、同じ黒河川の支流の源頭が角を突き合わせる
ような地形も私の興味を惹きました。揖斐川源流のウソ越のように、遡行して行って反対側の谷を下ったらもとの場所に出たという。
その時のレポです。
http://old.yabukogi.net/forum/253.html

その向こうでようやく大阪ナンバーが目に入る。車の主が山行の準備を整えられておられた。こんなところで人に遭遇すること自体が驚きとしかいいようがない。まず我々がこれから目指す湿原のことをご存知であり、そこに至る経路もすぐに理解される。これから通過する三国山と芦谷山の間の鞍部が新庄乗越と呼ばれる地点であることを教えて頂く。上品な風貌でありながらもカリスマ的なオーラ、どう考えても只者ではなさそうだ。

上品な風貌とか言われたのは生まれて初めてです。yamanekoさん、視力は大丈夫ですか? :mrgreen:
タダ者ではなく変わり者だというのは間違いないですが。
折戸谷の入口あたりで追い越したので、まさか林道の奥まで来られるとは思いませんでした。こっちがびっくりしましたよ。

間もなく黒河川側の林道に出る。ここからは林道歩きとなるので快足に進むだろうと思ったのは大きな間違いであった。快適な林道歩きが出来たのは最初のわずか数10mほどであった。すぐに林道には法面からほぼ水平に伸びる樹が目立ちはじめる。冬の豪雪のせいでこうなるのであろう。

この林道がかなりひどい状況だというのはかなり前から聞いてました。

踏み跡ではない、林道そのものを探すのが容易ならざる状況といっても信じていただけるだろうか。

廃林道ってのはそんなもんですよね。どうしてここまで形がなくなるのかと思うことがしばしばあります。

およそ10名ほどのパーティーが林道の先におられる。先方もリンリンと熊鈴を鳴らしながら林道を登る我々に気がついて驚かれたようだ。果たして一体どこからと疑問に思われるのも無理はない。先方はなんと我々が目指す湿原を訪れたということ。林道は何箇所か崩落地点はあったものの問題なく通過することが可能であったとのことである。ここからは我々が辿って来た林道を南下し、黒河林道を周回されるという。それにしても、滅多に訪れる人のいないであろう湿原を目指した2つのパーティーとこうして出遭うとは、こちらも驚き意外の何ものでもない。

これは驚きです。 :o

丁度、遭遇した場所が湿原の南端部へと下る尾根の下降点であった。尾根からは新鮮な踏み跡がついている。今しがたのパーティーが通過した跡だろう。さて湿原に降り立ってみると、足元は泥濘状であり、ズブズブと靴が沈んでいく。乾燥化が進んで草地になっているのではないかと心配されたが、それなりの湿原である。

私は期待が大き過ぎたせいか、ガッカリ感の方が強かったです。 :oops:

湿原から上がるとここからが今回の山行における最大のハードル、芦谷山への登りである。まずはその東にある792m峰を目指すことになる。湿原から上がった尾根は斜度は急であるが、下草の少なそうなブナ林が見えている。後になって考えれば、急登を厭わずにこの尾根に取り付いていたら良かったのかもと思うのであった。

いや、同じですよ。これを「隣の芝生は青い法則」と言います。隣の尾根はやたら快適そうに見えるものなんです。

藪と格闘するうちに792m峰のピークが近づくにつれブナの樹が多くなると、斜面もなだらかになり、ようやく歩きやすくなった。792m峰からは芦谷山にかけて微かな踏み跡がある。おそらく他の尾根から792m峰に登られる方がおられるのだろう。

一番楽なのは、北東の尾根ですね。無雪期でも問題なく歩けます。いいブナも多いです。

芦谷山の山頂に辿り着くとランチ休憩とする。この日はまずベーコンとシメジのバター炒めにライスを投入してリゾット風に仕上げる。もう一つの鍋では崎陽軒の焼売を鍋で蒸す。flatwellさんが持参した水を飲みきってしまったというので、私のペットボトルの水を半分差し上げる。

ちゃんと山メシ作るんですね。うらやましい。しかしここで水がなくなるとは、まだ先の方が長いじゃないですか。

山頂は樹林の中ではあるが、南側の斜面に出ると樹の間からは周囲の山々の眺望が得られる。前回、縦走した際にも芦谷山で昼食をとったのだが、このあたりからはガスの中だったので展望の良さを知る由もなかった。

私も山頂でランチすることが多いですが、展望はハナから期待してません。いつも西斜面に座ってブナを肴にビールです。 :lol:

