【奥美濃】根洞谷〜三周ケ岳…冒険心を煽られて

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兔夢
記事: 625
登録日時: 2011年2月24日(木) 23:12

【奥美濃】根洞谷〜三周ケ岳…冒険心を煽られて

投稿記事 by 兔夢 »

2013年8月3日(土) 曇り時々晴れ 奥美濃 根洞谷~三周ケ岳 単独

5:30 池ノ又登山口 → 7:10 根洞谷 → 8:10 口三周谷出合 → 8:40 連瀑帯 → 11:30 稜線 → 11:55~12:50 三周ケ岳山頂 → 13:50 夜叉ケ池 → 14:45 林道車止め
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 ずっと気になっていた沢だった。
 根洞谷から三周ケ岳へ登る沢は3つ。末端の沢は2回登った事がある。上部の岩場がつくりだす景色が圧巻だ。
 三角点に直接突き上げている沢は地元で「三周の黒壁」と呼ばれた岩場越えに困難さを感じとても行く気になれない。
 山頂より北に落ちている沢は崖マークがあるものの行けそうな雰囲気がある。何時の頃からかここを登ったらどんなだろうと地形図を眺めていた。
 名古屋ACCの遡行記録を見つけた時はここを登った人がいる事に吃驚した。とともに軽い嫉妬心を抱きながら記録を読んだ。そして胸の奥にしまい込んだ。
 沢の季節が訪れる度にこの沢は頭をかすめる。今シーズンもそうだった。一人では難しいのではないか、と思いつつもここへ誘うパートナーも思い浮かばない。
 そうこうしている内に時はどんどん過ぎていく。行きたい沢はここばかりじゃない。でもここに行っておかないと前に進む気になれない。決断の時だ。

