【鈴鹿】静かな霊仙山を味わう リョウシ・コザトから最高点へ
Posted: 2018年10月11日(木) 20:36
【日 付】2018年10月8日(月)
【山 域】鈴鹿北部 霊仙山周辺
【天 候】晴れ
【コース】白谷出合7:12---8:21リョウシ8:40---9:24コザト---10:02林道出合---11:09岩ノ峰12:16---12:21霊仙山最高点
---13:05近江展望台---13:56ナガサコ---14:28行者の谷---15:01出合---15:24駐車地
初めて霊仙山に登ったのは47年前、中学2年の時だった。山を始めて間もない頃で、3月初めの鈴鹿に雪があ
るとは思わず、ピッケルやアイゼン、ワカンはもちろんスパッツすらなく(第一持っていなかった)、谷山谷の
登山道を靴の中を水浸しにしながら経塚山まで登ったことを覚えている。醒ヶ井の駅に降り立った時、周りの
登山者がみんな物々しい装備に身を固めていたのに驚いたものだ。
それから2年後に柏原から登って本峰の登頂を果たした。眼下に琵琶湖の大観が広がる伸びやかな山容は、その
当時の私の好きな山のベスト10に入る山だった。それ以来数回は登っているものの、今では鈴鹿の他の山に比
べると足の向きにくい山になってしまった。
6年ぶりに向かう霊仙山だが、メインの目的は山頂ではなく、山頂に至る尾根にあるコザトとリョウシという
変わった名前のピークである。河内風穴から権現谷の林道を奥へ入っていく。
深い谷間に刻まれたこの林道は、両岸の高い岩壁の威圧感を感じながら走る道だ。
白谷林道の入口に駐車して右岸尾根に取り付いた。ウォーミングアップ無しのいきなりの急登に喘ぐ。
石灰岩の山特有の白い石が墓石のようにニョキニョキと地面から生えて?いるのが面白い。
722mのリョウシの山頂からは霊仙山南西尾根の近江展望台への急斜面が見えた。あちらもここ同様にカレン
フェルトと呼ばれる墓石状の石の白さが青空に映えて美しい。但しこのあたりは二次林と植林のミックスで、
お世辞にもいい林相だとは言えないのが残念なところだ。
次の829.8m三角点コザト(点名は霊山)まではほぼ暗い植林の中。シダに覆われて歩きづらい林床に、オレンジ
のホオヅキの実がライトを灯したように生っているのが印象的だった。
北の方を見ると、霊仙山の南西尾根が遠く高く横たわり、あそこまで行くのかと思うと気が重くなる。
目指す場所が遠く見える時は体調が良くないか、体力に自信がない時である。調子のいい時は「まだあんなに遠
い」が「もうこんなに近い」と感じるものだ。ウダウダ考えていても仕方がないので前進する。
尾根上はヤセた部分あり、ちょいヤブありで大して面白くもないが、バリハイの雰囲気だけはある。
突然尾根が切り取られて林道が真下に現れた。これが地形図にある林道だと思ってしばらく進んでみたが、ど
うも実際の地形と合わない。5分ほど進むと林道の分岐に出た。どうやらこちらが地形図上の林道合流点のよう
だ。道理でさっきの切通しの地肌はずいぶん新しそうに見えたはずだ。
ここからの林道は並走する尾根に自然林が残されていることもあって落ち着いた雰囲気である。
その尾根を横切るところで再び尾根に乗り直した。しばらくすると霊仙山直下の大急登が始まる。
御池テーブルランド西面のような息もつかせぬ急傾斜の連続で、度々立ち止まって呼吸を整えた。
灌木が消えて視界一面が草地とカレンフェルトだけになれば山頂は近い。
霊仙山最高点の東肩の尾根に出た。目の前の小ピークが岩ノ峰と呼ばれるところか。最高点は指呼の間だが、
こちらの方が人の来る心配がなく落ち着ける。ここでランチタイムとしよう。
西側の展望だけは遮られているが、伊吹山から養老山地、ソノドから烏帽子・三国・御池方面の鈴鹿北部の山々
の眺めは申し分ない。登ってきた尾根は急角度に落ち込んで、よく登ったものだと感心する。
その左隣には県境稜線が伸びているが、ほとんど全部が植林の濃い緑に覆われて食指が動かない。
今日のランチは今シーズン初鍋の得正のカレーうどん。しかしここでアクシデントが発生した。アルミ鍋の底
に穴が開いて水がポタポタと漏れている。急遽コッフェルに移し替えて事無きを得たが、自分にあるまじき失態
である。
最高点に立つとさすがに数人の登山者と出会った。それでも三角点よりは人が少ないのがいい。
ここから見る霊仙山の山上台地の広がりは素晴らしい。緩やかにうねる大洞谷源頭の向こうには琵琶湖の大観が
