【北ア】槍ヶ岳・東鎌尾根雪稜登山

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兔夢
記事: 624
登録日時: 2011年2月24日(木) 23:12

【北ア】槍ヶ岳・東鎌尾根雪稜登山

投稿記事 by 兔夢 »

2014年5月3日(土)~5日(月) 北ア 東鎌尾根~槍ヶ岳 
セキガハラNさん SGさん K氏 GT(♂)くん そばつる 兔夢
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3日 晴れ後雨
5:00 平湯あかんだなバスターミナル → 5:30~50 上高地バスターミナル → 8:40~9:10 横尾 → 12:00 ババ平

 敬愛する大先輩に導かれて柄にもなく北アルプス・槍ヶ岳の雪稜を歩いてきた。行動中は天候に恵まれて本格的雪稜登山を存分に味わう事ができた。
 大垣を3日の午前1時に出発。東海北陸自動車道経由で平湯へ向かう。あかんだなバスターミナルからバスに乗り換えた。
 上高地を訪れるのは初めてだ。早朝だというのに賑やかすぎてこれから山に向かうという緊張感がない。しゃれた作りの建物もどこか馴染まない。
 朝陽に照らされた美しい穂高の峰々を愛でながら巾広の歩道を延々と歩いていく。朝の冷気になかなか体温が上がらない。
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 背負う荷物はシュラフを夏用にするなど自分なりに軽量化してきた。それでもずっしりと肩にくい込む。これで雪稜を歩けるのだろうか。
 原生林の森を抜けると明神岳の鋭い穂が目につく。更に広い河原沿いの道を歩き、徳沢、横尾へと進む。どちらも小屋の周りは黒山の人だかりだ。森には色とりどりのテントが朝を迎えていた。
 道中、青春時代をこの山域の登山に懸けたセキガハラNさんの問わず語りの話を聞かせて頂いた。懐かしむような視線を峰々に投げかける姿が印象的だった。
 横尾を過ぎるとそれまでの遊歩道然とした道は消え細い山道となった。まだ雪が残っていてやっと登山という雰囲気になった。前後を歩く人影もここからは激減した。
 一ノ俣の出合手前で微かな地響きを感じた。他のメンバーも感じたようだ。最初はブロック雪崩が起きている所為かと思われたがその後も同じような振動が何度もあり地震ではないかという事になった。K氏がラジオで確認するとやはり地震だった。この日、十数回発生したらしい。大きな揺れにならなければいいが。
 槍沢ロッジで休憩していると対岸の斜面を何人かのスキーヤーが滑り降りてきた。この辺りはスキーを楽しめるだけの雪が十分ある。だがここまでスキーを上げるのが大変だ。
 再び歩き始めてそばつるが「なんだ、あれ!」と驚きの声を上げた。視線の先に二つの塔が並んだような特徴的な岩が見えた。その手前にあったカブト岩は上から覆い被さってくるような迫力があった。
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 沢巾が広くなってババ平に出た。そこには岩小屋があり寄り添うように幾つかのテントが張られていた。壁には昨夏、北鎌で行方不明になった方の貼紙。71歳にして単独で北鎌に挑戦していたというのは驚くべき事だ。
 ここで今後の行動をどうすべきかミーティングが行われた。空を見れば雲がかかってきて下り坂。その雲の動きが早く上部は強風であるらしい。加えて明日の予報、特に夕方からがあまりよくない。もし北鎌へ行くとすれば自分達の力量からして稜線上でテントを張る事になる。荒天の中でのテン泊になる事は必至だ。それは避けたい。結果、北鎌尾根を諦め東鎌尾根へ変更する事で一致した。
 北鎌へ行かないのならばここでのテン泊がいい。さっそく3人テント2張り分の整地をしてテント設営。少し早い時間からだったが小宴となった。夕方近く、フライシートを打つ雨の音が大きくなった。北鎌中止は正解であったと全員が確信した。
 陽が落ちると満天の星空が広がった。刻々と変わる天候。明日はどうなる事か。不安と期待を織り交ぜつつシュラフに潜り込んだ。深夜、テントを揺り動かす暴風が吹き抜けた。

4日 晴れ
6:40 ババ平 → 8:45~9:00 水俣乗越 →  11:00 2595mピーク → 13:30 2884mピーク → 15:20~16:30 槍ヶ岳山荘 → 18:00 飛騨沢テン泊地

