【奥美濃】三周の黒壁
Posted: 2017年7月23日(日) 12:07
2017年7月22日(土)曇り後晴れ
奥美濃 三周ケ岳・三周の黒壁 単独 池ノ又駐車場6:20ー根洞谷780m出合8:20ー
標高950m連瀑9:15ー三周ケ岳11:20~12:00ー
夜叉ケ池13:00ー池ノ又駐車場13:55
今週もまた、大仲津谷でお茶を濁すかなあ、
と思って計画を立てていて不図気付いた。
池ノ又林道の年内通行の最終が23日ではないか。
今シーズン、「三周の黒壁」をひとつの目標としていた。
アプローチは池ノ又駐車場からだ。
という事はこの土日が今シーズンラストチャンス。
これは行かねばなるまい。
「黒壁」というと一般に「高丸(1316m)」の別称。
「美濃徳山の地名」には
それとは別に「三周の黒壁」と呼ばれる場所が記されている。
三周ケ岳の東面、地形図では崖マークが一杯の辺りだ。
ここに沢から行ってみたい、と随分前から思っていた。
実力がともなわないだろうと躊躇していたが
この際、見てみるだけでもいい。
そこで今年こそはと思っていたのだ。
あるのは地形図の情報のみだが行けるところまで行ってみよう。
困難な遡行になる事を見越して早朝に自宅を出発。
池ノ又の駐車場にはすでに先行の車が2台あった。
どこに向かったのだろう。
歩き始めは涼しいくらいだった。
しかし、駐車場から2本目の枝沢に入るとかなり蒸し暑く感じた。
湿度がかなり高いようだ。
なんだが先が思いやられたが、
何時もここを通るとき目に留まるブナが元気をくれた。 尾根を乗っ越して根洞谷を目的の沢まで下る。
念願の沢をいよいよ登るのだと思うと緊張感が高まる。
出合からしばらくは平凡な流れ。
やがて両岸が立ち狭くなった。
なんだか嫌な予感がしたがここは難しくない。
滝も数本あるが何れも巻ける。
シャワークライム可能なものもあるが先の事を考えて無理はしない。 850mを越えると沢が広くなった。
空が開けて明るく陽気な沢だ。
左から枝沢が落ちていたが進むのは右。
左はいざという時のエスケープルート。
5m程の滝を越えると前方に岩壁が見えた。
衝立のように立ちはだかって来る者を拒むかのようだ。
ドキドキしながら壁に近づいていく。 地形図では左に沢が続いている。
が、等高線の様子から難場であることが予想される。
果して越えられるのだろうか。
恐る恐るその方向を伺った。
予想通り、切り立った岩壁に挟まれた細い沢だった。
こんなところには大滝があるだろう事も想像に難くない。
とりあえず行けるところまで行こう。
最初の一条滝は右から微妙に巻く。
落口に数輪のニッコーキスゲを見るも気持ちに余裕はない。
その後の2、3の滝は問題無く越えていく。
このまま何も現われないでくれー!
という願いも虚しくやっぱり現われた…
それまでの狭い沢からパッと開けた空間の奥に2条の滝。
左は黒々とした壁に嘗めるような水流の17m。
右は岩の割れ間を落ちる多段、あるいは連瀑。
それぞれの滝の落差は5~6m程。
奥が見えないので全体の落差は分からない。
とにかく一目見て越えられない、と思った。
では巻くか? 三方を高々とした岩壁が覆うここから巻くとすれば
一旦戻ってルンゼを這い上がっていくしかない。
しかし、その場合沢への復帰は難しく
恐らくそのままエスケープとなりそうだ。
どうする?