 取付きまでの時間と遡行の困難さを考えると早めの出発がいいだろうと坂内の道の駅で前泊。月のない夜だったがその分星空が美しく、星に詳しくない僕でも天の川と幾つかの星座を確認できた。
 朝起きれば曇っており霧雨がフロントガラスを濡らした。池ノ又の駐車場に着いた頃にはパラパラとしており少し様子を見た。
 雨はあがり南方には青空も見え出した。身支度を整え出発。
 登山道に入って2本目の沢から尾根を越えて根洞谷に降りる。この尾根越えは今回で4回目だが何時もより水量が多く感じられた。
 根洞谷を下って一時間弱で目的の沢に到着。出合左脇の巨岩が印象的だ。ここでヘルメット、ハーネスをつけて気分を盛り上げる。
 沢名は名古屋ACCの記録には「北三周谷」と記されていた。しかし根洞谷を「三周谷」と書いているので出自が怪しい。それよりも出合のプレートに書かれていたという「口三周谷」の方を選びたい。このプレートは今回確認できなかった。
 出合では小川のように思えた沢だが右折してすぐ上部に岩を挟んだ5mほどの滝がかかっていた。しかもいきなり越えるのが困難そうな滝だ。
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 激フルシャワーで足を突っ張りながらなら登れない事はないかもしれない(たろうーさんならやりそうだ)。がそれをやるだけの技術と度胸がない。みれば右岸にバンドがあり巻けそうだ。
 バンドを辿っていくと先にも同規模の滝があった。これも登るのは困難そうで続けて巻いた。
 上は穏やかな渓相で空が開けてくると二俣になっており右に進んでいく。
 樋状の滝を楽しく越えてすぐに二俣。左に進むと4m程の滝。ここは水流左脇を簡単に登る。実はここから連瀑帯が始まっていた。
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 2連チャンの小滝が続いた後これは!という滝が現れる。
 落差6m程だろうか。水量が少なければいけそうな気がしないでもないが触ってみると滑っている。それに上部が分からない。この滝を越えたとしても上には更に二つ、滝が見えている。巻いていこう。
 しかし巻くのも簡単ではない。左右とも立っている。右岸は草付き斜面が続き難しそうだ。取り付くなら樹木のある左岸だが下部が泥付きの垂壁でそこを越えるのに難儀。
 2トライ目でなんとか樹木を掴みモンキークライミング。垂壁に近い斜面で足下は泥。なかなかトラバースできるところが見つからず突き上げられるとオーバーハング気味のところもありシュリンゲで確保しながらよじ登っていく。
 ようやくトラバースしてみるとその先には7m規模の滝。ここも越えるのが難しそうだ。もう諦めて引き返そうかと思った時上方に樹木がわずかに生えたバンドが見えた。あそこまで行ってダメだったら引き返そう、そう決めて更に上へ登っていく。
 木の根元にできたわずかなテラスからバンドが確認できた。しかしそこに至るには樹木の薄い手前の斜面を越えていかなければならない。わずかな距離だが落ちたら下まで十数メートル。
 幸いな事に頼りになる支点があった。ロープを出してトラバースを開始。途中、ランニングビレイもして進んでいく。無事に安全圏に出てほっと胸を撫で下ろす。
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 最後の4mほどの滝を右から巻いて連瀑帯終了。巻いた滝は名古屋ACCの記録で確認すると4つのようだ。これに要した時間は一時間余。精神、体力ともにへとへとだ。この先、同じような場面があったら乗り越えられる自信がない。
 連瀑帯の先は打って変わって穏やかな渓相が続く。左右は立っているが険悪さはない。時折現れる小滝は登り頃で楽しい。これくらいの滝ならいくら現れても困らない。やがて左右に岩肌が目立ち始める。中には落差のある滝がかかったところもあった。
 岩の間に削り込まれたように沢筋が続く。削り込みが浅くなって大滝が現れるんじゃないかとドキドキしながら進んでいくが心配するようなところはなかった。何時しか上空には青い部分が広がり夏らしさを醸し出す。
 上部の6mほどの滝は逆相で滑っていて直登はきつく右の草付きの小尾根を巻いていく。小尾根からは不動山、千回沢山あたりの青々とした稜線が眺められた。
 水流が涸れた沢筋は樹木の生えた岩壁の下をまるで登山道のように続く。途中、多少のギャップはあるが問題となるところはなく上部に導かれる。振り返れば岩の間に烏帽子山が見えた。秋ならば絶景だろう。
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P8030110.JPG (67.44 KiB) 閲覧された回数 984 回
 薮はそれほどなく比較的楽に稜線にあがる事ができた。この稜線はかつて「街道」と呼ばれ交易や塩の道として使われていたらしい。その名残なのか樹木の下には道跡のような窪みが見受けられた。
 薮をかき分けて山頂稜線に出るとまるで登山道のような明確な切り開きと踏み跡が現れた。快適に進んでいけるが山頂は意外と遠い。
 幾つかの偽山頂に騙された後ようやく本物に辿り着いた。一時は途中で引き返す事も考えた遡行だったが無事踏破する事ができた。
 山頂には単独の青年が休憩していた。だから喜びをあからさまに現すわけにいかない。そのかわり何時もの自分に似つかわしくなくその青年に話しかけていた。ブログやヤブコギネットの話もした。興奮が青年に伝わったのだろう。興味を示してくれ見てくれると言ってくれた。
 青年は京都から来たそうだ。高島トレールをやって余呉トレールにも興味を持ったが「薮が多くて」と話していた。好青年で「またどこかでお会いしましょう」と言い残して去っていった。
 知らぬ間に山頂はガスに覆われていた。大崩れする事はないだろうが何度も訪れている山頂にこれ以上留まっている意味もない。
 沢は十分堪能できたので下山は登山道を下っていった。薮がひどくなったと聞いていたがそれほどでもなく踏み跡は以前よりしっかりしているような印象を受けた。
 夜叉ケ池には人の影がまったくなかった。珍し事だ。天候の加減だろうか。
 夜叉ケ池から下の登山道は数カ所崩れていた。一週間前のマラニックの時にはなかった崩れだ。この間に降った雨が相当ひどかったのだろう。
 もう午後2時を過ぎているというのに登山道を登ってくる人達が何人かいた。天候の回復を待って出掛けてきたのだろうか。振り返れば稜線は再び青空がのぞいていた。 
 
越前
記事: 217
登録日時: 2012年5月16日(水) 15:43

Re: 【奥美濃】根洞谷〜三周ケ岳…冒険心を煽られて

投稿記事 by 越前 »

