ナル谷は長い谷である。完全遡行しようとすると、通常、沢中泊で二日かかる。しかも下山路が長い。2年前に大熊谷第一支流東俣谷で出会った飄逸沢遊会のほーさいさんは烏帽子山から俵石廃村を周回して下山し、2泊3日かかっている。しかも、核心部である第1ゴルジュと第2ゴルジュの間には長いゴーロ帯があるという。先週は第1ゴルジュのみを遡行して引き返したのだが、第2ゴルジュはどうなっているのだろうか。ちょっといいとこ見てみたい。
ナル谷を登り詰めると熊野古道と並行して走っている大雲取林道に出る。大雲取林道を起点にして上の方から周回コースをとれるのではないか。ネットで調べて見ると大雲取林道は通行可能らしい。行って見るしかない。標高差わずか350m、距離的も短く半日沢ののんびり遡行になるだろう・・・と思って行ったのだが、さすがに南紀の沢は甘くなく、簡単には帰してもらえなかった。・・・というか、十分堪能させていただきました(^_^;)
【 日 付 】2017年4月2日(日)
【 山 域 】南紀・熊野川流域 高田川ナル谷
【メンバー】単独
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】船見峠付近駐車地 7:44 --- 7:57 左俣谷源頭(入渓) --- 8:49 459m二俣 --- 9:29 大きな釜を持つ10m滝 --- 10:27 スラブ15m滝 --- 11:02 650m 奥の二俣 --- 左俣 --- 11:47 林道 --- 11:57 駐車地
那智勝浦から那智高原公園に至る。この公園には真新しい水洗トイレも設置されており、車中泊にもってこいのところだ。ここから大雲取林道に入る。林道はきれいに舗装されており、車止めゲートもない。熊野古道の補修のために整備されているのだろう。世界遺産、ナメたもんじゃない。
林道を5キロほど走り、船見峠付近の林道分岐近くにある小屋横の駐車スペースに車を止める。熊野古道整備のための小屋だろう。古道に向かって階段が作られている。「大越国有林」と書かれた林道支線に入って行く。この支線を詰めると烏帽子山に至る。林道を10分ほど歩き、標高459m付近二俣からまっすぐ南に突き上げる左俣谷の源頭部を降りて行く。この谷、事前情報の通り何もない谷だった。もっともアプローチ部分に見所があってもしょうがないので、この方が正解なのだが。この辺り、ずっと植林地で、谷に沿って踏み跡がある。
伏流となり、傾斜がきつくなると標高459m付近二俣に着く。ナル谷は東側に開けた谷なので、朝は日当たりがいい。さあ、これからがお楽しみだ。少し歩くと岩が大きくなり、大岩ゴーロ帯に突入だ。1個が四畳半ほどもありそうな大きな岩の間を縫うように進んで行く。水流も岩の間を流れ落ちている。私はこの大岩の乗越しが苦手である。足が短く、しかも関節が硬いので足が上がらない。斎藤さんも同じようで、いつも二人で同じようなところで苦労している。ボルダリングのいい練習になる。
- 大岩ゴーロの岩間滝
基本的に右岸側を巻いて行く。あれっ、とびきり大きい岩が真横に突き出して庇みたいになっている。よく見ると、大岩の先端が木にかかって、木が大岩を支えている。それほど大きな木でもないのによく支えているものだ。あんな大きな岩が倒れて来たらこんな木なんかいっぺんに折れてしまうだろうに。いったいなぜそんな形でバランスが取れてしまったのだろうか。いつ木が支えきれなくなって大岩が落ちてくるかもわからない。冷や汗をかきながら、大岩の下を潜り抜ける。
- 木に支えられた大岩
大岩ゴーロ帯を抜けると大きな釜を持つ10m滝にでた。右岸は切り立った一枚岩の斜面で巻けそうにない。左岸のルンゼからいけそうだが、ルンゼにたどり着くには釜を泳がなければならない。そういえば、ほーさいさんが12月末に泳いだと書いてあったが、ここだったのか。こんなところで尻尾を巻いて引き返したくはない。意を決して泳ぐことにする。うっ、つべたあ!!冷たいというより、痛い!確か、この辺り今朝は氷点下になっていたはずなのだ。4月初めに山の中で泳ぐことになろうとは。
- 大きな釜を持つ10m滝
なんとか泳ぎ着き、ルンゼを上がって、落ち口に向かってトラバースする。その上はいかにも南紀の沢らしいスラブ滝8mだ。ガイド本では右岸を大きく巻き、15mほどの懸垂で沢に戻ることになっている。よく見ると左岸の小ルンゼを上がれそうだったので、そっちへ行く。近くで見ると岩にバンドがあり、途中までは簡単に行くことができた。しかし、落ち口に行くためには一度小ルンゼにおりる必要があるが、一枚岩なので足がかりがない。ほんの数mだが、ロープを出して懸垂下降する。ロープを出したのはこの1ヶ所のみだった。
- スラブ8m滝