取りあえず右の滝に近づいてみる。
すると一段目は何とか登れそうだ。
二段目は倒木がありそれを利用して越えられそう。
もしダメでも懸垂できそうだ。
その先は登ってみないと分からない。
取りあえず取り付いた。
ホールドもスタンスもしっかりした一段目は難なく登った。
二段目は倒木を登った上がやや微妙だったがステミングで登れた。
上にも倒木があり三段目もそれを利用して登れるかと思えた。 倒木を登りきってからのホールドが微妙過ぎる。
しっかりした足場も見当たらない。
そこでハンマー投げをしてみる事にした。
幸い上にはハンマーが引っかかりそうな岩が見える。
初めてのハンマー投げだ。
安全環付のカラビナでロープを結んでエイヤ!と投げてみる。
が、なかなか方向が定まらないし高さも出ない。
それでもこれしかないので落ちてきたハンマーを拾っては投げる。
何度目かにやっと狙った岩の裏に飛んだ。
ロープの位置を調整して引っ張ると上手く引っかかった。
体重を載せてもびくともしない。
よし!と空身で登りザックを引き上げる。
一旦、ロープを納めたが次に現われた4mも怪しい。
下部はホールドスタンスがあるが上が微妙。
こんなところで無理して落ちるわけに行かないので
またハンマー投げを試みた。
今度は2度目で引っかかってくれた。
やはり空身でプルージクの確保をして登る。
やはり上で足が滑りホールドも微妙だった。
核心部はこれで終わりだった。
45分間の格闘だった。
ほっと息を付き、下を覗きみる。
下から上までザッと40m程だろうか。
よく登ったものだ。
緊張して力が入っていたのだろう。
足が意外な程に疲れていた。
上の3mを簡単に巻き広くなった沢で少し休憩をとる。
青空ものぞくようになった空のもと、
怖かったという印象より清々しさを感じた。
怖さは後でじんわり押し寄せてくるのだろう。
緩やかな沢を登っていくと8mの細い垂瀑。
右の泥ルンゼを草を鷲掴みにしながら登り、
上で獣道に導かれ沢に復帰。 ここからは左右に低い木々が鬱蒼とする。
その合間から見えるピークを目指して進んで行く。
大きな滝や困難な滝は姿を消した。
時折露出した岩壁が何かあるのではないかと思わせるが
1200m付近まで沢筋は明瞭で特に難しいところもなかった。
振り返ると高丸や西谷の山並みが見えた。
最後の急登がきつかった。
シャクナゲ混じりの灌木の編み目と岩場が疲れた身体に鞭打つ。
斜度が緩くなってもなかなか切り開きに出ない。
どの辺りにいるのだろう、と思っていると
人の声が間近に聞こえた。
もしや、山頂か、と思い声をかける。
すると訝しげな声音で「こちらも登山道です」との返事。
「こちらも」とはこっちも登山道を歩いていると思ったのだろう。
何はともあれやっと薮から逃れる事ができた。
そこから山頂までは5分とかからなかった。
声をかけた登山者は二人組で福井側から登ってきたらしい。
灌木の背が高くなり見晴らしが悪くなった山頂が楽しくなかったのか、
あるいはおかしな風体の登山者を不気味に思ったのか、
すぐに下山していった。
こちらは日陰にうずくまってただただ休憩。
しばらくするとまた男性の二人組が登ってきた。
こちらは池ノ又からとの事だった。
ひどい薮に参った、としきりに言っていた。
30分程の休憩で下山開始。
当初は沢を下る事も考えたが気力が湧かず登山道を下った。
夜叉ケ池はそこそこの賑わい。
ハイキング候のスタイルが多かった。 昇竜の滝あたりの崩壊が進んでいた登山道は
草が覆い始めていた。
その下の新たな崩壊地で数人がロープを張って
マラニックの準備をしていた。
今日、明日がマラニックの本番だ。
これを終えると池ノ又林道は復旧工事のため年内通行止め。
幽玄の滝で滝行をして涼む。
その先のブナ林は何時もスッと通り抜けるが
今日は素敵に見えた。
奥美濃 三周ケ岳・三周の黒壁 単独 池ノ又駐車場6:20ー根洞谷780m出合8:20ー
標高950m連瀑9:15ー三周ケ岳11:20~12:00ー
夜叉ケ池13:00ー池ノ又駐車場13:55
今週もまた、大仲津谷でお茶を濁すかなあ、
と思って計画を立てていて不図気付いた。
池ノ又林道の年内通行の最終が23日ではないか。
今シーズン、「三周の黒壁」をひとつの目標としていた。
アプローチは池ノ又駐車場からだ。
という事はこの土日が今シーズンラストチャンス。
これは行かねばなるまい。
「黒壁」というと一般に「高丸(1316m)」の別称。
「美濃徳山の地名」には
それとは別に「三周の黒壁」と呼ばれる場所が記されている。
三周ケ岳の東面、地形図では崖マークが一杯の辺りだ。
ここに沢から行ってみたい、と随分前から思っていた。
実力がともなわないだろうと躊躇していたが
この際、見てみるだけでもいい。
そこで今年こそはと思っていたのだ。
あるのは地形図の情報のみだが行けるところまで行ってみよう。
困難な遡行になる事を見越して早朝に自宅を出発。
池ノ又の駐車場にはすでに先行の車が2台あった。
どこに向かったのだろう。
歩き始めは涼しいくらいだった。
しかし、駐車場から2本目の枝沢に入るとかなり蒸し暑く感じた。
湿度がかなり高いようだ。
なんだが先が思いやられたが、
何時もここを通るとき目に留まるブナが元気をくれた。 尾根を乗っ越して根洞谷を目的の沢まで下る。
念願の沢をいよいよ登るのだと思うと緊張感が高まる。
出合からしばらくは平凡な流れ。
やがて両岸が立ち狭くなった。
なんだか嫌な予感がしたがここは難しくない。
滝も数本あるが何れも巻ける。
シャワークライム可能なものもあるが先の事を考えて無理はしない。 850mを越えると沢が広くなった。
空が開けて明るく陽気な沢だ。
左から枝沢が落ちていたが進むのは右。
左はいざという時のエスケープルート。
5m程の滝を越えると前方に岩壁が見えた。
衝立のように立ちはだかって来る者を拒むかのようだ。
ドキドキしながら壁に近づいていく。 地形図では左に沢が続いている。
が、等高線の様子から難場であることが予想される。
果して越えられるのだろうか。
恐る恐るその方向を伺った。
予想通り、切り立った岩壁に挟まれた細い沢だった。
こんなところには大滝があるだろう事も想像に難くない。
とりあえず行けるところまで行こう。
最初の一条滝は右から微妙に巻く。
落口に数輪のニッコーキスゲを見るも気持ちに余裕はない。
その後の2、3の滝は問題無く越えていく。
このまま何も現われないでくれー!