 6時出発の予定がかなり遅れた。朝の準備がなかなか思うようにはかどらなかった。
 見上げれば群青色の空が広がる晴天。気分よく水俣乗越目指して歩き出す。
 槍沢には早朝から槍ヶ岳を目指す人の列。驚く程の人数だ。これは本当に山登りなのだろうか、と疑いたくなる。
 水俣乗越へ続くと思われるトレースを追っていく。その先に中腹で休んでいるパーティがあった。セキガハラNさんが言葉を交わした所では今正月に行方不明になった仲間を捜索しているらしい。早く見つかるといい。
 トレースは乗越まで続いているようだ。高度を上げるに従って斜度が増していく。乗越下のルンゼには雪崩の跡があった。危険を避けて右の樹林寄りを登っていく。
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 トレースは乗越から更に天井沢へと下っていた。北鎌へ向かったものだろうか。この晴天にそちらへ気を引かれるが我々はここから左に折れて東鎌尾根へと向かう。
 天井沢の先には先週スキーで登った針ノ木が見えた。最後まで好天に恵まれて快適な山行だった。今回もこのままいい状態が続いてくれればいいが。
 期待していたトレースは全く見られない。雪稜ではトレースの有る無しで難易度にグッと差が出る。さしものセキガハラNさんも緊張感を浮かべる。
 取付きからしてかなりきつかった。ハイマツを掴みながら身体を持ち上げて岩稜を越えていく。背なの荷物に後へ引っ張られ冷や冷やだった。
 一登りしたところから雪稜となった。雪面はまだ固めだ。ここは安全を期してロープを出す。しかし慣れないロープワークにあたふた。1ピッチにかなりの時間を費やす。
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 2ピッチで落ち着いた稜線に出ると行く手に待望のトレースが現われた。水俣乗越よりひとつ西側の鞍部から続いている。どうやら登り着いたところでテン泊したらしく狭い稜線が四角く整地されていた。
 トレースが出てきた事で少し緊張が和らぐ。しかし続く雪稜を見ればそれはほんの気休めに過ぎない事がわかる。気を抜く事はできない。
 トレースを追って急斜面にかかる。南側の雪庇を警戒してトラバース気味の登高だ。踏み外せばどこまで滑落するかわからない。一歩一歩が慎重だ。
 不図後ろを振り返るとテン泊の跡辺りに単独登山者が休んでいた。何時の間に現われたのだろう。単独とはすごい。
 続く急斜面を登っているとその単独登山者が追いついてきた。ずいぶん速い。左手に短めのピッケル、右手にストック。荷物はハイキングかのようにコンパクトで頭はキャップ。こちらの重装備と比べると隔絶した感じだ。
 セキガハラNさんが少し話をした。燕から縦走してきたそうだ。信じがたくて目が皿になった。若くて体格もよくバランスもいいその青年は我々を追い越して凄いスピードで雪稜を渡っていった。我々が2595mピークを下降している時にはすでに二つも三つも先のピークを歩いていた。
 2595mピークからの下りは夏道ようの鉄製梯子が露出していた。しかし半分程雪に埋まっておりまた上部は雪壁状だ。ピッケルで支点をとってロープを使用した。
 今回の行動中、何度かピッケルを支点に使用した。セルフビレイもピッケルでとっていた。樹木が少なく支点になるものがない雪稜ではピッケルは非常に重要なアイテムである事を実感する事ができた。もちろん登攀の道具としての有効さもひしひしと感じた。
 全員下り終えたところで後から来ていた5人パーティに先を譲った。ロープを繋いでコンテニアスで行動しておりさっきの青年程ではないがこちらより早い。
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 続く急斜面の登り返しは一部梯子が露出しているもののほぼ雪の壁を登るような感じだ。順番を待っていると「グッグッグッ」とカエルの鳴き声のようなものが聞こえた。見れば脇の岩にまだ冬羽根の雷鳥。緊張を和らげてくれた一瞬だった。
 持っていたハンマーをバイル代わりにしてピックルとともにダブルアックスにしてみた。掛かりは今一だが安心感はずっと高まった。一人だけこんな事してすみませんって感じだったが。
 穏やかな雪稜に出て振り返れば東に見える黒い稜線上に富士山が顔を出していた。思わず「富士山だ!」と子どものようにはしゃいでしまった。
 緊張感のある雪稜が続く中で休憩もままならなかったがここでようやく少し長めの休憩。わずかな食料を口に入れ空腹感を満たした。
 ここから先はロープ無しでも進めそうな雰囲気だ。さほどな急登もなくキックステップで軽快に登っていける。ただ空を覆い始めた雲とともに強風が吹き始めた。きつい登りがないとはいえ所によっては両脇が落ちている雪稜。突風に身体を持っていかれれば危険この上ない。
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 細かいピークを越える度に天を突く黒い2等辺三角形が確実に近づいてくる。出発時には不安ばかりが先立ったがここに来てようやく踏破できるのだという思いが強くなってきた。槍ヶ岳山荘も指呼の間だ。そこでくつろぐ人の姿も見える。
 しかし油断は禁物だ。ゴールが近いとはいえ人幅しかないようなナイフリッジや岩混じりの急登が続く。
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 岩の露出した部分のトレースで落が発生した。ソフトボール大の石が槍沢側の急傾斜の雪面を転げ落ちていく。先に誰もいなかったから良かったものの気をつけなければいけない。
 最後の最後は肩までの急斜面トラバース。慎重に歩みを進める。
 肩に辿り着いてようやくホッと息をつく。まずはリーダーのセキガハラNさんに感謝の握手。そして各メンバーとお互いの健闘を称えて握手。無事に踏破できて本当に良かった。
 槍ヶ岳を見れば山頂までのルートには大勢の人が張り付いて渋滞している。山頂もかなりの人混みだ。これでは山頂には行く気がしない。槍ヶ岳が初めてというぞばつるとGT(♂)くんのみ山頂を目指した。
 二人を待つ間、山荘で暖をとって休憩。緊張した雪稜のすぐ傍に緊張とは全く縁のない穏やかな空間がある事をなんだか不思議に感じた。奥美濃ではほぼあり得ない事だ。
 戻ってきた二人には休憩の暇もないまま飛騨沢を下り始めた。既に時間が押している。
 飛騨沢は西に傾いた陽に照らされて輝いていた。そこから見える北アの峰々。まだまだ白く美しい。一昨年訪れた時、それらはほぼガスの向こうだった。
 槍平まで下りたかったが意外と遠い。日が暮れる前にテントを設営したいと雪崩の心配ない適当な樹林の小尾根を選んで整地。テントを張り終えるとすぐ暗くなった。
 最後の夜を槍ヶ岳山荘で購入してきたビールで乾杯。SGさんは山荘でワインを購入してきてみんなに振る舞ってくれた。充実感たっぷりの雪稜登山を振り返りつつGT(♂)くんの段取りで夕餉をとった。

