【大峰】ワサビ谷地獄谷から小普賢岳・日本岳へ
Posted: 2017年10月12日(木) 00:30
【日 付】2017年10月8日(日)
【山 域】大峰山脈 大普賢岳周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】新伯母峰トンネル入口7:26---7:51林道終点---8:50地獄谷二俣---12:36大普賢・小普賢コル13:47---13:59小普賢岳---
14:37日本岳---15:05 P1505m---16:14尾根下降点---16:55林道---17:02駐車地
早朝、用を足そうと川上の道の駅に入ると、1台の車が近付いてきた。こんな時間にこんなところで誰かいなと顔を見ると、piccolo
さんとケルトさんだった。これからキノコ狩りにご出勤らしい。先週もキノコ狩りで、お宝をなんと23キロもゲットしたそうだ。
持って帰るのにさぞ苦労したことだろう。
さて、こちらの目的地は新伯母峰トンネルの手前から大台ヶ原へ向かう道に入って最初の谷であるワサビ谷。
上流の地獄谷から大普賢岳と小普賢岳のコルへ抜けようという算段である。但し今日は沢登りではなく、登山靴を履いてのバリハイだ。
[attachment=7]IMG_2066_1.JPG[/attachment]
ワサビ谷右岸のよく整備された林道を進むと、終点の手前に山腹の水平道へ登る道がある。
登山道レベルの道はテープも完備して迷うことはない。この谷の上流には、厳冬期にアイスクライミングのメッカとなるシェイクスビ
ア氷柱群があり、そこへのルートを示すテープなのだろう。
谷の名前の由来になったのであろうワサビ田跡を過ぎると道は踏み跡にレベルダウンした。
[attachment=6]IMG_2102_1.JPG[/attachment]
地獄谷の二俣まで来たところで迷ってしまった。事前学習をしているとはいえ、このあたりまで来るとハッキリした道ではなくなり、
進むべき方向がわからない。左俣の踏み跡を辿っていくと正面に連瀑が見え、左の支流にはワイドスクリーンのような岩壁に滝が掛か
っている。連瀑の両側にも岩壁が立ち、巻くのも一筋縄で行かないようだ。
なかなか見応えのある風景だが、ここからは抜けられそうもない。二俣まで戻って中間尾根を上がるとすぐに岩場に阻まれた。引き返
して右俣の左岸尾根を上がってみたがどうも違うようだ。
[attachment=5]IMG_2115_1.JPG[/attachment]
再び二俣へ戻って右俣に見える滝に近付くと、滝身の右側にレポで見た残置ロープがあった。やれやれ、ここに来るまで1時間半も
ロスしてしまった。ロープを頼りに滝を越えるとゴルジュの真っただ中。左のガケにロープがぶら下がっているが、これに全体重をか
ける気にはならず、ナメ滝を突破してから斜面を上がった。
そして二俣の中間尾根に乗ってそのまま尾根を上がって行く。急なヤセ尾根がどこまでも続くが、ヤブはまったくないので歩きやすい。
先ほどの谷の上流方向はるか高いところから、すごい岩壁の中を落ちる滝が見えた。あれがグランドイリュージョンというヤツだろ
うか。
[attachment=4]IMG_2146_1.JPG[/attachment]
やがて傾斜が緩んでちょっとしたコバに出た。前方を探ると岩壁が行く手を阻んでいる。ここでルートは左手の谷へ下って行くのだ
が、知らなければまったくわからないだろう。獣道のような踏み跡をトラバースして谷へ下りると20mほどの滝の前に立った。下流に
も滝が続いており、ここだけが谷の両岸を行き来できる弱点になっている。
滝の両岸は高い岩壁で護られているので左に伸びるザレたルンゼを上がるが、足を置く度にザラザラと足元が崩れて歩きにくいこと
この上ない。見た目は簡単そうだったが意外に消耗を強いられた。
登り着いた小尾根からすぐに隣の谷へトラバースしながら下降。これもかなり足場が悪くバランスが必要だ。下り立った谷の上流には