広がり、改めてこの山は名山だなと思う。難を言えば、沢登りの対象になる谷が皆無だということか。
南西尾根は地面よりカレンフェルトの上を歩く方が多い感じだ。ここを無雪期に歩くのは18年ぶりなのだが、
そんな記憶がない。この登山道をそのまま登山口の今畑まで下りてしまうととんでもなく長い車道歩きがある。
そこで笹峠から地形図の破線を辿って、ナガサコと呼ばれる598m標高点から水平道を歩き、行者の谷を下るこ
とにした。
近江展望台から朝見た通りの強烈な急斜面を下って、笹峠の手前から浅い谷へ入った。ここは暗い植林でまっ
たく面白くなく、足元はシダで絡めとられて何度もこけそうになる。
しかしナガサコまで来ると情景は一変した。突如ここまでがウソのような自然林の台地が現われて心を和ませて
くれる。ブナはほとんどなく、ケヤキと思われる木が主体の林で、それなりの大木もあって実にいいところだ。
この水平道はかなりの幅があり、崩れているところもあるがかなりしっかりした道が付けられていた。
道端に錆びたレールが転がっていたのを見ると、何かの搬出用のトロッコが走っていたのだろう。
この道を破線の最後まで辿ると遠回りだ。行者の谷の二俣あたりへ出るべく適当な斜面を見つけて下ろう。
ところがいくら進めど急斜面は変わらず、下手に下りれば転がって行きそうである。
二俣のポイントを少し過ぎたところで何とか下りられそうな斜面に入った。と言っても普通はここを下りよう
とは思わない傾斜である。やぶこぎのメンバーでもここを下りようと言って同意してくれる人はいないだろう。
なんとか切れ切れの立ち木を繋いで谷底に下り立ったが、ロープを使わないで下りられる限界の斜面だったかも
しれない。
行者の谷は真っ白な谷だ。普段は花崗岩の谷を白い岩と形容しているが、石灰岩の谷は文字通り真っ白で、流
れる水も白く見える。しばらくは水流があったが、やがて伏流となり自然の彫刻のような造形の谷芯を歩くよう
になった。水が流れていれば美しい滝になりそうだ。難所と思われるところにはトラロープもあるのでルートと
してはよく使われているのだろう。
権現谷本流との出合は権現谷の中でも最もゴルジュ状になった場所。対岸に道が見えたがどうやって渡るのか
と思ったら立派な橋が架かっていてひと安心。
車道では何が見えるのか、バードウォッチングと思しきグループが数人望遠鏡を覗き込んでいた。
山日和
【山 域】鈴鹿北部 霊仙山周辺
【天 候】晴れ
【コース】白谷出合7:12---8:21リョウシ8:40---9:24コザト---10:02林道出合---11:09岩ノ峰12:16---12:21霊仙山最高点
---13:05近江展望台---13:56ナガサコ---14:28行者の谷---15:01出合---15:24駐車地
初めて霊仙山に登ったのは47年前、中学2年の時だった。山を始めて間もない頃で、3月初めの鈴鹿に雪があ
るとは思わず、ピッケルやアイゼン、ワカンはもちろんスパッツすらなく(第一持っていなかった)、谷山谷の
登山道を靴の中を水浸しにしながら経塚山まで登ったことを覚えている。醒ヶ井の駅に降り立った時、周りの
登山者がみんな物々しい装備に身を固めていたのに驚いたものだ。
それから2年後に柏原から登って本峰の登頂を果たした。眼下に琵琶湖の大観が広がる伸びやかな山容は、その
当時の私の好きな山のベスト10に入る山だった。それ以来数回は登っているものの、今では鈴鹿の他の山に比
べると足の向きにくい山になってしまった。
6年ぶりに向かう霊仙山だが、メインの目的は山頂ではなく、山頂に至る尾根にあるコザトとリョウシという
変わった名前のピークである。河内風穴から権現谷の林道を奥へ入っていく。
深い谷間に刻まれたこの林道は、両岸の高い岩壁の威圧感を感じながら走る道だ。
白谷林道の入口に駐車して右岸尾根に取り付いた。ウォーミングアップ無しのいきなりの急登に喘ぐ。
石灰岩の山特有の白い石が墓石のようにニョキニョキと地面から生えて?いるのが面白い。
722mのリョウシの山頂からは霊仙山南西尾根の近江展望台への急斜面が見えた。あちらもここ同様にカレン
フェルトと呼ばれる墓石状の石の白さが青空に映えて美しい。但しこのあたりは二次林と植林のミックスで、
お世辞にもいい林相だとは言えないのが残念なところだ。
次の829.8m三角点コザト(点名は霊山)まではほぼ暗い植林の中。シダに覆われて歩きづらい林床に、オレンジ
のホオヅキの実がライトを灯したように生っているのが印象的だった。