5日 雪後雨
6:10 飛騨沢テン泊地 → 7:05 滝谷出合 → 9:10 白出沢 → 9:50~10:05 穂高平小屋 → 10:55 新穂高バス停 → 11:45 あかんだな駐車場

 テントをたたみ出発する頃には雪が降っていた。下界は確実に雨だろう。それでも登ってくる登山パーティが幾つかあった。
 槍平小屋の周りにはそこそこの数のテントが張られていた。まだ登っていくパーティもあるのだろうか。
 藤木レリーフを過ぎて滝谷出合には木製の橋が架けられていた。滑りそうで怖かったが巻くよりいいかと渡った。
 しばらくデブリ地帯が続く。その中に続くトレースを追って進んで行くと白出沢の出合に導かれてしまった。夏道は左岸のもっと上にあり渡渉地点も上だ。トレースがあるとはいえ盲目的に追ってしまってはいけなかった。結局かなりの距離を登り返す事になった。他にも同じようにトレースにつられた登山者が何人もいた。
 上空にヘリの爆音が長らく響き渡っていた。そして後には上空を2往復していた。後で知ったニュースによるとこの日の早朝、涸沢岳で滑落事故があったようだ。その救助のヘリだったのだろうか。そういった危険の存在する山域に自分が身を投じていたのだと思うと不思議だった。
SHIGEKI
記事: 1031
登録日時: 2011年7月25日(月) 18:30

Re: 【北ア】槍ヶ岳・東鎌尾根雪稜登山

投稿記事 by SHIGEKI »

兔夢さん こんばんは  

槍ましたね :mrgreen: !!!