ナメ滝がかかり、トチの大木などもあるいいところだが、続くルートがわからない。
踏み跡らしきものがあったので急斜面を左へ左へとトラバース。次の尾根に乗ったところで谷を見下ろした。この谷が大普賢岳と小普
賢岳のコルへ突き上げる谷であり、最初に迷い込んで突き当たった滝の上流である。しかし谷の中にはかなりの滝が続いていそうで、
今乗っている尾根の上方も岩壁で遮られているようだ。地形図を見てもわかるように、なにせこのあたりは岩壁だらけなのだ。
これは違うと判断して先ほどの谷まで戻り、ナメ滝横のガレたルンゼを登る。足が重い。時々立ち止まって呼吸を整えながら小尾根に
到達すると、やっとコルが視界に入った。
このあたりまで来ると谷筋にも滝はなく、荒れたルンゼがコルに向かって一直線に伸びている。
岩壁の間に深く刻まれたコルの上のわずかな空間を目がけて高度を上げる。
[attachment=3]IMG_2171_1.JPG[/attachment]
まるで高速道路のような登山道に飛び出した。余裕があれば大普賢岳まで行って昼メシにするつもだったがとんでもない。
もうここで十分だ。登山道下に陣取ってランチタイムとしよう。
もう涼しくなったので蚊取り線香を持って来るかどうか迷ったが、持って来て大正解だった。小バエがワンワン飛び回って、もしなけ
れば落ち着いてメシを食えなかっただろう。
[attachment=2]パノラマ1_1_1.jpg[/attachment]
登山道は小普賢岳を通っていないが、大普賢岳をパスしたのでせめて山頂を踏んで行こう。大は小を兼ねると言うが、その逆はない
ようで小普賢岳の山頂は樹林の中で展望もなく、ただ山頂というだけだ。さすがに大普賢岳の代わりにはならなかった。
次の石の鼻と呼ばれる岩場で展望を楽しみ、一気に下って日本岳のコルへ。後は下山するだけと言いたいところだが、これからもう
ひとつの核心部が待っている。
登山道はここから笙の窟の方へ下って行くのだが、尾根通しに進むのがマイコース。ここは17年前の冬に歩いたことがある。遠目に
見ると杉の繁ったこんもりした尾根だが、実際には岩場が連続する気の抜けない道である。
コルから登り詰めたピークが日本岳(孫普賢岳)だが、地図には次の1505mピークを日本岳としているものがある。
ここからの下りがかなり嫌らしい。尾根芯は小さいながらも岩壁が立ち、ロープ無しでは下れないので、左側の急斜面を立ち木を頼り
に下りてトラバース。同じような場面がもう一度出てくる。
1505m手前のコルは数本のブナが立ち、南側の展望が開けるいいところだ。最後の核心部通過に備えてひと息入れよう。
[attachment=1]IMG_2217_1_1.JPG[/attachment]
ここから1505mへの登りは逃げ場のないゴジラの背ビレのような岩稜の通過がポイントだ。
左右はスッパリ切れ落ちており。残置ロープがぶら下がっているものの、これに頼れば体が宙ぶらりんになってしまうだけだ。
岩は硬くしっかりしているので、ホールドを信じて体を持ち上げる。ほんの短い区間だが、結構しびれる登りだ。
1505mピークまで来れば安全地帯。もう危険なところはない。大台ヶ原へと続く尾根には思いのほかいいブナ林が残されており、緊
張の一日のフィナーレに相応しいやすらぎを与えてくれた。
[attachment=0]IMG_2234_1.JPG[/attachment]
和佐又からの道が合流する手前で稜線と別れ、最後はワサビ谷林道へ植林帯の急降下。伐木やシダの下草に悩まされながらも林道に
着地した。車道へ出ると大台ヶ原から帰って来る車がひっきりなしに通過して行った。
今日のコースの前半、地獄谷へ入ってからのルートは予備知識がなければまず辿ることは不可能だろう。氷瀑地帯への分岐を過ぎる
とテープは一切ない。単に尾根や谷を辿るだけでなく、岩壁の隙間を縫うように尾根と谷を組み合わせてルートを組み立てるのはまる