兎夢さん、今晩は。

う~ん、なかなか読み応えのある臨場感溢れるレポですね~。手に汗で読みながら興奮しちゃいました。(^^ゞ
初心者の域をいまだ抜けきれない沢二年目の私は、まだ涼感を求めた初級の沢ばかりです。
こんな見事な「期待感と高揚感、満足感」の揃った沢のぼりを早く出来るようになりたいですね。

ずっと気になっていた沢だった。
根洞谷から三周ケ岳へ登る沢は3つ。末端の沢は2回登った事がある。上部の岩場がつくりだす景色が圧巻だ。
三角点に直接突き上げている沢は地元で「三周の黒壁」と呼ばれた岩場越えに困難さを感じとても行く気になれない。
山頂より北に落ちている沢は崖マークがあるものの行けそうな雰囲気がある。何時の頃からかここを登ったらどんなだろうと地形図を眺めていた。
名古屋ACCの遡行記録を見つけた時はここを登った人がいる事に吃驚した。とともに軽い嫉妬心を抱きながら記録を読んだ。そして胸の奥にしまい込んだ。
沢の季節が訪れる度にこの沢は頭をかすめる。今シーズンもそうだった。一人では難しいのではないか、と思いつつもここへ誘うパートナーも思い浮かばない。
そうこうしている内に時はどんどん過ぎていく。行きたい沢はここばかりじゃない。でもここに行っておかないと前に進む気になれない。決断の時だ。
兎夢さんをして、訪れるのにも相当の決心が必要なほど難度の高い沢だということですね。

朝起きれば曇っており霧雨がフロントガラスを濡らした。池ノ又の駐車場に着いた頃にはパラパラとしており少し様子を見た。
雨はあがり南方には青空も見え出した。身支度を整え出発。
予想される困難を考えれば、頼むから沢に専念できるよう天気は邪魔をしないでくれよ・・・ってトコですか。

出合では小川のように思えた沢だが右折してすぐ上部に岩を挟んだ5mほどの滝がかかっていた。しかもいきなり越えるのが困難そうな滝だ。
激フルシャワーで足を突っ張りながらなら登れない事はないかもしれない(たろうーさんならやりそうだ)。がそれをやるだけの技術と度胸がない。みれば右岸にバンドがあり巻けそうだ。
バンドを辿っていくと先にも同規模の滝があった。これも登るのは困難そうで続けて巻いた。
今回は滝を登ることが目的ではなく、沢を抜けること自体が目的なんですよね。

2連チャンの小滝が続いた後これは!という滝が現れる。
落差6m程だろうか。水量が少なければいけそうな気がしないでもないが触ってみると滑っている。それに上部が分からない。この滝を越えたとしても上には更に二つ、滝が見えている。巻いていこう。
しかし巻くのも簡単ではない。左右とも立っている。右岸は草付き斜面が続き難しそうだ。取り付くなら樹木のある左岸だが下部が泥付きの垂壁でそこを越えるのに難儀。
2トライ目でなんとか樹木を掴みモンキークライミング。垂壁に近い斜面で足下は泥。なかなかトラバースできるところが見つからず突き上げられるとオーバーハング気味のところもありシュリンゲで確保しながらよじ登っていく。
ようやくトラバースしてみるとその先には7m規模の滝。ここも越えるのが難しそうだ。もう諦めて引き返そうかと思った時上方に樹木がわずかに生えたバンドが見えた。あそこまで行ってダメだったら引き返そう、そう決めて更に上へ登っていく。
木の根元にできたわずかなテラスからバンドが確認できた。しかしそこに至るには樹木の薄い手前の斜面を越えていかなければならない。わずかな距離だが落ちたら下まで十数メートル。
幸いな事に頼りになる支点があった。ロープを出してトラバースを開始。途中、ランニングビレイもして進んでいく。無事に安全圏に出てほっと胸を撫で下ろす。
難しい局面でのその都度の対応力が相当深くなければ、言い換えれば沢力の引き出しをたくさん持っていた兎夢さんでなければこのような単独突破は出来なかったのでしょうね。