この芦谷山の周囲は樹高の高いブナの林が見事であり、随所に幹の太い大樹が散見する。

ここから806mまでは尾根芯を外して西側斜面をトラバースして歩くのがベストです。素晴らしい森ですね。

庄部谷山の手前のピークで山日和さんと再びお遭いする。「庄部谷山から西側の斜面を下る尾根は支尾根が多いので、道迷いの可能性が大きい。初めてなのであれば避けた方が良いだろう。南に下る尾根にはどちらも道がついているが、車を停めたあたりまで下ることの出来る長い尾根に入るにはピークを下ったところに広い平地があるので、そこを大きく右手に曲がる必要がある」・・・と教えて頂く。驚くほどこのマイナーな山域にお詳しい。

もう下りたものだと思ってました。庄部谷山で1時間半ぐらいのんびりしていたのに現れないから、てっきりコース変更したものだと。
お話したように庄司谷山から北西面への下山は尾根が複雑で、一筋縄ではいきません。夕暮れが迫ってくればなおさらですね。

庄部谷山の山頂の南では尾根上にある多くのイワウチワに花が咲いているのにまず家内が気がついた。今年はあちこちの山でイワカガミの秋咲きをよく目にしたが、イワウチワも例外ではないようだ。

へえー、この季節にイワウチワが咲いてましたか。私は見たことないです。

さて、庄部谷山からは今回の山行の最終章に相応しい、非常に美しい光景が待っていた。南になだらかな尾根を下ると、教えて頂いたようにすぐに広い平地に出る。この平地を右に大きく曲がると目指す尾根に入ることが出来た。教えて頂いた情報がなければ迷いやすいポイントであったと思われる。この尾根は左手の黒谷に沿って南下しており、他のレコで黒谷右岸尾根とされていることを後で知る。落葉を敷き詰めたカーペットの上に美しいブナ林が延々と続く。

この尾根にはかなり大きなブナの巨木がありますね。傾斜も緩く、楽しんで歩ける尾根です。東隣の尾根は巨木はありませんがいい尾根です。

やがて送電線鉄塔が二本連続する場所に出るのだが、その向こうには草地で覆われたピークが目に入る。三角点ピークの583m峰のようだ。ピークに辿り着くとあたりは一面のすすきの原であり、360度の好展望が開ける。東には三国山から赤坂岳、大谷山を経て大御影山と高島トレイルの藍鼠色のシルエット、西には雲谷山の彼方に落日の光芒が遠い雲の隙間から零れ落ちている。

この尾根の大展望地です。夕暮れ前の最後の光が作る光景は美しいですね。でもあまりゆっくりとはしていられません。

踏み跡を辿ってみるとすぐに、ほとんど地面には埋没はしているものの、見覚えがある黒いプラスチック製の階段が目に入る。薄い踏み跡を辿ると最後の送電線鉄塔に出る。鉄塔からは送電線巡視路は左手の斜面をトラバースしていく。

このプラ階段は巡視路の証。これが出てくれば安心です。ただ、あちこちでかなり荒れて道の原型を留めていないところも多いですが。

明るいうちに林道にたどり着いて一安心である。車を停めた場所まで歩くうちに、我々の下山を待っていてくれたかのようにあたりは急速に暗くなっていくのであった。

私の方が少し早く下山していたようですね。この日は後半雲に覆われたせいもあり、暗くなるのが早かったようです。

さすがに山行の後半ではかなり喉が乾くのだった。flatwellさんが道端に美味しい水が湧き出しているところを教えて下さる。車のライトで照らして下さって水を汲んでいると、後ろから大阪ナンバーの車が来られた・・・山行の後にこのソロの男性こそがやぶこぎネットを主催する山日和さんであることを知る。
山日和さんにお遭いし、そしてこのやぶこぎネットを知ったという点で、この山行の意義が私にとってはとてつもなく大きなものに思われるのであった。

道のど真ん中に止めてる車があったのでびっくりしましたよ。最初は事故かと思いました。
fiatwellさんはこんなところを車が通らないだろうと思ったとFBに書いてましたが、一応県道で生活道路ですからね。 :mrgreen:
しかしこうやってyamanekoさんがやぶこぎデビューを果たしてくれたことで、私の営業活動の甲斐もあったというものです。

                         山日和

yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by yamaneko0922 »