でパズルを解くようだ。このルートを開拓した先人に敬意を表したい。
久し振りにバリハイの神髄を味わったような充実の一日だった。
山日和
【山 域】大峰山脈 大普賢岳周辺
【天 候】曇りのち晴れ
【コース】新伯母峰トンネル入口7:26---7:51林道終点---8:50地獄谷二俣---12:36大普賢・小普賢コル13:47---13:59小普賢岳---
14:37日本岳---15:05 P1505m---16:14尾根下降点---16:55林道---17:02駐車地
早朝、用を足そうと川上の道の駅に入ると、1台の車が近付いてきた。こんな時間にこんなところで誰かいなと顔を見ると、piccolo
さんとケルトさんだった。これからキノコ狩りにご出勤らしい。先週もキノコ狩りで、お宝をなんと23キロもゲットしたそうだ。
持って帰るのにさぞ苦労したことだろう。
さて、こちらの目的地は新伯母峰トンネルの手前から大台ヶ原へ向かう道に入って最初の谷であるワサビ谷。
上流の地獄谷から大普賢岳と小普賢岳のコルへ抜けようという算段である。但し今日は沢登りではなく、登山靴を履いてのバリハイだ。
[attachment=7]IMG_2066_1.JPG[/attachment]
ワサビ谷右岸のよく整備された林道を進むと、終点の手前に山腹の水平道へ登る道がある。
登山道レベルの道はテープも完備して迷うことはない。この谷の上流には、厳冬期にアイスクライミングのメッカとなるシェイクスビ
ア氷柱群があり、そこへのルートを示すテープなのだろう。
谷の名前の由来になったのであろうワサビ田跡を過ぎると道は踏み跡にレベルダウンした。
[attachment=6]IMG_2102_1.JPG[/attachment]
地獄谷の二俣まで来たところで迷ってしまった。事前学習をしているとはいえ、このあたりまで来るとハッキリした道ではなくなり、
進むべき方向がわからない。左俣の踏み跡を辿っていくと正面に連瀑が見え、左の支流にはワイドスクリーンのような岩壁に滝が掛か
っている。連瀑の両側にも岩壁が立ち、巻くのも一筋縄で行かないようだ。
なかなか見応えのある風景だが、ここからは抜けられそうもない。二俣まで戻って中間尾根を上がるとすぐに岩場に阻まれた。引き返
して右俣の左岸尾根を上がってみたがどうも違うようだ。
[attachment=5]IMG_2115_1.JPG[/attachment]
再び二俣へ戻って右俣に見える滝に近付くと、滝身の右側にレポで見た残置ロープがあった。やれやれ、ここに来るまで1時間半も
ロスしてしまった。ロープを頼りに滝を越えるとゴルジュの真っただ中。左のガケにロープがぶら下がっているが、これに全体重をか
ける気にはならず、ナメ滝を突破してから斜面を上がった。
そして二俣の中間尾根に乗ってそのまま尾根を上がって行く。急なヤセ尾根がどこまでも続くが、ヤブはまったくないので歩きやすい。
先ほどの谷の上流方向はるか高いところから、すごい岩壁の中を落ちる滝が見えた。あれがグランドイリュージョンというヤツだろ
うか。
[attachment=4]IMG_2146_1.JPG[/attachment]
やがて傾斜が緩んでちょっとしたコバに出た。前方を探ると岩壁が行く手を阻んでいる。ここでルートは左手の谷へ下って行くのだ
が、知らなければまったくわからないだろう。獣道のような踏み跡をトラバースして谷へ下りると20mほどの滝の前に立った。下流に
も滝が続いており、ここだけが谷の両岸を行き来できる弱点になっている。
滝の両岸は高い岩壁で護られているので左に伸びるザレたルンゼを上がるが、足を置く度にザラザラと足元が崩れて歩きにくいこと
この上ない。見た目は簡単そうだったが意外に消耗を強いられた。
登り着いた小尾根からすぐに隣の谷へトラバースしながら下降。これもかなり足場が悪くバランスが必要だ。下り立った谷の上流には
ナメ滝がかかり、トチの大木などもあるいいところだが、続くルートがわからない。