という願いも虚しくやっぱり現われた…
それまでの狭い沢からパッと開けた空間の奥に2条の滝。
左は黒々とした壁に嘗めるような水流の17m。
右は岩の割れ間を落ちる多段、あるいは連瀑。
それぞれの滝の落差は5~6m程。
奥が見えないので全体の落差は分からない。
とにかく一目見て越えられない、と思った。
では巻くか? 三方を高々とした岩壁が覆うここから巻くとすれば
一旦戻ってルンゼを這い上がっていくしかない。
しかし、その場合沢への復帰は難しく
恐らくそのままエスケープとなりそうだ。
どうする?
取りあえず右の滝に近づいてみる。
すると一段目は何とか登れそうだ。
二段目は倒木がありそれを利用して越えられそう。
もしダメでも懸垂できそうだ。
その先は登ってみないと分からない。
取りあえず取り付いた。
ホールドもスタンスもしっかりした一段目は難なく登った。
二段目は倒木を登った上がやや微妙だったがステミングで登れた。
上にも倒木があり三段目もそれを利用して登れるかと思えた。 倒木を登りきってからのホールドが微妙過ぎる。
しっかりした足場も見当たらない。
そこでハンマー投げをしてみる事にした。
幸い上にはハンマーが引っかかりそうな岩が見える。
初めてのハンマー投げだ。
安全環付のカラビナでロープを結んでエイヤ!と投げてみる。
が、なかなか方向が定まらないし高さも出ない。
それでもこれしかないので落ちてきたハンマーを拾っては投げる。
何度目かにやっと狙った岩の裏に飛んだ。
ロープの位置を調整して引っ張ると上手く引っかかった。
体重を載せてもびくともしない。
よし!と空身で登りザックを引き上げる。
一旦、ロープを納めたが次に現われた4mも怪しい。
下部はホールドスタンスがあるが上が微妙。
こんなところで無理して落ちるわけに行かないので
またハンマー投げを試みた。
今度は2度目で引っかかってくれた。
やはり空身でプルージクの確保をして登る。
やはり上で足が滑りホールドも微妙だった。
核心部はこれで終わりだった。
45分間の格闘だった。
ほっと息を付き、下を覗きみる。
下から上までザッと40m程だろうか。
よく登ったものだ。
緊張して力が入っていたのだろう。
足が意外な程に疲れていた。
上の3mを簡単に巻き広くなった沢で少し休憩をとる。
青空ものぞくようになった空のもと、
怖かったという印象より清々しさを感じた。
怖さは後でじんわり押し寄せてくるのだろう。
緩やかな沢を登っていくと8mの細い垂瀑。
右の泥ルンゼを草を鷲掴みにしながら登り、
上で獣道に導かれ沢に復帰。 ここからは左右に低い木々が鬱蒼とする。
その合間から見えるピークを目指して進んで行く。
大きな滝や困難な滝は姿を消した。
時折露出した岩壁が何かあるのではないかと思わせるが
1200m付近まで沢筋は明瞭で特に難しいところもなかった。
振り返ると高丸や西谷の山並みが見えた。
最後の急登がきつかった。
シャクナゲ混じりの灌木の編み目と岩場が疲れた身体に鞭打つ。
斜度が緩くなってもなかなか切り開きに出ない。
どの辺りにいるのだろう、と思っていると
人の声が間近に聞こえた。
もしや、山頂か、と思い声をかける。
すると訝しげな声音で「こちらも登山道です」との返事。
「こちらも」とはこっちも登山道を歩いていると思ったのだろう。
何はともあれやっと薮から逃れる事ができた。
そこから山頂までは5分とかからなかった。
声をかけた登山者は二人組で福井側から登ってきたらしい。
灌木の背が高くなり見晴らしが悪くなった山頂が楽しくなかったのか、
あるいはおかしな風体の登山者を不気味に思ったのか、
すぐに下山していった。
こちらは日陰にうずくまってただただ休憩。
しばらくするとまた男性の二人組が登ってきた。
こちらは池ノ又からとの事だった。
ひどい薮に参った、としきりに言っていた。
30分程の休憩で下山開始。
当初は沢を下る事も考えたが気力が湧かず登山道を下った。
夜叉ケ池はそこそこの賑わい。
ハイキング候のスタイルが多かった。 昇竜の滝あたりの崩壊が進んでいた登山道は
草が覆い始めていた。
その下の新たな崩壊地で数人がロープを張って
マラニックの準備をしていた。
今日、明日がマラニックの本番だ。
これを終えると池ノ又林道は復旧工事のため年内通行止め。
幽玄の滝で滝行をして涼む。
その先のブナ林は何時もスッと通り抜けるが
今日は素敵に見えた。