"]2014年5月3日(土)~5日(月) 北ア 東鎌尾根~槍ヶ岳 
セキガハラNさん SGさん K氏 GT(♂)くん そばつる 兔夢


雪稜をあこがれの槍へ  

信頼のおけるメンバーで素晴らしい山行でしたね!!


空を見れば雲がかかってきて下り坂。その雲の動きが早く上部は強風であるらしい。加えて明日の予報、特に夕方からがあまりよくない。もし北鎌へ行くとすれば自分達の力量からして稜線上でテントを張る事になる。荒天の中でのテン泊になる事は必至だ。それは避けたい。結果、北鎌尾根を諦め東鎌尾根へ変更する事で一致した。


北鎌の予定だったんですか~  実際は知りませんが、厳しいんでしょうね。



 陽が落ちると満天の星空が広がった。刻々と変わる天候。明日はどうなる事か。不安と期待を織り交ぜつつシュラフに潜り込んだ。深夜、テントを揺り動かす暴風が吹き抜けた。

めまぐるしく変わりますね!!この星空みてみたい~



 期待していたトレースは全く見られない。雪稜ではトレースの有る無しで難易度にグッと差が出る。さしものセキガハラNさんも緊張感を浮かべる。
 取付きからしてかなりきつかった。ハイマツを掴みながら身体を持ち上げて岩稜を越えていく。背なの荷物に後へ引っ張られ冷や冷やだった。
 一登りしたところから雪稜となった。雪面はまだ固めだ。ここは安全を期してロープを出す。しかし慣れないロープワークにあたふた。1ピッチにかなりの時間を費やす。
 2ピッチで落ち着いた稜線に出ると行く手に待望のトレースが現われた。水俣乗越よりひとつ西側の鞍部から続いている。どうやら登り着いたところでテン泊したらしく狭い稜線が四角く整地されていた。
 トレースが出てきた事で少し緊張が和らぐ。しかし続く雪稜を見ればそれはほんの気休めに過ぎない事がわかる。気を抜く事はできない。
 トレースを追って急斜面にかかる。南側の雪庇を警戒してトラバース気味の登高だ。踏み外せばどこまで滑落するかわからない。一歩一歩が慎重だ。

緊張感ありますねぇ

しっかりと読み込ませていただきました。

まだしばらくは、雪を追ってくんでしょうね。

  では また いつか、どこかのゆる~いコバで

      SHIGEKI

 
兔夢
記事: 624
登録日時: 2011年2月24日(木) 23:12

Re: 【北ア】槍ヶ岳・東鎌尾根雪稜登山

投稿記事 by 兔夢 »

SHIGEKIさん、こんばんは。

槍ましたね

2度目の槍ヶ岳ですが僕には似つかわしくないですね。

信頼のおけるメンバーで素晴らしい山行でしたね!!

考えてみれば各々のメンバーとペアと組んだ山行が一杯ありました。
セキガハラNさんとは奥美濃の沢を何度か同行し、SGさんには昨年西ケ洞〜日河原洞にお付き合い願い、K氏とも沢と残雪の奥美濃を歩かせてもらっている。
GT(♂)くんとは二人で沢に何度かで掛け、山スキーもともにした。そばつるは今更いうにおよばず。つながりの強いメンバーでした。

北鎌の予定だったんですか~  実際は知りませんが、厳しいんでしょうね。

厳しいみたいですね。計画を聞いた時から、いけるのか? という疑問符だらけでした。
でもこのリーダーならと信じてのぞみました。一応、アイゼンでの岩登りなど、訓練は行いました。

めまぐるしく変わりますね!!この星空みてみたい~

めまぐるしかったですねえ。実は僕は星空見てません(^^;

緊張感ありますねぇ

途中で帰りたくなってましたからね。緊張し過ぎでした。

まだしばらくは、雪を追ってくんでしょうね。

今年はあまり深追いはしません。

では また いつか、どこかのゆる~いコバで

リラックスできる山行がやっぱり楽しい。ゆる〜いコバで杯を傾けて語り合いたいですね。

  兔夢



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