その上は南紀特有の美しいナメが待っていた。核心部を抜けて少しホッとするひととき。夏だったらウオータースライダーで遊ぶと楽しそう。
- 美しいナメ
谷が右に曲がるとまた美しいスラブ滝10m。少し戻って左岸側の斜面を巻いて行く。そんなに難しい巻きではなかった。その上も5mほどのスラブ滝。ここはどう登ったのか覚えがない。
- スラブ10m滝
さらにその上が15mスラブ滝。南紀特有の美しいスラブ滝がこれでもかというくらい連続してでてくる。その間はナメがつないでいるし、いかにも南紀の谷らしい美しい谷だ。この滝は右岸から巻き上がり、最後は滑り台みたいにして滑り降りて落ち口に戻る。スラブの一枚岩だからこそできる芸当だ。その上も5mほどのスラブの斜滝。ここもウオータースライダーで楽しめそう。
- スラブ15m滝
最後の滝が終わるとその上は延々とナメが続く。う〜ん、南紀の沢満喫!ここで、ひと休みして行動食のパンを頬張る。風が当たると濡れた体があっという間に冷えてくるのがわかる。冷えると体が震えてくる。動いた方が良さそうだ。
- 延々と続くナメ
右側に大きな石垣の作業小屋跡が出てくると、標高650m奥ノ二俣だ。右俣に沿って立派な石垣の作業道が続いている。こっちへ行って早めに林道に出てしまおうかという誘惑にかられるが、初志貫徹、きれいな周回ルートを作るために左俣に入り、沢歩きを続ける。この左俣、なんの情報もなかったのだが、ナメが断続的に出て来て、それほど飽きることもなかった。こっちを選んで正解だったようだ。いったいにこの辺りの岩盤は一枚岩でできていて、石が落ちてこなければきれいなナメになっているのだろう。
源頭部に近づいたところで、左の小尾根に上がるとすぐに朝歩いた林道だった。林道をテクテク歩いて10分ほどで駐車地に着いた。
ナル谷第2ゴルジュは第1ゴルジュのような大きな滝はないものの、大岩ゴーロ帯あり、美しいスラブ滝あり、ナメありのいかにも南紀の谷の良さを凝縮して持っている美しい谷だった。夏に来てウオータースライダーで楽しむといいかもしれない。その時は那須高原公園でキャンプするといいだろう。熊野古道も走っているし、色々楽しめるところだと思った。
ナル谷は長い谷である。完全遡行しようとすると、通常、沢中泊で二日かかる。しかも下山路が長い。2年前に大熊谷第一支流東俣谷で出会った飄逸沢遊会のほーさいさんは烏帽子山から俵石廃村を周回して下山し、2泊3日かかっている。しかも、核心部である第1ゴルジュと第2ゴルジュの間には長いゴーロ帯があるという。先週は第1ゴルジュのみを遡行して引き返したのだが、第2ゴルジュはどうなっているのだろうか。ちょっといいとこ見てみたい。
ナル谷を登り詰めると熊野古道と並行して走っている大雲取林道に出る。大雲取林道を起点にして上の方から周回コースをとれるのではないか。ネットで調べて見ると大雲取林道は通行可能らしい。行って見るしかない。標高差わずか350m、距離的も短く半日沢ののんびり遡行になるだろう・・・と思って行ったのだが、さすがに南紀の沢は甘くなく、簡単には帰してもらえなかった。・・・というか、十分堪能させていただきました(^_^;)
【 日 付 】2017年4月2日(日)
【 山 域 】南紀・熊野川流域 高田川ナル谷
【メンバー】単独
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】船見峠付近駐車地 7:44 --- 7:57 左俣谷源頭(入渓) --- 8:49 459m二俣 --- 9:29 大きな釜を持つ10m滝 --- 10:27 スラブ15m滝 --- 11:02 650m 奥の二俣 --- 左俣 --- 11:47 林道 --- 11:57 駐車地
那智勝浦から那智高原公園に至る。この公園には真新しい水洗トイレも設置されており、車中泊にもってこいのところだ。ここから大雲取林道に入る。林道はきれいに舗装されており、車止めゲートもない。熊野古道の補修のために整備されているのだろう。世界遺産、ナメたもんじゃない。
林道を5キロほど走り、船見峠付近の林道分岐近くにある小屋横の駐車スペースに車を止める。熊野古道整備のための小屋だろう。古道に向かって階段が作られている。「大越国有林」と書かれた林道支線に入って行く。この支線を詰めると烏帽子山に至る。林道を10分ほど歩き、標高459m付近二俣からまっすぐ南に突き上げる左俣谷の源頭部を降りて行く。この谷、事前情報の通り何もない谷だった。もっともアプローチ部分に見所があってもしょうがないので、この方が正解なのだが。この辺り、ずっと植林地で、谷に沿って踏み跡がある。