以前の山行記録もご紹介頂き、有難うございます。毎度のことかと思われますが、山行記録の内容のみならず、情景を彷彿とさせるような文章のqualityの高さに改めて感服しつつ拝読させて頂きました。
「私」だけじゃないんですねえ。
この山域の地図を眺めると否が応でも目につく湿原だと思いますので、ここを訪れる人がいない筈はないと思ってはいました。しかし、まさか折戸谷林道の奥で出遭うとは・・・そのような場所で出遭う人物だからこそ、とも考えられる訳ではありますが。
ちなみに湿原近くの林道で出遭ったパーティーは登山ではなくきのこ狩りが目的だったようです。先方も相当に驚いておられるように思われました。
yamanekoさん、視力は大丈夫ですか?
視力はしばらく前まで2.0でした。私の家内も同様の印象でしたが、裸眼です。
私は期待が大き過ぎたせいか、ガッカリ感の方が強かったです
お遭いした時の口ぶりからはそうなのかと思われましたが、まだ私の中では期待感が残っていますので、改めて違う季節に訪れてみたいと思います。
いや、同じですよ。これを「隣の芝生は青い法則」と言います。隣の尾根はやたら快適そうに見えるものなんです。
一番楽なのは、北東の尾根ですね。無雪期でも問題なく歩けます。いいブナも多いです。
以前の山行記録からすると、登られのは「隣の尾根」だったのでしょうね。山行記録を読むまでは、次回はこの尾根をと思っていましたが、お薦めに従って、北東尾根にします。
ちゃんと山メシ作るんですね。
子供連れだったり他の人と同行する時くらいかもしれません。しかし、廃村八丁のようなところではランチに時間をかけるべきと思いました。
へえー、この季節にイワウチワが咲いてましたか。私は見たことないです。
記録では時間が前後してしまったのですが、お遭いしたポイントのわずかに手前でした。山日和さんがまずflatwellさんにお遭いして、我々は遅れて到着したのですが、その間にイワウチワの写真を撮っていたのでした。
東隣の尾根は巨木はありませんがいい尾根です。
この尾根もとても気になっておりました。是非、歩いてみたいと思います。
しかしこうやってyamanekoさんがやぶこぎデビューを果たしてくれたことで、私の営業活動の甲斐もあったというものです。
そしてこのサイトをご紹介下さったことに感謝しております。okuさんとのやり取りにも書かれておられましたが、こうした出遭いの有り難さを痛切に感じた山行でした。
山猫 🐾
SHIGEKI
記事: 1028
登録日時: 2011年7月25日(月) 18:30

Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by SHIGEKI »

yamaneko0922さん 初めまして

【 ルート 】粟柄河合谷林道と折戸谷林道の分岐点近くに駐車7:30~09:04新庄乗越09:09~12:52芦谷山13:30~15:07庄部谷山15:11~17:08ゴール地点

渋いルートそして読み手を引きつけかつ落ちついた文章 今後のrep楽しみにしております。

不肖Sもこの周辺徘徊しては一夜を明かしたりしておりますので、そのうちお会いするかもしれません。

よろしくお願いします。

   では また 山毛欅の尾根から栃と桂のワンダーランドで

       SHIGEKI
添付ファイル
20181103-PB031131.jpg
yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by yamaneko0922 »

SHIGEKIさん

はじめまして。コメントくださり、どうも有難うございます。

お褒めいただいからではありませんが、SHIGEKIさんの散文詩的な文章、写真の美しさも素晴らしいですね。「高田川 栂谷遡行 烏帽子山」のrep、驚嘆しながら読ませて頂きました。皆さんの山行のレベルには到底、比肩しうるようなものではありませんが、山行文とヴァリルートを愛するものとして、このサイトに参加させて頂きたいと思います。

山日和さんに教えて頂いた庄部谷山や芦谷山の尾根はいずれも訪れてにようと思いますので、SHIGEKIさんとも山中でお遭い出来れば嬉しいです。

ところで、お写真の美しい谷はとても惹かれますが、この庄部谷山のものでしょうか?
山猫 🐾
アバター
山日和
記事: 3573
登録日時: 2011年2月20日(日) 10:12
お住まい: 大阪府箕面市

Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by 山日和 »

yamanekoさん、SHIGEKIさん、横から失礼。

ところで、お写真の美しい谷はとても惹かれますが、この庄部谷山のものでしょうか?

これがお話ししていた甲森谷の「トチとカツラのワンダーランド」です。 :D

                   山日和
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SHIGEKI
記事: 1028
登録日時: 2011年7月25日(月) 18:30

Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by SHIGEKI »

こんばんは。

このサイトに参加させて頂きたいと思います。

大歓迎です。

山日和さんに教えて頂いた庄部谷山や芦谷山の尾根はいずれも訪れてにようと思いますので、SHIGEKIさんとも山中でお遭い出来れば嬉しいです。

忘れた頃に・・・かもしれないですね。

ところで、お写真の美しい谷はとても惹かれますが、この庄部谷山のものでしょうか?

師匠が先にお答えくださいました。

水量少なめ、夏にはなかった倒木有りです。

       SHIGEKI            


[/quote]
yamaneko0922
記事: 539
登録日時: 2018年11月20日(火) 06:39
お住まい: 京都市左京区

Re: 【若狭】湿原~芦谷山~庄部谷山☆やぶこぎネットとの出遭い

投稿記事 by yamaneko0922 »

山日和さん

教えて頂き、それからワンダーランドの素敵なお写真、有難うございます。

SHIGEKIさん、

文脈が読めなくて、申し訳ありません。
有難うございました。
山猫 🐾
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