北の方を見ると、霊仙山の南西尾根が遠く高く横たわり、あそこまで行くのかと思うと気が重くなる。
目指す場所が遠く見える時は体調が良くないか、体力に自信がない時である。調子のいい時は「まだあんなに遠
い」が「もうこんなに近い」と感じるものだ。ウダウダ考えていても仕方がないので前進する。
尾根上はヤセた部分あり、ちょいヤブありで大して面白くもないが、バリハイの雰囲気だけはある。
突然尾根が切り取られて林道が真下に現れた。これが地形図にある林道だと思ってしばらく進んでみたが、ど
うも実際の地形と合わない。5分ほど進むと林道の分岐に出た。どうやらこちらが地形図上の林道合流点のよう
だ。道理でさっきの切通しの地肌はずいぶん新しそうに見えたはずだ。
ここからの林道は並走する尾根に自然林が残されていることもあって落ち着いた雰囲気である。
その尾根を横切るところで再び尾根に乗り直した。しばらくすると霊仙山直下の大急登が始まる。
御池テーブルランド西面のような息もつかせぬ急傾斜の連続で、度々立ち止まって呼吸を整えた。
灌木が消えて視界一面が草地とカレンフェルトだけになれば山頂は近い。
霊仙山最高点の東肩の尾根に出た。目の前の小ピークが岩ノ峰と呼ばれるところか。最高点は指呼の間だが、
こちらの方が人の来る心配がなく落ち着ける。ここでランチタイムとしよう。
西側の展望だけは遮られているが、伊吹山から養老山地、ソノドから烏帽子・三国・御池方面の鈴鹿北部の山々
の眺めは申し分ない。登ってきた尾根は急角度に落ち込んで、よく登ったものだと感心する。
その左隣には県境稜線が伸びているが、ほとんど全部が植林の濃い緑に覆われて食指が動かない。
今日のランチは今シーズン初鍋の得正のカレーうどん。しかしここでアクシデントが発生した。アルミ鍋の底
に穴が開いて水がポタポタと漏れている。急遽コッフェルに移し替えて事無きを得たが、自分にあるまじき失態
である。
最高点に立つとさすがに数人の登山者と出会った。それでも三角点よりは人が少ないのがいい。
ここから見る霊仙山の山上台地の広がりは素晴らしい。緩やかにうねる大洞谷源頭の向こうには琵琶湖の大観が
広がり、改めてこの山は名山だなと思う。難を言えば、沢登りの対象になる谷が皆無だということか。
南西尾根は地面よりカレンフェルトの上を歩く方が多い感じだ。ここを無雪期に歩くのは18年ぶりなのだが、
そんな記憶がない。この登山道をそのまま登山口の今畑まで下りてしまうととんでもなく長い車道歩きがある。
そこで笹峠から地形図の破線を辿って、ナガサコと呼ばれる598m標高点から水平道を歩き、行者の谷を下るこ
とにした。
近江展望台から朝見た通りの強烈な急斜面を下って、笹峠の手前から浅い谷へ入った。ここは暗い植林でまっ
たく面白くなく、足元はシダで絡めとられて何度もこけそうになる。
しかしナガサコまで来ると情景は一変した。突如ここまでがウソのような自然林の台地が現われて心を和ませて
くれる。ブナはほとんどなく、ケヤキと思われる木が主体の林で、それなりの大木もあって実にいいところだ。
この水平道はかなりの幅があり、崩れているところもあるがかなりしっかりした道が付けられていた。
道端に錆びたレールが転がっていたのを見ると、何かの搬出用のトロッコが走っていたのだろう。
この道を破線の最後まで辿ると遠回りだ。行者の谷の二俣あたりへ出るべく適当な斜面を見つけて下ろう。
ところがいくら進めど急斜面は変わらず、下手に下りれば転がって行きそうである。
二俣のポイントを少し過ぎたところで何とか下りられそうな斜面に入った。と言っても普通はここを下りよう
とは思わない傾斜である。やぶこぎのメンバーでもここを下りようと言って同意してくれる人はいないだろう。
なんとか切れ切れの立ち木を繋いで谷底に下り立ったが、ロープを使わないで下りられる限界の斜面だったかも
しれない。
行者の谷は真っ白な谷だ。普段は花崗岩の谷を白い岩と形容しているが、石灰岩の谷は文字通り真っ白で、流
れる水も白く見える。しばらくは水流があったが、やがて伏流となり自然の彫刻のような造形の谷芯を歩くよう
になった。水が流れていれば美しい滝になりそうだ。難所と思われるところにはトラロープもあるのでルートと
してはよく使われているのだろう。
権現谷本流との出合は権現谷の中でも最もゴルジュ状になった場所。対岸に道が見えたがどうやって渡るのか
と思ったら立派な橋が架かっていてひと安心。
車道では何が見えるのか、バードウォッチングと思しきグループが数人望遠鏡を覗き込んでいた。
山日和