【越美国境】霧氷煌めく夜叉ヶ池から三周ヶ岳へ
Posted: 2018年3月22日(木) 00:01
【日 付】2018年3月17日(土)
【山 域】越美国境 三周ヶ岳周辺
【天 候】快晴
【メンバー】わしたか(友情出演)、山日和
【コース】広野ダム6:50---8:15林道終点8:40---11:25夜叉ヶ池---12:30 P1252 14:00---14:25三周ヶ岳14:55---
16:00 P1144---17:40林道---18:30広野ダム
登山口の広野ダムに着くと見慣れた車があった。なんとわしたかさんの車じゃあーりませんか。
寝ぼけ顔でトイレに出てきたわしたかさんはこちらの顔を認めて驚いていた。聞けば三周ヶ岳へ行くという。
こちらは高丸へ行くつもりだったのでコースを説明していたら、何となく同行したそうな気配。そこで誘ってみ
ると、一緒に行きますとの返事が返ってきた。俄かパーティーを組むことはまずない私だが、彼なら何度も山行
を共にしているので問題はない。
出発の準備をしているところでもうひとり、見たことのある人がやってきた。先月のスノー衆の時、八草トン
ネル東口で金草岳へ向かった単独の女性だ。今日もひとりで行ったことのない夜叉ヶ池へ行くらしい。
さらに先々週は三周へ行ったとのこと。なかなか骨のある人だ。
岩谷林道の除雪はまったく進んでおらず、時折雪の融けた舗装路が現われるものの、ほとんどが厚い雪に覆わ
れていた。雪はビシビシに締まってツボ足でもまったく沈まない。
滑り台が一ヶ所だけあったが、ピッケル・アイゼンを出すまでもなく通過。林道終点の登山口に着くと、先ほど
の女性が橋を渡るところだった。橋の対岸は雪の壁が川の護岸壁のレベルで立ち上がっており、アイゼンの前爪
を蹴り込んで這い上がらなければならない。女性はなんとか上がって、急な斜面をトラバースして行った。
こちらもピッケル・アイゼンで準備。斜面の傾斜は極端に急ではないが、滑れば川へ一直線なので慎重に進む。
その後もスノーシューの出番はなく、ピッケルをストックに替えただけでアイゼンのまま登り続けた。
これだけ締まっていればアイゼンの爪が刺さる「ザクッ」という音が心地良い。右手の上谷山方面の尾根を見る
と、霧氷で真っ白だ。ある程度の標高まで上がれば今日は期待できそうである。
見事なブナ林の中、高度を上げていくとこの尾根にも白い花が咲き始めた。思わず顔がほころぶ。
まったく沈むことはないのだが、担いでいるよりはとスノーシューを装着した。急斜面ではヒールリフターを効
かせて登る方がふくらはぎに優しいこともある。進むにつれて霧氷は成長して行き、もう白くないところを探す
方が難しいほどである。少し曇り気味だった空も今は真っ青になった。気持ちの高ぶりを抑えるのが困難な状況
だ。
夜叉ヶ丸の直下まで来たところで後続のわしたかさんがなかなかやって来ない。しばらく待って顔を見せた彼
が言うには、双眼鏡をどこかへ置き忘れてきたらしい。かなり高価なものらしく、探しに戻った彼をのんびりと
待つ。40分ほどのロスタイムの後、双眼鏡を無事回収できたわしたかさんが戻って来た。
これがなくても高丸へ行くにはちょっと時間が足りないかなと思っていたので、いい踏ん切りがついた。
わしたかさんが未踏の三周に目標変更しよう。
夜叉ヶ丸への尾根と別れて夜叉ヶ池へのトラバースルートに入る。横着してスノーシューを履いたまま急斜面
のトラバースを敢行したので、足首がねじれておかしくなりそうだった。
このクラストした雪面ならアイゼンに履き替えるのがまともな登山者だろう。最高潮に達した霧氷のブナ林を抜
けて雪原と化した夜叉ヶ池の広大な台地へ。