最後の4mほどの滝を右から巻いて連瀑帯終了。巻いた滝は名古屋ACCの記録で確認すると4つのようだ。これに要した時間は一時間余。精神、体力ともにへとへとだ。この先、同じような場面があったら乗り越えられる自信がない。
連瀑帯の先は打って変わって穏やかな渓相が続く。左右は立っているが険悪さはない。時折現れる小滝は登り頃で楽しい。これくらいの滝ならいくら現れても困らない。やがて左右に岩肌が目立ち始める。中には落差のある滝がかかったところもあった。
岩の間に削り込まれたように沢筋が続く。削り込みが浅くなって大滝が現れるんじゃないかとドキドキしながら進んでいくが心配するようなところはなかった。何時しか上空には青い部分が広がり夏らしさを醸し出す
兎夢さんは山の神様に気に入られたようですね。
これだけ頑張ってるのなら、後は許しといてやろうかって・・・(笑)

薮をかき分けて山頂稜線に出るとまるで登山道のような明確な切り開きと踏み跡が現れた。快適に進んでいけるが山頂は意外と遠い。
幾つかの偽山頂に騙された後ようやく本物に辿り着いた。一時は途中で引き返す事も考えた遡行だったが無事踏破する事ができた。
ほらね・・・。

山頂には単独の青年が休憩していた。だから喜びをあからさまに現すわけにいかない。そのかわり何時もの自分に似つかわしくなくその青年に話しかけていた。ブログやヤブコギネットの話もした。興奮が青年に伝わったのだろう。興味を示してくれ見てくれると言ってくれた。
この青年がいなかったら兎夢さんは、どんなパフォーマンスで「あからさまに」喜びを表現したのでしょうか。
越前
兔夢
記事: 625
登録日時: 2011年2月24日(木) 23:12

Re: 【奥美濃】根洞谷〜三周ケ岳…冒険心を煽られて

投稿記事 by 兔夢 »

越前さん、こんばんは。お久しぶりです。
暑い日が続きますねえ。

う~ん、なかなか読み応えのある臨場感溢れるレポですね~。手に汗で読みながら興奮しちゃいました。(^^ゞ
初心者の域をいまだ抜けきれない沢二年目の私は、まだ涼感を求めた初級の沢ばかりです。
こんな見事な「期待感と高揚感、満足感」の揃った沢のぼりを早く出来るようになりたいですね。


という言葉とは裏腹にアグレッシブな沢行をしてみえますねぇ。今古川をダム湖泳いで取り付くとは思いもよらない事です。

兎夢さんをして、訪れるのにも相当の決心が必要なほど難度の高い沢だということですね。

というか、まったく様子がわからなかったからなんですけどね。名古屋ACCの記録である程度は分かったんですが見ない事にしたくて忘れるまで待ってました(本当かなあ)。

予想される困難を考えれば、頼むから沢に専念できるよう天気は邪魔をしないでくれよ・・・ってトコですか。

そんな硬派な思いではなくて晴れたら登ろう、雨ならそれを理由にやめとこって感じですよ。

今回は滝を登ることが目的ではなく、沢を抜けること自体が目的なんですよね。

滝を登る事を目的にした事はないですよ。登れたらいいなって思うくらいで。沢から山頂を目指すというのが楽しいですね。途中で帰るのはどうも不完全燃焼な感じがつきまといます。

難しい局面でのその都度の対応力が相当深くなければ、言い換えれば沢力の引き出しをたくさん持っていた兎夢さんでなければこのような単独突破は出来なかったのでしょうね。

たぶんその道の達人にとっては何でもないところだと思います。ただシュリンゲの事やロープワークの事など多少なりとも知っていて良かったなあとは思いました。

兎夢さんは山の神様に気に入られたようですね。
これだけ頑張ってるのなら、後は許しといてやろうかって・・・(笑)


今回に限らずどんな山に行っても山に迎えられているなあって感じながら登る事が多いです。それが山の神様に迎えられているのか山そのものに迎えられているのか分かりませんが何時もありがとうと思いながら登ってます。

この青年がいなかったら兎夢さんは、どんなパフォーマンスで「あからさまに」喜びを表現したのでしょうか。

何時ものように雄叫びをあげていたと思います。

     兔夢



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