踏み跡らしきものがあったので急斜面を左へ左へとトラバース。次の尾根に乗ったところで谷を見下ろした。この谷が大普賢岳と小普
賢岳のコルへ突き上げる谷であり、最初に迷い込んで突き当たった滝の上流である。しかし谷の中にはかなりの滝が続いていそうで、
今乗っている尾根の上方も岩壁で遮られているようだ。地形図を見てもわかるように、なにせこのあたりは岩壁だらけなのだ。
これは違うと判断して先ほどの谷まで戻り、ナメ滝横のガレたルンゼを登る。足が重い。時々立ち止まって呼吸を整えながら小尾根に
到達すると、やっとコルが視界に入った。
このあたりまで来ると谷筋にも滝はなく、荒れたルンゼがコルに向かって一直線に伸びている。
岩壁の間に深く刻まれたコルの上のわずかな空間を目がけて高度を上げる。
[attachment=3]IMG_2171_1.JPG[/attachment]
まるで高速道路のような登山道に飛び出した。余裕があれば大普賢岳まで行って昼メシにするつもだったがとんでもない。
もうここで十分だ。登山道下に陣取ってランチタイムとしよう。
もう涼しくなったので蚊取り線香を持って来るかどうか迷ったが、持って来て大正解だった。小バエがワンワン飛び回って、もしなけ
れば落ち着いてメシを食えなかっただろう。
[attachment=2]パノラマ1_1_1.jpg[/attachment]
登山道は小普賢岳を通っていないが、大普賢岳をパスしたのでせめて山頂を踏んで行こう。大は小を兼ねると言うが、その逆はない
ようで小普賢岳の山頂は樹林の中で展望もなく、ただ山頂というだけだ。さすがに大普賢岳の代わりにはならなかった。
次の石の鼻と呼ばれる岩場で展望を楽しみ、一気に下って日本岳のコルへ。後は下山するだけと言いたいところだが、これからもう
ひとつの核心部が待っている。
登山道はここから笙の窟の方へ下って行くのだが、尾根通しに進むのがマイコース。ここは17年前の冬に歩いたことがある。遠目に
見ると杉の繁ったこんもりした尾根だが、実際には岩場が連続する気の抜けない道である。
コルから登り詰めたピークが日本岳(孫普賢岳)だが、地図には次の1505mピークを日本岳としているものがある。
ここからの下りがかなり嫌らしい。尾根芯は小さいながらも岩壁が立ち、ロープ無しでは下れないので、左側の急斜面を立ち木を頼り
に下りてトラバース。同じような場面がもう一度出てくる。
1505m手前のコルは数本のブナが立ち、南側の展望が開けるいいところだ。最後の核心部通過に備えてひと息入れよう。
[attachment=1]IMG_2217_1_1.JPG[/attachment]
ここから1505mへの登りは逃げ場のないゴジラの背ビレのような岩稜の通過がポイントだ。
左右はスッパリ切れ落ちており。残置ロープがぶら下がっているものの、これに頼れば体が宙ぶらりんになってしまうだけだ。
岩は硬くしっかりしているので、ホールドを信じて体を持ち上げる。ほんの短い区間だが、結構しびれる登りだ。
1505mピークまで来れば安全地帯。もう危険なところはない。大台ヶ原へと続く尾根には思いのほかいいブナ林が残されており、緊
張の一日のフィナーレに相応しいやすらぎを与えてくれた。
[attachment=0]IMG_2234_1.JPG[/attachment]
和佐又からの道が合流する手前で稜線と別れ、最後はワサビ谷林道へ植林帯の急降下。伐木やシダの下草に悩まされながらも林道に
着地した。車道へ出ると大台ヶ原から帰って来る車がひっきりなしに通過して行った。
今日のコースの前半、地獄谷へ入ってからのルートは予備知識がなければまず辿ることは不可能だろう。氷瀑地帯への分岐を過ぎる
とテープは一切ない。単に尾根や谷を辿るだけでなく、岩壁の隙間を縫うように尾根と谷を組み合わせてルートを組み立てるのはまる
でパズルを解くようだ。このルートを開拓した先人に敬意を表したい。
久し振りにバリハイの神髄を味わったような充実の一日だった。
山日和