池自体はただ雪が積もっているだけなので面白みには欠けるが、歩いて横断できるのがこの時期ならではの楽
しみだ。
池の裏からブナ林を抜ける積雪期限定コースで越美国境稜線へ上がる。奥美濃の山々が一気に視界に飛び込ん
で来た。東側の池ノ又谷側へはスッパリと切れ落ちて高度感満点だ。
広い雪尾根を悠々と辿るのも悪くないが、こういう屈曲とアップダウンのある雪稜歩きは冒険心を刺激してくれ
る。雪は早くも割れ気味で、昨年の4月に通った時よりも少ないような気がする。
ポイントになる岩稜のトラバース地点に着くと、上から登山者が下りてきた。雪が着いてないので岩場をクラ
イムダウンしてきたようだ。こちらもスノーシューを脱いで岩場を直登する。
高丸へのジャンクションとなる1252mピークの直下に風のないお誂え向きの場所があったので腰を降ろした。
のんびりランチを楽しんでいると、先ほどの女性が登ってきた。夜叉ヶ池で2時間もまったりしていたが、さっ
きすれ違った登山者に「ここで引き返したらもったいない」と言われて登ることにしたらしい。骨があるだけで
はなくちょっと変わっているようだ。
ここから三周ヶ岳へは20分余り。雪割れはますます進んでコース取りが難しい。
この稜線から見る高丸への尾根はたおやかで、少しだけ残念な思いが頭をかすめた。しかし雲ひとつない青空と
霧氷に彩られたこの雪稜歩きだけでも十分である。
三周ヶ岳の山頂からは三周ではなく四周の展望が全開だ。奥美濃の名だたる山々と白山、御嶽、北アルプス、
少々霞みがちな中央アルプスまで、文句の付けようのない眺望が広がる。
のんびりし過ぎて時間はもう3時を回ってしまった。勝手知ったる国境稜線とはいえ、そろそろ下山にかから
なくてはいけない。国境稜線ジャンクションまでまたもトラバースの練習ののち尻セードの練習もプラス。
前回のスノー衆で痛めた尻もすっかり良くなって、尻セードも復活だ。わしたかさんは勢い余ってブナの大きな
根穴にホールインワン。振り返ると穴から顔を出していた。
ずっとブナ林が続く緩やかな尾根を辿って、1144mピークから岩谷キャンプ場への支尾根に入る。この尾根は
昨年を含めて3度歩いている。途中には実に雰囲気のいいブナ林と微妙な地形のうねりがあり、魅力的な尾根で
ある。対向した単独者はここから登り、先ほどの女性もここを下りたようだ。
ヤセ尾根を通過して尾根が広がりを見せると、この尾根の白眉と言えるブナ林に着く。ここは尾根を忠実に辿る
よりも斜面を適当に歩く方が楽しい。大きな木があればあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。尻セードを交え
ながらブナの森を彷徨うのは実に楽しい。こういう場面ではわしたかさんも同じような嗜好なので楽しそうだ。
なぜかいつの間にかトレースが消えていたが、進むべき方向はハッキリしている。
わかっていることとは言え、楽しいことはいつまでも続かず、最後はお決まりの放置植林のヤブとなる。
右に見えた雪斜面に惹かれて下りて行くと川の合流点に出た。ここはどこを下りても山裾の台地のはずなのだが。
一瞬焦ったが、少し左へトラバースすると橋があり、見覚えのある台地に出た。
去年も歩いているのに、人の記憶はいい加減なものである。
岩谷林道へ出て最後の休憩を取っていると、今下りてきた斜面に人影が見えた。時間はもう5時半である。
こんな時間にこんなところをと、自分の事を棚に上げて訝しく見ていると、なんとあの女性だった。
途中でルートを失って登り返していたと言う。まあ何とも言いようのない、実にやぶこぎネット向けの逸材かも
しれない。やぶこぎネットのことを話す機会を逸したのが残念だ。