伏流となり、傾斜がきつくなると標高459m付近二俣に着く。ナル谷は東側に開けた谷なので、朝は日当たりがいい。さあ、これからがお楽しみだ。少し歩くと岩が大きくなり、大岩ゴーロ帯に突入だ。1個が四畳半ほどもありそうな大きな岩の間を縫うように進んで行く。水流も岩の間を流れ落ちている。私はこの大岩の乗越しが苦手である。足が短く、しかも関節が硬いので足が上がらない。斎藤さんも同じようで、いつも二人で同じようなところで苦労している。ボルダリングのいい練習になる。
[attachment=0]P4020057.jpg[/attachment]
基本的に右岸側を巻いて行く。あれっ、とびきり大きい岩が真横に突き出して庇みたいになっている。よく見ると、大岩の先端が木にかかって、木が大岩を支えている。それほど大きな木でもないのによく支えているものだ。あんな大きな岩が倒れて来たらこんな木なんかいっぺんに折れてしまうだろうに。いったいなぜそんな形でバランスが取れてしまったのだろうか。いつ木が支えきれなくなって大岩が落ちてくるかもわからない。冷や汗をかきながら、大岩の下を潜り抜ける。
[attachment=1]P4020063.jpg[/attachment]
大岩ゴーロ帯を抜けると大きな釜を持つ10m滝にでた。右岸は切り立った一枚岩の斜面で巻けそうにない。左岸のルンゼからいけそうだが、ルンゼにたどり着くには釜を泳がなければならない。そういえば、ほーさいさんが12月末に泳いだと書いてあったが、ここだったのか。こんなところで尻尾を巻いて引き返したくはない。意を決して泳ぐことにする。うっ、つべたあ!!冷たいというより、痛い!確か、この辺り今朝は氷点下になっていたはずなのだ。4月初めに山の中で泳ぐことになろうとは。
[attachment=2]P4020071.jpg[/attachment]
なんとか泳ぎ着き、ルンゼを上がって、落ち口に向かってトラバースする。その上はいかにも南紀の沢らしいスラブ滝8mだ。ガイド本では右岸を大きく巻き、15mほどの懸垂で沢に戻ることになっている。よく見ると左岸の小ルンゼを上がれそうだったので、そっちへ行く。近くで見ると岩にバンドがあり、途中までは簡単に行くことができた。しかし、落ち口に行くためには一度小ルンゼにおりる必要があるが、一枚岩なので足がかりがない。ほんの数mだが、ロープを出して懸垂下降する。ロープを出したのはこの1ヶ所のみだった。
[attachment=3]P4020074.jpg[/attachment]
その上は南紀特有の美しいナメが待っていた。核心部を抜けて少しホッとするひととき。夏だったらウオータースライダーで遊ぶと楽しそう。
[attachment=4]P4020091.jpg[/attachment]
谷が右に曲がるとまた美しいスラブ滝10m。少し戻って左岸側の斜面を巻いて行く。そんなに難しい巻きではなかった。その上も5mほどのスラブ滝。ここはどう登ったのか覚えがない。
[attachment=5]P4020098.jpg[/attachment]
さらにその上が15mスラブ滝。南紀特有の美しいスラブ滝がこれでもかというくらい連続してでてくる。その間はナメがつないでいるし、いかにも南紀の谷らしい美しい谷だ。この滝は右岸から巻き上がり、最後は滑り台みたいにして滑り降りて落ち口に戻る。スラブの一枚岩だからこそできる芸当だ。その上も5mほどのスラブの斜滝。ここもウオータースライダーで楽しめそう。
[attachment=6]P4020113.jpg[/attachment]
最後の滝が終わるとその上は延々とナメが続く。う〜ん、南紀の沢満喫!ここで、ひと休みして行動食のパンを頬張る。風が当たると濡れた体があっという間に冷えてくるのがわかる。冷えると体が震えてくる。動いた方が良さそうだ。
[attachment=7]P4020123.jpg[/attachment]
右側に大きな石垣の作業小屋跡が出てくると、標高650m奥ノ二俣だ。右俣に沿って立派な石垣の作業道が続いている。こっちへ行って早めに林道に出てしまおうかという誘惑にかられるが、初志貫徹、きれいな周回ルートを作るために左俣に入り、沢歩きを続ける。この左俣、なんの情報もなかったのだが、ナメが断続的に出て来て、それほど飽きることもなかった。こっちを選んで正解だったようだ。いったいにこの辺りの岩盤は一枚岩でできていて、石が落ちてこなければきれいなナメになっているのだろう。
源頭部に近づいたところで、左の小尾根に上がるとすぐに朝歩いた林道だった。林道をテクテク歩いて10分ほどで駐車地に着いた。
ナル谷第2ゴルジュは第1ゴルジュのような大きな滝はないものの、大岩ゴーロ帯あり、美しいスラブ滝あり、ナメありのいかにも南紀の谷の良さを凝縮して持っている美しい谷だった。夏に来てウオータースライダーで楽しむといいかもしれない。その時は那須高原公園でキャンプするといいだろう。熊野古道も走っているし、色々楽しめるところだと思った。