雪の緩んだ林道をスノーシューでガシガシ歩く。広野ダムの橋が見える頃には日はとっぷり暮れていた。
山日和
【山 域】越美国境 三周ヶ岳周辺
【天 候】快晴
【メンバー】わしたか(友情出演)、山日和
【コース】広野ダム6:50---8:15林道終点8:40---11:25夜叉ヶ池---12:30 P1252 14:00---14:25三周ヶ岳14:55---
16:00 P1144---17:40林道---18:30広野ダム
登山口の広野ダムに着くと見慣れた車があった。なんとわしたかさんの車じゃあーりませんか。
寝ぼけ顔でトイレに出てきたわしたかさんはこちらの顔を認めて驚いていた。聞けば三周ヶ岳へ行くという。
こちらは高丸へ行くつもりだったのでコースを説明していたら、何となく同行したそうな気配。そこで誘ってみ
ると、一緒に行きますとの返事が返ってきた。俄かパーティーを組むことはまずない私だが、彼なら何度も山行
を共にしているので問題はない。
出発の準備をしているところでもうひとり、見たことのある人がやってきた。先月のスノー衆の時、八草トン
ネル東口で金草岳へ向かった単独の女性だ。今日もひとりで行ったことのない夜叉ヶ池へ行くらしい。
さらに先々週は三周へ行ったとのこと。なかなか骨のある人だ。
岩谷林道の除雪はまったく進んでおらず、時折雪の融けた舗装路が現われるものの、ほとんどが厚い雪に覆わ
れていた。雪はビシビシに締まってツボ足でもまったく沈まない。
滑り台が一ヶ所だけあったが、ピッケル・アイゼンを出すまでもなく通過。林道終点の登山口に着くと、先ほど
の女性が橋を渡るところだった。橋の対岸は雪の壁が川の護岸壁のレベルで立ち上がっており、アイゼンの前爪
を蹴り込んで這い上がらなければならない。女性はなんとか上がって、急な斜面をトラバースして行った。
こちらもピッケル・アイゼンで準備。斜面の傾斜は極端に急ではないが、滑れば川へ一直線なので慎重に進む。
その後もスノーシューの出番はなく、ピッケルをストックに替えただけでアイゼンのまま登り続けた。
これだけ締まっていればアイゼンの爪が刺さる「ザクッ」という音が心地良い。右手の上谷山方面の尾根を見る
と、霧氷で真っ白だ。ある程度の標高まで上がれば今日は期待できそうである。
見事なブナ林の中、高度を上げていくとこの尾根にも白い花が咲き始めた。思わず顔がほころぶ。
まったく沈むことはないのだが、担いでいるよりはとスノーシューを装着した。急斜面ではヒールリフターを効
かせて登る方がふくらはぎに優しいこともある。進むにつれて霧氷は成長して行き、もう白くないところを探す
方が難しいほどである。少し曇り気味だった空も今は真っ青になった。気持ちの高ぶりを抑えるのが困難な状況
だ。
夜叉ヶ丸の直下まで来たところで後続のわしたかさんがなかなかやって来ない。しばらく待って顔を見せた彼
が言うには、双眼鏡をどこかへ置き忘れてきたらしい。かなり高価なものらしく、探しに戻った彼をのんびりと
待つ。40分ほどのロスタイムの後、双眼鏡を無事回収できたわしたかさんが戻って来た。
これがなくても高丸へ行くにはちょっと時間が足りないかなと思っていたので、いい踏ん切りがついた。
わしたかさんが未踏の三周に目標変更しよう。
夜叉ヶ丸への尾根と別れて夜叉ヶ池へのトラバースルートに入る。横着してスノーシューを履いたまま急斜面
のトラバースを敢行したので、足首がねじれておかしくなりそうだった。
このクラストした雪面ならアイゼンに履き替えるのがまともな登山者だろう。最高潮に達した霧氷のブナ林を抜
けて雪原と化した夜叉ヶ池の広大な台地へ。
池自体はただ雪が積もっているだけなので面白みには欠けるが、歩いて横断できるのがこの時期ならではの楽
しみだ。
池の裏からブナ林を抜ける積雪期限定コースで越美国境稜線へ上がる。奥美濃の山々が一気に視界に飛び込ん
で来た。東側の池ノ又谷側へはスッパリと切れ落ちて高度感満点だ。
広い雪尾根を悠々と辿るのも悪くないが、こういう屈曲とアップダウンのある雪稜歩きは冒険心を刺激してくれ
る。雪は早くも割れ気味で、昨年の4月に通った時よりも少ないような気がする。
ポイントになる岩稜のトラバース地点に着くと、上から登山者が下りてきた。雪が着いてないので岩場をクラ
イムダウンしてきたようだ。こちらもスノーシューを脱いで岩場を直登する。
高丸へのジャンクションとなる1252mピークの直下に風のないお誂え向きの場所があったので腰を降ろした。
のんびりランチを楽しんでいると、先ほどの女性が登ってきた。夜叉ヶ池で2時間もまったりしていたが、さっ
きすれ違った登山者に「ここで引き返したらもったいない」と言われて登ることにしたらしい。骨があるだけで
はなくちょっと変わっているようだ。
ここから三周ヶ岳へは20分余り。雪割れはますます進んでコース取りが難しい。
この稜線から見る高丸への尾根はたおやかで、少しだけ残念な思いが頭をかすめた。しかし雲ひとつない青空と
霧氷に彩られたこの雪稜歩きだけでも十分である。
三周ヶ岳の山頂からは三周ではなく四周の展望が全開だ。奥美濃の名だたる山々と白山、御嶽、北アルプス、
少々霞みがちな中央アルプスまで、文句の付けようのない眺望が広がる。
のんびりし過ぎて時間はもう3時を回ってしまった。勝手知ったる国境稜線とはいえ、そろそろ下山にかから
なくてはいけない。国境稜線ジャンクションまでまたもトラバースの練習ののち尻セードの練習もプラス。
前回のスノー衆で痛めた尻もすっかり良くなって、尻セードも復活だ。わしたかさんは勢い余ってブナの大きな
根穴にホールインワン。振り返ると穴から顔を出していた。
ずっとブナ林が続く緩やかな尾根を辿って、1144mピークから岩谷キャンプ場への支尾根に入る。この尾根は
昨年を含めて3度歩いている。途中には実に雰囲気のいいブナ林と微妙な地形のうねりがあり、魅力的な尾根で
ある。対向した単独者はここから登り、先ほどの女性もここを下りたようだ。
ヤセ尾根を通過して尾根が広がりを見せると、この尾根の白眉と言えるブナ林に着く。ここは尾根を忠実に辿る
よりも斜面を適当に歩く方が楽しい。大きな木があればあっちへフラフラ、こっちへフラフラ。尻セードを交え
ながらブナの森を彷徨うのは実に楽しい。こういう場面ではわしたかさんも同じような嗜好なので楽しそうだ。
なぜかいつの間にかトレースが消えていたが、進むべき方向はハッキリしている。
わかっていることとは言え、楽しいことはいつまでも続かず、最後はお決まりの放置植林のヤブとなる。
右に見えた雪斜面に惹かれて下りて行くと川の合流点に出た。ここはどこを下りても山裾の台地のはずなのだが。
一瞬焦ったが、少し左へトラバースすると橋があり、見覚えのある台地に出た。
去年も歩いているのに、人の記憶はいい加減なものである。
岩谷林道へ出て最後の休憩を取っていると、今下りてきた斜面に人影が見えた。時間はもう5時半である。
こんな時間にこんなところをと、自分の事を棚に上げて訝しく見ていると、なんとあの女性だった。
途中でルートを失って登り返していたと言う。まあ何とも言いようのない、実にやぶこぎネット向けの逸材かも
しれない。やぶこぎネットのことを話す機会を逸したのが残念だ。
雪の緩んだ林道をスノーシューでガシガシ歩く。広野ダムの橋が見える頃には日はとっぷり暮れていた。
山日和